Wednesday, December 28, 2011

外貨逃避への特効薬、わんこポリス

クリスマスは終わり、今年もあと3日を残すだけとなったが、欧州懸念は相変わらずくすぶっている。今年は一年中、欧州に振り回された年であったな。

今朝もユーロはスッコーンと下がって、あっさり1.30割れ。


対円だと10年振りの安値ですと。

(Bloomberg, 12/28/2011)

(記事から引用)“We’re still so far from being out of the woods that even on a day of being positive, people decided that the euro should continue to fall,”
 「状況はまだまだ闇から抜け出れそうもなく、たとえポジティブなニュースのある日でも、ひとびとはユーロは下げ続けるべきと決めている。」

Financial Timesも昨日、ECBのファシリティが貸し方も借り方も増えて【ブタ積み】になってる様を紹介していた。

Record use made of ECB deposit facility
(Financial Times, 12/28/2011)

FTの記事によると、クリスマス前の21日、ECBは空前のリクイディティ需要に答えるため新たにターム3年の融資 €489bn 近くを500超の銀行に貸し付けた。しかしその数日後、ECBのオーバーナイトの預金ファシリティには、これまた空前の€ 452bn が積まれました、という話。

11日のエントリーでも触れたように、年末にかけては市場の流動性が極端に下がるときで、こういう時にあえてアブナイ真似は手控えたほうが無難、というのは万人の知恵。キャッシュを手にしたらキャッシュのままジー・・・とこうべを垂れて年明けを待つという銀行側の考えも当然といえば当然である。

欧州リーダー達の間には「ECBから低利で借りた資金で高利回りのイタリア債を買ってくれるよね♥♥」という思惑(←通称 “サルコジ・トレード”と呼ばれてるww )があるみたいだが、銀行の担当者達は「正気だったら、年明け早々どうなるかわからないイタリア国債なんかに、いま手を出せますかい」とシランプリ決め込んでる風。アナリストの間には、このブタ積み状態が年明け後も継続してしまうのではなかろうか、と懸念持ってるひともけっこういるみたい。

結局こうやって、2011年は欧州問題にこれといった進展もみられずに一年が過ぎていったわけだが、2012年になったら、この膠着状態から抜け出ることは、果たしてできるのだろうか・・・。抜け出るとしたら、それへの触媒はなに・・・?

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この状況に痺れを切らした市場関係者の中には「アルゼンチンだってやったんだ、しのごの言ってないでサッサとデフォルトさせやがれ」とか言ってる方も散見されますが、アルゼンチンといえば、ロイターのニュースで、こんなの、あった。

自国通貨デバリュエーションのスペキュレーションが止まないアルゼンチンで、ドルの国外への闇持ち出しを阻止するため特別に訓練された犬が国境付近で大活躍中とのこと。苦しい時の犬頼み。



以下、トランスクリプト全文:
The tax man's new best friend In Argentina, sniffer dogs are being trained to detect cash being taken out of the country. The government has been cracking down on the smuggling, at a time when there's much speculation over the devaluation of the peso. Customs director, Maria Siomara Ayaran, has been demonstrating the work her dogs can do on routes into countries like Paraguay and Bolivia. 
 (SOUNDBITE) (Spanish) MARIA SIOMARA AYARAN, CUSTOMS DIRECTOR SAYING: "After many years, we now have around 300 dogs, 50 of which are trained especially to detect foreign currencies, specifically dollars and euros. What we are seeing here is part of customs controls carried at different border points."  
The dogs, seen at this ferry terminal, where boats head to Uruguay, can pick out specific currencies, like dollars and euros, by learning to sniff out the different inks on the notes. The dogs will only react if the amount is over $1000.  
From January to September this year, money leaving Argentina added up to $18.25 billion - almost $7 billion dollars more than in the whole of 2010. The government has limited sales of Dollars in a bid to curb the flight of money from the country. The move came after new foreign exchange controls, which mean the tax agency must pre-approve all currency purchases, sparked an increase in withdrawals of dollar deposits. Having perfected the training with their own dogs, Argentine customs now plan to export their expertise to other countries. Joanne Nicholson, Reuters.

(拙訳)
アルゼンチンの税務署役人に新しい親友ができた。国外に持ち出されようとする現金を嗅ぎ分けるよう訓練された犬たちだ。ペソのデバリュエーションの噂がはびこる中、アルゼンチン政府は現金の違法持ち出しを取り締まるのに躍起になっている。関税職員マリア・シオマラ・アヤランさんは、パラグアイやボリビアといった国々に向かう途中のルートで、訓練された犬達の仕事ぶりを見せてくれた。 
(マリアさんのスペイン語)「長年この仕事に取り組んでいますが、今私達には300頭の犬がいて、うち50頭が特にドルとユーロの外国紙幣のにおいを嗅ぎ分けられるよう訓練されています。いま皆さんにお見せしてるのは、国境付近各所で警備の一環として行われている業務の一部です。」
私たちがいるこのウルグアイ行きボートのフェリー乗り場では、印刷インクのにおいの違いを嗅ぎ分けられる犬達が、ドルやユーロといった特定の紙幣を見つけだす。ただし1000ドル以上のまとまった紙幣にしか反応しない。 
今年1月から9月の間に、アルゼンチンから持ち出された現金は182.5億ドルに上り、前年一年間の総額よりもすでに70億ドルも増えている。アルゼンチン政府はマネーの国外逃避に歯止めをかける目的でドル売買に限度額を設けることにした。新しい外国為替取締法のもと、あらゆる通貨購入に税務署による事前認可が必要となったため、ドル預金の引き出しが急増という結果に。特別訓練犬の成果に自信をつけたアルゼンチンの税関は、他国にこの犬の特技を輸出することを考え始めているという。



Monday, December 19, 2011

システミックリスクのビジュアル化

今日のNY市場も冴えない動き。出来高もスカスカ。金融株が特に弱い。

Bank of America(BAC)は2009年の底値にどんどん接近。数ヶ月前に6ドルを割ったときも、この低水準のまま推移することになるとかなりマズイと思ってたのに、6ドルどころか、いまや5ドルも割ってしまった。

本日3時45分頃に拾ったBACのチャート。かなり痛々しい。



欧州向けのエクスポージャが相対的に大きいという理由から、欧州リスクの懸念が強まるたびに大きくネガティブに反応して売られるモルガン・スタンレー(MS)は、本日もやられている。

こちらはMSの3時45分頃のチャート。



現在、米の大手金融機関の株価はどれもブックを大きく割っている。P/Bレシオをざっとみてみると・・・

  • JPM = 0.66
  • GS=0.63
  • MS=0.47
  • C=0.43
  • BAC=0.23


・・・悲惨な数値であるな・・・orz

ここだけみれば、「バリュエーション的には割安・・・」とつい漏らしたくなる人もいるだろうが、なにせ誰もが2007年の暮れ(リーマンショックの前年の暮れ)に、大手金融株がどいつもこいつも同様にブック割れしていたことを嫌でも覚えてるので、いま、この局面で「割安」の「わ」の字も口にしたくない、というのが本音だろう。

当ブログで数度にわたりシツコク書いてることではあるが、問題をある狭いローカル市場に閉じ込めておくことができるのであればまだマシだったのであろうが、特に90年代後半からは、デリバティブスの台頭もあり、世界の金融市場は文字通りボーダーレスになり、まるで蜘蛛の巣のように絡みあって互いが互いにエクスポーズされる、そういう状態になってしまった。

【エクスポージャの蜘蛛の巣】が絡まれば絡まるほど、ある一箇所で起こった問題が産むリスクは、そのネットワークを経由して、時には増幅されて、問題発生のローカル市場を飛び越えて伝播してゆく。

伝播(Contagion)については1年半も前に『ギリシャの悲劇-Contagion』という記事を書いた。今、去年の5月に自分が書いた記事を読み直してみると、欧州をとりまく状況は、実際何も進展していないという事実にあらためて驚く。

ブロガーのBarry Ritholtz が彼のブログで『 Econometric Measures of Connectedness and Systemic Risk in the Finance and Insurance Sectors 』という学術論文を紹介しており、そこに、「金融セクター同士のエクスポージャ蜘蛛の巣」の図があった。


システミックリスクをビジュアルに感じられて興味深いので、ここにも貼っつけておきたい。


1994年1月~1996年12月



2006年1月~2008年12月



拡大して線のいちいちを精査してどうなるわけでもない図だが、絡まり合い方(Interconnectedness)を見ただけで、世界の金融機関同士がわずか10年かそこらで、どれだけ相互エクスポージャの度合いを強めていったかがわかる。

グローバルに金融セクターへの悲観論が消えることなく弱含み続ける最大の背景は、この図から示唆されるシステミックリスクの深刻さなのだ。


Wednesday, December 14, 2011

2012年に入れば米株は上下いずれかに大きく動く?

筆者はテクニカル分析はようやらないのですが、興味深い記述があったので、メモ。

Market moves swiftly but goes nowhere:Market may break out of trading range early next year
(Market Watch, 12/14/2011)

米株市場は、ボラティリティが比較的高い割りには、一定のトレーディングレンジの内側をウロウロするばかりで方向性がない。年内は、こうしたレンジ内の動きに終始するだろうが、2012年に入ったら早々にも、株価はサポートを突き抜けてブレイクアウトするかもしれない。

ただし、ブレイクアウトする方向は、激しく上昇するかもしれないし、派手に下落するかもしれないし、どちらになるかはわからない、と記事の書き手のLarry McMillanの意見。

You can see from the figure below that there are converging downtrend and uptrend lines. When these persist for long periods of time, as they have, then a breakout should be significant. The break of the blue trendline in September propelled the market to its October lows. We would expect the next breakout in either direction to exceed the highs or lows on the chart below (i.e., above 1,350 on an upside breakout, or below 1,080 on a downside breakout).
下のチャートから、ダウントレンドとアップトレンドの2つのラインが互いに近寄って収束しているのが見てとれる。こういう状態がしばらく続くと、レンジからブレイクアウトするときは、激しい動きを伴う。図中のブルーの9月のトレンドラインが、10月に入ってからの大きな下落をもたらした。2本のトレンドラインの収束は今も続いているが、次にブレイクアウトが起こるときには、このチャートの最高値あるいは最低値を突き抜ける、つまり、ブレイクアウトはいずれの方向にも起こりうると予想される。(具体的には、上方にブレイクアウトするならばS&P500は1350を超えて突き抜け、逆に下方にブレイクアウトするならば1080を割り込む可能性がある、ということだ。)



より詳しい話は、上の記事全文を読んでいただくとして、明確な方向がつかめないまま、あっち行ったりこっち行ったり、ブルとベアのせめぎあいが夏以来続いているわけですが、長いことそんな状態を続けながら、相場はひたすらエネルギーを貯めこんでいるかのよう。


年末のFXは派手に荒れる?

さて、はやいもので、2011年もあと2週間ほど。

金融街の年末風景の常として、クリスマスが近づくにつれ取引現場に関わるひとびとのやる気は目に見えて下がってゆき、20日過ぎたあたりからやる気はほぼゼロに近づく。

年末にかけて低下するのはトレーダーやセールスのやる気だけじゃなくて、株も債券も為替もコモディティも、あらゆる金融市場の流動性が合わせて低下する。

今年は尾を引く欧州問題のせいでFX市場の流動性低下がここ数ヶ月目だっており、10月27日に1.4247をつけていたユーロドルは、今日は1.29台まで大きく動いた。ここ数ヶ月高いボラに見舞われている為替市場は、これから年末に向けてさらに流動性が下がることもあり、さらに大きな振れ幅に襲われるのではないか、という懸念が出ている。マーケット関係者の異なる見方を紹介した記事。

DERIVATIVES: Dramatic FX moves feared on low liquidity
(IFR, 12/14/2011)

(以下、記事の抄訳)


  • 目下ボラティリティは高レベルで推移してるものの、コントロールが失われるほどまでには至っていない。だが、いずれにせよ年末にかけて流動性が更に細るため、ドラマチックな値動きに発展するのではという懸念が散見される。
  • ドイチェ銀行のFXグローバルヘッドKevin Rodgersの見方:「年末のリクイディティ低下で、もしソブリン問題にまったく目処が立たないということになると、極めて大型でボラの高い動きが起こるのではという懸念を拭えない。これまでも、年末の流動性が低い最中にエンドユーザーが取引を成立させようとして値動きが大きくなったことがある。今年はヘッジファンドが苦しい状況にいることもあって、一方的な流れになった時に、その流れに逆らってリスクキャピタルをコミットしようとするプレーヤーは稀だろう。FXデスクで人手が手薄にならないように、トレーダーの年末休暇の予定には気を配っている。大きな不確定要因が存在している最中に流動性が低下するのだから、突然、動きが活発になった場合を考えて、予め準備をしておく必要がある。」



ドイチェのFXデスクが強い警戒感を抱くのとは逆に、パリバのデスクは、年末はスムーズに越せるという見解。(以下、ふたたび記事の抄訳)

  • ユーロゾーン危機から派生する不確実性は払拭されてはいないものの、主要通貨のペアのボラティリティは比較的落ち着いてはいて、1年のユーロドル・ボラティリティは現在15.7ボラティリティ・ポイントでトレードされている。歴史的にみれば高い位置にはいるが、11月終盤には17ポイントだったので、現在はそれよりも低い。同様に、ユーロドル・リスク・リバーサル(3ヶ月25デルタのプット/コールの差)の水準は、11月の4.5に対し、現在3.5。
  • BNPパリバのFXグローバルヘッドHubert de Lambillyの見方:「パニックはしていない。ボラは爆上げしてはいないし、通常ならユーロをショートするファストマネーがユーロを更に下押ししようとするだろうが、いまはそれが起こってる風でもない。事実として債券の新規発行のストレスがFX市場を大きく動かすドライバーになるが、(年末に向かっては)債券発行もほとんどない。今年は、流動性のない、しかし、さほど波風もたたないスムーズな年末になると予想している。」

ECBの施策が功を奏して、市場が心配しているほどには、現実には、そんなに大惨事にはなっていないという点では、両者の意見は一致。


  • ユーロの秩序ある下落を可能にしたのは、ECBが進めている低金利環境のおかげ。量的緩和は控えているECBだが、フロントエンドの金利を低位に保ち流動性供給オペの延長と担保条件緩和を実施してユーロゾーンのリクイディティが枯渇しないようつとめている。パリバのLambillyは、ユーロ調達緩和策がユーロ下落の理由のひとつ、という。
  • また、ドイチェのRodgersによると、主要通貨のペアは、ボラが高止まりしているにもかかわらず、2011年初頭の水準からみると、さほど大きな乖離はしていない。今年に入ってから対ユーロで最大の動きを見せたのは日本円の6.8%。ユーロスイスは1.2%の下落にとどまり(2度にわたる中央政府の介入の後ではあるが)、ユーロドルも2.6%にとどまっている。
  • Rodgersの言:「ボラティリティが高止まりし、ヘッドラインに翻弄されてギクシャクな動きが続いた今年は、緊張がいまだに続いているが、実際のところスポットレベルはかなり安定的。マーケットは、今の状況が大惨事に発展する可能性をずっと憂いてきているが、現実には、そんなに動いてはいない。」


市場は心配しすぎ、ということでしょうかね・・・。

ところで、今日TLで見かけた @positivegamma さんのツイートがちょっと気になったので、最後にメモとしてくっつけておく。

これを見たら、「心配しすぎ」とも思えないんだが。




このチャートを見て、「市場の流動性が極めて低い最中に、動きが一方的になってきたとき、それに逆らってキャピタルをコミットするプレーヤーはいない」というRodgersの言葉を、改めて心に刻むなど。(たしかに、【プライベート資金のサイド】には、いないでしょうね。)

Wednesday, December 7, 2011

OWSからウォール街に就職

いつも暗い話ばかり書いてるので、たまには明るい話を。

オキュパイ・ウォール・ストリート(OWS)でプロテスターとして参加していた女性が、たまたま通りかかったウォール街エグゼクティブに見出され、投資会社のアナリストとして雇われた、という話をNew York Postが紹介している。

Occupier gets an occupation: Wall Street firm hires protester
(NY Post, 12/5/2011)

この女性はマンハッタンに住む30代の女性トレイシー・ポスタートさんで、バイオメディカルの分野で薬理学のPh.D.を持っているが、長いこと職にありつけず、OWSに参加して、本拠地であるウォール街近くのズコティ・パークで、道端の掃除をしたりサンドイッチ作ったりして運動を支援していた。

トレイシーさんは、「バイオメディカルのPh.D.科学者、フルタイムの仕事を探してます」という紙を持ってズコティ・パークに立っていたところ、たまたま、横を通りかかった投資会社の関係者が興味を示し、トレーシーさんは彼に履歴書を手渡した。



ズコティ・パークから2ブロック離れたところに会社を構えるブローカレッジ会社のJohn Thomas Financial Brokerageのエグゼクティブは、会社に戻ってトレーシーさんの履歴書を読んでみたところ、彼女のバックグラウンドが大変気に入り、インタビューに来てみないかとEメールを出した。

トレーシーさんは面接を見事通り、「ジュニア・アナリスト」のポジションで採用になった。



ジュニアポジションなので、最初のお給料はまだまだ低いけれど(ウォール街は基本的に丁稚制度だからねw)、頑張れば6桁の給料も夢じゃないということで希望に燃えてるそう。トレーシーさんが最後についた仕事は、大学の研究室のラボ・アシスタントとして働いて、一学期で2500ドルだったとか。

トレーシーさん、おめでとう。Good Luck! 
(しかし人生、どこで何がどう転ぶかわからないですな。笑)




Monday, December 5, 2011

米国の郵便局、来年末までに2万8千人解雇

債務負担が重すぎて、このままでは債務不履行も免れないと心配されてきた米国の郵便局サービス(U.S. Postal Service、略してUSPS)が、月曜日、独自に大胆なコストカット策を発表した。

Post Office Aims to Save Billions With Reductions in Workforce, Delivery Time
(Fox News, 12/5/2011)

USPSはすでに議会に対し、①配達日数を現在の週6日から5日に切り下げる、②USPS従業員のヘルスケア向け支払い義務の軽減、などを議会に承認してくれるよう強く求めてきたが、なにせ政界のほうはオバマの政策を巡って共和側が徹底反抗し続けて硬直状態が続いており、1年も前から米会計検査院から「ヤバさ充満してるからモタモタしてないでUSPSの再建案を議会承認しろ」とせっつかれていたのに、進展らしい進展をみせなかった。

議会が内向きのポリティクスで頭一杯になってる間にも、USPSのキャッシュフローは高速で悪化していっており、今月末には退職者向けヘルスケア基金への支払い$5.5Billion もあって、もはや待ったなしの状態。上で「独自に」と言ったのは、議会の承認を待たずして以下の削減に着手するらしいからだ。

プランの詳細は、すでに発表されていた3300箇所の郵便局閉鎖に加え、
  • 郵便物仕分けなどのプロセッシング作業センターの稼働時間を現在の6~6.5時間から16~20時間に延ばし、プロセッシング機器の数そのものを削減。
  • これに伴い、全米に散らばるプロセッシング・センターの数を現在の461箇所から252箇所に削減。
  • センターの削減にともない、2012年までに2万8000人の従業員を削減。
  • ファーストクラスメールの配達日を、これまでの1~3日以内から2~3日以内とし、ファーストクラスメールの翌日配達サービスを止める。


1.配達サービスの劣化に踏み切る

米国の郵便配達のファーストクラスメールの配達日数内訳は現在、42%が翌日配達、27%が2日かかる、31%が3日かかる、4~5日かかるのは1%以下だそう。これを今後は、「2日かかる」が51%、残りを3日かそれ以降にするという変更。

Snail Mail (カタツムリのようにノロい配達)といまでも揶揄されてる郵便局のサービスが、さらに遅くなる。



(USPSの言い分としては、そもそも第一種郵便物=First Class Mailは翌日配達は「保証」はしてないし、もしどうしても、翌日配達希望ならそれが保証されてる高料金の速達=Express Mailを使え、ということらしい。)

ファーストクラスメールの切手代は、来年1月22日から、現行の44セントから45セントに値上げされることが決まっているが、配達量が減っているのに、この程度の値上げだけでは悪化する財務の建て直しは不可能で、大幅なコスト削減に加えサービスそのものの劣化(配達遅延)に踏み切る格好。配達日数を遅らせるのは、政府直轄だったPost OfficeからUS Postal Service と名称を変え米政府から独立した1971年以降、40年間で初めてのことらしい。

ファーストクラスメールはUSPSにとって最も収益性の高いプロダクトではあるが、近年の収益の減少度合いとしては最大の部分でもあり、この部分に大きくメスを入れねばならないほど収支はガタガタになっている。

2.重要!最大の問題点は退職者のヘルスケアコスト

この問題を語る上で重要ポイントとなるのは、USPSが財務危機に陥った最大の問題点は、退職者向けベネフィットの負担が重過ぎる、という点だ。

USPSというのは、政府から独立したエージェンシーというステータスではあるのだが、業務内容の変更等は議会の承認を得なければならないことになっている。かつて90万人という従業員を抱えた大組織だったが、現在はそこから25万人以上も従業員総数が減り、なのに、いまだに90万人の時代のベースで計算されたヘルスケアコストを75年前倒しで粛々と基金に積み立てる「義務」がある。その額が2010年度分で$5.5Billion

この$5.5Billionはもともと今年9月半ばが支払い予定日だったが手元キャッシュが足りず、議会に泣きついて11月18日に延期してもらった。しかし11月にもまた払えそうもなくなって、12月まで支払い期限を延ばしてもらっていた。USPS側は、ホリデーシーズンにキャッシュはなんとか作れると言っていたが、綱渡り状態でこの3ヶ月を凌いできたことは確かなのだ。

非効率なオペレーションのせいで、本業の儲けの段階ですでに赤字になっているのに、そこに退職者向けベネフィットがドーンとのしかかり、赤字幅をどんどん広げてゆくという悪循環に陥っているのである。


3.配達個数は減少の一途

退職者ヘルスケアコストの基金への前倒し積み立て「義務化」は2006年に議会で決定されたが、皮肉なことに、同じ2006年にUSPSは配達郵便物数過去最高の2130億個を記録して、その後は配達数は減少の一途をたどり、2010年には2割減の1710億個まで減少した。

配達個数減少の理由は言わずもがな、景気後退。そして、電子メールやオンラインでの請求書支払いなどが普及して、クリスマスカードや母の日カードなどの特需は残っているとはいえ、一般郵便物の利用が激減したこと。さらに小包み配達の分野ではUPSやFEDEXなど民間に完全に水をあけられ、オンラインショッピングの新規需要をキャプチャーできなかった。別の例ではNetflixのようなDVD配達サービスもネットによる動画ストリーミングへと軸足を向けているなど、「時代の流れ」の一貫で、郵便物離れに歯止めをかけられない。


4.人件費8割、財務状況は去年既に崖っぷち

一年前の資料だが、昨年12月2日に米国会計検査院(GAO)がUSPSの財務建て直しについて議会証言した証言のトランスクリプトがネットで入手できる。

U.S. POSTAL SERVICE:Legislation Needed to Address Key Challenges

証言の出だしの文章から、いきなり真っ暗闇なのが、すごい。
USPS’s financial condition continued to decline in fiscal year 2010 and its financial outlook is poor for fiscal year 2011 and the foreseeable future. 

(USPSの財務状況は2010年度も引き続き悪化した。2011年度も脆弱のまま推移の予想、近い将来に財務が再建される目処が立っていない。)

この証言に出てくる前年度(2010年度)の具体的な財務数値を見てみよう。
  • 2010年度のUSPSの総収入$67.1Billionに対し、総支出$75.6Billionで、過去最大の$8.5Billionの赤字。前年度の赤字$4.7Billionから大幅増。
  • 財務省への借金総額$1.8Billion 増加で借入金総額$12Billion (最大借り入れ枠は$15Billion)。
  • 会計年度末時点の現金残高は$1.2Billion。
そして、1年前の段階で2011年度の予算として出されているのが以下の数字。
  • 最終赤字$6.4Billionにやや縮小の見込み
  • 財務省への借金総額は$3Billion増加で、法的借り入れ上限の$15Billionに到達予定
  • 年度末時点の手持ち現金残高は$2.7Billionの見込み

USPSの支出の実に80%が福利厚生も含めた人件費で占められ、従業員の削減や人的コストの見直しが議会承認などのステップを踏まない限り基本的に独自ではできないため、現実的なオペレーションに即した柔軟な対応が不可能になっている。本業からの収益が減少トレンドをたどるなか、コストの側は硬直的で非常に負担が重くなっている。

GAOは、この最悪の状況からUSPSが再建するためには議会は法的な変更に着手して、退職者へのベネフィットの見直しなどを早急に図るべきと進言していた。


5.収入減続き今年度の財務はさらなる悪化

そして、この証言から、丸一年が経過した・・・。

USPSの2011年度の実績がどうなったかと思って検索してみたら、次の記事を見つけた。

Postal Service will resume FERS retirement contributions next month
(Government Executive, 11/15/2011)

この記事によると、最終赤字$6.5Billionの予想に対し、実績は$5.1Billionの赤字であった。

予想よりもよかったのかと一瞬思うが、これは前述した「退職者向けヘルスケア基金への積立金」$5.5Billionの支払い期日が会計年度末日を超えて先延ばしされたおかげで、もし、この$5.5Billionが期日どおり支払われていたら、USPSの赤字額は$10.6Billionとなり、予想$6.5Billionを大幅に上回り悪化していた。

コストカットの采配がUSPSに与えられていないために人件費が硬直的で事業スリム化の妨げになっている一方で、収入の方は、配達郵便物数が前年比1.7%減少。特にファーストクラスメールの減少分が大きく、この商品だけで$2Billion失った。その他の商品の売り上げ増加分で幾分オフセットされたものの、トップライン全体の減少は抑えられず、最終赤字幅の拡大に至った。

手持ちのキャッシュ残高が$1~2Billion程度しかない会社が、毎年毎年$7~10Billionの赤字を垂れ流す、の図。



6.民営化の期待もあるが、政治・組合絡んで複雑

議会の方は、危機的な財政状態に置かれているUSPSに柔軟性を持たせるための法案『21 Century Postal Service Act』の通過に取り掛かっているが、これが、例の退職者向けヘルスケアも含めた高コスト体質の抜本解決を導くかは疑問視されている。

政府からの借り入れ枠の法的上限に達してしまっていることもあり、このままの状態が続くと、手元のキャッシュが完全に底を尽くのは来年中、2015年までに$20Billionのコスト削減を実行しなければ利益を出せる体質に戻るのは不可能、とUSPS自身は考えている。

USPSのトップPatrick Donahue は、政府から無尽蔵に支援を受けて延命するより、組織改革・財務改革を徹底させて一部民営化を進めたいようだ。ヘルスケア関連債務の大幅リストラと50万人以上いる配達人の数を20万人以上削減して経営改善を図るのが好ましい、と9月の議会証言でも主張している。

だが、そこは連邦レベルだけではなく地方レベルでのポリティクスも絡んでくる上、一部民営化となれば即クビ切り対象となる郵便局員組合も抗戦の構えでいるのは想像に難くなく、なかなか簡単には進みそうもないらしい。

The Politics of a USPS Default
(Politico, 9/11/2011)

退職者ベネフィットという重荷に耐えられず沈みかけている、USPSという巨艦。しかし、退職者の年金債務や福利厚生債務で破裂しそうになっている組織は、米国の自治体しかり、民間企業しかり、USPSだけではないのだ。

Wednesday, November 23, 2011

感謝祭ウィークの下げ幅、過去最悪

ブログ更新をサボりにサボって、ふと気がついてみれば、米国では明日は、Thanksgiving(感謝祭)。

本日のダウは、引け近くになって下げ幅急拡大。ここ数日、ずっと気分が悪かったのが、最後の最後で一気に吐いた、というゲロゲロな状態で引けた。ダウは236ポイント下げて前日比2.05%下落。ナスダック2.43%、S&P500は2.21%それぞれ下落。

Bespokeによると、感謝祭の休日を11月の第4週目の木曜日にすると連邦政府が正式に定めたのが1941年、それ以降感謝祭にあたる週のS&P500の下げ率でみると、今年は過去最悪だったそうである。

下は感謝祭ウィークに2%超の下げ幅を記録した年のリスト。2011年は、ぶっちぎりの4%台で、堂々トップに輝いた。


さきほど、筆者の自宅付近のGAPの横を通りすがったら、「全店最高6割引」と書かれたドでかいポスターが貼られていて、筆者も思わずフラフラと店内に引き寄せられてしまった。

6割引という広告に惹かれた老若女子が、店内でごった返していた。みんなエネルギーあるなぁ・・・。筆者はレジに並ぶ長い人の列を見ただけでウンザリして、何も買わずに出てきてしまった。

さて、今年のBlack Fridayの売り上げは、果たしてどのような結果になるであろうか。

Happy Thanksgiving!

Friday, October 21, 2011

共和党大統領予備選ディベート

共和党候補同士のTVディベート。

すでに何度も開かれて、もう何度開かれたのか、実際それすら、筆者にはもうわからない。

何度聞こうが、トピックとしては目新しい話はさほどないし、有権者もみんな飽きてきている。飽きてくるとおちょくりたくなるのが人の常。下のビデオ、笑った。



(本命は、上のおちょくり動画でへべれけになってるロムニーと言われているけどね。)

hat tip: Jeff Harding @ The Daily Capitalist

Friday, September 9, 2011

アメリカンドリームはゴールド94オンスで買える

米国の一戸建て住宅価格のメディアン値を、ゴールドの1オンスあたりの価格で割ったものが、下のグラフ。

いまなら94オンス分で一戸建て住宅が一軒買える。2001年のピーク時には601オンス必要だった。ピークから84%下落した格好。(元記事はここ

Sunday, August 28, 2011

アートとしてのコミック

(本日のエントリーは、金融経済とはぜんぜん関係ありません。)

ツイッターのTLを眺めていて、ちょっと目を惹かれるツイートがあった。

@0__exa__0 さん(上智大学ゲーム部部長さんらしい)とおっしゃる方のツイートで、「ゲームというアート作品としての視点」を考えるとき、「海外に日本の芸術文化であるゲームが流れ出てしまった以上、芸術に関する権威や価値を知っている海外勢には根底から叶わない」という内容だった。

そのテーマで@kuromog さん(イラストレーター・漫画家の方)と意見交換させてもらったが、そのやりとりをTogetterでまとめたのが、これ。
Togetter「アートとしてのコミック」




上のやり取りで出てくるNYタイムズの記事はこちら。
Art Books Elevate Picassos of Pulp (NY Times, 8/18/11)

この記事では、アメリカのアートシーンでは、コミック関連のエキジビションが年々ポピュラーになってきており、コミックのコレクターと言えばかつては無造作に漫画本を積み上げているようなイメージだったが、近頃は、アート界のメインストリームの仲間入りをしており、Frank MillerとKlaus Jansonというアーティストの手による「バットマンとロビン」の絵がオークションで$448,125という価格が付いた話などが紹介されている。

コミック本自体の売り上げは細ってきているものの、その一方で、コミックやイラストレーションを「ファイン・アート」というカテゴリーで鑑賞するシリアスなファンからの需要はここ数年高まっていて、そうした層に作品を届けられる才能あるアーティストらが活躍するニッチな市場ができてきているという。

このNYタイムズの記事中に、その才能たち(Talents)の作品群がいくつか紹介されていた。
これらの代表作品を見て、このニッチなアートシーンに、日本人アーティストの名が入ってないことを、筆者は個人的には少々残念に感じた。

@0__exa__0さんがツイートで触れていた「エルシャダイ」というゲームのプロモビデオも初めて見てみた。普段ゲームをやらない自分には内容はよくわからないけれども、イラストレーションとしてだけみても非常にクオリティが高いと感じた。このクオリティをアートとして評価する向きが国内よりも海外筋なのだとしたら、それもやっぱり、残念なことと感じる。



前々から思っていることなのだが、日本では、こうした分野の作品はもっぱら『消費されるもの』といった扱いを受けているのではないのか。0__exa__0さんが言うように、これらを「アート作品としてAPPRECIATE(賞賛)する」といった態度が、どこか欠けているのではなかろうか。

カルチャーは消費されるべきではない、と言っているわけではない。ただ、芸術性が高く永く財産として残れる作品と、そこらへんにダダ漏れして散乱しているオタク文化の産物や「幼稚」以外に形容しようのない漫画風アイテムをいっしょくたにして消費し切ってしまうのは大変もったいない、と個人的に感じるだけだ。

上のまとめでも述べているが、数年前にNY公立図書館で開かれていた「絵本」という展示会をみて、そのときもやはり、似たような気持ちを抱いた。

そのとき感じたのは、日本のアートなのに、わたしは何故これをニューヨークのキュレーターによる企画で見ているのだろうということと、そこに展示されている芸術的な絵本の多くがNY図書館の蔵書(戦後流出したもの)なのは残念だ、ということだった。

わたしの感じ方に反論も多々あるだろうし、わたしみたいな美術に関しては門外漢の素人が何を言う、と思われるかもしれない。でも、わたしは日本人には「絵を読む」というユニークな感性があると思うし、その感性の表現としてのコミックやマンガ、アニメといった分野の幅の広さ・奥の深さは、経産省が想定しているような(商業ベースの)成功やアニメファンが集うカンファレンスばかりではなく、「ファイン・アート」という扱いで国際的にもっと知れ渡ってもいい、と思うのだ。

以下は、NY公立図書館の「絵本」展を見たときに書いたMixi日記(2007年2月5日付)から抜粋。

★   ★   ★   ★   ★

『絵本展』(2007.02.05 / Mixi日記から)

自宅から歩いていける距離に、ニューヨーク公立図書館があります。

Library1

ここの図書館の蔵書の中には、数多くの貴重な本や資料があるそうで、そうした貴重な本の展示会が、年を通じて開かれています。

展示会は、もちろん無料です。

NY公立図書館で今日まで展示中だったのが、日本の絵本。

先月いちど訪れたんですが、展示内容が実に素晴らしかったので、もういちど行って来た。

展示会のタイトルは、The Artist and the Book in Japan


Library2


わたしたち日本人でも、「絵本」と聞くと、子供向けの絵本をすぐ想像してしまうのですけれど、この展示会で展示されている本のほとんどは、子供向けの近代絵本ではない。764年から現代まで、日本芸術の流れの中に存在し続けてきた【絵本というアート】の集大成です。

それは、絵巻であったり、奈良絵本であったり、美しい挿絵をほどこした俳句集であったり・・・。まさに「息を呑む(breath-taking)」という形容がふさわしい、すばらしい本の数々でした。

Library3
(展示されていた、葛飾北斎作、富獄百景『霧中の不二』)

展示会でもらってきたパンフレットの序文の一部を紹介しますね。
This exhibition, the first of its kind, chronicles the development of ehon, or "picture books," in Japan from 764 to the present. Among the most beautiful and moving books ever created, ehon are one of the true glories of Japanese art but are little known today, even in Japan, because of their great rarity. The goal of this exhibition is to show the wonderful variety of ehon, their breathtaking exuberance, sophisticated artistry, sensuality, unparalleled originality, intellectual gravity, playful spirit, and lightness of touch.

この種の展示としては初めての試みである当展示会は、764年から現在までの、日本のピクチャー・ブック【絵本】の歴史と記録である。この世に創られた本の中でも最も美しく心を動かされる本、【絵本】。【絵本】は、真に賞賛に値する日本美術でありながら、こんにちでは、その希少さゆえに、日本においてさえも、ほとんど知られていない。【絵本】の素晴らしいまでのバライエティ、息を呑むほどの芸術としての豊かさ、洗練された芸術性、官能性、無比のオリジナリティ、知的な厳粛さ、遊びごころ、そして、手法の軽やかさ。当展示会の目的はそれらを示すことにある。

その希少さ(rarity)ゆえに、日本においてすら、よく知られていない・・・。

実際、わたしも、この展示会にあるものはどれも、いちども実際には見たことがないものばかりでした。

今回、ニューヨーク公立図書館で公開された本はすべて、同図書館が実際に所蔵する、スペンサー・コレクション(The Spencer Collection)と呼ばれる、たいへん貴重なものだそうです。

ネット検索してみたら、このコレクション、日本の大学の「日本学」の研究者のみなさんにとっては垂涎の資料だそうで、このコレクション公開に先立って、立教大学の日本学の研究者グループがプロジェクト組んで、NY公立図書館に学術調査に来ていたようです。

立教大学によると、スペンサー・コレクションとは、「日本古典籍資料、とくに日本関係の図像資料の宝庫」なのだそうです。

スペンサー・コレクションに含まれる日本の古典籍資料は、絵本含む印刷本が1500点、(手書き)写本が300点。こんなに貴重な資料が、なぜ、アメリカの図書館に膨大に所蔵されているのか・・・。

もとの日本人の持ち主が、これらの本にさほどの価値を認めなかったらしく、アメリカ人収集家に二束三文で売ったのだそうです。

スペンサー・コレクションは、ここ60年ほどの間の収集だとのことなので、戦後まもなく売られた、ということですよね。

戦後の混乱のさなかの日本では、美術品どころではなかった、ということなのか。(日本美術の多くが、戦後こうして海外に流出したよね・・・ちょっと残念です・・・。)

(中略)

実は、この展示会で、わたしのこころに最も印象深くのこったのは、神坂雪佳(かみさか せっか)という画家による絵本でした。

あちこち読んでみると、神坂雪佳は1866年に京都に生まれ、尾形光琳の流れを汲む琳派に属す正統派の日本画家でありながら、日本画に西洋の影響を強く反映させたことでも知られるモダンアートの先駆者、とあります。

恥ずかしながら、わたしは、神坂雪佳という画家のことを、この展示会で見るまで知らなかったのです。

しかし、日本的な題材を扱いながら、その斬新な色使いといい、構図といい、ひときわ異色を放つ絵本をおさめたガラスケースが展示場で目に入ったとき、おもわず足早に近寄ってしまいました。

ガラスケースの中にあった本、それは、神坂雪佳が1910年に描いた『百々世草』という本でした。

ただただ、びっくりしました。 20世紀に入る前から、日本にこんな先駆的な芸術家がいたことに。

晩年になってからの1934年、彼は、欧州を旅したそうです。 雪佳の青春時代、19世紀後半といえば、ヨーロッパの美術界は、日本美術の影響を受けてジャポニズムの嵐が吹いていた。ジャポニズムの洗礼を受けた欧州を旅しながら、雪佳は何を見、何を感じていたのでしょうか。

NY公立図書館が用意した雪佳についての説明文に、こんなことが書かれてあります。
Sekka was a genius; timelessly inventive, spontaneous, and free.
(雪佳は天才だった。時を感じさせない創造性、自然体で、そして自由。)
Timelessly inventive・・・時空を超越した創造性。

まさに天才の素分。

もっと、雪佳のことを知りたいと思って調べてみたものの、日本語ではほとんど彼についての情報や資料がネット上にないことに、驚いた。

そういえば、二束三文で売っ払った本の束の中に『百々世草』はあったのだったね・・・日本美術には知られざる奥行きがある。いつか、よく見直してみたいな。

英語サイトですが、ここに、雪佳の他の作品のデジタルイメージがあります。本をクリックすると、彼の絵のデジタルイメージを拡大できます。どれも素晴らしいです。是非ごらんあれ。

(抜粋終わり)

Monday, August 8, 2011

本命は欧州フロント(ではなかろうか・・・?)

S&Pによる米国ソブリン格下げのニュースが出てから、この週末は、米国のテレビは(予想通り)このトピックで持ちきり。

ウンザリ。

前回のエントリーの最後に「この格下げは政治的に影響をおよぼすだろう」と書いたが、(やはり予想通り)こんなことになってしまったのはお前のせいだ、いやお前が悪い、と民主と共和とで指の指し合い、米政界はフィンガーポインティングの嵐である。

民主党のケリー代議士などは、日曜朝の報道番組Meet The Pressに出演して、「This is a Tea-Party downgrade!」と、これはお茶会がもたらした格下げだと言い放った。一方の共和は共和で、(これでますますオバマを苛めるネタができたとばかりのドヤ顔で)「オバマのリーダーシップのなさが格下げの直接原因」と言い返す、というありさまである。

Finger-Pointing in Washington Follows Debt Downgrade
(WSJ, 8/7/11)

そして、直接の窓口となって格付け機関と丁々発止とやりあった財務省関係者は、トリプルA攻防戦で疲労困憊、それでも「AAA」の3文字を守りきれなかった悔しさで恨みタラタラ。S&Pのアナリストが用いた計量モデルに2兆ドルの間違いがあったとか言って彼らの分析には蓋然性がないと、そればっか繰り返し、金曜日の夜から文句言い出して今日になってもまーだ同じ文句を言っていて、これもウンザリ。

Treasury Spells Out S&P's "$2 Trillion Mistake"
(Business Insider, 8/6/11)

たしかに、世界中が注目している格付けアクションだというのに、その正念場で、相手から2兆ドルの間違いを指摘されるなんていうのは、アナリストとして最もこっぱずかしい話である。まぁ別にS&Pの肩持つわけじゃないけれどさ、それにしたって、政府関係者が、2兆ドル間違った、間違った、と喚き続ける姿も、実にガキじみていて見苦しい。

その間違いが2兆ドルだろうが3兆ドルだろうが、議論の最も本質的な部分、すなわち、「米国の財政は悪化している」という【事実】そのものは変えようがないんだからな。

これについて、元大統領候補マケインがやはり今朝のMeet The Pressで、「メッセンジャーを撃っても始まらない。(米国の財政への評価として)S&Pの見方が間違っていると本気で信じてる者がいるとでもいうのか。」とたしなめた。(撃つ相手ならオバマだ、と共和の彼は言いたいわけだが。)

“Don’t shoot the messenger,” Mr. McCain said, adding of the credit-rating firm’s assessment of the U.S. fiscal situation: “Is there anybody who believes that S&P is wrong?”

同番組に出演したグリーンスパンは、この格下げは米国の一番触れてほしくない部分に触れ("hit a nerve")、米国の自尊心を傷つけた("hit the self esteem")と言っていた。その通り。

Alan Greenspan On The Downgrade: "It Hit A Nerve"
(eWallstreeter, 8/7/11)

いわば、「これまでずっとオール5の成績表をもらい続けた子供が、ある日理科で4をもらい、逆上している」― それによく似た図が、この土曜も日曜も、延々とテレビ画面で繰り広げられたのであった。

そこに持ってきて、中国は中国で、米国の傷に塩をすり込むような態度で、「さっさと予算をバランスさせろ」だの「軍事費減らせ」だの、「米国のせいで世界経済はまっさかさま」だのと批判しまくり、あげくに中国の格付け機関まで登場して「米ドルは基軸通貨としては不適切」だのと言い放って、喧嘩売ってるわけである。

China State Paper Says US Failings Threaten Global Recovery
(CNBC, 8/7/11)

Dollar to Be 'Discarded' by World: China Rating Agency
(CNBC, 8/7/11)

China media say U.S. debt woes show military overreach
(Reuters, 8/8/11)

しかし、米国債とエージェンシー債の世界最大保有者である中国が、こういう風に米国に政治的圧力かけてくること自体はサプライズではないとしても、米国に向って軍事費減らせ、って、あんた・・・。お前が言うなでしょーが、やれやれ・・・。

★     ★     ★     ★

こうして世界経済がもろく混乱に陥りそうな時に出されてきた、米国債の格下げ。ガイトナーが「そんなことはあり得ないし、絶対にさせないし、米国はそんなリスクは取れない」と言ってた事態が起きてしまった。

これを受けて、G-7が今夜、急きょ電話会議を開き、金融市場の混乱を招かないように万全の協調体制で臨むという声明を出したりしてたわけであるが、それにしても、なんとなく不穏なのが、欧州フロントの動き。

Zerohedgeが、以下のようなグラフを掲載して、ECBがイタリアとスペインの国債を買ったって、ワークしないよ、と言っている。

Why The ECB's Monetization Is Doomed In One Simple Chart
(Zerohedge、8/7/11)



昨年の5月から、PIIGSの弱小国(ギリシャ、アイルランド、ポルトガル)の国債をECBが買ってきたものの、10年債のイールド平均は倍近くになっている。基本的に、欧州当局は、昨年の年初から続いている欧州のソブリン危機のContagion(伝播)を収束させることができないまま、今日に至っている。

そして、先週出されてきた、こんどはイタリアとスペインの国債買いますよ~、というトリシェの発表。先週はそれを受けてマーケットのセンチメントが一気に悪化、欧州の金融株は暴落した。米銀が欧州銀行との取引を控えてカウンターパーティのリスクを極力落としているようだといったウワサまでNY取引時間中に流れていた。

しかし、ユーロ圏弱小国の信用力をこれまで支えてきてたのはドイツとフランスという、AAAの国たち。裏を返せば、独と仏の信用力が弱まればユーロ圏全体の信用力は崩壊する。

この一年半を振り返れば、独仏による他国への信用補完の形態は、時を追うごとにより明示的な方向に進んでいっていて、ギリシャのみならず伊やスペインまでふくめPIIGS丸抱えで保証という格好でリスクトランスファーが起こったら、当然心配されるのは、独と仏の信用力だ。

ドイツ政府内では、たとえ救済基金を3倍に増やしてもイタリアの救済措置を実行するのは困難という味方が強まっており、€1.8Tにおよぶイタリア国債の保証に動けば、市場は今度はドイツの信用力に疑問符をつけるのではないかという懸念が出てきている、という内容の記事を、独誌Die Spiegelが伝えた、という報道が今朝あった。(筆者は元記事は読んでいない。)

そのような懸念が浮上するのも当たり前である。欧州版Brady Bondというフレーズをいろんなところで耳にするが、Brady Bondが出された当時の米国の鋼鉄のような信用力と、現在の欧州の“グループとしての”信用力を比べた場合、それこそ文字通り「格」が違う話をしてるわけであって、欧州の場合は、独と仏の信用力が揺らいだ瞬間に救済スキーム全体の基盤が崩れるわけだし。

上のZerohedgeのグラフと合わせて、フランスのCDSの過去1年の動きも見てほしい。


ここ1~2週間で145bpsあたりまで急激に上昇している。リーマンショック後の最悪期でも100bpsを越えなかったフランスのCDSが、いま、ソブリン危機勃発する直前頃のギリシャCDSのレベル近くに迫っている。非常にセンシティブなものを感じる。

クライシスが再び起こるとしたら、その引き金になる本命は、政治の混乱で揺れる米国よりも、むしろ欧州フロントなのではなかろうか・・・という気がしてくるのも無理はない。

欧州市場は数時間後に開く。

Friday, August 5, 2011

米国債格下げは最も重要性の「低い」問題

金曜日の夜、S&Pが米国債をトリプルAからAA+(ダブルAプラス)に格下げした。

S&P Downgrades U.S. Debt for First Time
(WSJ, 8/5/11)

S&P Downgrades U.S. Debt Rating — Press Release
(WSJ, 8/5/11)

いろいろな人がいろいろなことを言っているが、WSJのLive Blogに出ていた、ある市場関係者のコメントが、筆者の考えに最も近かったので、書き留めておこうと思う。(赤字は筆者による)

10:46 pm Downgrade Was 'Expected
Adrian K. Miller of Miller Tabak Roberts Securities says:

"After much debate within the management of S&P, they actually downgraded the U.S. rating to AA+, the first time in the history of the ratings. In retrospect, given the anemic budget proposal passed by Congress and the Administration recently we are not surprised by the decision. After all, the budget, as it is currently constructed, does little to address the U.S.'s budget deficit and absolute debt levels.

As we have indicated in previous commentary, should S&P hold to its word of downgrading U.S.'s rating should they not pass a bill that meaningfully address the U.S.'s debt levels, a ratings cut was imminent. As such, Friday night's downgrade should have been expected.

In order to confirm our forecast, following an expected negative knee jerk reaction, over the mid- to long-term, we do not expect this downgrade to materially impact credit markets despite an obvious increase in funding costs tied to the downgrade. Instead, markets have a significant number of other issues, both domestically and internationally, to worry about. The least of which is the downgrade."
(抄訳)「S&Pの決定は歴史的な出来事だとはいえ、サプライズではない。議会が通した法案は米国の債務の状況を好転させる内容ではなかったのだから、S&Pは前々から言っていた意見を通すのは当たり前で、この格下げは予想されていたことだ。最初は大きなリアクションが起こることは予想されるものの、中長期的にみれば、この格下げが、調達コストを上昇させてもクレジット市場に重大なインパクトを及ぼすとは考えていない。むしろ、市場は国内外で実に多くの頭の痛い問題を抱えており、この格下げはそれらの中で最も重要度の低いものだ。」

筆者の今朝のツイートと、呼応する。



そう、マーケットには頭痛の種がまだ沢山転がっている。

悪材料出尽くしという意見もあるらしいが、筆者から言わせてもらうと、そもそものところで、格下げ懸念が米国の株価を押し下げていた主因ではないのに、何故これで「出尽くし」になるのだろうか?

上でMiller氏がいうように、この格下げの話は、マーケットの懸念の中で「最も重要度が低い」話だ。

株式がヘッドラインと為替の動きに反応してボラティリティを上げる間、資金はFlight to Safetyで米国債へと向うだろうし、米国債の代替になる国債が、事実、存在していない。

数日前に、中国の市場関係者が「中国は米国債を大量に保有する以外の選択肢はほとんどない」と述べている記事を見かけたが、まさに、これが債券市場の本音。

格付け会社の一角が米国債の格付けをAAAからAA+に変更しようがどうしようが、米国債は依然として、世界で最も流動性が高く、最もクオリティの高い債券のひとつとして位置することに変わりはないのだ。

この格下げは、経済的な側面よりもむしろ、政治的な側面に作用するのではないかと筆者は思う。債務上限問題でゴリ押しを重ねて民主側から妥協を勝ち取った共和にとっては、これは、さらに追い風。「歴史上始まって以来初めて米国債のトリプルAを失った大統領」というラベルをオバマに貼って、鬼の首を取ったかのように現政権批判と責任追及のネタとして使えるようになるからだ。

Wednesday, August 3, 2011

デフォルト回避と歳出削減の次のお題は「増税」か

昨日8月2日のデッドラインぎりぎりに、上限引き上げ問題はいちおう(暫定的に)一段落。

(AP, 8/2/11)

しかし、法案が可決されて大統領が正式にサインをしたとたんに、NY株市場は激しいセル・オフ。最終決議が出る前に、ワシントンDCのアホ騒ぎは「終わった話」になっていた。そして、格下げされるぞと脅され続けていた米国債には大きく買いが入り上昇。ドルは沈下、ゴールドは上昇。今日も引き続きゴールドは値を上げて、米株は大きく上下に振れ、10年米国債はさらに上昇。大荒れである。

ダウのトランスポーテーション株は昨日4%ダウン。どこかに明るい話は転がってないかと探してみると、The Big PictureのBarry Ritholtzによると、トランスポーテーションが下がると通常は原油価格低下の伏線になるとのこと。もし毎日往復で70マイル走るひとがいるとすると、ガソリンが$1低下すれば$1500の年間セービングになり、これは消費者にとっては税金の削減効果に等しい、と。

ヤタ!(←空しいけれど、いちおう、言ってみる。)

(The Big Picture, 8/3/11)

しかし、である。

今回法案が通り、米国債デフォルトの危機は回避されたものの、連邦政府はお茶会に突き上げられて歳出削減の証文にハンコ押さされたわけだから、【財政緊縮】の効果はいやおうなく迫ってくる。財務省は来週にも$72Bnの長期債を発行予定で、国家のキャッシュフローはなんとかなるとはいえ、経済がドツボに未だはまっている真っ最中に歳出を切り詰めてゆくとなると、誰もが頭に思い浮かべるのは、1937という呪いの数字。(呪いの数字については、拙ブログ『この道は(ルーズベルトが)いつか来た道?』参照。)

市場のセンチメントが悪化するのも、あたりまえ。

連邦政府の歳出削減のあおりは、当然、州自治体政府への補助金カットという形で跳ね返ってくる。失業率9%から下がらないでいるというのに、補助金も削られて、いったいどうなっちゃうんだろう・・・。我が家も今以上に生活切り詰めて、それこそ引き出しの中に10円玉転がってないか探すようになってしまうのだろうか・・・。

なんとなく気持ちがどよんと暗くなってたところに、ダメ押しの記事を見つけたので、紹介しておく。

(Calculated Risk, 8/3/11)

National Employment Law Project (NELP)が発行した分析レポートによると、失業保険のベネフィットを減少させている州が増えていて、州の失業保険支払い用基金が枯渇してしまった州は連邦政府から借金して失業保険払ってる、というのである。

米国の場合、失業保険の支払いや基金の管理は州にまかされているが、支払い期間は26週(半年)という一種の不文律があって、どの州も過去50年間にわたり、それでやってきた。ところが、州によってはいよいよ無い袖は触れなくなって、州独自の判断により2011年から支払い期間がそれより短くなってしまった州が複数ある、という。

Michigan, Missouri, and South Carolina cut their available weeks down to 20; Arkansas and Illinois cut down to 25; and Florida cut to between 12 and 23 weeks, depending on the state’s unemployment rate. Double-digit unemployment in Michigan, South Carolina, and Florida did not discourage lawmakers there from making the cuts.

... Indiana changed the formula it uses to calculate weekly benefit amounts so that the average unemployment check will drop from $283 to $220 a week.

ミシガン、ミズーリ、サウスカロライナは20週に。アーカンソー、イリノイは25週に。フロリダは州失業率に応じて12週から23週の間に。インディアナは計算フォーミュラを変更して週の失業保険の額を$283から$220に下げた。ミシガン、サウスカロライナ、フロリダは失業率が2桁になっており、やらざるを得なかった。

さらに、連邦政府から借金している分については、

Throughout the recession, states with inadequate unemployment insurance trust fund reserves have relied on loans from the federal government to pay state unemployment insurance benefits. This September, states will begin paying interest on these loans, and starting in 2012, the federal government will raise taxes on employers in borrowing states until loans are paid in full, as required by the law.

リセッションの期間、失業保険用に積み立ててあった基金の残高が不十分な州は、保険金支払いを連邦政府からの借り入れに頼ってきた。この9月から、この借り入れに対し利子が発生する。さらに、2012年からは、連邦政府は借り入れ残高がある州の雇用主に対し、満額返済されるまで、課税額を引き上げるということが法律により決まっている。

失業率は、下がるどころか上がっているわけでして。

えーーー・・・と思っていたら、さらに、こんな記事が。

(WSJ, 8/3/11)

(Market Watch, 8/2/11 - hat tip @masayang)

ホワイトハウスは、共和お茶会がゴリ押しし続けた「増税なき歳出削減」だけでは予算をバランスさせることはできない(財政赤字を減らすことはできない)と考えているわけだ。

上のWSJの記事によると、今回両党が合意したプランのベースになっているのは、3.5兆ドルに登る税収増を見込んでいるらしい。

(WSJより引用)There's a lot of chatter among conservative Republicans that they may have just signed on to a stealth $3.5 trillion tax hike. That's because the "baseline" that congressional scorers use assumes that after 2012, all of the Bush tax cuts will expire and the Alternative Minimum Tax will start to hit up to 25 million tax filers. It also assumes the full implementation of several hundred billion dollars of Obamacare taxes that kick in after 2013.

「増税の《ぞ》の字がひとつでも入っていたら、絶対に絶対に合意なんてしませんからーっ!」と叫んで3度に渡り両党会議をすっぽかした共和だったのに、最終合意案のベースになっていた3.5兆ドルの歳入増分については気がつかなかった、とでもいうのだろうか。

WSJの記事には、「合意」はしたものの、その合意案に書かれている税金の部分については、双方がそれぞれ違う「解釈」をしているようだ、とある。

Which is to say that the two parties are offering very different interpretations of what the debt deal says about taxes. Let's hope it doesn't take three months to get this straightened out.

WSJの結びの文章そのままに、この解釈の違いをハッキリさせるために、また何ヶ月もの時間を費やすなんてことにならないでもらいたい。再びあの猿芝居が始まるのかと想像しただけで、すでに食傷気味の筆者なのである。

【ニュースクリップ】8/1/11, 8/2/11

MHJ別館にポストされた英文ニュースまとめ

8月1日分




8月2日分

Sunday, July 31, 2011

米国政府の手持ち現金残高(秒読み開始)

債務上限問題で最終の詰めに入っている米議会。本日東部時間午後1時に暫定案で採決の予定。

政府といえども一般家庭と同じ、入ってくるお金より出てゆくお金のほうが多ければ、手元のキャッシュは減り続ける。

WSJに掲載されてるこのグラフがすごい。黒線は実際の手持ち現金残高、赤の点線は5月2日に財務省が試算したもの、赤の実線はBipartisan Policy Center(両党派ポリシーセンター)が試算したもの。BPCの試算では若干余裕はあるものの、【断崖絶壁状態】であることには変わりなし。


図の下の注意書きに、

Treasury 'extraordinary measures' occur in one lump sum on May 16, and generate $232 billion cash.
(5月16日に財務省による「臨時措置」がとられ$232bnの現金が創出された。)

とあるが、「5月16日の臨時措置2320億ドル」で時間稼ぎしてなかったら、とっくに水面下に没していましたね、という図でもある。

この「臨時措置」であるが、5月2日付けのLAタイムズの記事で、米連邦政府はまず債券の発行額を抑えるために、州自治体向けに発行しているSLGS証券(State and Local Government Series securities、これも法定上限の対象としてカウントされている)の発行を止めると述べている。

Treasury to take 'extraordinary measures' to avoid hitting debt limit, Geithner warns
(LA Times, 5/2/11)

このSLGS証券なるものは、州自治体政府が地方債を発行したプロシードでより高利回り(=高リスク)の証券に投資してアービトラージによる収益を得るインセンティブを抑える目的で1972年に持ち込まれた制度で、もしプロシードが余った場合は、それをロー・イールドのSLGS債に入れておきましょうね、という、いわば「お父さんが、子供がお小遣いを無駄遣いしないように一時的に預かってあげる」みたいな証券である。だが、これも連邦政府にとっては立派な「借り入れ」であって、まずは、これを止めた。

そして、その代わり、上限にカウントされる対象にならない相手を見つけては方々からカネ借りまくって、手持ちの現金が底をついてしまうことになっていた5月16日に$2320億ドルのキャッシュを作り、とりあえず支払いに支障をきたさないよう血と涙が滲むような【遣り繰り】を、米財務省はこの数ヶ月強いられてきたのである。

この「いろんなところからちょっとづつお金集めて遣り繰りする」という話を、MSNBCのJohn Schoenが、

It was the Treasury's equivalent of looking under the couch cushions for stray nickels.
(「ソファのクッションの下に5セント玉が落ちてないか探す」の財務省版)

と形容していて、思わず声をあげて笑ったが、「上限問題にケリついたら、この仕事、辞めたい・・・」とガイトナーが漏らすのも無理はなかろうて。

目下3兆ドルの歳出削減を睨み、議会は話し合いを煮詰めている模様。

米国での状況は、Wall Street JournalのLive Blog: The U.S. Debt Battleが頻繁に更新されて、現在の状況を把握するのに、とてもよい。

Saturday, July 30, 2011

【ニュースクリップ】 7/28/2011, 7/29/2011

MHJ別館にポストされた英文ニュース記事まとめ。

以下の記事のリンクはこちら。(7/28/2011分)

  • 高齢者の依存度国際比較 (Business Insider)
  • トヨタのピックアップトラックTacoma、新モデル (WSJ)


以下の記事のリンクはこちら

  • 米国債が格下げされてもMBSは安泰(by BarCap)(Housing Wire)
  • 財務省はオーソリティ失効前日に、短期米国債$50bnを発行する (CNBC)
  • グルーポン、フォースクエアのパートナーになる (Mashables)
  • 米政府よりアップル社のほうがキャッシュ持ってる (Financial Post)

Thursday, July 28, 2011

【ニュースクリップ】 7/27/2011

昨日MHJ別館にポストされた英文記事のまとめ。

以下の記事のリンクはこちら

  • 米の郵便局4000箇所近く閉鎖の方向 (NYT)
  • 米国債の最悪シナリオ下での金融機関への影響 (Bloomberg)
  • 米国債格下げのトレーディングフロントへの影響 (Business Insider)
  • 米国債のCDSカーブが初めて長短逆転 (WSJ)

Wednesday, July 27, 2011

【ニュースクリップ】 7/26/2011

MHJ別館に昨日ポストした英文ニュースまとめ 

以下のニュースのリンクはこちら

  • 米国の債務はどうやってここまで大きく膨れたか(NYT)
  • IMFは近く資金を増やす必要ありかも、とラガルド(WSJ)
  • ムスリムじゃないけどムスリムっぽい (動画ジョーク)
  • ISDAによると、米国債がデフォルトしたらCDS支払いまで猶予は3日(Reuters)
  • 共和党を激しく非難するNYTの社説(NYT)

Monday, July 25, 2011

前回の続き Togetter『続・証券アナリスト、というお仕事』

前回ポストした、証券アナリストについてのまとめが、思いのほか好評で、さらにいくつか書き留めておきたいポイントもあったので、続編としてまとめた。

前回のだけ読むと、アナリストの将来はお先真っ暗、このままでは消え行く運命にある職業なのではなかろうか・・・と思った方もいるかもしれない。だが、決してそんなことはない。その時その時の市場の状況や規制環境に翻弄されることはあっても、アナリストは証券会社の商品の一部、アナリストが提供するクオリティの高い分析や、中立の立場からの投資判断・オピニオンは市場の効率を高めるために必要な要素、と私は思っています。

アナリストは単なる人気商売でもなければ、資格商売でもない。小手先の分析ノウハウを身に着けたり、本人の営業努力で社内外に顔を売ったからとて、どうなるものでもない。

「あのアナリストのオピニオンならば傾聴するに値する」――市場関係者からそう評価され信頼されるようになって、ようやく存在価値が認められる、そういう仕事です。

これからプロのアナリストを目指すワカモノの皆様には、自分の発信するオピニオンに自信を持ち、より高みに向って日々精進するプライドの高いアナリストになっていただきたい。


以下のTogetterが見えない場合は、リンクはこちらです。

Saturday, July 23, 2011

Togetter 『証券アナリスト、というお仕事』

某著名美人タレントのお相手が某大手証券会社のアナリストだということで、にわか注目が集まっている(?)「アナリスト」の世界。

Twitterで語った「アナリストというお仕事」をまとめたので、ここに貼り付けておきましょう。
(下に内容が表示されない場合は、リンクはこちら。)

会話の中に出てくるギョーカイ用語は、ご存知ない方のために、下に注意書きとして書いておきます。




<<ギョーカイ用語集>>
  • ベース:基本給(Base Salary)のこと。ウォール街の給与体系については以前ブログで書いたことがありますが、リーマンショック前までは、基本給は低めで、その代わり、その年の利益に従い支払われるボーナスが非常に大きく、ボーナスのほうが基本給より大きい、時には数倍、なんてのは極フツーだったのです。(でも、リーマンショック後にウォール街のボーナスを減らしやがれ!という怒りの世論が沸騰し、その結果何が起きたかというと、ボーナスは確かに減ったがその代わりベースを引き上げるという、アホな結果になりました。)
  • ブティーク・ファーム:ある特殊な業界の投資関連業務を専門に扱う小規模な証券会社のこと。大手の場合は証券の種類や扱う業界の種類など広く網羅する総合証券会社で、それと対極にある。
  • ジュニア、シニア:アナリスト業界と言うのは基本的に「丁稚システム」であり、シニアアナリストの下にジュニアアナリストとしてつきシニアめざして何年か奉公するわけ。入社直後から業界持たせてもらって偉そうに顧客の前で意見述べるなんてことは、許されません。
  • セル、バイ:セルサイド(Sell Side)、バイサイド(Buy Side)の略。セルサイドとは要するに証券会社のことで、証券を「売り込む」側。バイサイドというのは要するにファンドなどの機関投資家のことで、セルサイドに注文だして証券を「買う」側、すなわち証券会社の顧客。
  • IB:Investment Bankingの略。投資銀行業務のこと。IPOなどの「ディール」を手がけるお仕事。ディールが成功すれば、引き受け手数料などの手数料を受け取る。
  • フロー:顧客の注文に従って証券を売買し、売買手数料を受け取るお仕事。
  • プロップ:Proprietary Tradingの略。顧客のためではなく、会社の自己勘定でリスクを取り証券の売買をするお仕事。売買から生じる損益はそのまま会社の業績になる。
  • フロント:セルサイドで、バイサイドの外部顧客と直接やり取りする人たちのグループ。フロントの業務に属するアナリストが客向けに推奨オピニオンを出したり、マスコミに出たりする。(IBやプロップの業務に属するアナリストは、一般の外部顧客にはオピニオンを出さず、所属する部署の目的のためのみに情報提供する。)
  • レーツ、クレジット:セルサイドのフロントは大きく分けて株式部と債券部に分かれるが、レーツもクレジットも共に債券部の構成要素。レーツ(Rates)とは金利商品、主として国債を扱うグループで、クレジット(Credit)とは企業債や仕組み債およびそれらのデリバティブスを扱う。
  • MD: Managing Directorの略。外資証券会社の役職ヒエラルキーにおいては、MDはある意味「すごろくの上がり」に相当し、MDのタイトルもらうと年間の報酬もガクンと高くなるのだ(笑)。
  • HF: Hedge Fund(ヘッジファンド)の略。機関投資家の種類のひとつ。トレード頻度も額も高く、ゆえに落とされる手数料も多いため、セルサイドの上客。

Tuesday, July 19, 2011

【メモ】米銀は米国債のデフォルトの準備をしている??

今日流れてきたツイートで、目を引かれたのは、これ


米銀は米国債がデフォルトする可能性を考えて「準備している」というバンカメのCFOの発言。

ギョ!と思い、この裏づけを検索すると、CNBCのサイトにも同じブリーフが流れていた。確かに、そう言ったらしい。メモしておこう。

米国債の上限引き上げ問題は、まだ完全に決着は出ておらず、上限を引き上げたいオバマ政権との取引条件として共和は「増税絶対反対」の立場を譲らず、膠着状態が続いている。

8月2日が決着のデッドラインとされているが、実質的には、手続きやら何やらもあるため、7月22日までに議会で合意を得ないとヤバイと言われている。

この問題については、本ブログで『合衆国が取れないリスク』という記事を書いたが、その記事の日付が4月18日。あれから実に3ヶ月、内容的にはほとんど進展がなかった、ということにも驚く。日頃温厚なオバマも、先週はキレかけてましたが、そりゃーいいかげん、キレるよね。

格付け機関は(例によって)状況が悪くなればなるほどハシャぐ、といういつもの癖で、ムーディーズもS&Pも、米国債を格下げ方向でウォッチにかけた。しかも、彼らは「上限引き揚げても、格下げにならないという保証はありませんので、そのおつもりで。」と言ってみたり、「法定上限なんていうモノがあること自体がリスクだ、そんなもの、やめてしまえ。」と言ってみたり、底意地の悪さ全開、である。

米国債のみならず、ファニフレのエージェンシー債も相当抱えている米銀セクターとしては、格下げになると、それらの証券が実際にデフォルトは起こさなくとも、これらの保有証券のリスクが高まると判断されるために、自己資本にプレッシャーがかかってくる。

それでなくても、住宅セクターへのエクスポージャでこの先もまだ損失が発生しそうで、自己資本にのしかかるプレッシャーから復配もままならないとささやかれているバンカメからしてみたら、この上さらに米国債とエージェンシー債から「さらなる重し」が発生することになると、まさに泣きっ面にハチ。

上のCNBCの記事で、バンカメのCFOが「デフォルトが起こる可能性とそれが引き起こすエフェクトの研究に余念が無い」と言うのもうなづけますな。

Tuesday, June 21, 2011

デフォるか、デフォらないか(それが問題だ)

6月2日に、本ブログで『ギリシャ、Caa1に格下げで「HALL OF SHAME」入りを果たす』と言う記事を書いたのだが、あの時、ちまたでは、ギリシャ救済策は6月4日か5日には決まっているはずだった。

今日は6月21日。ワケわからんうちに、すでに3週間近くが経ち、ギリシャ問題はその後発展したのかしないのか、それすら、もはやわからないというメチャクチャな状態になっている。

いまこれを書いているこの瞬間にも、ギリシャ首相が信任されるかどうかで秒読み態勢に入っているとかメディアは騒いでいるが、ハッキリ言わせてもらうと、「だからどうした」。

ギリシャ問題を「先延ばし」するための案にユーロ圏関係者が同意するのを「先延ばし」しているうちに、気がつくとあら一年経ちましたね、そういう話である。そして、その間にもCDSは天井ぶち抜けて下がる気配もなく、前回の記事に書いたようにデフォルトの定義に抵触するかどうか喚いてたかと思うと、ドイツは民間資金の関与が必要だのなんだのとこれまたワケわからん話を持ち出してきて、一方のイギリスは(ユーロ圏ではないものの自国の銀行システムがドップリ間接的にエクスポージャしてるくせに)「救済なんて考えられない」とか言い出して、まだまだ、ぐっちゃぐちゃ。

いずれにせよ、「デフォルトだけは何がなんでも回避するのじゃ!」という【執念】みたいなものだけは、強烈に感じ取れるのであった。

そこにきて、英エコノミスト誌に興味深いグラフがあったので、紹介したい。

(Economist, 6/20/11)


同記事を要約すると、こんな内容。

セオリーでは、ソブリン債のデフォルトが引き起こす経済ダメージが極めて大きいという懸念があるが、本当にそうなのか。過去の例をみると、デフォルト起こした国はしばらくの間資金市場からの締め出しを食らうことは確かだが、デフォルト後の経済成長へのペナルティのほうは短期間で収束する。アルゼンチンのケースでは、2001年12月のデフォルト後、GDPがマイナス10.9%に落ち込んだが、その翌年には跳ね返って経済成長が始まった。ウルグアイ、ロシア、インドネシアのケースでも、同様の状況がみてとれた。ただし、これらの数字を解釈する上で、デフォルトしたから経済成長に至ったと考えるのは注意を要すると経済学者たちは言う。というのも、国債のデフォルトというのは大概その国の経済サイクルで谷にいるときに発生するので、デフォルトに至るまでの数年間はとりわけ成長率は劣悪な状態にいることが多い、それでバウンスしたように見える。また、国によってはデフォルト後さらに経済状況が悪化した国々(グレナダ、カメルーン、ベリーズ、ドミニカン共和国など)も実際あるので、ウルグアイの例があるからといって必ずしも安心はできない。


デフォルトさせれば経済よくなるとは限らない、ということである。

さてさて、ギリシャはどうなるであろうか・・・?

ギリシャの場合、問題はギリシャ一国にあるのじゃなくて、その周辺に債権者としてくっついている他国とそこの銀行システムにどういう悪影響が及ぶのか、それが皆目わからないし、誰もそんなリスクはとりたくなくて、なかなか解決をみられないでいる。

少し前にツイッターでも述べたのだが、もしこれがギリシャ一国の問題で(=ここにユーロ圏という関わりさえなければ)、問題の大部分をギリシャ国内にとどめておくことができるのであれば去年のうちにとっくにデフォっていただろう、と思うのである。何故ここまで、いつまでもウジウジウダウダグダグダやってるかというと、ギリシャという国がどうなるか、じゃなくて、関係者は全員「自分の国がどうなっちゃうか」が一等心配だからである。アテネの路上でデモして騒いでいる公務員の老後のことなんぞ、最初から、誰も知ったこっちゃない。

デフォらせることに難色を示すのは、デフォルトのケースに前例がないからではなくて、ユーロ圏のようなドデカイ経済圏全員を巻き込むデフォルトのケースとして、前例がないのである。

ロシアのケースはルーブル建てのドメスティックの国債をデフォらせて、ロシア国内銀行の大規模崩壊を防ぐ目的でリスケした。ロシア危機の当時、海外も当然悪影響は受けた事実はあるわけだが、今回はユーロ建てでギリシャ国外で広く持たれており、他国の銀行システムも一緒に巻き込んじゃうということが、問題を深くし大きくしている。

6月2日のエントリーでも書いたとおり、市場はすでに、デフォルト前提で動いている。格付け機関と関係者との「デフォルトの定義」をめぐる表面的な議論も、CDSプレミアムの継続的な上昇をみれば、基本的には無視されている。ただ、ここで、リスケジュールを強行させたとして、ギリシャ一国のリファイナンスについては「ガス抜き」が起こるだろうが、そこから派生する副作用については、誰にも予測はできていない。

【記事】Banking's Moment of Truth

NYTのコラムニスト、Jon Noceraのコラム。

記事の出だしが、こう。

Capital matters. Let me put that another way. The current fight over additional capital requirements for the banking industry, eye-glazing though it is, also happens to be the most important reform moment since the financial crisis broke out three years ago. More important than the wrangling over Dodd-Frank. More important than the ongoing effort to regulate derivatives. More important even than the jousting over the new Consumer Financial Protection Bureau.

Capital matters. 

まさしく。ベーシックにして核心を突く一文。

長年銀行セクターのアナリストをした自分は、この出だしのパラグラフに同意せざるを得ないな。銀行という業態の将来も、事業の行方も、四半期ごとの業績も、すべてはキャピタルとそれをめぐる規制に収斂する。

(NY Times, 6/21/11)

『Basel III』と銘打って、新たな自己資本規制の枠組みがバーゼルから出されているが、そこでは大枠として、今後、銀行が求められる自己資本の額は7%、大手銀行には上限3%として追加キャピタルが要求されるというベース。ここにさらに、各国の事情を考慮し、各国の銀行規制当局がこの枠とは別個に自己資本必要額を決めることもあり。

欧州の銀行群はかつて、表面上のキャピタル・レシオでは米銀よりもはるかに高いレシオを誇っていたものだが、それは現行のバーゼルのルールが随所で「歪んでいる」のが理由であって、欧州の銀行の実質的なキャピタルクッションが厚いからではない。Basel IIIの新たな枠組みについて、欧州の銀行は米銀以上に自己資本を多くつまされることに対して拒否反応を示しているようだ。それについて、Noceraは、米銀に他国よりも厳しい自己資本規制をかけることは米銀の競争力を傷つけるという意見があるが、そんなものは取るに足らない議論だと切り捨てる。

Indeed, every argument put forth by the big banks and their Congressional spokesmen against higher capital requirements have been demolished by Admati as well as Simon Johnson, the banking expert, whose devastating rebuttal can be found in The New York Times’s Economix blog. But the idea that they will make U.S. banks less competitive with European banks deserves particular scorn.

European banks, to be sure, have fought fiercely against higher capital requirements. It’s not really because they hope to get a leg up on the rest of the world, though. It is because these banks are in far worse shape than the banks in other parts of the world; they can’t afford higher capital requirements.

「欧州の銀行たちが厳格な自己資本規制に反対の意向を示すのは、競争力云々の話ではなくて、欧州の銀行の自己資本が世界の他地域よりもずっと酷い状態にあって、実際問題としてそんな金銭的な余裕がないから。」

たしかに、ギリシャ問題がここまで長引くのも、ギリシャのデフォルトは、欧州銀行システムの問題に直結してしまうから。

しかし、だからこそ、自己資本はできるだけ多く持たせろというストレートな意見は、筆者は賛成だな。リスクウェートの算出を小難しいモデル使ってあれこれいじくってみたりしたのが、まさにBasel 2だったわけ。それがクレジットバブル破裂とともに、いかに欺瞞に満ちた規制だったかがバレたのみならず、あれだけグチャグチャ押し問答して多くのリソースを無駄にした上、みごとなばかりにコケたのだから、いまさらキャピタルの「最低」必要額を探るために利用されたBasel 2の二の舞になるよりも、もっとシンプルにキャピタルは分厚くしろ、というイニシャチブを押し通せと筆者も思う。

大きすぎて潰せない(Too Big To Fail)は過去も存在したし、これからも存在する。それが必然的にモラルハザードを誘発して、過度のリスクテイクに繋がってきたし、今後もやっぱり同じメンタリティは続く。小さく分解しろという考えもあるが、それは一般預金者も含めたユーザー側が支払うトランスアクションコストを高くする。大銀行でも潰してしまえという意見には、金融市場のフローの面から最初からリアリティはない。ならば、オペレーションがうまくいっている期間に大規模銀行に課されるキャピタルサーチャージは、将来の救済費用への前倒し払い的意味からも、分厚くしなければダメと思う。

Sunday, June 5, 2011

【備忘録】東電2012年3月期決算予想

東京新聞の5日付け朝刊に、TEPCOの2012年3月決算を試算した内部資料に関する記事。

東電 賠償除き赤字5700億円 12年3月期試算

東京新聞の記事って、過去記事を読もうとすると消えてたりするので、後日のために【備忘録】として、全文をここに張っておこう。

【経済】
東電 賠償除き赤字5700億円 12年3月期試算

2011年6月5日 朝刊

東京電力が予想を非公開としている二〇一二年三月期の単体業績を試算した内部資料が四日、明らかになった。福島第一原発の停止や火力発電などへの切り替えに伴って燃料費が八千三百億円増加。今後見込まれる巨額の賠償金を計上していないが、純損失は約五千七百億円に上り、前期の一兆二千五百八十五億円に続く大規模な赤字となる。

社債発行による資金調達が困難になるため、ことし三月末に約二兆一千億円あった現預金は急速に流出し、一二年三月末に一千億円を割り込む計算で、手元資金がほぼ枯渇状態となる。

数兆円規模に達するとされる賠償金の支払いのためには、銀行団の一段の融資や政府支援が不可欠な財務状況に陥る。

財務の健全性を示す指標となる純資産は、ことし三月末の一兆二千六百四十八億円から約半分の六千九百五十億円へと大幅に減少。自己資本比率は過去最低となる5%台に落ち込む見通しだ。

試算は、今後支払うことになる賠償金は現時点で算定が困難なため、仮払金の五百億円分を計上するにとどめた

主力金融機関などから四月までに受けた二兆円規模の緊急融資は、燃料費の増大や社債償還などがかさむため、一二年三月末までに底をつく。現預金も六月末時点で一兆六千億円、十二月末に五千二百億円にそれぞれ減少。一二年三月末には約九百五十億円となる見込みだ。

資金を工面するため、六千億円規模の資産売却を進める一方、人件費を五百億円強減らして全体で三千七百五十億円に圧縮する。

記事中の数値のいちいちが非常に現実的に感じられ、東電の財務体質が急速に悪化・崩壊してゆく様子が、上の数字をみるだけで手に取るようにわかりますな。

人件費削減だけでは、燃料コスト上昇分を相殺する足しにもならず。資産売却しても賠償金捻出には程遠い。資金繰りの問題は特に深刻。

今後、東電がらみのスキームを考える上で、同社の財務諸表がどのように変化してゆくかは、極めて重要な話だ。

以前、某著名(or 自称?)経済学者がある時点のバランスシートだけを取り出して「国民負担は1兆円以下に減らせる」と喚いている記事を見かけ、それを読みながら、その超絶無知ぶりになぜかこちらのほうがこっぱずかしくなり、読みながら顔が赤くなったほどであるが、この手のアホ談義は、使えないオッサン同士が新橋のガード下あたりで泥酔の勢いかりてやっててもらうことにするとしよう。

上の東京新聞の記事を読む限り、こういう「専門家によるアホ談義」につきあってる時間の余裕は、どこにもない。このままでは東電という企業がかなり近い将来破綻してしまう現実的なリスクが透けて見える。それを念頭に置き、①電力出力確保と②賠償金捻出という二つの最優先事項を、くれぐれも冷静にインテリジェントに国会で議論して東電救済スキームを作ってもらいたい、と願うばかりだ。

Thursday, June 2, 2011

この道は(ルーズベルトが)いつか来た道?

前回、ギリシャの格付けCaa1という記事を書いてポストしたら、やはりM社が、(政争にケリつけられずウダウダがこれ以上続いたら)米国債の長期格付けを引き下げ方向で見直しにかける可能性があると「警告」したというニュースが出た。(「警告」です、あくまで、「警告」。)

(Reuters, 6/2/11)


米国債発行額上限をめぐって、米議会では相変わらず、民主と共和で対立し合ってて、完全に政治問題化している。共和側はオバマが提案した歳出カットでは納得できない、もっともっと歳出へらさなければ、上限引き上げの方だってウンと言わないぞ、と言い張って、上限リミットを「人質」にしてオバマ民主政権を追い詰めることに躍起になっているわけである。

この問題については、4月18日のMHJ記事『合衆国が取れないリスク』にも書いたので参照されたし。

しかし、昨日(6月1日)の午前に出されてきた雇用統計と製造業統計では、往復ビンタ張られた米経済である。

(ウォール・ストリート・ジャーナル日本版、6/2/11)

(以下WSJ日本版より引用)

米サプライマネジメント協会(ISM)が1日発表した5月の米製造業活動は拡大幅が大幅に縮小。一方、別に発表された同月の民間部門の新規雇用数もほとんど増えず、米国の第2四半期(4-6月)経済に対する懸念が増幅されるのは必至だ。 
(引用終わり)

早朝からこのニュースで冷や水ぶっ掛けられた昨日の市場は、10年債は3%割れ、ダウは280ポイントも下落。今日2日も、明日金曜日の雇用統計を控えていて様子見モード、10年金利は冒頭のニュースで3%を戻していたものの、とてもじゃないが積極的にリスク・オン(Risk On)などというムードは、どこにもなし。

なのに、ワシントンDCの舞台に目を移すと、相変わらず「歳出カット歳出カット」と、ナントカの一つ覚えのように絶叫しているわけである。

いまここでディープな歳出カットをマジで実行したらどうなるのか、米国債発行できずに本当にデフォったらどうなっちゃうのか・・・そんな不安は下院議長のベーナーはじめ共和の側だって少なからず抱えているわけだし、「ここで限度超えてやりすぎたらブーメラン・・・」という自覚と計算も働いている。

なのに、それでもやっちゃう内向き政治パフォーマンス。

要するに、この問題はほとんど純粋に「政局化」してるわけだ。(別名:大統領予備選前のオバマいじめ)

こっちは毎日の食費やガソリン代の遣り繰りで忙しいっつーに、アホか。

ん?そういえば、極東のどこかでも、被災地のみなさんほったらかして、首相降ろしの内輪パフォーマンスを延々と繰り広げていた某国がありましたね。

(下の写真は、政局猿芝居を呆れて眺めている国民の目。場所は変われど、目つきは同じ。)



★   ★   ★   ★

ポール・クルーグマンはじめ、ケインズ派のマクロ経済界の重鎮達は、こういう政界アホ芝居が煮詰まるだけ煮詰まって、本当に引き締めモードに突入してしまうかも・・・と警戒しており、最近マクロ経済のフロントでは、あちこちで「1937」という数字が踊る。

1937、つまり、別名『Roosevelt Recession』と呼ばれる1937年~38年にかけての景気後退のことだが、当時のルーズベルト大統領と中央銀行は、大恐慌から回復したという判断のもとに歳出削減と金融引き締めを行い、その途端にまたまたリセッションに逆戻りしちゃった、という過去の失策を象徴する数字である。

クルーグマンは、経済成長が継続すると期待されだした2010年の初めにも、NYタイムズに『あの1937年の雰囲気』という題のコラムを書き、失業率はまだまだ高い、経済指標がちょっと良くなってきたからといって、ここで軽はずみなことはしないほうがよいと釘を刺した。

(NYTimes, 1/3/10)


そして、昨日もまた、自己のブログに『2011年は1937年?』という短い記事を掲載。

(NYTimes, 6/1/11)


この短いエントリーでクルーグマンはNY連銀のエコノミストGauti Eggertssonの記事を紹介し、1937年と現在とで米国のマクロ経済の状況は非常に似通っていると主張している。皮肉屋のクルーグマンらしく、「ただし、連銀は同じ間違いは犯さないと言うGautiの意見には反対だ、そりゃー、(Gautiは連銀の人間だから)連銀のリサーチは間違えないかもしれないけど、ECBはきっと間違いを犯すだろうし、連銀理事会だって政治的なプレッシャーをいまガンガン受けていて何やるかわからないもん」と辛らつな書き方をしている。

MHJ筆者が目を惹かれたのは、「1937年当時の失業率は2011年の現在よりも高かったが、現在と同じ測り方に引き直せば、10%以下になる」という一文。

ちなみに、NYタイムズの記事によると、大統領選の投票日に失業率が7.2%を超えていた政権で再選を果たした大統領は、ルーズベルト以来、ひとりもいないそうである。

ギリシャ、Caa1に格下げで「HALL OF SHAME」入りを果たす

昨日、Moody's社がギリシャの格付けをCaa1に格下げ。

(Bloomberg, 6/2/11)


それにしても、Hall of Fameならぬ、Hall of Shame(恥の殿堂)とは、すごい記事タイトルであるな(苦笑)。

ギリシャ・ソブリンのCDSプレミアムは1500bpsあたり、いまやベネズエラを300bpも抜いて、絶対数値なら堂々の1位である!格付け的にも、M社の場合は、Caa1より低い格付けを誇る国家はエクアドルのCaa2のみ。(ちなみにエクアドルは1999年にデフォり、2008年にまたデフォったという成績。)

欧州関係者は、ギリシャ債のデフォルトをなんとか回避しようと、「期限延長だけするので、リスケ(Reschedule)じゃないもん。リプロファイル(Reprofiling)と呼んでネ!」とかいうガキ騙しのような案で走ろうとしていたが、やはり格付け会社から「リプロファイルかなんか知らんが、どういう名称つけようが、デフォはデフォ!」と冷たく突き放され、ガックリ膝をついた。

(Market Watch, 5/20/11)


さらに、「トロイカ体制」敷いてるはずの欧州関係者の内部でも、どうやってできるだけ市場にショックを与えないような形でこの国の債務再編を果たそうかについて意見は分裂してたりして、ECBは「リプロファイルかなんか知らんが、それやったら、中央銀行としては、担保としてのギリシャ債はもう受け入れることできませんから!」と冷たく突き放すようなことを言い、それにもガックリと膝をついた。

(Daily Markets, 5/19/11)


このままでは、近々償還迫ってる分のロールオーバーできねーよ(その結果、古典的なデフォへと突入)という危機感ばかりが湧いてくるわけで、先日のBloombergは、なんとか資金を引き寄せようと、新たに発行する分には【飴】を用意している、と伝えていた。その【飴】だが、記事によると、現在発行されてるギリシャ国債よりも優先順位が高く、クーポンも高いというような話らしい。

(Bloomberg, 6/1/11)


ということは、なんですか、既存のギリシャ国債は新発国債よりも「劣後」するわけですか?ギリシャ債のCDSのクオートは今後はシニアと劣後でダブルクオート?Subordinated Government Bond とでも呼ぶのですかね?(笑) それに優先するといったって、エーゲ海の島でもなんでも売れる資産は売っていこうか、とか言ってる国で、数年後の資産の清算価値はどうなっておるんでしょうか・・・。

とか、疑問は次々湧いてくるわけですが、まぁいずれにせよ、あと一歩後ずさりしたら崖から堕ちる、ぐらいの瀬戸際に立ってるわけでありまして、ここでB1からCaa1に落とされたといったって、げげーー!と驚くほどでもないよな。

昨日出されたムーディーズ社のプレスリリースには、こんなことが書いてある。(抄訳はMHJ筆者)

Greece’s Caa1 rating incorporates Moody’s assumption that current negotiations between the Greek government and the Troika will result in further official support for the Greek government and (以下略)

ギリシャのCaa1格付けには、ギリシャ政府とトロイカ(注:IMF+ECB+EU)との交渉で、ギリシャ政府への更なる正式支援が施されるだろうという前提が織り込まれている。

「支援 by トロイカ」を続けてもらっても、それでも果てしなくデフォに近い状態になりそうなんで、Caa1とな。通常、「B」の文字を離れて「C」の文字が格付けについてくると、その債券はデフォルのは時間の問題。ここまできたら、デフォるかデフォらないかよりも、実際にデフォったら、その後に元本をどれぐらい取り返せるか(リカバリー)というのを債券投資家は考え出す。

M社によると、彼らの格付けシンボルと、期待されるリカバリーの度合いは以下のような関係だそうである。


つまり、Caa1の今はデフォっても90~95%ぐらいは取り戻せるかもよ、といった見解のままM社は様子見してますよ、ということである。見通しはネガティブなので、もしかすると、Caa1からもっと下がる可能性もありますよ、と言っている。

トロイカは見捨てない?でもデフォに果てしなく近い??サポートの内容がはっきりしたら、もっと格下げくらうかもしれない??

禅問答を聞いているような感覚に陥るが、そこで重要になってくるのが、FTAlphavilleで紹介されてた、M社のリリースから引用された次の一文だ。(抄訳、太字はMHJ筆者)

Our recent study of sovereign defaults shows that post-default recoveries for investors have averaged just over 50%, based on the 30-day post-default price or pre-distressed exchange trading price. There is a wide range around this average, with recoveries ranging from 18% to 95%, and no rated precedent for a developed-world sovereign default in modern times. However, a sizeable discount would be needed to have a meaningful effect on Greece’s debt trajectory, and our expectation is that any restructuring would involve a loss of at least the historical average for private sector lenders.

ムーディーズ社による最近の調査では、デフォルト後30日のプライスかディストレス交換前のトレーディングのプライスをベースにすると、デフォルト後のリカバリーの平均は50%をやや上回る程度。この平均値の周囲には18%から95%までという広範囲で数値が散らばっており、さらに近年には、格付けされた先進国のソブリンデフォルトの前例が存在しない。しかしながら、ギリシャの債務のトラジェクトリーに意味ある影響を与えるには、かなりのディスカウントが必要であり、この先いかなる再編を行うにしろ民間セクターの貸し手にとっては少なくとも過去平均程度の損失が発生するであろうと考えている。

つまり、どうがんばっても、最終的にはギリシャの債権者には、現在のCaa1という記号が示唆する程度(=90~95%は回復する)よりははるかにシビアな損失出そうだから覚悟したほうがいいよ、損失の程度によってはもっと格下げ来るよ、とM社は考えてるらしいんである。

今週中にもトロイカ軍団の最終支援案は固まると見られているが、仮に目先のデフォルトが回避できたにしても、ギリシャ国のマクロ経済や財政状況から判断するに、長期的には投資適格と呼べる信用力には戻りそうもないよね、ということだ。

そりゃーそうであろうな。現在のドロドロな状況が一朝一夕で生まれたわけでもなし、元に戻るのだって、一朝一夕じゃ戻りませんて。

それに、んなこと、いまさら格付け機関からわざわざ言われなくても、みんな、そうじゃないかなーと考えてるから、CDSのスプレッドが1500とかになっちゃうわけでありまして。

Monday, May 16, 2011

キャッシュポジション:「サル芸」から「意図的なレバレッジ」へ

米企業のバランスシートにキャッシュ積み上がってるぞ、という話は過去に何度か書き、MHJでは、ほとんどシリーズ物になっております(笑)。

2010年9月29日 『マクロ低迷下でミクロ企業体にはバイバックの好機到来
2010年10月1日 『米国の事業会社はCash Hoarders
2010年12月19日 『サルでもできる芸当、その後

株式買戻し(Share Buyback)なんぞ、積み上がったキャッシュの使い道にクリエイティビティ発揮できない経営陣がやる常套手段、すなわち、「サルでもできる芸当」だ、ということでありますが、その「サル芸」がその後どうなったか。アップデートは、こちらのグラフをどうぞ。

Source: Clusterstock


2011年の第一四半期は、期中の買い戻し額が$100bnを超え(グラフがスティープになっていますね)、今四半期に入っても買い戻しのペースは落ちておらず、ここ数週間で再びバイバックが活発化。

ニュースをいくつか拾ってみると、大物企業のバイバック・プラン、目白押しである。

Disney quietly approves US$16-billion share buyback
(5/16/11, Financial Post)

Tyson Foods' Board Reactivates 22.5M-Share Buyback Program
(5/12/11, Wall Street Journal)

Kohl’s Strong Cash Flow Allows Accelerated Share Buybacks and Dividends
(5/12/11, Morningstar)

Disneyのように積極的な買戻しを発表しても全然株価に反映されずに無視される寂しいケースもあるわけだが、米企業は実際、事業キャッシュフローは潤沢で、Kohlのようにバイバックと並行で負債も減らしている会社はあるわけである。

このペースでバイバックすると、フロートしている株式数は年間5%以上減少するようなんだが、企業株アナリストはこの要因をモデルに反映していないのでEPSの見積もりは15%は低すぎだ、と言ってるマネージャーもいる。

しかし、上のグラフで、もうひとつ気になることは、4月の終盤に米企業債の新規発行がグーンと伸びた時と、シェアバイバックのペースが一気に早まった時が、タイミングを同じくしてる、という点。

企業債のクレジットスプレッドのタイトニング・トレンドは続いていて、ジャンク債市場は引き続きブイブイ。Kohlのように負債を減らすところもあるが、むしろ安いクレジットを利用して借り入れを増やし、それを元手に株式買戻しをやってる企業もいるらしい雰囲気である。

企業のレバレッジは上がっている、あるいは、ここから更に上がる可能性あり、ということである。

(小声で)その割には株価は今四半期からイマイチ覇気がないんだがな・・・

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キャッシュの使い道といえば、先日、マイクロソフト(MSFT)がスカイプをキャッシュ・ディールで買収して話題となった。

Microsoft Dials Up Change:CEO Ballmer Defends Hefty $8.5 Billion Price Tag for Internet-Phone Firm Skype
(5/11/11, Wall Street Journal)

こちらは$8.5bilという「お値段」が市場で嫌気されて、あまり好感されないディールになってしまったけど、マイクロソフトのキャッシュポジションについて、$8.5bilキャッシュで払った後もMSFTにはうなるほどキャッシュあるよ、というモルガンスタンレーのコメントがあったので、ついでに紹介しておく。

Morgan Stanley Comments On Microsoft Cash Growth
(5/16/11, Benzinga)

モルスタのアナリストによると、MSFTのキャッシュ残は09Q4から10Q3の期間中$20.7Bnから$50.2Bnに増加した。スカイプ買収に使った$8.5Bnを差し引いても、同社のキャッシュポジションは依然高水準で、業務キャッシュフローもきわめて潤沢。パッとしないMSFT社の株価は、長期的な戦略モデルが見えないのと、投資家はもっとアグレッシブなキャピタルリターンを欲している様子。

彼らの意見としては、MSFT社が取るべき方策のうち、低リスクの選択肢としてはレバレッジを上げ、配当率を4%に上げ、年間$60億ドル規模のバイバックにコミットすること。M&Aもむろん選択肢にはあげられるが、それはハイリスクだろうというのだ。

マイクロソフト社の長期財務戦略がどうなるかはともかく、ウォール街のメンタリティは確実にレバレッジ嗜好に向っている。

筆者としては、企業債新発が単にキャッシュ・リッチな状態で盛んに「サル芸」的にバイバックしていたフェーズから、意図的に高レバレッジへ移行している過渡期にいるようにも感じるのだ。

Thursday, May 12, 2011

米国の輸出、過去最高

長期でみると合衆国の米国の輸出額は過去最高、文字通り「V字回復」の格好してるぞ、というグラフ。(期間1992年~2011年3月)

Source:Clusterstock

ついでに、ここ2年ほどだけ見ると、輸出入のギャップは赤字幅拡大してるぞ、というグラフ。(期間は2009年3月~2011年3月)


もうひとつ、ついでに、ドル・インデックスの推移。(期間5年)

Source: Finviz



さらに、たった今(5月12日、8:00AM)ロイター速報で入ってきた、「米経済が必要とされるレベルまで回復するには、あと数年(several years)はかかる」というオバマの言。

Tuesday, April 26, 2011

チェルノブイリ事故25周年

25年前の今日4月26日、ソビエトのチェルノブイリで史上最悪といわれる原発事故が発生した。

福島原発の問題解決がほとんど進展していない中での、25周年記念。

今日Nature誌のサイトに25周年を記す記事があり、その中で、福島原発の事故は、a bitter irony (苦々しい皮肉)と表現された。

(Nature, 4/26/11)

皮肉というのは、福島原発の事故勃発で、長いこと人々の記憶から薄れてきていたチェルノブイリ事故に再びフォーカスがあたることになり、ほうぼうからチェルノブイリ事故の研究用にと多額の寄付が寄せられることになりそうで、福島での事故の「最大の恩恵」を受けるのが、よりにもよってチェルノブイリ、という意味だ。

この記事に『チェルノブイリの遺産』という別記事へのリンクが紹介されていたので、合わせて読んだ。

(Nature, March 2011 issue)

記事の内容については、また時間のあるときにでも書くとして、今日は、そこにあった年表だけ紹介したい。

福島原発が撒き散らした放射能は、チェルノブイリのそれよりもずっと少ない、ということはこの記事でも述べられているし、日本のケースはまだ起こったばかりで、いま、なにがどうしたと素人の私がわめいたところで、どうなるものでもない。

ただ、この年表をみながら思ったことは、事故から25年も経ったいまなお、原発施設近くの町はゴーストタウンのまま、チェルノブイリ事故のクリーンアップが「完了」するのは2065年予定という、原発事故の【傷跡の深さ】のほうだ。

これが、その年表。(横に拙訳を入れた)

まずは、事故が起こった年、1986年。


その後の流れ・・・


2065年まで、あと、50年以上―。

福島の事故の後始末にも、非常に長い年月がかかることは必至。日本国はこうした事故を2度と起こさないためにも、また、チェルノブイリで長いこと忘れられていたという放射能の人体に与える健康被害の研究や、その他高度な専門的研究も含め、今後、膨大なおカネを投入し続けてゆく必要があるのだ、ということを改めて思い知らされた。

(大変読み応えある記事で、筆者も、もう一度じっくり読むつもり。)

そしてさらに、チェルノブイリ事故が残した、別の大きなレガシー(遺産)―。

それは、この25年間で新しい原子炉の建設が世界中で目立って減った、という事実だ。

下のグラフは、横軸が原子炉の年齢、縦軸が原子炉の数、である。

これをみると、事故が起こった25年前付近をピークとして、より若いリアクターの数が目に見えて減っている。


原子力発電のクリーンエネルギーという側面を強調した「核ルネサンス」などという言葉がもてはやされ、さらには、経済成長めざましい新興国の電力需要を支えるために思わず目を見張るような数の新原子炉建設計画も出され、それらに興奮した証券市場は、思惑先行で沸きあがり・・・と、福島原発事故前までは、ここ数年、かなり調子いい話ばかり実際やっていたんである。

だが、チェルノブイリ直後からこれだけのインパクトが実際にあり、今回の事故が上塗りともなり、新原発建設が数年前の金融屋の思惑通り盛り上がるとは、考えにくいという気もする。

また、これは、老朽化した原子炉ばかりを抱える米国にとっては、政治的にも経済的にもさまざまなインプリケーションのある話である、ということだ。これについても、もう少し自分の頭を整理してみたい。

最後に、ゴーストタウンと化したプリピャチの街の、今の写真を。(Tumblrで以前紹介したもの)



写真はBBCのフォトアルバム『Chernobyl's Lost City』から。(←この写真集、重い写真ばかりです)

Tuesday, April 19, 2011

欧州ソブリン危機悪化中

日本の震災・原発関連のニュース、そして、米国で日々繰り広げられる政治茶番劇にばかり気を取られていたが、その合間にも、欧州ソブリン問題はさらに温度を上げているのであった。

前回のブログで、S&Pの米国債格付けについて述べたが、その肝心の米国債市場も、この日注目していたのは、そっちじゃなくて、欧州問題のほうであった。(S&Pの見通し変更は、マーケット的には大きな意味がない故。)

欧州についても、いろいろ目に付く記事があるので、それについて書きたいことはあるんだが、なにせ眠いので(笑)、17日のソブリン債CDSの拡大具合の表だけでも、ここに貼り付けておく。



ギリシャのCDS、キテますなぁ・・・レベルが1278とかいって、先日1000超えたとかいうニュース聞いたばかりなのに、べらぼう4桁で落ち着いちゃってるし。

こうなると、トレーダー達はもう「デフォる」というのにベットして取引してるようなもんですが、IMFやドイツが「2012年までに、さっさとリストラ体制に入らんかい」と促しているのに、当のギリシャ政府は「債務リストラ?んなもん、やる気は一切ありません。今年中には、通常の市場調達に戻れると思いますし」と、あっち向いてるようである。

(Wall Street Journal, 4/16/11)


悪夢の銀行危機をかいくぐるアイルランドは、同国の大銀行の預金についてる格付けがジャンクに堕ちた。ムーディーズが、アライド・アイリッシュ(Ba2)など5行格下げ。サクッとジャンクとかいいますが、これ、劣後債とかシニア債とかじゃなくて、「預金」ですから。

「先進国の一角の大銀行」が「劣後債でジャンク」はともかく、「預金」のレベルでジャンクになるって、これはやはり、ゲーッと思う話でありまして。


(BBC News, 4/18/11)


そして、もうひとつ、スペインでは期間12ヵ月の国債オークションで、『不吉な』結果に終わった、というニュース。

実行利率が一月前だと2.13%で発行できたものが、今回2.77%まで上昇し、中央銀行の出口政策による上昇幅では説明できませんね、という話。

(Seeking Alpha, 4/18/11)

ウォールストリートジャーナルなどは、「スペインはドミノになるか、ダムになるか」という意地の悪い見出し。

(Wall Street Journal、4/18/11)


欧州がドミノ式に崩れてダム決壊となりませんように・・・

そう祈りながら、今日はこれで寝る。

Monday, April 18, 2011

合衆国が取れないリスク

S&P、米国債の格付け見通しをネガティブに変更。

(Standard & Poors, 4/18/11)

週明けの今日は、このニュースが、何と言っても目立つニュースでありました。

CNBC局では一日中、「アウトルックをダウングレード」、「アウトルックをダウングレード」と叫びまくってて、筆者はそのたびにイライラした。

というのも、見通し(Outlook)というのは変更(Revise)されることはあっても、格下げ(Downgrade)されることはないんである。「格下げ」とか「格上げ」という用語は、格付けとしてつけられている【記号】(AAAとか)が実際に変更になるときに用いる言葉。

だから、格付けアクションの3段階それぞれで使われる動詞の用法は、

1) 見通し(Outlook)が変更になるとき
S&P revised (あるいは changed) the outlook to negative.

2) 格付けの見直し(Review/Watch)に入るとき
S&P placed the AAA rating on negative watch.

3) 格付けが変わる(格下げ、格上げ、あるいはそのまま)とき
S&P downgraded the rating from AAA to AA.

と、こうなるわけである。

筆者の知る限り、主要メディアの多くはいつまでもこの違いが理解できない。今日のCNBCなどはその筆頭だが、まぁ、CNBCの場合は、そもそもが株式しか念頭にないような局なので債券オタクの用語など理解する気すらないのは仕方ないとしても、金融関係の記事では筆者もひごろ信頼を置いているロイターまでもが、いつまで経っても同じ間違いを繰り返すというのに、ジャーナリストの学習能力の限界を感じてしまう筆者である・・・

・・・と、いきなり重箱の隅ツツク的オタクな話題で失礼しました。

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しかし、最上級のAAA格のクレジットの「見通しが悲観的」になっただけで、米国債がすわデフォルトなどという話に発展するわけが、そもそものところであるわけないんであって、マーケット的に見れば、今回のS&Pのアクションの背景に、いまさらびっくりする材料があるとも思えず。

だいたい、S&Pが米国債の格付けにプレッシャーかかってるぞとウダウダ言い出したのは、2008年の9月17日、リーマン崩壊直後のことである。

米国マクロ経済はその前年からリセッションに入っており、金融市場の下支えのために連銀は2007年から流動性供給で上へ下への大活躍中、それでも不安定さを抑えられずにグラグラしてるところにリーマンショックで、米経済はグシャッと潰れた。

その後回復に向っているとはいえ、米失業率は依然として高水準で、財政赤字は膨張の一途、住宅価格はまた下降中・・・と、現在の米経済のファンダメンタルズ言うなら、まさに『なにをいまさら―WHAT’S NEW?』の世界である。

ちょうど一年前ほど前にもS&Pは、米政府がすぐすぐ財政緊縮に取り掛かることなどできるはずないのを承知しながら、財政赤字削減策にマジメに取り組まないと米国債トリプルAは維持できんかもしれんからね~、と確信犯的に脅していたんである。(去年3月12日のFT記事

さらに言えば、1週間ほど前の4月11日、米債券ファンド最大手のPIMCOが米国債ショートという報道があった。格付け機関が米政府にコンタクトを取ってるらしいみたいな話は、どこからともなく漏れてくるのは常なので、PIMCOのニュースで「何か」が動いてるんだなと直感した市場関係者だって皆無じゃない。(もうトレーディングフロアの傍にいない私ですら、何か来そう・・・と思ったぐらいなんだから。)

だから、いま、S&Pが出てきて、ネガティブだと言ったぐらいで、エッとおどろいてるような市場関係者がいたら、「あなた、いったい、これまで、どこ見てたんですか?(棒読み)」というような話なわけ。

それでもメディアが「(見通し)ダウングレードだ」とほうぼうで騒ぎ立てるもんだから、たかだかアウトルックがネガティブに変更された程度で心理的にゴーンとやられた米株市場は、前場で一時250ポイントも一気に下げ、【心理的】なオーバーリアクション全開。これで銘柄によっては絶好の買い場ともなり、午後には少し落ち着いてインデックスは140ポイントダウンまで戻した。(心理的にゴーンとやられるのは、株相場ではいつものことw。そういうところ、意外とヤワw)

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S&Pが確信犯でウジウジやってた一年前と比べて、何か決定的に変わったことがあるかといえば、去年の11月に中間選挙でティーパーティの力を借りた共和が下院でマジョリティを奪い、オバマと彼をとりまく民主側と共和側の政局での対立がいっそう深まり、米国債近辺の政治上の不協和音がリスク要因として以前に増して認識されはじめたこと、である。

つい先日も、大統領の予算案で民主と共和が歩み寄りを見せることができず、米国政府がシャットダウンに追い込まれるのではないかという騒ぎにまでエスカレートしたことを見れば、共和側のオバマ政権弱体化に向けた執念と締め付けのすさまじさは、傍目にも感じられるところであろう。

そして、今回のこのS&Pの米国債格付け見通し変更であるが、これはまさに、そこの部分(=政局)に影響を与える話であるわけ。


昨日(17日)のNBC報道番組『Meet The Press』にガイトナー財務長官が出演、米国債発行上限について言及した部分のビデオがここにある。
リンクはこちら:http://www.msnbc.msn.com/id/3032608/



このビデオの冒頭で、ガイトナーはこんなことを述べている。

Congress is going to have to raise the debt limit. They understand that. That's absolutely essential to preserve the creditworthiness of the United States of America. You know, we're a country that meets its obligations, and we have to meet our obligations, and they recognize that. 
議会は発行額上限を引き上げるだろう。彼らもそれは承知している。アメリカ合衆国の信用力(creditworthiness)を維持するためには、それが絶対必要不可欠なのです。支払い期限が来たら約定どおり支払う、必ず支払い義務を果たさなければならない、合衆国とはそういう国家である、彼らはそれを理解しています。

「しかし、議員の中には、上限引き上げ問題を政治的な駆け引きの材料に利用しようとしている者もいるのではないか」というキャスターの質問に対し、

...the leadership understand that you can't play around with this, you can't take it too long.  And those people up there who are telling people that you can take this to the brink because it gives them some leverage, they're going to own the responsibility for the risk that creates for the American economy.
国家の中枢部は、上限問題に遊び半分な気持ちで取り組むことはできないし、ダラダラと時間をかけることもできないというのを理解している。自分の立場をより有利に進めるのを目的にこの問題をギリギリまで先延ばししてやろうとふれ回るような末端の政治家がいるなら、それが米国経済にもたらすリスクについては、彼らが全面的に責任を負うことになるでしょう。

ガイトナーはさらに、こう続けた。

...if you allow people to start to doubt whether the United States of America will meet its obligations, that would be catastrophic, and we can't take that risk.
アメリカ合衆国の債務返済能力に人々が少しでも疑いを抱き始めるようになるのを放置すれば、それは破滅的な状態を導くことになるでしょう。私達はそんなリスクは決して取れないのです。

「私達はそんなリスクは取れない」――そう、アメリカ合衆国がトリプルAじゃなくなるなんて、そんなことは有り得ないし、何が何でも阻止してみせる、ガイトナーはそう言ってるわけですな。

この番組に出演したとき、ガイトナーは、S&Pが見通しをネガティブにするつもりであるというのを、既に知っていた。

ロイターによると、ホワイトハウスがS&Pからその旨を聞かされたのは金曜日だったそう。

格付け会社が、格付けされる側(この場合は米政府)とどんな折衝をして、どんなコミュニケーションとって・・・といったことは、そのプロセスを実際に当事者として体験したことがなければ、なかなか理解されずらいが、こうして公に発表される何週間も何ヶ月も前から、当事者の間では、あーでもねーこーでもねーと、延々と問答がウジウジ繰り返されるわけで、今回のアクションだって、米政府にとっては、寝耳に水でもなんでもない。

これは筆者のスペキュレーションだが、政治的足踏み状態がこれ以上長引き、上限引き上げに手間取ることになれば、アウトルック変更程度では済まないかも・・・と、S&Pの方からヤンワリと示唆されたのではあるまいか。ここで引き上げないとウォッチに載っちゃうかも・・・ドキドキ・・・

しかし、ここで上限上げたからとて、それがすなわち上限を青天井にするという意味にはならない。なぜなら、青天井にして現在のペースで米国債を発行し続けたら、むしろ、米国の信用力はさらに悪化し、本当に見直しのプロセスに突入してしまう恐れがあるわけだから。

「クレジットウォッチに載る」(このエントリーの最初にあげた2番目のアクションね)は、見通しネガティブどころじゃすまないインパクトを生みますからね。ウォッチに入ったら、実際にDOWNGRADEになるかもしれないんだから。

上限引き上げをいかに早急にやらんといけないかというと、実はもう、上限の$14.2trillion超えちゃって、$14.3trillionになってるという話が、今日のZerohedgeに出ていた。秒読み状態。

上限いっぱいになってしまい、必要なときにも発行できない状態が長く続くと、財務の柔軟性が失われて、それはそれで米国の信用力にはネガティブになる。

ということで、ハエのようにうるさい格付け機関を黙らせてアウトルック変更程度で留めておくためにはひとまず上限を引き上げるけれど、共和に対しては、それとの「交換条件」として、オバマ現政権は、財政支出カットの額を共和寄りの条件で飲む方向で議会で圧力かけられること覚悟、そういう話に進んでいってるわけである。

共和リーダーのベーナー下院議長の耳にも当然この話は入っているわけで、ベーナーとて、「米国の信用力が下がって米経済を揺るがすリスクが発生したら、その責任は取ってもらう」など言われてすごまれても、すぐメソメソしちゃって、そこまで責任とれるような器じゃないんで(笑)、引き上げについては、最終的にはうなづいてGOサインを出すだろうというシナリオが市場では走ってる。

ここから共和側に政治的な意味でさらに有利な展開に進むかどうかはまだわからないが、とりあえずは、S&Pの今回のアクションが持つ短期的なインプリケーションは、市場には大してなくとも、政治フロントにはある、と読めるのではないでしょうか。

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最後に、格付け機関について。

見通しネガティブになったのに今日のイールドに影響出てないとか、格付け機関は地に堕ちてもはや影響力ない、とかいう意見も散見されるが、そもそものところでデフォ確率にも、マーケット的にも大して意味のない動き(あったとしても既に読まれていた話)なんだから、そういうどうでもいい話に落としどころを見つけようとしないほうが、いいよ。

格付け機関に対する世間の評価がどうであれ、債券市場における格付けの「存在」そのものは、過小評価しないほうがいい。なんだかんだいって、そこに「ある」。

格付け機関の言ってることなど、しょせん権威もなにもない一介の民間会社の意見、そんなものはどうでもよし、というのは、本質的には、事実その通りであります。

けれどね、そうは言っても、もしも、米国債が本当にAAAから堕ちるなんてことになってごらんなさい、そのときは、「フン、しょせん格付け機関だろ・・・」なんて皮肉な笑い浮かべてなんていられない事態に、きっとなるんだから。

その「しょせん格付け機関、などといってられない事態」こそが、上のビデオでガイトナーが言った「米国の返済能力に対し僅かなりとも人々が疑いの目を向ける」事態であり、それは、アメリカ合衆国が取ることのできないリスク、取るつもりもないリスク、なのである。