Tuesday, April 26, 2011

チェルノブイリ事故25周年

25年前の今日4月26日、ソビエトのチェルノブイリで史上最悪といわれる原発事故が発生した。

福島原発の問題解決がほとんど進展していない中での、25周年記念。

今日Nature誌のサイトに25周年を記す記事があり、その中で、福島原発の事故は、a bitter irony (苦々しい皮肉)と表現された。

(Nature, 4/26/11)

皮肉というのは、福島原発の事故勃発で、長いこと人々の記憶から薄れてきていたチェルノブイリ事故に再びフォーカスがあたることになり、ほうぼうからチェルノブイリ事故の研究用にと多額の寄付が寄せられることになりそうで、福島での事故の「最大の恩恵」を受けるのが、よりにもよってチェルノブイリ、という意味だ。

この記事に『チェルノブイリの遺産』という別記事へのリンクが紹介されていたので、合わせて読んだ。

(Nature, March 2011 issue)

記事の内容については、また時間のあるときにでも書くとして、今日は、そこにあった年表だけ紹介したい。

福島原発が撒き散らした放射能は、チェルノブイリのそれよりもずっと少ない、ということはこの記事でも述べられているし、日本のケースはまだ起こったばかりで、いま、なにがどうしたと素人の私がわめいたところで、どうなるものでもない。

ただ、この年表をみながら思ったことは、事故から25年も経ったいまなお、原発施設近くの町はゴーストタウンのまま、チェルノブイリ事故のクリーンアップが「完了」するのは2065年予定という、原発事故の【傷跡の深さ】のほうだ。

これが、その年表。(横に拙訳を入れた)

まずは、事故が起こった年、1986年。


その後の流れ・・・


2065年まで、あと、50年以上―。

福島の事故の後始末にも、非常に長い年月がかかることは必至。日本国はこうした事故を2度と起こさないためにも、また、チェルノブイリで長いこと忘れられていたという放射能の人体に与える健康被害の研究や、その他高度な専門的研究も含め、今後、膨大なおカネを投入し続けてゆく必要があるのだ、ということを改めて思い知らされた。

(大変読み応えある記事で、筆者も、もう一度じっくり読むつもり。)

そしてさらに、チェルノブイリ事故が残した、別の大きなレガシー(遺産)―。

それは、この25年間で新しい原子炉の建設が世界中で目立って減った、という事実だ。

下のグラフは、横軸が原子炉の年齢、縦軸が原子炉の数、である。

これをみると、事故が起こった25年前付近をピークとして、より若いリアクターの数が目に見えて減っている。


原子力発電のクリーンエネルギーという側面を強調した「核ルネサンス」などという言葉がもてはやされ、さらには、経済成長めざましい新興国の電力需要を支えるために思わず目を見張るような数の新原子炉建設計画も出され、それらに興奮した証券市場は、思惑先行で沸きあがり・・・と、福島原発事故前までは、ここ数年、かなり調子いい話ばかり実際やっていたんである。

だが、チェルノブイリ直後からこれだけのインパクトが実際にあり、今回の事故が上塗りともなり、新原発建設が数年前の金融屋の思惑通り盛り上がるとは、考えにくいという気もする。

また、これは、老朽化した原子炉ばかりを抱える米国にとっては、政治的にも経済的にもさまざまなインプリケーションのある話である、ということだ。これについても、もう少し自分の頭を整理してみたい。

最後に、ゴーストタウンと化したプリピャチの街の、今の写真を。(Tumblrで以前紹介したもの)



写真はBBCのフォトアルバム『Chernobyl's Lost City』から。(←この写真集、重い写真ばかりです)

Tuesday, April 19, 2011

欧州ソブリン危機悪化中

日本の震災・原発関連のニュース、そして、米国で日々繰り広げられる政治茶番劇にばかり気を取られていたが、その合間にも、欧州ソブリン問題はさらに温度を上げているのであった。

前回のブログで、S&Pの米国債格付けについて述べたが、その肝心の米国債市場も、この日注目していたのは、そっちじゃなくて、欧州問題のほうであった。(S&Pの見通し変更は、マーケット的には大きな意味がない故。)

欧州についても、いろいろ目に付く記事があるので、それについて書きたいことはあるんだが、なにせ眠いので(笑)、17日のソブリン債CDSの拡大具合の表だけでも、ここに貼り付けておく。



ギリシャのCDS、キテますなぁ・・・レベルが1278とかいって、先日1000超えたとかいうニュース聞いたばかりなのに、べらぼう4桁で落ち着いちゃってるし。

こうなると、トレーダー達はもう「デフォる」というのにベットして取引してるようなもんですが、IMFやドイツが「2012年までに、さっさとリストラ体制に入らんかい」と促しているのに、当のギリシャ政府は「債務リストラ?んなもん、やる気は一切ありません。今年中には、通常の市場調達に戻れると思いますし」と、あっち向いてるようである。

(Wall Street Journal, 4/16/11)


悪夢の銀行危機をかいくぐるアイルランドは、同国の大銀行の預金についてる格付けがジャンクに堕ちた。ムーディーズが、アライド・アイリッシュ(Ba2)など5行格下げ。サクッとジャンクとかいいますが、これ、劣後債とかシニア債とかじゃなくて、「預金」ですから。

「先進国の一角の大銀行」が「劣後債でジャンク」はともかく、「預金」のレベルでジャンクになるって、これはやはり、ゲーッと思う話でありまして。


(BBC News, 4/18/11)


そして、もうひとつ、スペインでは期間12ヵ月の国債オークションで、『不吉な』結果に終わった、というニュース。

実行利率が一月前だと2.13%で発行できたものが、今回2.77%まで上昇し、中央銀行の出口政策による上昇幅では説明できませんね、という話。

(Seeking Alpha, 4/18/11)

ウォールストリートジャーナルなどは、「スペインはドミノになるか、ダムになるか」という意地の悪い見出し。

(Wall Street Journal、4/18/11)


欧州がドミノ式に崩れてダム決壊となりませんように・・・

そう祈りながら、今日はこれで寝る。

Monday, April 18, 2011

合衆国が取れないリスク

S&P、米国債の格付け見通しをネガティブに変更。

(Standard & Poors, 4/18/11)

週明けの今日は、このニュースが、何と言っても目立つニュースでありました。

CNBC局では一日中、「アウトルックをダウングレード」、「アウトルックをダウングレード」と叫びまくってて、筆者はそのたびにイライラした。

というのも、見通し(Outlook)というのは変更(Revise)されることはあっても、格下げ(Downgrade)されることはないんである。「格下げ」とか「格上げ」という用語は、格付けとしてつけられている【記号】(AAAとか)が実際に変更になるときに用いる言葉。

だから、格付けアクションの3段階それぞれで使われる動詞の用法は、

1) 見通し(Outlook)が変更になるとき
S&P revised (あるいは changed) the outlook to negative.

2) 格付けの見直し(Review/Watch)に入るとき
S&P placed the AAA rating on negative watch.

3) 格付けが変わる(格下げ、格上げ、あるいはそのまま)とき
S&P downgraded the rating from AAA to AA.

と、こうなるわけである。

筆者の知る限り、主要メディアの多くはいつまでもこの違いが理解できない。今日のCNBCなどはその筆頭だが、まぁ、CNBCの場合は、そもそもが株式しか念頭にないような局なので債券オタクの用語など理解する気すらないのは仕方ないとしても、金融関係の記事では筆者もひごろ信頼を置いているロイターまでもが、いつまで経っても同じ間違いを繰り返すというのに、ジャーナリストの学習能力の限界を感じてしまう筆者である・・・

・・・と、いきなり重箱の隅ツツク的オタクな話題で失礼しました。

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しかし、最上級のAAA格のクレジットの「見通しが悲観的」になっただけで、米国債がすわデフォルトなどという話に発展するわけが、そもそものところであるわけないんであって、マーケット的に見れば、今回のS&Pのアクションの背景に、いまさらびっくりする材料があるとも思えず。

だいたい、S&Pが米国債の格付けにプレッシャーかかってるぞとウダウダ言い出したのは、2008年の9月17日、リーマン崩壊直後のことである。

米国マクロ経済はその前年からリセッションに入っており、金融市場の下支えのために連銀は2007年から流動性供給で上へ下への大活躍中、それでも不安定さを抑えられずにグラグラしてるところにリーマンショックで、米経済はグシャッと潰れた。

その後回復に向っているとはいえ、米失業率は依然として高水準で、財政赤字は膨張の一途、住宅価格はまた下降中・・・と、現在の米経済のファンダメンタルズ言うなら、まさに『なにをいまさら―WHAT’S NEW?』の世界である。

ちょうど一年前ほど前にもS&Pは、米政府がすぐすぐ財政緊縮に取り掛かることなどできるはずないのを承知しながら、財政赤字削減策にマジメに取り組まないと米国債トリプルAは維持できんかもしれんからね~、と確信犯的に脅していたんである。(去年3月12日のFT記事

さらに言えば、1週間ほど前の4月11日、米債券ファンド最大手のPIMCOが米国債ショートという報道があった。格付け機関が米政府にコンタクトを取ってるらしいみたいな話は、どこからともなく漏れてくるのは常なので、PIMCOのニュースで「何か」が動いてるんだなと直感した市場関係者だって皆無じゃない。(もうトレーディングフロアの傍にいない私ですら、何か来そう・・・と思ったぐらいなんだから。)

だから、いま、S&Pが出てきて、ネガティブだと言ったぐらいで、エッとおどろいてるような市場関係者がいたら、「あなた、いったい、これまで、どこ見てたんですか?(棒読み)」というような話なわけ。

それでもメディアが「(見通し)ダウングレードだ」とほうぼうで騒ぎ立てるもんだから、たかだかアウトルックがネガティブに変更された程度で心理的にゴーンとやられた米株市場は、前場で一時250ポイントも一気に下げ、【心理的】なオーバーリアクション全開。これで銘柄によっては絶好の買い場ともなり、午後には少し落ち着いてインデックスは140ポイントダウンまで戻した。(心理的にゴーンとやられるのは、株相場ではいつものことw。そういうところ、意外とヤワw)

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S&Pが確信犯でウジウジやってた一年前と比べて、何か決定的に変わったことがあるかといえば、去年の11月に中間選挙でティーパーティの力を借りた共和が下院でマジョリティを奪い、オバマと彼をとりまく民主側と共和側の政局での対立がいっそう深まり、米国債近辺の政治上の不協和音がリスク要因として以前に増して認識されはじめたこと、である。

つい先日も、大統領の予算案で民主と共和が歩み寄りを見せることができず、米国政府がシャットダウンに追い込まれるのではないかという騒ぎにまでエスカレートしたことを見れば、共和側のオバマ政権弱体化に向けた執念と締め付けのすさまじさは、傍目にも感じられるところであろう。

そして、今回のこのS&Pの米国債格付け見通し変更であるが、これはまさに、そこの部分(=政局)に影響を与える話であるわけ。


昨日(17日)のNBC報道番組『Meet The Press』にガイトナー財務長官が出演、米国債発行上限について言及した部分のビデオがここにある。
リンクはこちら:http://www.msnbc.msn.com/id/3032608/



このビデオの冒頭で、ガイトナーはこんなことを述べている。

Congress is going to have to raise the debt limit. They understand that. That's absolutely essential to preserve the creditworthiness of the United States of America. You know, we're a country that meets its obligations, and we have to meet our obligations, and they recognize that. 
議会は発行額上限を引き上げるだろう。彼らもそれは承知している。アメリカ合衆国の信用力(creditworthiness)を維持するためには、それが絶対必要不可欠なのです。支払い期限が来たら約定どおり支払う、必ず支払い義務を果たさなければならない、合衆国とはそういう国家である、彼らはそれを理解しています。

「しかし、議員の中には、上限引き上げ問題を政治的な駆け引きの材料に利用しようとしている者もいるのではないか」というキャスターの質問に対し、

...the leadership understand that you can't play around with this, you can't take it too long.  And those people up there who are telling people that you can take this to the brink because it gives them some leverage, they're going to own the responsibility for the risk that creates for the American economy.
国家の中枢部は、上限問題に遊び半分な気持ちで取り組むことはできないし、ダラダラと時間をかけることもできないというのを理解している。自分の立場をより有利に進めるのを目的にこの問題をギリギリまで先延ばししてやろうとふれ回るような末端の政治家がいるなら、それが米国経済にもたらすリスクについては、彼らが全面的に責任を負うことになるでしょう。

ガイトナーはさらに、こう続けた。

...if you allow people to start to doubt whether the United States of America will meet its obligations, that would be catastrophic, and we can't take that risk.
アメリカ合衆国の債務返済能力に人々が少しでも疑いを抱き始めるようになるのを放置すれば、それは破滅的な状態を導くことになるでしょう。私達はそんなリスクは決して取れないのです。

「私達はそんなリスクは取れない」――そう、アメリカ合衆国がトリプルAじゃなくなるなんて、そんなことは有り得ないし、何が何でも阻止してみせる、ガイトナーはそう言ってるわけですな。

この番組に出演したとき、ガイトナーは、S&Pが見通しをネガティブにするつもりであるというのを、既に知っていた。

ロイターによると、ホワイトハウスがS&Pからその旨を聞かされたのは金曜日だったそう。

格付け会社が、格付けされる側(この場合は米政府)とどんな折衝をして、どんなコミュニケーションとって・・・といったことは、そのプロセスを実際に当事者として体験したことがなければ、なかなか理解されずらいが、こうして公に発表される何週間も何ヶ月も前から、当事者の間では、あーでもねーこーでもねーと、延々と問答がウジウジ繰り返されるわけで、今回のアクションだって、米政府にとっては、寝耳に水でもなんでもない。

これは筆者のスペキュレーションだが、政治的足踏み状態がこれ以上長引き、上限引き上げに手間取ることになれば、アウトルック変更程度では済まないかも・・・と、S&Pの方からヤンワリと示唆されたのではあるまいか。ここで引き上げないとウォッチに載っちゃうかも・・・ドキドキ・・・

しかし、ここで上限上げたからとて、それがすなわち上限を青天井にするという意味にはならない。なぜなら、青天井にして現在のペースで米国債を発行し続けたら、むしろ、米国の信用力はさらに悪化し、本当に見直しのプロセスに突入してしまう恐れがあるわけだから。

「クレジットウォッチに載る」(このエントリーの最初にあげた2番目のアクションね)は、見通しネガティブどころじゃすまないインパクトを生みますからね。ウォッチに入ったら、実際にDOWNGRADEになるかもしれないんだから。

上限引き上げをいかに早急にやらんといけないかというと、実はもう、上限の$14.2trillion超えちゃって、$14.3trillionになってるという話が、今日のZerohedgeに出ていた。秒読み状態。

上限いっぱいになってしまい、必要なときにも発行できない状態が長く続くと、財務の柔軟性が失われて、それはそれで米国の信用力にはネガティブになる。

ということで、ハエのようにうるさい格付け機関を黙らせてアウトルック変更程度で留めておくためにはひとまず上限を引き上げるけれど、共和に対しては、それとの「交換条件」として、オバマ現政権は、財政支出カットの額を共和寄りの条件で飲む方向で議会で圧力かけられること覚悟、そういう話に進んでいってるわけである。

共和リーダーのベーナー下院議長の耳にも当然この話は入っているわけで、ベーナーとて、「米国の信用力が下がって米経済を揺るがすリスクが発生したら、その責任は取ってもらう」など言われてすごまれても、すぐメソメソしちゃって、そこまで責任とれるような器じゃないんで(笑)、引き上げについては、最終的にはうなづいてGOサインを出すだろうというシナリオが市場では走ってる。

ここから共和側に政治的な意味でさらに有利な展開に進むかどうかはまだわからないが、とりあえずは、S&Pの今回のアクションが持つ短期的なインプリケーションは、市場には大してなくとも、政治フロントにはある、と読めるのではないでしょうか。

★    ★    ★

最後に、格付け機関について。

見通しネガティブになったのに今日のイールドに影響出てないとか、格付け機関は地に堕ちてもはや影響力ない、とかいう意見も散見されるが、そもそものところでデフォ確率にも、マーケット的にも大して意味のない動き(あったとしても既に読まれていた話)なんだから、そういうどうでもいい話に落としどころを見つけようとしないほうが、いいよ。

格付け機関に対する世間の評価がどうであれ、債券市場における格付けの「存在」そのものは、過小評価しないほうがいい。なんだかんだいって、そこに「ある」。

格付け機関の言ってることなど、しょせん権威もなにもない一介の民間会社の意見、そんなものはどうでもよし、というのは、本質的には、事実その通りであります。

けれどね、そうは言っても、もしも、米国債が本当にAAAから堕ちるなんてことになってごらんなさい、そのときは、「フン、しょせん格付け機関だろ・・・」なんて皮肉な笑い浮かべてなんていられない事態に、きっとなるんだから。

その「しょせん格付け機関、などといってられない事態」こそが、上のビデオでガイトナーが言った「米国の返済能力に対し僅かなりとも人々が疑いの目を向ける」事態であり、それは、アメリカ合衆国が取ることのできないリスク、取るつもりもないリスク、なのである。

Friday, April 15, 2011

自由の女神のその顔は・・・違うだろ!

アメリカ郵便局(US Posal Service)が、自由の女神の新しい切手を出した。

出した・・・まではよかったのだが、USPSが切手に使った女神の顔は、ニューヨークの【ご本尊】の顔ではなくて、ラスベガスのカジノ「New York, New York」に飾られてるレプリカの顔を間違って使っちゃったことが発覚した、という笑えるような笑えない話。

もう30億枚も印刷しちゃったんだって・・・orz

仕方ないから、そのまま使うそうです・・・(泣き笑い)。

これが、その「問題の女神の顔」なんだけどね、

Stamp-popup

女神のかぶってる帽子(?)のとんがってるところにある四角い削れたような部分がオリジナルの女神にはないというのと、女神の顔がオリジナルよりも「顔の造作の彫りが深い」のが、間違い探しのポイントだそうでして。

これを伝えたNYTの記事によると、最初に間違いに気づいたのは、熱心な切手コレクターで、かつ、自由の女神の大ファンの方。このひとは、新切手をみて、んー・・・どこかおかしい・・・と直感し、調べて切手コレクターの愛読新聞にコンタクトを取ったそう。

しかし、アメリカの郵便局が、アメリカ合衆国のアイコンを、ふつう間違うかよ~。30億枚の切手、「仕方ないから使う」というのもトホホだけど、郵便局側の

「いずれにせよ、すごくいいデザインだし、これが本物じゃないとわかっていても、きっとこの写真を使ったハズさ!」(“We still love the stamp design and would have selected this photograph anyway,” ←USPSのスポークスマンの言)

という、苦しすぎる強がりが、憐れみの気持ちすら誘うではないか。

ちなみに、ホンモノの自由の女神は1886年にフランスから贈られたもの。ラスベガスのは、14年前に作られたということで、まだティーンエージャーの若さ。

切手コレクターの方、このニセモノ女神の切手(切手そのものはホンモノですw)、コレクションの一部に、いかがですか?

Monday, April 11, 2011

ニューヨークのホームレスの数、過去最高

あまり、嬉しくない記事。

(Reuters, 4/11/11)

経済不況に加え、市の予算カットのあおりで、ニューヨーク市のホームレスの数が増加。ホームレス減少を目指すNPO、Coalition for the Homelessの報告書で明らかになった。

2010年度に市が提供するシェルターで夜を過ごした人の数は11万3553人で、前年比9%増、ブルームバーグが市長職に就いた2002年対比では39%増。(ただし、この数字は、利用総回数ではなく、一度でもシェルターで過ごしたことがある人をひとりと数えた数値。一人が何度も利用することもありなので、11万人が少ないと感じないように注意。自治体の年度は7月1日から。)


(グラフ出所:Coalition for the Homeless)


さらに胸が痛くなるのは、2010年度の数字には、子供が43000人も含まれており、前年比9%増。そんなに多くの子供が、毎晩のように親に手を引かれシェルターの入り口に並び、もしそのシェルターが満杯でその晩入れてもらえなかったら、別のシェルターに向かわなくてはならない。毎晩自分がどこに泊まるのかもわからないようでは、学校に通い続けることも難しい。シェルターはその日しか泊めてもらえない。一晩に、1万5千人以上の子供が順番待ちする、というのだ。

Coalition for the Homelessは、この報告書の中で、NY市のホームレス増加の主因はブルームバーグ市長の政策失敗と厳しく非難。

それに対しNY市の側は、市は努力をしていて、今年度はやや低減していると反論。

下のビデオは、この問題を取り上げたABCニュースのクリップ。





NYもようやく春めいてきたものの、去年の暮れに猛吹雪に襲われたNYではその後も連日マイナス10℃以下の日が続いたりして、今回の冬は実に長くて辛い冬だったと誰もが感じているところだ。

ロイター記事によると、今年2月のある厳寒の夜などは、一晩で4万人がシェルターの門を叩いたという。この数字も史上最高らしい。

筆者も毎日わんこを連れて自宅付近をブラブラ歩くのが日課だが、ホームレスの数は実際増えたという実感がある。公園のベンチに横たわっている人や、あきらかに精神を患ってウロウロしている浮浪者が目だって増えた。冷え冷えとする夜に、誰もいない公園脇のベンチに、そっとスープや服を置いてゆくひとの姿を見かけたことは、一度や二度ではない。朝同じ場所を再び通りかかると、スープはなくなっている。

米国経済は回復の一途という声が市場ではあちこちから聞こえるけれども、社会の底辺の実態は、ウォール街のエコノミストやアナリストの描く絵とはまた違う重たいリアリティを持って、こうして、せまってくる。



Monday, April 4, 2011

日本震災から影響受けてる意外な業界=ハリウッド

日本の震災によるサプライチェーンの混乱が世界各地で起こっている。震災直後から、日本製の部品に頼る海外メーカーが製造の一時中止を余儀なくされたりしているのだ。

例えば、この、3月18日付のFTの記事。地震後直後の月曜から早々と製造を一時中断せざるを得なくなったGMはじめ, ソニー・エリクソン、フォルクスワーゲン、ノキア、アップルなどなど、世界の有名どころが次々に部品サプライの流れが滞ることに懸念を示した。

(Financial Times, 3/18/11)

製造中止していたGMのルイジアナ工場はその後1週間で製造再開にこぎつけたようだが、福島原発事故の解決がなかなか進展せず、産業用電力の不足が長期化するとの懸念も浮上し、自動車メーカーやハイテク産業など日本製品に頼っている海外製造業各社の不安を払拭するにはまだ先のよう。

そんな中、一見直接関係のないように見えるところで、サプライ不足を懸念するあまりパニック買いに走ってる業界があるという、(ちょっと意外に思える)記事を見た。


(New York Times, 3/22/11)

(New York Times, 3/27/11)


記事によると、まだサプライ不足が実際起こっているわけでもないし、この先本当に不足が起こるのかどうかもわからないのに、ハリウッド映画やTV番組の制作業界は、プロダクション仕様のビデオテープの買占めに一斉に走っているらしい。一部では製品の最終価格が25%も跳ね上がり、eBayのようなオークションサイトで再販すると、元の価格の10倍の値がつくこともあるらしい。

筆者も初めて知ったのだが、ハリウッドが使用するSONYのビデオテープは同社の仙台工場で生産されているそうで、米国の商業用グレードのビデオテープ市場におけるSONYのシェアはなんといってもダントツでデカく、仙台工場がやられたというニュースが入ったとたん、米エンタ制作業界は「な、なんだとーっ!」と総立ちになり、「テープ確保できるか大至急確認しろーー!」とドタバタ動きだしたというのである。

業界でよく使われているHDCAM-SRというビデオフォーマットはSONYでしか製造されておらず、他の日本メーカーが作っているビデオ・フォーマットを使おうとすると機材を新たに揃えなくてはならない。

うちのダンナはまさにこの映像業界のひとなので、「なぜ今時ビデオテープなのか、デジタルにすりゃーいいじゃん」と早速ヒアリングをしてみたところ、デジタル機材と映像のデジタル化は着々と進行中だが、現場ではビデオテープはまだまだ広く使用されているとのこと。キツイ制作予算でやりくりしている映像業界下請けは貧乏所帯が多くて、デジタル最新機器が出てきたからといって、皆そんなに頻繁に最新式に次々取り替えられるお金の余裕があるわけではないらしい。彼にNYTの記事を読ませたところ、状況はすっごくよくわかる、と言っていた。

(以下NYTの記事から引用)

“It’s akin to one of those situations where people go to the grocery store and buy up all the water,” said Bill Missett, an executive with the LaserPacific Media Corporation, which uses tape in its post-production services. (略) Many TV shows rely on tape that is manufactured in Japan. Studios use a similar product to shoot movies and store master copies of films. (Digital storage methods are increasing, but, counterintuitively, it costs more to store a digital master of a movie – about $12,500 a year – than it does to keep a conventional master, which costs about $1,050 a year.)

プロダクション後のサービスでビデオテープを使う、LaserPacific Media Corpのエグゼクティブ、ビル・ミセット氏は「飲み水の買い占めのためにスーパーにあせって買いにゆく、あれと似た状況だ」と言う。(略) 米テレビのリアリティショー番組の多くが日本製のテープに依存している。映画スタジオでも映画の撮影やマスター・コピーの保存のために同様のプロダクトを使っている。(デジタルによる保存方法は年々増加傾向にあるものの、我々の直感とは裏腹に、映画のデジタル・マスター保存にはよりコストがかかる。テープ方式によるマスター保存だと映画一本で年間保存コストは$1,050しか掛からないのに対し、デジタルマスター方式だと年間$12,500もコストがかかるのだ。

$1050 対 $12500 とは!!!

そりゃー、テープに頼るはずだわ・・・。

デジタル・マスター方式の保存コストがこの先どんどん下がってくれば、また話は大きく変わってくるんだろうけれど、それと関連して周辺機器もデジタル新鋭機器に変えてゆくコストがかかる、ということですしね。なにせ先立つものはカネだからなぁ。

筆者もローテクながら、書籍・音楽・映画と、デジタル化されたコンテンツに日々お世話になっており、その利便さと手軽さ、そして、コストの比較から言ってもデジタル化されたもののほうがずっと経済的ということもあって「モノを持たないミニマリストなライフ・スタイル」に徐々に切り替えてきているところ。でも、ストレージに10倍も差が出るとしたら、そのコストが下がってくるまでは、ジッとモノを抱えているだろうなと思う。

記事では「直感とは裏腹に(counterintuitively)」という表現を用いていたが、わたしもデジタルのほうが安く済むと直感的に思っていた。

でも、映像のプロの現場が、利便性とかよりも純粋にコスト比較での大差が理由で、いまなお一部ではテープ依存が続いていたというのを知り、ローテク筆者としては、やや意外に感じたわけである。

Friday, April 1, 2011

ウォルマートCEO「インフレは速いペースでやってくる」

Wal-Mart CEO Bill Simon expects inflation
(USA Today, 3/30/11)

  • 最近米で話題になった動画。米小売の巨人ウォルマートのCEOビル・サイモンがUSA Todayとインタビュー。
  • 「毎日が最安値」を謳い文句にしている同社も、コスト高を強く警戒。
    • (引用:Still, inflation is "going to be serious," Wal-Mart U.S. CEO Bill Simon said during a meeting with USA TODAY's editorial board. "We're seeing cost increases starting to come through at a pretty rapid rate."
  • 原料高に加え、中国の人件費増、ガソリン高による運送費増などがのしかかり、この6月にも店頭の最終小売価格にそれが現れてくると指摘するアナリストも。