金融街の年末風景の常として、クリスマスが近づくにつれ取引現場に関わるひとびとのやる気は目に見えて下がってゆき、20日過ぎたあたりからやる気はほぼゼロに近づく。
年末にかけて低下するのはトレーダーやセールスのやる気だけじゃなくて、株も債券も為替もコモディティも、あらゆる金融市場の流動性が合わせて低下する。
今年は尾を引く欧州問題のせいでFX市場の流動性低下がここ数ヶ月目だっており、10月27日に1.4247をつけていたユーロドルは、今日は1.29台まで大きく動いた。ここ数ヶ月高いボラに見舞われている為替市場は、これから年末に向けてさらに流動性が下がることもあり、さらに大きな振れ幅に襲われるのではないか、という懸念が出ている。マーケット関係者の異なる見方を紹介した記事。
DERIVATIVES: Dramatic FX moves feared on low liquidity
(IFR, 12/14/2011)
(以下、記事の抄訳)
- 目下ボラティリティは高レベルで推移してるものの、コントロールが失われるほどまでには至っていない。だが、いずれにせよ年末にかけて流動性が更に細るため、ドラマチックな値動きに発展するのではという懸念が散見される。
- ドイチェ銀行のFXグローバルヘッドKevin Rodgersの見方:「年末のリクイディティ低下で、もしソブリン問題にまったく目処が立たないということになると、極めて大型でボラの高い動きが起こるのではという懸念を拭えない。これまでも、年末の流動性が低い最中にエンドユーザーが取引を成立させようとして値動きが大きくなったことがある。今年はヘッジファンドが苦しい状況にいることもあって、一方的な流れになった時に、その流れに逆らってリスクキャピタルをコミットしようとするプレーヤーは稀だろう。FXデスクで人手が手薄にならないように、トレーダーの年末休暇の予定には気を配っている。大きな不確定要因が存在している最中に流動性が低下するのだから、突然、動きが活発になった場合を考えて、予め準備をしておく必要がある。」
ドイチェのFXデスクが強い警戒感を抱くのとは逆に、パリバのデスクは、年末はスムーズに越せるという見解。(以下、ふたたび記事の抄訳)
- ユーロゾーン危機から派生する不確実性は払拭されてはいないものの、主要通貨のペアのボラティリティは比較的落ち着いてはいて、1年のユーロドル・ボラティリティは現在15.7ボラティリティ・ポイントでトレードされている。歴史的にみれば高い位置にはいるが、11月終盤には17ポイントだったので、現在はそれよりも低い。同様に、ユーロドル・リスク・リバーサル(3ヶ月25デルタのプット/コールの差)の水準は、11月の4.5に対し、現在3.5。
- BNPパリバのFXグローバルヘッドHubert de Lambillyの見方:「パニックはしていない。ボラは爆上げしてはいないし、通常ならユーロをショートするファストマネーがユーロを更に下押ししようとするだろうが、いまはそれが起こってる風でもない。事実として債券の新規発行のストレスがFX市場を大きく動かすドライバーになるが、(年末に向かっては)債券発行もほとんどない。今年は、流動性のない、しかし、さほど波風もたたないスムーズな年末になると予想している。」
ECBの施策が功を奏して、市場が心配しているほどには、現実には、そんなに大惨事にはなっていないという点では、両者の意見は一致。
- ユーロの秩序ある下落を可能にしたのは、ECBが進めている低金利環境のおかげ。量的緩和は控えているECBだが、フロントエンドの金利を低位に保ち流動性供給オペの延長と担保条件緩和を実施してユーロゾーンのリクイディティが枯渇しないようつとめている。パリバのLambillyは、ユーロ調達緩和策がユーロ下落の理由のひとつ、という。
- また、ドイチェのRodgersによると、主要通貨のペアは、ボラが高止まりしているにもかかわらず、2011年初頭の水準からみると、さほど大きな乖離はしていない。今年に入ってから対ユーロで最大の動きを見せたのは日本円の6.8%。ユーロスイスは1.2%の下落にとどまり(2度にわたる中央政府の介入の後ではあるが)、ユーロドルも2.6%にとどまっている。
- Rodgersの言:「ボラティリティが高止まりし、ヘッドラインに翻弄されてギクシャクな動きが続いた今年は、緊張がいまだに続いているが、実際のところスポットレベルはかなり安定的。マーケットは、今の状況が大惨事に発展する可能性をずっと憂いてきているが、現実には、そんなに動いてはいない。」
市場は心配しすぎ、ということでしょうかね・・・。
ところで、今日TLで見かけた @positivegamma さんのツイートがちょっと気になったので、最後にメモとしてくっつけておく。
これを見たら、「心配しすぎ」とも思えないんだが。
このチャートを見て、「市場の流動性が極めて低い最中に、動きが一方的になってきたとき、それに逆らってキャピタルをコミットするプレーヤーはいない」というRodgersの言葉を、改めて心に刻むなど。(たしかに、【プライベート資金のサイド】には、いないでしょうね。)
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