昨日の米国のケーブルテレビでは、オバマとブラウンの共同フォトセッションの模様を延々と(実に延々と)映していた。
その場に居合わせたメディア関係者からいくつか質問を受け付けたが、これ、正式記者会見じゃないんだよ。メディアのために用意された【写真撮影会】ですよ。
さらには、ブラウンは米議会にも招かれて、米英が力を合わせて何ができるかを大演説。
オバマほか政府関係者には玄関先で軽くあしらわれ、米メディアにはほぼ完全無視されたニッポンの麻生首相と比べると、なんたる扱いの違いでしょうか。
片やランチもご馳走してもらえず、片や写真撮影会に一時間以上・・・。
ま、麻生さんとオバマじゃ波長が全然合ってないってのは傍(はた)で見ててもわかるけどさー、ここまでハッキリ差をつけられるのは、ちょっと哀しいじゃぁありませんか。サンドイッチとお茶ぐらい出せよな、ホワイトハウス。
イギリス経済だってアメリカと同じぐらいドツボにはまってるわけだが、仲良く並んで目をキラキラさせて見詰め合ってるブラウンとオバマの二人を見ていると、【ブッシュとブレアのアツアツぶり】を彷彿とさせるものがあった。
世代交代しても、アメリカとイギリスは「運命共同体」か。
そのフォトセッションの席で、オバマったら、しゃべる、しゃべる。
勢い余って、
「長期的には株は今が買いどき」
とまで、口走った。
先日ここのブログで、「オバマよ、あなた、いつからキャタピラーの人事部長に?」とたずねたが、今日も言わせてもらおう。
「オバマよ、あなた、いつから株のセールスマンに?」
★ ★ ★
オバマが昨日の会見で何と口走ったかというと、正確には以下のように言ったんである。(情報:ABCニュース)
"What you're now seeing is ... profit (←筆者注:おそらく“price”の間違い)and earning ratios are starting to get to the point where buying stocks is a potentially good deal if you've got a long-term perspective on it,"
『長期投資の視点に立てば、株式は買い時で潜在的にグッドディールと呼べる水準まで株価収益率(PER)が落ちてきている。』
"Businesses are starting to see opportunities for investment and potential hiring. We are going to start creating jobs again."
『ビジネスは投資機会と潜在雇用を探り初めている。まもなく雇用再開の時期が来る。』
”I am not focused on the day-to-day gyrations of the stock market, but the long-term ability for the United States and the entire world economy to regain its footing. You know, it bobs up and down day to day, and if you spend all your time worrying about that, then you're probably going to get the long-term strategy wrong."
『株式市場のその日その日の上げ下げには私はさほど注目していない。注目しているのは米国及び世界経済が再び安定し力を盛り返す長期的な能力の方だ。株価は毎日上がったり下がったりする。ひがな、それだけに心を奪われていると、長期的なストラテジーを見失う。”
★ ★ ★
・・・うむ・・・・大統領の発言というより、まるで、今年営業部門に配属になったばかりの新人セールス君のセールストークのようである。
わたしも金融業界に就職したばかりのころは、先輩から「バリューはホライゾンを長期に置け」と耳にタコできるぐらい言われたのを思い出したよ。
投資のスタイルにはいろいろありますが、もっともオーソドックスなのが、
「ファンダメンタルズ分析を緻密に行うことで価値(Value)が過小評価されている証券を見つけ出し、長期保有することで将来的にキャピタルゲインを得る」
というスタイル。この投資スタイルは「バリュー投資(Value Investing)」と呼ばれます。
1930年代にコロンビア大学の教授だったグラハム(Graham)とドッド(Dodd)という二人により出版された名著『Security Analysis』(『証券分析の原理』)で世に知れ渡った分析手法ですが、この本は、いまだに【株式投資分析のバイブル】となっている。
グラハムの講義を実際に受けていた学生のうち、たったひとりだけ「A+」という優秀な成績を収めた学生こそが、かのウォーレン・バフェット氏であるというのは有名な話だけど、証券アナリストなら必読の書とされているこの古典書、どうやら、オバマも読んだね。本をまんま暗誦してるもんね。(笑)
オバマ、ザ・バリュー・インベスター。Obama, the Value Investor.
(でも、P/Eレシオの「P」を、「Price」じゃなくて「Profit」と間違ったんで、成績は「B-」。)
新人セールス小浜君の言葉を信じて、ここで「買い」に入るもよし、まだ下げは続くと見て慎重姿勢を崩さないでいるのもよし。投資は自己責任でやりましょう。
今日のダウは中国発のポジティブニュースで押しあがっていたが、センチメントは全体にまだ暗い。セールスマン・オバマのアドバイスに従おうとする投資家は、まだまだ少数派のようですね・・・。
ま、株セールスとしては見るからに経験少なそうだから、真剣に聞いてもらえないのはしかたないけどね。(爆)
★ ★ ★
ところで、昨日のオバマとまったく同じ発言を、別の記事で読んだ。
ゼネラル・エレクトリック(GE)のCEO、ジェフリー・イメルト(Jefferey Immelt)の言である。
GE株、ここのところズタズタである。(下のチャートは、GEの過去5年の株価パフォーマンス)
GEという会社は、冷蔵庫などのホワイトグッズとか原子力などエネルギー関連とかの分野で有名だが、その実態は、収益の半分以上を金融子会社(GECC)が稼いでくるという収益構造を長らくしていた会社であった。
クレジット市場でのリスクテイキングにどっぷり漬かっていたGECCの業績悪化が激しく、トリプルAの信用格付けの維持が難しいんじゃないかとウワサされている。
そのGEのイメルト会長が、先月、株主宛に出したレターの全文が公開された。(*イメルトの株主宛の手紙全文はこちらへ。)
その手紙の締めくくりが、オバマ発言とほとんどシンクロしておる。
“GE will be a better company winning through this crisis. Your GE teams have dug in and are dedicated to the tasks ahead. My thanks go out to all investors who continue to support our efforts. If you are a prospective investor, let me say, now is the time to invest in GE!”
『この危機を乗り越えたとき、GEはより良い会社になっているでしょう。GE経営陣はすでに策を講じており、それに全力投球する所存です。我々の努力を引き続きサポートしてくれているすべてのインベスターに深くお礼を申し上げたい。そして、これから投資をしようと考えておられる方には、いまこそGEに投資する時が来た、と申し上げておきましょう!』
で、「いまこそ!」の「いま」がいつなのかというと、このイメルトの手紙の日付は、今年2月6日。
2月6日のGEの株価、$11.10。
今日(3月4日)午後1時過ぎのGEの株価、$6.38。
GE銘柄、株式だけじゃなくて、債券市場でも嫌われているみたいだ。
昨日伝わってきた債券側のトレーダー情報によると、GECCのCDS、昨日の午後だけで200bpsも拡大し、アップフロントペイメント(Upfront Payment=将来のキャッシュフローの一部を前払いさせる取引形態)なしにはトレードできなくなってるらしい。市場で格下げ懸念が高まっているとはいえ、まだトリプルAの会社ですぜ。トリプルA債券がアップフロントペイメント求められるなんて、聞いたことないよ。
たしかに、グラハム流の正統派投資分析では、株も債券も、オバマやイメルトの言うように「売られすぎ(Oversold)」なのかもしれない。
でも、この異常事態のもとでは、どこが底なのかが見えてこない。
ファンダメンタルズ分析だけに頼るのは怖いと誰もが思っちゃうんだよね・・・。
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