Friday, March 27, 2009

司法長官のオブセッション、遂にCDS召還礼状へ

オブセッション
obsession
【名】
 -執念、妄想、取り付かれること、強迫、執着
 -強迫観念、考えや感情が頭から離れないこと  (アルク辞書より)

ニューヨーク州の司法長官、アンドリュー・クォモ(Andrew Cuomo)。

こやつは間違いなく、「オブセッション」患ってる。

3月21日付MHJ記事(墓穴を掘り続ける米国、火の粉はCDS履行にも)で筆者は、低脳議会のボーナス魔女狩り騒動の余波で、問題の核心部分にいる「クレジット・デフォルト・スワップ(Credit Default Swap=CDS)の履行」にまで糾弾の火の粉が飛びそうだと書いたが、覚えておいでか。

政治的思惑が「CDSの履行」にまで口挟むようになるとこれは厄介なことになる、と。

あのときから何となく嫌~な予感はしてましたけどさ・・・。

しかし、こんなに早く「やっぱり」な事態が訪れようとは。

昨日26日、クォモNY州司法長官が、AIGのCDS契約をキッチリ調べるために、裁判所から「召還礼状(Subpoena)」を発行させたらしいと報道された。

ロイターの記事:http://www.reuters.com/article/ousiv/idUSN2649738920090326

召還礼状には法的な拘束力がありますから、AIGもイヤと言えないんだよね。クォモはAIGのCDS履行の詳細を持ち出してきてネチネチ苛める許可を、法的に得たのである。

今回の礼状入手について、クォモ氏はこう述べた。

“Our investigation into corporate bonuses has led us to an investigation of
the credit-default swap contracts at AIG. CDS contracts were at the heart of
AIG’s meltdown. The question is whether the contracts are being wound down
properly and efficiently or whether they have become a vehicle for funneling
billions in taxpayer dollars to capitalize banks all over the world.”

『我々はボーナス支払いの件で調査を進めてきたが、その一環でAIGのCDS契約についても調査することに至った。CDS契約はAIG崩壊の核心的存在であった。我々は、これらCDSが正当かつ効率的に契約解消されているか、あるいは、米国納税者のお金を使って世界中の銀行に資本を提供するビークルになっていないか、を調べるつもりである。』



米国民のカネがAIG経由で世界中の銀行にばら撒かれてないかチェックする、ですと・・・。

まさに「デターーーッ!」「キターーーッ!」である。

AIGのCDS契約とその解消プロセスについては、つい数日前に、中央議会のAIG問題のヒアリングで、ガイトナー司法長官とバーナンキ連銀議長が「AIGのCDS解消に伴う公的資金の使用を最小限にするために合法的な対処法をさまざま模索したが、現在のCDS市場にはこの事態に対処するキャパシティがなく、市場の混乱を回避するためにも、額面どおりの支払いを行うのが最善、と判断した」と証言したばかりなんであるよ。

また、CDSと保険会社の規制については、一昨年に、アムバック(Ambac)など、モノラインと呼ばれる、金融・金利商品にプロテクションを提供する会社群が大混乱に陥ったときから、ニューヨーク州政府の保険業界監視役エリック・ディナロがあちこちに登場し、連銀等と連携組んで頭悩ませ続けてきてるんだよね。

ところが、ここに、鼻息荒く登場してきたのが、NY州司法長官クォモである。(ニューヨーク州はウォール街を州内に抱えてるので、州の段階でも、司法や規制に関し影響力が強い。)

さかのぼれば、去年のリーマンショックの直後の2008年10月から、ボーナス許せーん!と騒いでいた最初の人物は、このクォモ長官だった。彼は、さらに、AIGの幹部がプライベートジェット使ってるとか、顧客の接待のためと称して会社のカネでプロバスケのNYニックスやプロホッケーのレンジャーズの試合観戦してるとか、マジソンスクエアガーデン内の最高級客室スイートで豪華なパーティしてるとか、そういうタブロイド的なネタを暴(あば)き続け、

「ウォール街エグゼクティブ」=「ゴードン・ゲッコー」(←1987年のハリウッド映画『ウォールストリート』でマイケル・ダグラスが演じた悪者)

という図式を、マスメディア通じてガッツリ民衆の脳裏に植え付け、昨今の魔女狩り騒動の下敷き作るのに成功したお方である。

クォモ長官、自分はすっかり悪を倒す正義の味方になりきって、不正を暴くことにオブセッション。

ま、プライベートジェットやシュリンプカクテルがどうした、みたいな話なら、暴いてもらって一向に構わないです。ドシドシ暴いてやってください!

ただ、クォモが次に「暴こう」としているのは「CDS契約のウラのウラ!」だってんだから、ちょっとなー・・・と思うんである。彼って、なんだか思い込みの激しい人みたいだからさ・・・。

その昔、日本の書店に行くと、別冊宝島とか週間ダイヤモンドとかで『不良債権のウラのウラ!』とかいう特集で、どこそこの担保物件行ってみたらヤーさんがたむろしてた、とか、闇金と不良債権を繋ぐ謎の女の存在を追う、とか、そういう話満載の書籍や雑誌がやたら売れてましたけど、クォモの場合も、レベル感としては、この別冊宝島をやや彷彿とさせる。

クォモが召還礼状・・・んーー・・・嫌な予感がする・・・・。

それでなくっても、クレジット市場では「政界は何やらかすかわからない」というのが【リスク要因】に挙げられてて、警戒心がほぐれないで凍ったままだってのに、ここでふたたび、CNNのヒステリーキャスターとかが乗っかってきて、変な方向に展開しないか、それが不安だ・・・。

   ★   ★   ★

ヒステリーと言えば、海の向こうの欧州からも、ロイヤルバンクオブスコットランドの元CEOの自宅が襲撃されたり、フランスでは3M社のお偉いさんが工場労働者によって24時間監禁されたり、といった暴動ニュースが伝わってきてますね。欧州でも、エグゼクティブへの風当たりは暴風雨状態。

そんな中、渦中のAIGのフランス子会社Banque AIGのシニアエグゼクティブが辞表を提出したそう。他の従業員もみんなウンザリしてて、一斉に辞めるかもしれないって。

フン、辞めたきゃ辞めりゃ―いいじゃん、とお思いでしょう。

だが、そう簡単にいかないらしくて、フランスと米国の当局関係者がアタフタしてるみたい。

26日付けのウォールストリートジャーナルの記事によると、 この、パリにある子会社Banque AIGは想定元本2340億ドル(20兆円以上)に相当するCDSを発行しており、このエグゼクティブたちが急にいなくなると、CDS契約の契約詳細に従って信用事由が発生し、デフォルト扱いになっちゃうかもしれない、というんである。

CDSに詳しくない方には、いま書きかけの「小学生のための~」でそのうち説明する予定ですが、CDSというのは、なんだかんだ言って、それを発行した側と買った側の当事者間で交わされた一種の【契約書】なんであるな。

で、CDSという契約書には「これこれこういう事態が起こったら、デフォルト(債務不履行)になります」という内容がかならず書き込まれているものなんです。デフォルトを起こす事象のことを、専門用語で『信用事由』(Credit Event)といいます。

で、このパリの子会社が出していたCDSには、「Banque AIGのコントロールの変更」という項が信用事由に含まれていたらしく、現在の従業員がいなくなっちゃってフランスの当局が代わりとして他の誰かを指名すると、それは「コントロールの変更」という事象に相当するかもしれなくて、もしそうなると、額面20兆円規模のデフォルトが起こっちゃったらどうしよう、とかいう話に発展してるとかなんとか。

これまでも、CDS市場は、できるだけ契約書の内容を規格化・標準化し、契約上のカスタマイゼーションを少なくして、トランスアクションコストを下げよう、という動きは無くはなかったんだけど、市場の急激な拡大に規制やルール作りが追いついていけずに、ほったらかしになっていた。

たくさんの『盲点』を抱えたまま、CDS市場は急拡大しちゃったんだよね。

このAIGのパリの子会社の件にしても、こんなことが起こるかもしれないなんて、考えたことあるひと、これまで一人でもいるのかな。実際の問題が出てくるたびに、当事者も当局も、「えーっ!そんなこともあったんですかいッ!?」とアタフタしているのが実状。

連日アタフタしてる皆さんに代わり、筆者から、クォモ長官に言ってあげましょう。

「お願いだから、あんた、脇でおとなしくしてて。取り込み中だから、邪魔しないで。」

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3 comments:

チー said...

はじめまして!
メインにお住まいなのですね~。
ポートランドの辺とか好きですよ~。
私はボストンに住んでいたので。
ブログ、分かりやすくて面白いですね。
アメリカどうなっちゃうんでしょうねえ?
毎日ニュース、笑えます。
あれ観ました?サウスパークの金融危機エピソード。
http://www.youtube.com/watch?v=E7yxoOWJdnY

あ、これが私のブログです。
http://americakansatsu.blogspot.com/
どうぞよろしく。

Trinity @ NYC said...

チーさん、こんにちわ。ようこそ。
メイン州とNYCを行ったり来たりしています。ニューイングランド地方は美しいところですよね。サウスパークのエピソードありがとうございました。これ、永久保存させてもらいます。(笑)

こちらこそ、よろしくお願いいたします。チーさんのブログ、不動産事情がよくわかる面白いブログですね。これから、ときどき、除かせていただきます。相互リンクでも張りましょうか?

チー said...

リンクおねがいします!
とてもうれしいです。