今朝(26日)は、エレクトロニクス小売全米最大手のベストバイ(Best Buy)(←日本で言えばビッグカメラみたいな)が、4Q業績が「予想されてたほど落ち込まなかった」というニュースで、取引開始直後に一気に11%上げ。
落ち続けてるときはドーンと暗くなって、「S&P500、このまま、200まで落ちるかも・・・」なーんて言ってた弱気のアナリストがいたのに、今朝のブルームバーグ記事読んでたら、こんどは「S&P500、このまま、1000まで突っ走っても不思議はない」なーんて言ってる強気のマネージャーがいた。
どちらも「ありえない」とは言い切れないよね。
「可能性はゼロ」と言い切れないし、言い切らない。
それが投資の基本である。
「AIGの悲劇」の原因を突き詰めれば、この投資の基本を忘れ、「可能性はゼロだと決め込んでた(だって、トリプルAなんだもん)」というところにあるんであるな。リスクのない投資など、ない。従って『必勝法』などというものは絶対に存在しない。
とはいえ、1ヶ月の間に200から1000という極端な幅でセンチメントが揺れ動くというのは、市場に確固たるファンダメンタルズのサポートがない、という証拠である。
ベストバイ社の業績が「予想より良かった」と言ったところで、伸び率はマイナスいう事実には変わりないわけでして。ここのところ、住宅関連でも、「明るいニュース」が出てきたと言ってるが、こちらも、前月比では「よかった」かもしれないが、前年同期比ではやっぱりマイナスで、落ち込むスピードが落ちてるってだけで、やっぱり落ち込み続けているんである。
今日もNYの株式市場は上げた。でも、今日は、金融株は全般に弱く、その代わり、金融以外の株がけん引役になって上がった。
ここのところ、ずっと金融セクターに振り回されてきたマーケットも、そろそろ同じ話に飽きて、新しいストーリーを欲しているな。でも、金融セクターが弱いまま、実体経済だけ持ち上がることはありませんので。また相場の方向が見えずらくなってきた・・・。
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さて今日は、3月23日のMHJ記事で書きかけになっていた「CDSとは何か」の続きを書こうと思う。
前回は、「クレジット(信用)リスク」について簡単に説明し、クレジット市場というのは、この「クレジットリスク」に値段をつけて売買する市場だ、というところまで述べた。
カネを貸した相手の会社が実際に「破綻」したり「デフォルト」起こしたりしなくても、「リスク」そのものは、日々、ビミョーに高くなったり、低くなったりする。
明日は遠足の予定だけど、お月様がボンヤリしてみえるし、遠足は延期になるかもしれないなぁと、なんとなく不安になる。空模様をながめ「遠足延期」という「リスク」を感じ取っているんである。翌朝になって遠足は予定どおり決行されるかもしれない。でも、その決定が下されるまでは、ボンヤリ不安を抱えている。
これと同じである。
この「ボンヤリとした不安」こそが「リスク」であり、それに従って、社債(企業が発行した債券)の値段というのは、セカンダリー市場で、上がったり下がったりするんである。
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ここで、ちょっと寄り道して、プライマリー市場とセカンダリー市場について、少々説明しておこう。
ある会社Xが株式や社債を発行しようとする。ピカピカの新品の証券である。新証券発行にあたり、その会社は、現在の市場の動向や、ターゲットになってる投資家がどんな風に自分達のことをみているか、いくら位の値段を付ければ売りさばくことができるか、などを事前に調査する。事前調査は自分でやってもいいけれど、いちどきに何百億円何千億円という額の発行になると、売り出しに参加する投資家の数はすごく多くなるから、潜在的なバイヤーである機関投資家を顧客に多く抱えている証券会社に「どんなもんでしょ」と相談するのがフツウである。
で、証券会社のインベストメントバンカー達は、いろんなチャネル駆使して、その証券の発行条件を考えてあげて、「投資家はこんなこと言ってるし、いまの相場はこれこれこんな風だから、こんな風にして市場に持っていったら最適かと思いますけどねー」とかアドバイスして新規発行のお手伝いする。そのアドバイスに手数料取るんだ。
そして、会社Xと死ぬほど折衝を繰り返して(←“死ぬほど”というのは、あながち冗談ではない。インベストメントバンカーのみなさん、マジでときどき死にそうになってますから。)、いよいよ、新証券お披露目、となる。このときは、お披露目の席にお呼ばれした投資家しか、この証券を手に入れることはできない。
この「新証券お披露目」で登場する証券を扱う市場を、プライマリー市場(Primary Market)と呼ぶ。
いよいよお披露目式が終わりその証券がローンチされると、その証券はオープン市場で売買が可能になる。ここでは、お披露目式に呼ばれなかったその他投資家もワイワイ参加して売買できるマーケット、それが、セカンダリー市場(Secondary Market)である。一般の個人投資家が参加してどこかの会社の株を売ったり買ったりしてるのも、セカンダリー市場である。
証券のプライスというのは基本的にセカンダリー市場でのその証券への需要と供給で決定される。
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プライマリー市場で5%という利率が付いてきた債券は、100万円の額面に対して、毎年5%の利子を生みますね。これを5年間ジーと辛抱強く持ち続けてると、毎年5%づつ利子が払われ、5年目の満期で最初の100万円の元本も戻ってくる。これだけなら、フツウの定期預金と同じですね。
もちろん、そうやってジーと持ち続けていてもいいんです。
でも、満期までジーと持っているのが嫌なら、セカンダリー市場に持って行って、「中古の債券ですけど、買いたい人いませんかー?」と売りに出すと、買ってもいいよー、という誰かが現れる。
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では、社債のセカンダリー市場で売りに出された債券は、どう取引されるのでしょうか。利率5%のクーポンがついてるからといって、買ってくれるひとが、そのまま5%の利率で満足するとは限りませんね。デフォルトのリスクが高くなってるとしたら、これからそれを保有しようという相手は10%の利子を欲しがるかもしれませんね。
つまり、ぼんやりした不安が確固たる不安になったとき、同じ会社に対しても、金利はボーンと跳ね上がるんである。社債セカンダリー市場では、プライマリー市場で発行条件として決められた当初の利率を無視して、「いま、この瞬間に抱えてる不安」の度合いを金利に反映させて取引が進められる。
社債マーケットというのは、個人投資家で賑わう株式市場とはずいぶん様相が異なり、ここは基本的にはプロの機関投資家限定の世界。取引するときも、一本何ドルとかの具体的な通貨価値で取引するのじゃなくて、【クレジットスプレッド】と呼ばれる金利の一種を提示することで、売買します。
たとえば、ゼネラルモーターズが発行した社債を持っている投資家がいるとします。この投資家は、ゼネラルモーターズに対して不安を抱いていて、デフォルトするリスクが高まっていると考え、いまのうちに売ってしまおうと思っている。
買い手はできるだけ安く買いたい、別の言い方をすると、それを保有している間は、できるだけ多く利子を受け取っておきたいから、高い金利になるように、できるだけ大きなクレジットスプレッドの数字を提示します。一方の売り手は、できるだけ高い値段で売りたいから、逆に、できるだけ低いスプレッドの水準を提示します。そうやって売り手と買い手は互いに「具体的な値段」じゃなくて「スプレッド」を提示し合い、そのせめぎ合いから最終的にプライスが決まるのです。
【クレジットスプレッド】とは、取引の対象になっている証券に内在している信用リスクに対して、市場がどう判断してるかを示す数字なのでありますね。スプレッドがどの水準なら「正常」とかいった“絶対値”は存在しない。そのときそのときの状況で、他のなにかと比べて“相対的”に高いか低いかが判断され、ゆるゆると(時には激しく)移動してゆく。
雨が降りそうだから遠足延期のリスクが高まっていると思うひとが多ければ、クレジットスプレッドは拡大する。逆に、心配ご無用きっと遠足は行われるさ、と思うひとが増えてくれば、クレジットスプレッドは縮小する。
【クレジットスプレッド】、次回はこれを説明します。
(続く)
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