何年も前に買った株券を全部売り逃げることができず、いまだにグズグズ持っているのである。(笑わば笑え。)
残りをいまさら売ったって、もう何の意味もないわいッ!
そして昨日2月27日、そのシティから筆者の口座に「配当金」が振り込まれておりました。
振り込まれた“数ドル”の配当金の額を見、さらに自分の投資元本額も視界に入り、一瞬、そう、ほんの一瞬だけ、涙が溢れそうになった。
昨日のシティの終値は、一株当たり$1.5。前四半期分の株配当金は一株当たり$0.01(1セント=1円以下)。
涙をこらえるのが精一杯で、配当利回りを計算する気はさすがに起きなかった・・・。(←計算してどうする。)
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かねてから話題に上っていたとおり、米国政府がシティグループの36%相当の普通株を取得、同社の筆頭株主となることを、シティは金曜日に正式発表した。
ウォールストリートジャーナルは、昨日付の記事で『The Third Bailout(3度目の救済措置)』という見出しを掲げ、ここだけ読んで政府がシティにまたもや新規に救済資金を提供したという印象を持ったひとが少なくなかったようだが、T.A.R.P.からシティに出された救済資金の額面総額には、これの前後で変化はない。
前回までの救済活動で、250億ドル相当の「転換条項付優先株式」の形で提供していたT.A.R.P.資金を、今回政府は一株$3.25で普通株式に転換し、優先的に配当金を払ってもらう代わりに議決権がない優先株主から、配当金支払いの順位は低いが議決権を有する普通株主へと、【転身】するって話である。
これにより、既存の普通株主は74%の希薄化が決定となり、シティの株価はさらに下落。シティとならんで国有化のウワサにまみれているバンカメ株も落ちた。
(ディールの詳細は、ここ参照。http://www.citigroup.com/citi/press/2009/090227a.pdf)
厳密に言えば【国有化】ではないが、4割保有ってことは、実質的に、国が管理してるようなもんである。
一部の市場関係者やクルッグマンその他のマクロエコノミスト達は口をそろえて【完全国有化】した方がいいと騒いでいたけれど、彼ら国有化賛成論者のたいがいは、銀行の資産整理とリストラが簡単にできると思い込んでる御目出度いひとたちだ。銀行が国有化になった際に資産価値が大きく毀損し市場売却時の清算価値(リクイデーションバリュー=Liquidation Value)が大幅に下がって、結果として国庫負担になる最終処理コストが肥大化するという問題を深く考えてないから、簡単に国有化国有化とわめくんだ、とは2月21日付のここのブログエントリーで指摘した。政府サイドは、その問題を抱えているがゆえに、大銀行の国有化にはずっと躊躇している。
しかし、このまま何もしないでいたら、連日激しいスペキュレーションでクタクタになってる株式市場はさらに疲弊するし、それよりさらに肝心のクレジット市場も、株式側の不安心理を共有して凍りついたままになってしまう。
ともかくは、滅茶苦茶になってしまったこれら銀行の信用力を回復させてあげて、市中での資金調達がスムーズに流れるような介助をしてやらなくちゃならない。銀行の信用力を回復させるには、その金融機関に「国家」という強い後ろ盾があるという状態が最も効果的なんであるな。
国家が4割株主であるという意味は、シティがこれ以上悪化することになると国庫(=納税者の皆様)に迷惑がかかるという政治的問題も合わせて発生してくるんで、できるだけ、これ以上の悪化を防ごうというインセンティブが政府側に生まれる、という意味になり、そこに「暗黙の保証」が示唆されて、銀行の信用力回復に一役果たす、そういうことなんである。
で、この“信用力”を売買するクレジット市場では、この動きをどう捉えていたかというと、全般に好感されて、金融機関のクレジットスプレッドはややタイトニングした(価値があがった、という意味)。某トレーダー情報によると、シティとバンカメのCDS(シニア5年)のクオートはそれぞれ25bpsと10bps縮まり、民間資金の間に流通しているシティ発行の優先株も、転換価格$3.25という決定を受けて、20でトレードされてたものが、金曜には37まで値上がりした、と聞いた。
シティの不良資産からあとどれくらいの追加損失が発生してくるのかが現段階では皆目見えず、部分国有化になっても、シティの【財務リスク】は相変わらず高いから、今回もクレジットスプレッドのタイトニングの幅としてはさほど大きくはなかったんだろうけれど、この先徐々にCDSのプライスが低下トレンドを示すようになってきたら、政府の思惑どおりの効果があったってことで、しめしめ、なんだよなぁ・・・。
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ところで、シティの株主構成なんですが。
米政府が4割になったとして、その他大株主はどうよ、って話ね。
詳しいブレークダウンは調べていないからわからないけど、私の記憶が正しければ、たしかシティ株ってのは、
* シンガポールのTamasek
* クウェートのKuwait Investment Authority(KIA)
* サウジアラビアの王子様
などなど、そうそうたるソブリンファンドのメンバーも保有しておられる株ですよね。
これら巨大ソブリンの皆様は、私みたいに配当金数ドルなんていう【蚤以下の個人投資家】とはワケちがって、巨大な投資額ですからねー。
米国政府の持分40%に加え、これらソブリンの皆様の投資持分も加わると、シティの株主構成の中に政府関係が占める割合は、どれくらいになるのであろうか。
結構あるんじゃないでしょうか。
ってことはですよ、米国最大のリテール商業銀行だったシティも、「各国政府の手中に収まった」ってことじゃないでしょうか。
それってつまり、
「マルチ国有化」
(Multi-Nationalization)
ですかい?
ふーむ、さすが、グローバルの時代ですわねぇ。銀行国有化も、いまや当事国限定ではなく複数の国家にまたがるとは。(←感心してる場合じゃないが。)
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ここで、先週の公聴会で、バーナンキ連銀議長が発言した内容をふと思い出した。
先週24日の議会バンキング委員会による公聴会で、「(市場がスペキュレートしているように)大銀行の国有化は早急に必要か」という問いに対し、バーナンキはこう答えた。
"I don't see any reason to destroy the franchise value or to create the
huge legal uncertainties of trying to formally nationalize a bank when that just
isn't necessary,"
『正式に銀行を国有化すれば、その銀行のフランチャイズ・バリュー(Franchise Value=営業基盤の価値)は破壊され、法的にも大きな不確実性を生み出すことになる。国有化する必要性が認められない時に、あえてそれを実行するのは理にかなっていない。』
.
注目されたいのは、バーナンキの発言の中の「フランチャイズ・バリュー」という部分だ。
【フランチャイズ・バリュー】というのは、その企業体が収益を生み出すちからの源泉になっている営業基盤の価値のことを指す。
シティグループの持つフランチャイズとは、何か。
財務で大失敗して死の淵に立たされているとはいえ、シティグループのグローバルに張られた営業網は、米国の金融機関の中でも抜きん出ている。世界中に散らばる銀行支店から個人預金を集めてこれるリテール銀行なんてのは、アメリカには、シティしかない。JPモルガンだって、米国内では個人預金をバカスカ集めているけど海外では企業向けビジネスに特化しているし、バンカメも何度も海外で普通銀行の業務やろうとしてたがなかなかうまくいかなかった。
シティのグローバル展開された巨大な営業基盤は、調理さえうまくやれれば、とても使い勝手のよいフランチャイズ。その強みがまだ息の根が止まっていないうちに、それをみすみす潰してしまい、タダ同然の値段で切り売りするのはいかがなものか、もったいないじゃないか、とバーナンキは言うんである。
1月16日付けのシティのプレスリリースに、『Citi to Reorganize into Two Operating Units to Maximize Value of Core Franchise(コアになる営業基盤の価値を最大化するためにオペレーションを2分割する)」とある。
これを読むと、コアになる営業基盤とは、「グローバルに預金を集めて、グローバルに貸出をする」という、伝統的な銀行業務に回帰するための営業基盤を指している。
「グローバル」というキーワードが、シティのフランチャイズバリューの要(かなめ)になるのだとすれば、マルチ国有化で他国の政府が大株主に名を連ねる、というのは、あながち、悪いことではないかもしれない。
現在の株価は、希薄化と国有化の恐れから、フランチャイズが将来生み出す利益の現在価値を株価に反映することができなくなってしまっているが、仮にシティが、公的資金の助けを借りて、悪夢の財務と市場の大津波を乗り越えることに成功したならば、フランチャイズバリューも、きっといつの日か株価に反映されて、紙くず同然に落ちた株券も甦ってくるはず・・・。
トンネルの出口が見えない状態で、こんなことをブツクサ言っていても始まらないのは百も承知しているが、売りのタイミングを失ってシティ株をいまだに抱えている筆者としては、玉砕モードの空元気で「グローバルのマルチ国有化、ばんざーい!」と叫び、陰でそっと涙を拭くのが関の山。
「蚤以下の個人投資家」にできることは、いまは、それくらいである。
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