Tuesday, March 17, 2009

AIGは死んでお詫びを:政治筋「ハラキリのススメ」

昨日のエントリーで、【空気の読めない会社AIG】についてチラリ言及したが、一夜明けた今日、米議会と米メディアによるAIG叩きは、本気でものすごいことになってきた。

アメリカの今日のテレビは、CNN局を筆頭に、朝から晩まで「AIGのボーナス」の話題で持ちきり。

たしかに、AIG、どうしようもない会社である。失業率が10%目指して突進してる最中だってのに、一億円以上のボーナス受け取ったエグゼクティブが80人近くいたというニュース聞いて、世間が許してくれるわけがないではないか。

ニュースの詳細を聞いていると、問題の$165ミリオンの半分近くが80人程度のシニアエグゼクティブに渡り、残り半分をあとの320人で分け合った、ってことですね。

今日見たNHKのニュースでは、「一人当たり平均すると4000万円!」とか言ってたが、もう少し詳しい計算すると、トップ80人は別として、残り320人は平均25万ドル程度のボーナスだった、ってことですよね。

25万ドルのボーナスを多いと感じるか少ないと感じるかは、それぞれだろうけれど、前から言ってるように、ウォール街という業界は「ボーナス命」の業界で、ボーナス除いた「基本給」だけ見ると、実際少ないんであるよ。

そして、ニューヨーク・シティという街自体、テキサス州ヒューストンで5万ドル稼いでる人と同じ生活水準を保つにはニューヨークでは12万ドル必要、という統計もあるくらい生活費が高い街でもありまして、ニューヨークの住民がもらう25万ドルのボーナスが「法外」と言うのは、どうかとも思う。

筆者は別にAIGを擁護しようと思ってるわけでもないし、お金の“額”の問題じゃないことも、わかってる。この一件をどういう角度からながめようと、「AIGは空気の読めないボケ会社」という事実自体は変えようがないわけでありまして、このボーナス問題は政治的に尾を引きそうだ。


   ★   ★   ★

ワシントンDCの政治筋からは、怒りの声が次々とAIGに対しあがっており、今日は早速、

「公的資金を受け取った金融機関が従業員にボーナスを支払ったら、そのボーナスに高率の消費税(Excise Tax)を掛ける」

という方向で、議会で議論が進んでいる。

議員の中には、どうやっても怒りを抑えることができず、プルプル震えながら、

『AIGはジャパニーズスタイルでお詫びしろ!』

とテレビの画面いっぱいに叫ぶ議員までいた。

「ジャパニーズ・スタイルのお詫び」って何のことだよ、と思ったら、「自殺しろ」ですと。

アイオワ州選出の上院議員チャック・グラスリー(Chuck Grassley、共和)の言葉である。

"I would suggest that the first thing that would make me feel a little bit
better towards them [is] if they would follow the Japanese example and come
before the American people and take that deep bow and say I'm sorry and then
either do one of two things: resign or go commit suicide."

『AIGの幹部に勧めたいことがある。日本の慣例に従って、アメリカ国民の前に出てきて深々と首を垂れ、申し訳なかったと謝罪して、それから、次の二つのどちらかを選べ、と。二つの選択とは、辞任するか、自殺するか、だ。もしAIGがそうしてくれたら、わたしも少しは気分が晴れるというものだ。』

.
グラスリーはさらに、「たいていの日本人は謝罪する前に死を選ぶ」とまで続けた。

おい、いつから、「自殺する」が「ジャパニーズスタイル」になったんだよ。勝手に日本の慣例を作らないでほしいよな、ったく。

これだから、政治家ってのはダメなんだ。

こういうパフォーマンスで、有権者から点数稼ごうという、それしか能がないんだから。

AIG側は、このショッキングな(?)自殺のススメに対し「こういう感情的な発言が出てくることを遺憾に思う」とわざわざコメントまで出していた。

AIG問題、日に日に、「お茶の間コメディ」に姿を変えつつある・・・。

   ★   ★   ★

しかし、ここで冷静になり、考えて欲しい。

(a)米国政府がAIGに突っ込んだ公的資金の額は1730億ドル。

(b)議会総出で連日大騒ぎを繰り広げている問題のボーナスの額、1億6千500万ドル。

(b)÷(a)= 0.095%

このボーナスを全額返上させたところで、政府のフトコロに戻るのは、全体の0.1%以下。

0.1%にも満たない額に対し、ポリティカル・エネルギーのすべてを注ぎ込んでる暇が、一体どこにあるんだ、と筆者は言いたい。

チャック・グラスリー議員みたいのには、クレジット・デフォルト・スワップとか言ったって、何のことか全然わからないんだろうし、その他政界筋の多くが、AIG問題において【唯一理解できる】のはボーナスの話しかないんだろうから、ボーナスボーナスと騒ぐのは、それなりに理解できますけどさ・・・。

でも、朝から晩まで、ボーナスの話ばかりで、筆者はいささかウンザリである。

住宅関連の延滞問題が全然解決してないってのにですよ、次はクレジットカード支払い延滞の大問題がすぐ目の前まで迫ってる、そんな緊急時に直面してるってのに、ですよ。

サブプライム住宅ローンだけじゃなく、クレジットカードのローンをベースにして作った【仕組み債】(Structured Bonds)だって、ゴチャマンと世の中には流通しているんである。

このクレジットカードの仕組み債のデリバティブスに対しても、AIGはCDSを発行してるんだぜ。

仕組み債のデリバティブスというのは、レバレッジがものすごくかかってるので、延滞率がほんの少しでも「証券化された時点での“予想”延滞率」を上回ると、突如として、債券に内在するリスク量(=デフォルト可能性)がガーンと増え、債券価値はゴーンと下がる、そういう代物なんだよね。

AIGがサブプライムのCDOという複雑な仕組み債デリバティブスに対してCDSを発行し、そこから多額の損失が発生して公的資金を仰ぐ結果になったのも、経営者がアホだったから、とか、ボーナス払いすぎてたから、とか、そういう単純な話じゃなくて、サブプライムローンの延滞率が当初予想を上回ってしまったから、なんだから。

で、2008年4Qのクレジットカード延滞率ですけどね・・・これが、ビョ~ンと跳ね上がったんである。そして、前回の日記でも書いたように、今年2月の延滞は増加しているというアメリカンエクスプレス社の証言もあり。

AIGのCDS問題が、ここで出尽くしたと思うなよ、米議会。

クレジット市場の回復がさらに遅れたら、AIGの資本基盤はさらに毀損が生じ、またまた公的資金を入れてやらなくなるかもしれない。

0.1%の問題に延々と関わってるヒマなんて、いまのアメリカの政界には、どこにもないんだっつの!

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1 comment:

山田 豊 said...

■AIG巨額ボーナス、「言語道断」とサマーズ議長―金融危機の原因をつくり出した人々は詐欺師ではないのか?
http://yutakarlson.blogspot.com/2009/03/blog-post_4412.html
こんにちは。この巨額ボーナスほんとうに、はらわたが煮えくり返りそうですね。出すほうも、もらうほうも、頭がいかれていますね。こうした、金融馬鹿や賭博師、詐欺師など何とか取り締まる方法はないのでしょうか?いずれにせよ、こうしたことを取り締まることができる法律など整備してもらいたいものです。そうでないと、「のど元過ぎれば熱さを忘れ」の格言どおり、また同じことが繰り返されると思います。詳細は是非私のブログをご覧になってください。