Wednesday, July 15, 2009

ゴールドマン強し!(商業銀行ステータス、さっさと返上しろよな)

今週は決算発表花盛り。

昨日(14日)の朝はゴールドマンサックスの2Q決算結果が発表され、市場予想を大きく上回る結果であった。

株価の方は実際の発表を待つまでもなく、先週からアナリストによるGSの買い推奨がどんどん出ていて、株価はすでに上がってた。先週は、Guy Moszkowski(メリルの銀行アナリストで、アナリストランキングでは常に上位)がGSのトレーディング収益が絶好調になるといって強気「買い」推奨でいったん上がり、また、今週に入ってからは、別の有名銀行株アナリストのMeredith Whitney(シティの崩落を予言して一気に無名から有名になり、今年オッペンハイマーを辞めて独立し調査会社を立ち上げた)がGS決算発表の前日にCNBC局に出演して、やはりGSに対して超強気コメント。

「ベア派」で知られるメレディスが強気だ、ってんで、GS株、さらに勢いに乗りました。

しかしね、このメレディスですけれどさ、この【変身振り】は、いったいなに?

彼女はシティが潰れるかもと予言して的中し有名になったんだが、株アナリストのくせに、あの銀行がつぶれそうだとか、この銀行は収益半減するとか、そういうネガティブな話ばっかする「超弱気アナリスト」だった。

4月7日付MHJ記事『決算間際、どうしてもウジウジしちゃう』では、「株アナリストのくせにいつもウジウジ弱気」の代表格として、マイケル・メイヨというアナリストのことを紹介したが、メレディスが登場するとマイケル・メイヨが強気に見える、それぐらいメレディスってのは、「金融株はダメ!」というオピニオン一本槍で名を成したアナリストなんである。

独立して会社立ち上げたばかりのころも、クレジットカード貸出の与信費用(クレジットコスト)が膨大になるという論説をウォールストリートジャーナルに発表したりして、「ダメ、ダメ、ダメ」ばっか言ってたんである。

だから彼女の豹変ぶりに皮肉な目を向けてるものは市場には少なからずいて、彼女の今年5月のビデオクリップ(↓)をわざわざ探して掲載するブログもあったりで、冷笑してる向きは少なくない。















ついでだから便乗させてもらうが、5月には、彼女ったら

"The underlying core earnings power of these banks is negligible."
(金融セクターに、コア収益を生む力なんて、ほとんどない。)


と発言してたよ。このクリップから、まだ2ヶ月ですぜ。

ゴールドマン株がまだ100ドル行くかって頃も、「GSが100ドル超えるなんて、ありえない!わたしならGS株は絶対に触らない!!」とギャーギャー叫んでたくせに。失業や住宅価格や延滞債権などのファンダメンタルズは悪化してるのに「100ドルでも高い株」が急に「150ドルでも安い株」になるとは、あなたの適正株価分析モデル、ちょっとあたいにみせてごらん、と言いたくもなるではないか。

とはいえ、そもそも上値を狙う株の世界で、証券買わせるのが商売のセルサイドにいるものが、下向きの話ばっかしてたってラチあかんからな。そこがセルサイドの株アナリストのつらいところ。

証券会社に雇われの身の時は給料は確実にもらえるけど会社が売ろうとしてるものを悪く書くなという(暗黙の)圧力にさいなまれ、独立したらしたで好き勝手なこと言えるけどオピニオンそのものが売れなきゃ生活できないし。

メレディスも、独立当初はちょうど金融不安真っ最中だったのを幸いに、「トレードマーク」のネガティブな話ばっかで売ろうとしたけど、その後、メレディスの推奨とは裏腹に、肝心の金融株はどんどん上がっちゃって(←理由は不明だが、笑)、新会社のフトコロも寒くなってきたのであろうか・・・可愛そうにな・・・。

   ★   ★   ★

ということで、元アナリストの自分が言うのもなんだが、マーケットでえらそうにオピニオン述べてる「有名」アナリストの意見なんつーものは、絶対に額面どおり信じてはいけない。半分以上ディスカウントかけて聞いておいたほうがよろしい。

とりわけ、セルサイドの銀行株アナリストは、こういっちゃなんだが、クレジットや債券の世界のことはほとんど知識はない。あちこちで金融機関のクレジット投資について知った風なこと言ってるけれど、彼らのほとんどは自分が何言ってるのか実はわかっていない。

証券会社というのは、同じ会社の中にいながらにして、債券部門(為替・コモディティ含む)と株式部門とでは水と油ほども異なる間柄で、トレーディングフロアも異なれば、部署同士の交流だって年末クリスマスパーティ以外はほとんどない。

だから、株式アナリストになると、本人が債券側で実績積んだことがあるという場合は別として、株サイドのみで生え抜きでやってきたものになると、債券のトレーディングフロアなんて立ち寄ったこともないというのが多いし、CDSの取引の現場を実際にみたこともなければ、クレジットデリバティブスに関わってるのがどんな投資家で、彼らがどんな分析をしていて、どんな風にキャッシュボンドやCDSの値決めしてるのか、みたいなことも、おそらくほとんど知らない。

それは、アメリカに限らず、日本でも事情は同じである。

実際、CDOの問題が表面化してきた2007年、MHJ筆者は当時バイサイドにいて、そのファンドでは日本の某銀行の株を買うかどうか考えていた。で、筆者は、日本の某著名銀行株アナリストに電話して某邦銀のCDOへのエクスポージャの現状について質問したんだが、さすが「著名」なだけあって態度だけはやたらデカかったが、流れるように説明してくれるのはいいんだけど、彼がCDOのリスクヘッジについて完全無知であることは3分も話さないうちに明らかになった。だって、CDOとCDSと、アルファベットが似てるせいもあるけど、話しながらしょっちゅう取り違えたりするんだもんなー。著名な方に恥じかかすのも悪いと思って黙って聞いてたけど、バレバレでしたよ、XXXさん・・・。(爆)

ということで、しつこいようだが、アナリストの意見はあくまで「参考程度」に聞いておくにとどめましょう。投資は自己責任で。

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で、メレディスのレポート読んでヒマ潰す気もなかったんで、実際にGSから発表されたQ2リリースを自分で読んでみた。

前回(Q1)のGSの決算のときは、筆者は(『ゴールドマン1Q09決算について雑感』という4月15日付け記事で、「債券トレーディング収益がQ1好成績の元」ということを書いたが、今回も、同トレーディング部門はブイブイで、引き続き絶好調。

主要3部門の部門別に業務収益(Net Revenue)をみると(同社のリリースから翻訳)

【インベストメントバンキング部門】:14億4千万ドル、特に株式引受手数料は2Q00に達成した最高記録を上回った。昨年度Q2より15%下ぶれたけど今年度Q1より75%増。メリルやリーマンなどの競争相手が消えて、生き残り組みの中でも、業界内に勝ち組・負け組のメリハリがついたから、明らかに勝ち組のGSが、インベストメントバンキングで好成績あげるのは別に不思議じゃないですね。GSのフランチャイズ、やっぱし強いもんな。

【債券/為替/コモディティ部門(FICC)】クレジット商品の取引がとりわけ好調で68億ドルの収益、四半期としては過去最高。絶好調だった今年度Q1からはほぼ横ばいだけれど、昨年度Q2(3月~5月の3ヶ月)と比較すると、186%増、つまり、およそ3倍の儲け。

【株式部門】:31.8億ドルの収益、こちらも四半期としては過去最高。株市場がドツボにはまってた今年度Q1と比較すると盛り上がりを見せたQ2は60%増。株市場が衰えをまだ見せてなかった昨年度Q2と比べても、28%増

   ★   ★   ★

【株式部門】の数字見てて気がついたこととして、トレーディング収入がジャンプしたこと。株式部門はコミッション(セールス通じて売買するときの手数料)、とトレーディング(自己勘定含む)のふたつのチャネルから収益があがるようになっている。

エクイティコミッション(単位ミリオン$)は、$1234M(2Q08)→$974M(1Q09)→$1021M(2Q09) と推移して、株式市場の盛衰どおりに動いているんだが、注目は、もう一方のエクイティトレーディングのほうである。

トレーディング収入のほうは、$1253M(2Q08)→$1027(1Q09)→$2157(2Q09)と推移して、今四半期は、株暴落前の前年度同期の倍近い数字なんであるよ。

NYSEで取引されるてるボリューム自体はどんどん下がってきているというのは6月30日付けMHJ記事『介入のかおりプンプンの2009年前半が終了』で紹介したとおり。

それでも、トレーディングで前四半期の倍も稼げるとは、これいかに。

答えは「プログラムトレーディング」にありそうであるな。MHJでは前にも、取引のフローがいびつなのはプログラムトレーディングが活発な証拠だと書いてきたが、一回一回の取引を100株とかの小口に分割してチマチマと電光石火のスピードでコンピューターにトレードさせるHFT(High Frequency Trading)というトレーディング手法が、ここのところ、やたら幅を利かせているんである。

このHFTだが、マーケットメーカーが市場にリクイディティを供給する目的でプログラムトレーディングは実際行われているわけだが、これに携わると大手証券会社は一株あたり「4分の1セント」というキックバックを証券取引所から「お礼」としてもらえるそう。実際にトレードをやってくれるのは高速のコンピューターで、人の手はかからんし、HFTでトレードすればするほど儲かるワホワホの仕組みである。

NY証券取引所が発表するプログラムトレーディングのボリュームランキングによると、GSはその分野では常時2位を大きく引き離しトップ独走。

でも、あんまりド派手に動いてたから注目集めちゃって、こちらの金融ブログではあちこちで「GSがHFTで相場を操作してる」という批判が相次いで出てきていた。ブロガーによるGS批判の高まりは、FTやブルームバーグなどのメジャーメディアもこれに飛びついて紹介するぐらいの盛況ぶり。

GSの広報部は「ブロガー連中め、ったく、ハエみたいにうるさいやつらだ・・・」とシランプリ決め込もうとしてたみたいだが、NYSEがデータ公表の際にGSをデータに含めるのを(意図的かどうか知らんが)忘れて、またまたブログ界でそれを指摘され「NYSEも一緒にグルになって、何かを隠している!」と叩かれまくり、挙句の果てには、つい先週、そのHFTプログラムに直接関わっていた元GSのプログラマーがプログラムのコード窃盗の容疑でFBIに逮捕され、一般メディアにまで注目されるようになり、さらには、逮捕の際のコメントで司法当局の担当者が

「このプログラムコードを使うと、市場操作が可能だから」

と(ウッカリ)口滑らせてしまったもんだから、またまたブログ界はその発言に鬼の首取ったように沸き立って「やっぱり、GSはプログラムトレーディングで株価操作してやがったんだな!!」と書かれまくる、というオマケつき。他にもロックミュージック雑誌だの、ニュースウィークだの、GS周辺をブンブン飛んで嗅ぎまわる虫の数は増える一方。

ま、そこらへんの話は下世話な意味で面白いから、別の機会にもっと詳しく書くとして、いずれにせよ、決算結果をみても、4月~6月まで相場全体のボリューム低下著しかった株市場でもGSはトレーディングでこれだけ稼いだ。やっぱ、これは、世のヒンシュク買うほど派手にプログラムトレーディングやったおかげ、といっても過言ではないのではないでしょうか。

   ★   ★   ★

しかし、MHJ筆者がやっぱり注目してしまうのは、FICC部門の好成績の背景が「とりわけクレジット商品が好調で」というくだりである。

確かに、4月~6月はクレジットスプレッドが全体的にタイトニング傾向にあったので、クレジット・エクスポージャが高いほど、そこからの儲けは大きくなる。FASBの会計基準変更で資産側に流動性の低いクレジット投資(いわゆるToxic Assets)を抱えてても結構好き勝手なバリュエーションできるようになったし、そういう会計上の恩恵も間違いなく、受けましたね。

GSの場合、あきらかにクレジットトレーディングに相当チカラを入れてたわけで、ここでいちばん重要なのは、一体、これだけのトレーディング益挙げるのに、どれだけのクレジットエクスポージャ取ってたんだよ、ってことである。

                (続く)



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2 comments:

haustin said...

メラディス私は、去年までずっと好きだったのですが、確かにだんだん言うことが変わってきたんですよね。残念。

アナリストの言うことって、ほんといろいろ変わるし、いい加減?ですよね。GSもオイルが70ドルくらいのときに「85ドルまでいく」といって、今は60ドル程度だし。

アナリストの意見は適当に、というのは本当にうなずけますが、昨日のGSの決算で理解できなかったことがあります。

GSの決算が思ったよりよかったから、景気回復への期待が膨らみ、昨日オイルやコモディティが上げましたが、どうしてGSが決算よくて、景気回復に関係あるんですかね?GS社員は史上最高といわれるボーナスもらって、株主も多少は恩恵うけてますが、トレーディングで儲けてるのであって、物の売買ではないわけですよね?
この「理屈付け」と市場の動きが私にはどうしても納得いかないときがあります。考えすぎですかね?

Trinity @ NYC said...

>haustinさん

返事が遅れました。そうですねぇ、確かにマーケットの「理屈付け」はときどき「なんだそれ?」みたいのは、ありますね。GSと景気回復の関係については、GSに限らず金融機関全体が景気回復の行方を占うプロキシーみたいになってる、ってことなんじゃないでしょうか。オバマ大統領も「米国の景気回復は金融機関の財務回復なしにありえない」と述べているように、カネは天下の回り者で、カネを回すポンプの役目の金融機関が弱いままではダメ、ってのがありますし。

特にQ1は、金融機関はおしなべて予想以上によい成績だったけれど、果たしてQ2も続くのかという懸念は、市場参加者の間に根強くありましたから、そういう不安を抱えながら決算発表週に突入し、金融機関の中で一番最初に数字を出したGSが予想以上によかったので、それが金融機関全体の決算もいいのでは、というスペキュレーションにつながったと思います。(その後、JPMやMACが出てきて、少し頭冷えたみたいですよね・・・)