今年2月からの月末S&P500の終値をみてみよう。
01/31 825.88
02/27 735.09
03/31 797.87
04/30 872.81
05/29 919.14
06/30 929.32
しかし、NY証券取引所での取引ボリューム(NYSE Listed Volume)をみると、減少の一途。
02/27 8,926,480,000
03/31 6,992,960,000
04/30 6,862,540,000
05/29 6,050,420,000
06/30 5,910,439,500
6月10日付MHJ記事『薄商いの株価上昇と「ダークプール」』でも述べたが、NY市場のトレードボリュームは減り続けていて、昨日(6月29日)には、今年1月以来の低ボリュームを記録した。
しかも、25日にNY証券取引所から出されたプレスリリース読んだら、6月中旬のボリュームのうち、4割以上が「プログラムトレーディング」から来てたというんだからね。
たしかに過去5日のS&P500を見たら、毎日、日中はほとんど取引されてなくて、取引時間の最後の一時間になると、急にトレードされて終了、というパターンの繰り返し。
6月中は、S&P500が200日移動平均線を超え、それはテクニカル上は「ブルサイン」だというんで強気になってたテクニカルアナリストもいるけれど、市場には「ブル」な雰囲気はどこにもなくて、200日移動平均を超えるレベルにどうにかこうにか【しがみついている】といった感じ。(右のグラフはFT記事より。)
でも、200日移動平均を超えたといっても、移動平均自体はまだ下がり続けているわけだし、3月9日の底から40%も上がったのは、典型的な「ベアラリー(Bear Rally=弱気相場で一時的に上昇すること)」と見るべき。
しかも、S&P500のボリュームパターンを観察してると【誰か】が株価が下がらないように買いを入れてるような気配濃厚で「気持ち悪い」のひとこと。
こんなオカルト入った相場で、思い切り買いモードに入れるかよ、と不参加決め込んでた筆者である。そうやって傍らで観察してるばっかだったから、5月と6月は思ったようにお小遣いを稼げなくて、残念だった・・・。
で、この【誰か】が株価が下がらないように買いを入れてる、って話なのだが、昨日29日のCNBC局で、フロア・トレーダーのLarry Livinが、TV電波上で、ズバッと「政府がマニピュレーションしてる」と明言してた。
Larry Livinは自身がシカゴ先物市場のベテランのフロアトレーダーで、S&P500フューチャーの取引に直接関わってるプロである。ものすごい早口でまくし立てる話し方は、さすが何十年もフロアトレーダーやってきただけあると思わせる(笑)。このクリップの2分目ぐらいからラリーの発言が始まるのだが、シカゴのフューチャー取引の現場にいるプロのトレーダー同士の間でどんな会話がなされてるのかが垣間見えて、おもしろい。
ラリーは、「今週は四半期末にあたって、ウィンドウドレッシングがなされるのもそうだし、独立記念日の休暇を控えた週だから低ボリュームで株価が上がる傾向にあるが、それにしても、連休直前の木曜日に雇用統計を出してくるなんて、もしかしたら、すごく数字が悪いのかとかんぐってしまうじゃないか。」とジョークなんだか本気なんだかわからないようなことを言った。そして、それに続いて、こう述べたんである。(以下のラリーの発言は、筆者による聞き取りなので、英語の一部は不正確かもしれませんが、意味はあってるはず。)
This market continues to be propped up by the government intervention and manipulation. Unfortunately, that continues to happen, I think this market can go higher, as the government has been doing a good job of keeping it that way, no matter what the underlying current is, unfortunately."
いまのマーケットは政府の介入とマニピュレーション(操作)で上がり続けている。残念ながら、これからもこれは続くだろうし、たとえ実際の市場の動きがどうであれ、政府がすごく上手に(市場が上昇し続けるように)仕向けているから、まだ上がるかもしれないと思う。
司会者が「ということは、年の後半は、暗い現実が噴き出してくる、そういうこと?」と聞くと、ラリーは「政府が今のまま市場に介入し続ければ大丈夫なのじゃないか。ここのフロアにいるプロのトレーダーに誰に聞いたって、このまま一本調子で市場が上がり続けるはずがない、とみな言っていたけど、実際は政府のおかげであがリ続けた。」と言い、「サプライとデマンドという市場の力が株価形成に影響を及ぼすというのはもちろんだけれど、今起こっている状況は、そうじゃない。」
Every single day, we have some kind of backstop from the government. I mean, these markets are not free markets anywhere. You know, this whole year has been absolutely ridiculous. I don't know when it's gonna stop. But as far as I'm concerned, this continues to drive the market higher. It will continue. Again, I don't see any stop.
毎日のように政府からなんらかのバックストップ(株価の下支え)が入るんだ。今の市場は、どの市場をみたって、フリーマーケットからは程遠い。わかるだろう?今年に入ってから、完全に馬鹿げた相場になってるんだ。この状況にまもなく終わりが来るかはわからない。でも、自分が見る限りでは、(政府の介入が)マーケットを押し上げ続けているし、これからも続くのではなかろうか。繰り返すが、政府のバックストップが止まるようには私には見えないんだ。
4月29日付けのMHJ記事で、筆者は
「売りが買いの3倍もなってるのに株価が下がらない。下がりそうになってくると誰かが買い向かってくるみたいで、米株市場の動きがなんだか気味悪い」
と書いたのを覚えておられるでしょうか。筆者の場合は、部屋の片隅で小さなラップトップ見ながらチマチマお小遣い稼ぎしてるような「蚤以下の個人投資家」ですからね、その【なんとなく変】という感覚は、漠然としたフィーリングにしか過ぎないわけ。
でも、ラリーの場合は、実際に取引所のフロアでオーダーフローに関わってるひとだからね。そのひとが、ここまでズバリと「政府介入と株価操作」と言い切ってくれるのは、なかなか、すがすがしいではないか。筆者のような【なんとなくフィーリング】だけで、普通は、全国版TVでここまでハッキリ言えんだろ、ここまで。
そして、先月5月の中ごろに、別のTV局(FOX)のビジネスニュース番組で、あるTVインタビューがあって、そこで【驚愕の数字】が語られていたということを、つい数日前に発見したMHJ筆者である。(番組クリップはこちらへ。)
この番組にはゲストとしてShaffer Asset Management社長のDan Shaffer氏が出てて、そこで、彼は、こんなことを言ってたんである。
“Something strange happened during the last 7 or 8 weeks. Doreen you probably can concur on this -- there was a power underneath the market that kept holding it up and trading the futures. I watch the futures every day and every tick, and a tremendous amount of volume came in a several points during the last few weeks, when the market was just about ready to break, and it shot right up again. ・・・
「過去7~8週間ぐらい、何か奇妙なことが起きている。マーケットの背後に市場の上げを支えてフューチャーをトレードし続けるパワーが存在している。わたしは毎日フューチャーを観察しすべてのティックに気をつけているが、ここ数週間、数度にわたり、市場が下がりそうになると、ものすごいボリュームの取引が流れ込んできて、マーケットはまた跳ね上がるんだ。」
ふむふむ、MHJ記事と同じことを言っておる・・・。
Usually toward the end of the day – it happened a week ago Friday, at 7 minutes to 4 o’clock, almost 100,000 S&P futures contracts were traded, and then in the last 5 minutes, up to 4 o’clock, another 100,000 contracts were traded, and lifted the Dow from being down 18 to up over 44 or 50 points in 7 minutes. That is 10 to 20 billion dollars to be able to move the market in such a way. Who has that kind of money to move this market?
「そうした動きはたいがい、取引時間の終了間際に起こる。先週の金曜日(5月8日)も4時終了の7分前に、S&Pフューチャーのコントラクトが10万本トレードされたんだ。そして、終了4時までの最後の5分間で、さらに10万本のトレードが行われ、わずか7分間で前日比マイナス18だったのに、44から50ポイントも上げたのだ。こんな風にマーケットを動かすことができるのは、金額にしたら100~200億ドル(1兆~2兆円)相当のトレードだ。誰がそんな巨額を使って市場を動かすことができるだろうか。」
ひゃ、ひゃ、100億から200億ドル、ですってーっ?!?!?
On top of that, the market has rallied up during the stress test uncertainty and moved the bank stocks up, and the bank stocks issued secondaries – they issues stock – they raised capital into this rally. It was perfect text book setup of controlling the markets – now that the stock has been issued…”
「それだけじゃない。ストレステストの結果が不透明だった期間もマーケットは上昇し続け、銀行株は上がった。そして銀行株がセカンダリー市場で発行された。ラリーが継続している間にキャピタル調達できたんだ。これは完璧なまでの市場操作のセットアップじゃないか。そうして銀行株が発行されたんで・・・」
ここで突然、もうひとりのスピーカーの馬鹿オヤジがシェーファー氏の発言を遮ってしまった。あーん、せっかくいいところだったのに・・・。
では、ここで問題です。
株価が200日移動平均をどっぷり下回っている最中に、取引時間最後の5分間に、【1兆円や2兆円のお買い物】ができる投資家の名前を挙げなさい。
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10 comments:
初めてコメントします.
2番目の図ですが,出来高はYahooのプロットがなにか変なことになっているのではないでしょうか.他社の,例えばE-Tradeであ同じSPXを見てもyahooとは全然違う動きをしてます.また,1番目の図ですが,取引時間の最後に大量の売買がされるようですが,いつも買いとは限らず,売り優勢の日もあるようですが,その辺はどうなんでしょうか.
>通りすがりのモノさん
ご指摘ありがとうございます。通りすがりのモノさんのおっしゃるとおりで、プロットが変、ですね。きちんと精査せずに掲載してしまったことを、ここでお詫び申し上げます。いったん消しておき、外出から戻り次第、正確なチャートを掲載します。
もうひとつのご指摘については、無論、買いばかりではありませんが、連日、最後の一時間に売買が集中する「一定のパターン」を描くのはプログラムトレーディングが活発な証拠。現役トレーダーが集まるブログやチャットルームでの書き込みをときどき傍観しておりますが、圧倒的なプログラムトレーディングの背後には政府がいるという見方をしているトレーダーが非常に多いという感触があります。いったん株が上がったところで売りに転じれば儲かるわけで、上げるも下げるも同一のソースがやっているとしたら、そこにも胡散臭さを感じている者は少なくない、というところでしょうか。(もちろん、”IF(仮にそうなら)”の話ではありますが。)
また、間違いがあれば、ご指摘ください。
はじめまして。モルガンが買っているというのをどこかのブログで拝見した気がします。政府=GSと思っていたので、以外でした。
>満月さん
コメントありがとうございます。
ここのMHJで、6月10日付けのエントリーに、JPモルガンからSPYに小刻みに買いが入り株価が上昇している様子を示すブルームバーグ画面を添付しています。ご参考まで。5月から6月にはJPMが大活躍だったようですが、4月はGSの独壇場でした。プログラムトレーディングでは、たしか半分はGS経由で発注されていると読んだおぼえもあります。これについては、次回あたりのMHJ記事にて・・・。
いつも楽しく読ませてもらっています。とても勉強になります。
相場のことはさっぱり分かりませんが、住宅バブルの後始末として、個々人のバランスシートの修復が必要であって、それが終わるまでは消費が盛り上がるとはどうしても思えないです。人間の人生は有限であって、寿命が終わるまでに借りちゃったお金は返さないといけないはずですし、返すための原資は所得以外に無いですよね。所得がガンガン上がる環境でも無いですし、そんな中で借金返したらその分消費は減り→企業の売上は減り→利益は減り→株価は下がるというパターンを中長期で基本的に思い描いています。
政府が永遠に借金を増やせて景気対策に使えるなら、そもそも税金なんてものは存在しなくても良いですよね。借金総額に対して、将来の税収見込みが覚束なくなると、政府も借金生活が出来なくなって、景気対策もし続けることは不可能だろうと思います。
長文失礼しました。
Trinity@NYCさん、初めまして。いつも、記事を楽しみに読まさせていただいています。
ところで、当方が巡回しているブログで興味深いエントリーがありました。Trinity@NYCさんの過去のエントリーとも一脈繋がるような気がしますね。ご感想をお聞かせいただければ幸いです。
「masayangの日記」様
ttp://d.hatena.ne.jp/masayang/20090701/1246512794
上記エントリーのもとネタ
ttp://zerohedge.blogspot.com/2009/07/themis-trading-principal-program.html
>Opopoさん、
コメントありがとうございます。わたしもOpopoさんと基本的に同様の考えです。現在のアメリカ人個々人のバランスシートは、かなりのひとが「債務超過」の状態に陥っていると思われますよね。そういう人たちがバランスシートを綺麗にするには、「破産宣告」が一番手っ取り早い、というので、現在、アメリカでは個人破産の申請が飛ぶ取り落とす勢いで急増しています。
>geckoさん
コメントありがとうございます。元ネタになってるZero Hedgeというブログは、わたしも愛読しており、ここMHJにもときどき登場しています。でも、このZero Hedgeのエントリーは見逃していました!教えてくださりありがとうございます。ビデオクリップ拝見しましたが、わたしの見方は、この方の見方にすごく近いです。市場の流動性が低いという話も、まったく彼の言うとおりですね。プログラムトレーディングが幅を利かせているのも事実だし(彼がいうように6割にまでなっているかはわかりません・・・最新のNYSEの発表では4割だったので・・・)。以前、自分がブルーチップ株をわずか200株売ろうとしたら、グズグズ時間かかって売れていったというエピソードをMHJに書いたことがあるのですが、あんな小額の取引にグズグズ時間がかかるなんて一年前だったら考えられなかったことです。株取引の流動性が低くなっていることの根底には、クレジット市場が実質閉鎖しているということもあるのではないでしょうか。というのも、クレジットが安価で手に入っていた時代には、思いっきりレバレッジかけて株投資やることができましたし。そんな時代は、今は夢のまた夢・・・。
Trinity@NYCさん、こんばんは。
最近、NYSEの売買高・流動性を巡る興味深い話が各所で浮上していますね。
ゴールドマン・サックスのハイ・フリックエンシー・トレーディングのアルゴリズムが元社員に盗まれた?
ttp://gaikokukabuhiroba.blogspot.com/2009/07/blog-post_8993.html
巨大投資銀行のオモチャに成り下がったNYSE
ttp://gaikokukabuhiroba.blogspot.com/2009/07/pt06.html
ニューヨーク証券取引所 ここまで来れば「喜劇」だ
ttp://gaikokukabuhiroba.blogspot.com/2009/07/blog-post_9181.html
日本のメディアは、これらのニュースを全く報じていません。イランとは違う形ですが、インターネットやブログの有難さを実感する今日この頃です。
>geckoさん
コメントありがとうございます。そのネタ、実は、いま書きかけです。(笑) こちらのブログ界では「GS叩き」が、この2ヶ月ほどで、かなり盛り上がってきてますんでね。傍観してるだけでも、かなり面白いです。こちらも、メジャーなメディアは情報が遅いです。GSのファイル盗んだというロシア系移民のひとの話も、ロイターがニュースとして書くはるか前に話題になってました。日本のメディアは、それでなくても遅いメジャーメディアを翻訳してやっとこさ、というペースでしょうから、情報としてはどうしても遅くなってしまいますね。(とかいって、このネタを今頃書き出してる、MHJも、かなり遅れている。笑)
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