Friday, July 17, 2009

【続】ゴールドマン強し!(商業銀行ステータス、さっさと返上しろよな)

ゴールドマンサックスの話の続きを書く。

投資の世界の常として、ハイ・リターン得るにはハイ・リスクは付き物。

GSが「クレジットで儲かった」ということは、それなりに「クレジットリスクを取っていた」から儲かったんである。

リスクを取らずして儲けようなどと考えるなかれ。(だが、過度のリスクテーキングは多額損失に至る【可能性】を孕んでいるという常識を片時も忘れるなかれ。)

GSの2Q09決算リリースを見ると、【債券・為替・コモディティ(FICC)部門】の業務粗利(Net Revenue)の推移は以下のとおりであった。

    2Q08   2379 ($M)
    1Q09   6557
    2Q09   6795


1Q09も、GSのFICC部門が稼いだ収益は2Q09並みにすごかったわけであるが、GSがどんだけクレジットリスクを取っているかを知りたいではないか。

メレディスみたいなコロコロ意見変える株アナリストのレポートを読んだところで、どうせ、急変させた適正株価についての説明(別名「イイワケ」)と分析(別名「コジツケ」)みたいな無意味な話しか書いていないんだから、こういうことは「餅は餅屋」で、クレジットエクスポージャならクレジット分析に詳しいアナリストが書いたレポートを読みたいなぁ、誰か持ってないかなぁ・・・

・・・と思っていたら、The Big Picture というブログ上で、まさに筆者が知りたいと思っていた内容のレポートが紹介されていた!いや~、ネットというのは、ほんとありがたいですね~。

とても優れた内容の分析レポートだと思ったので、ちょっと専門的だけど、Murray Hill Journalの読者の方々とシェアしたい。

『What Is Goldman Sachs』というタイトルがつけられたこのレポートは、債券・為替・コモディティ・クレジット市場にフォーカスを置くシカゴの独立系リサーチ会社Bianco Researchが発行したレポート。Biancoのコメンタリーは米国ではヘッジファンドなどプロの債券投資家層に定評がある。

以下に、Biancoのレポートに出てきたグラフを使わせてもらい、筆者の注釈も少々交えながら、ゴールドマンのクレジット投資の状況をみてみよう。

   ★   ★   ★

まずは、全体像から。

米国の預金取り扱い金融機関(いわゆる商業銀行)規制当局のひとつ、OCC(Office of the Comptroller of the Currency)は、銀行からコールレポートで報告されるデリバティブの売買活動とトレーディング収益の状況を四半期ごとにまとめて公表している。

OCCレポートによると、米国金融市場のデリバティブス取引は一握りの大手金融機関が占めており、上位5行の商業銀行が業界全体の取引額に占める割合は想定元本(Notional Amount)の96%、ネットのクレジットエクスポージャで83%である。

昨年暮れ、リーマンショックで市場流動性が極端に低下した頃、ゴールドマンやモルガンスタンレーなど大手証券会社やCITやGMACなどのノンバンクなどが(銀行窓口で一般預金を取り扱うような金融機関ではないにも関わらず、連銀が提供する流動性資金にタップする目的で)商業銀行持ち株会社に転身したのを覚えてますね。

あのステータス変更により、ゴールドマンは突如ワコビアを押しのけて「(デリバティブス保有額による)米国の商業銀行トップ5」の一角になった。

ステータスが「投資銀行」や「ノンバンク」から「商業銀行」になったのだから、銀行規制当局への報告義務が生まれ、その結果、これら“新”商業銀行たちも、JPモルガンやバンカメのような本格的(?)商業銀行と肩をならべて昨年度4QからOCC発表の四半期報告書に名を連ねることになったのである。

    ★   ★   ★

クレジットエクスポージャとは、金融機関がCDSのようなクレジットデリバティブスを用いて取り込んでいるクレジットリスクの総額である。(CDSを用いたリスクテーキングについては、前回のMHJ記事『小学生のための「CDSとは何か」(4)』を参照。)

以下のグラフ群はBianco Research のリサーチレポートから。(グラフをクリックすると拡大します。)

【グラフ1】 リスクキャピタルに対するクレジットエクスポージャの割合(%) 



クレジット・エクスポージャをリスクキャピタルで割ったこのグラフは、1ドル当たりのキャピタル(自己資本)に対してどれだけ多くのクレジットデリバティブスを保有しているかを示したグラフで、この比率が高くなればなるほど、その金融機関はエクスポージャが高い、すなわち、高レベルのリスクを取っているという意味になる。

09Q1 の数字に注目されたい。

   GS     1048%
   JPM    323%
   BAC    169%


GSの場合、キャピタルに対するクレジットエクスポージャは1000%強、つまり、$1の自己資本に対してその10倍のクレジットデリバティブスに投資してるんである。この比率は、JPモルガンの3.2倍、バンカメの6.2倍。

(これは、バリバリの「投資銀行」としてやってきたGSと、一般個人や企業から預金を受け入れて貸し出しをするという「商業銀行」としてやってきたJPMやBACとでは、「根本的にビジネスモデルが異なる」ということの表れである。)

   ★   ★   ★

【グラフ2】 クレジットエクスポージャの内訳



このグラフによると、OCCが管理する金融機関全体のクレジットデリバティブス使用の実態としては、98%以上がCDSで、圧倒的に多い。また、期限別にみると6割以上が1年から5年の長期、信用力別にみると6割以上が投資適格、となっている。(CDSの場合、いろいろカスタマイズは効くが、最も一般的なのは期間5年で、一般にCDSのプライスクォートでは特段断りがなければ「5年長期シニア」のCDSを指していることが多い。)

   ★   ★   ★

【グラフ3】米国商業銀行トップ5の粗利益に占めるトレーディング収益の割合(キャッシュによるトレーディングとデリバティブストレーディングの合計)



09Q1の比較では、GSは粗利の7割がトレーディング収入。(JPモルガンの同比率は13%。割合でみたら、債券トレーディングの世界では全米で最も存在感の高いJPモルガンですらGSの足元にも及ばないですね。)

 ★   ★   ★

【グラフ4】クレジットエクスポージャの詳細、総資産とデリバティブス保有額総額一覧



デリバティブスというのは、バランスシートに載らない(オフ・バランスシート)簿外資産である。

だから、バランスシートに載ってる資産の大きさが、必ずしもその金融機関のリスクテーキングの大きさを示すとは限らない。

グラフ4のJPMとGSとBACを比べてほしい。

2009年3月末時点でのバランスシート上の「総資産」(A)は

1. JPM  1688 (単位ビリオン$)
2. GS   161
3. BAC  1434

ゴールドマンのバランスシートは、JPMの10分の1のサイズしかない。

ところが、簿外資産である「デリバティブス保有額」(B)になると、

1. JPM  81161
2. GS   39927
3. BAC  38864

ちなみに、(B)を(A)で割って、簿外資産がバランスシートの何倍かを計算してみた。

1. JPM   48 x
2. GS   248 x
3. BAC   27 x


GS、総資産の250倍の簿外資産を持つ!

ただし、この表の注意書きによると、デリバティブスの種類によって詳細が分けられていないため、「デリバティブス」には株式・金利・コモディティなども含まれ、クレジットデリバティブスのみの数字ではない。

だが、【グラフ1】で示されたように、自己資本に対するクレジット・エクスポージャがダントツで高いことから、GSのクレジット・デリバティブスの保有額は極めて高いと推測される。

   ★   ★   ★

【グラフ5】銀行セクターのトレーディング益の部門別ブレークダウン:08Q4と09Q1の比較 



左側は09Q1のセクター全体の数字、右側が08Q4。表のバーは左から、金利、為替、エクイティ、コモディティ、そしてクレジット、それぞれの部門が稼いできたトレーディング益で、一番右のバーがその合計、である。

左側のグラフをみると、銀行セクターは全体として、09Q1はクレジット・トレーディングを除く他のトレーディング活動でそれぞれが収益をあげたことが奏して全体としてトレーディング利益は大きく改善した。

しかし、09Q1(左グラフ)および08Q4(右グラフ)というリーマンショック後の2四半期は、クレジット市場が機能麻痺を起こしてスプレッドが急激に拡大し、CDSがキャッシュのスプレッドから大幅に乖離してヘッジができなかったこともあり、業界全体としてはクレジットトレーディングは不調だった。だが、ゴールドマンだけはそうじゃなかったとBiancoは指摘する。

   ★   ★   ★

以上から、デリバティブスを駆使したリスクテーキングの度合いは、GSの場合、他の大手金融機関とは比べ物にならないレベルにあることが推測される。取り込んだクレジットリスクを利益に変える「トレーディング技術」に関しても、GSはずば抜けて秀でている、と言えますね。

Biancoのリサーチペーパーは、ゴールドマンサックスという会社は、会社そのものが巨大なクレジットポートフォリオであり、金融危機が起こってからは、GSの株価はクレジット・スプレッドの動きと強い相関を示すいう。つまり、GSに株投資するということは、クレジット市場に投資しているのに等しい、と。

下のグラフ6は、2005年から最近までのGSの株価の動き(青線)を、同期間のクレジットスプレッド※の動き(赤線)に対比させたものである。

(※ ここで対比用に使用されているクレジットスプレッドは、インベストメントグレード(投資適格)の債券インデックスのOAS(Option Adjusted Spread)。OASは何かとか言い始めるとキリがなくなるんで、このOASは要するに、CDSで投資適格のクレジットリスクを取る際にどれくらいのスプレッドが投資リターンとして得られるかの、一種のプロキシーだと思ってください。)

ちょっと複雑なグラフなので少々説明を要する。

まず、このグラフでは、赤線のスプレッド推移は上下さかさま逆転して(Inversed)プロットされていることに注意。CDSも含め債券というのはスプレッドが下がると証券の価値は上がるという関係にあるため、スプレッドの推移を上下逆さまにグラフにプロットすることで、スプレッドから示唆されるプライスの上下と株価価値の上下との相関が、あたかも正の相関になっているように見え、ビジュアル的にわかりやすくなるのです。(実際には両者は負の相関である。)

【グラフ6】IG社債のOASレベルとGSの株価との関係




同じように、GSだけを排除した銀行株インデックスを、OASレベルに対比させたのが、グラフ7.

【グラフ7】 IG社債のOASレベルと銀行株価インデックス(除GS)との関係




このグラフは、3つの期間に区切られ、それぞれの期間で、株価とクレジットスプレッドの「相関係数」がいかほどであったかも示されている。

期間1: 2005年初めから2007年2月8日(←HSBCがサブプライム関連損失の増幅で2006年収益の大幅修正を行った日で金融危機の幕開け)まで。
期間2: 2007年2月8日以降、現在まで。
期間3: 2008年9月5日(←フレディとファニーメイが政府の庇護下に入りリーマン破綻の一週間前)以降、現在まで。


上記3つの期間それぞれにみられたクレジットスプレッド(OAS)との「相関係数」を比較してまとめると、

          GS株       銀行株インデックス(除GS)
期間1       -61.38%     -58.73%
期間2       -95.53%     -90.83%
期間3       -87.17%     -41.58%


これによると、金融危機が始まる前(期間1)は両者とも相関は弱いが、始まってから現在まで(期間2)、クレジットスプレッドがワイドニングする局面では株価が低下し、タイトニングする局面では株価が上昇するという強い相関がGS株にも株インデックスにも双方にみられる。しかし、リーマンショック以降の期間に限定(期間3)すると、GS株とスプレッドの相関は引き続き強いが、銀行株インデックスは相関がみられなくなる。

Biancoリサーチは、この相関係数から読めることとして、以下を指摘する。ひとつには、エクイティトレーダー達はGS株投資はクレジット投資しているに等しいというのを理解しているらしいということ。

そして、もう一点は、(クレジット市場の市況悪化はGS株の収益性にモロに響いてくるという関係にあることから)AIGの巨大なCDSポートフォリオの救済は「商業銀行」の中で誰よりもGSにとって意味ある救済であった、ということ。

   ★   ★   ★

「ゴールドマンは、それ自体が巨大なクレジット市場である。」なかなか面白いではないか。

自身がクレジット市場なんだから、クレジットスプレッドがタイトニングしてきたら、ゴールドマンの収益は、そりゃー上がるはずであるな。

しかしね、筆者は、Biancoのレポートのグラフで、デリバティブスによるクレジットエクスポージャがリスクキャピタルの1000%以上、という数字を見たとき、開いた口がふさがりませんでしたよ。

だって、GSの好成績は、政府の救済措置の恩恵が最大限に凝縮されてるんだもん。

ポールソンもバーナンキもガイトナーも、GSはToo Big To Failの金融機関の一角だと繰り返し述べて、その安心感から、GSが発行体になっている債券のスプレッドもタイトニングした。(←GSの市中調達コストが下がった、という意味。)さらに、「商業銀行」にステータス変更したおかげで、連銀から超低コストの資金も使わせてもらって、資金流動性が枯渇せずに済んだ。調達コストの上昇を抑えることができたのは、ひとえに、政府が用意した救済策のおかげである。

だけど、GSが公的資金を正式に返済したのは今年の6月、それまでは、TARPによる公的資金が自己資本に混ざってたんであるよ。その自己資本一ドル当たりに10倍のクレジット・エクスポージャかけてトレーディングしてた、って、公的資金の目的じゃねーだろ、それ。

公的資金入れてもらった金融機関が、納税者のカネにレバレッジかけて、ここまで突出したクレジットリスクテーキングしてるってことを、当局がわかっていないはずがないのに、規制当局(この場合は連銀)は、この9ヶ月間、一体何やってたのさ。寝てたのか?

(注:日本でも、政府当局がボケてたから、公的資金が混ざってる自己資本をGMACなんぞにエクイティ投資して納税者のカネを高リスクにエクスポーズするのを当局が許し、結局あのカネはパーになった、そういう銀行がありましたけどさ・・・。2008年12月25日付MHJ記事『GMAC、悲願の銀行持ち株会社に(それでも日本政府はいいツラの皮)』参照)

これ、普通の一般商業銀行だったら、リスクキャピタルの10倍もクレジットエクスポージャ取ってるなんてことが当局の検査官に見つかったら、リスク量減らせ!と怒鳴られて、ガンガンいじめられて、大変ですよ。

どうしてGSだけ特別扱いなのさ?米国の政府当局はGSの手下か?(あ、旧従業員だった人はやたら多いですね、そういえば。笑)

クレジットコストだって、政府の裁量のおかげでAIG損失は一切取らずに済んだ。

そういう状態で、「史上最高益!」だとか、「今年はボーナスでかいぞ!」とか言われてもな。あんたの実力だけで最高益出せたわけじゃないでしょ。

預金も受け入れず、住宅融資も行わず、リスクキャピタルの1000%もデリバティブスでクレジットエクスポージャ取って、粗利の7割をトレーディングで儲ける会社が、果たして「商業銀行」と呼べるの?

そんな会社が、何ゆえに、中央銀行が金融危機対策として用意した市場性資金にタップできるのさ?

都合いいときだけ「商業銀行」づらをするのはやめてほしいね。GSが政府のバックアップを受けて安く資金調達できて収益確保した、その裏を返せば、その分、納税者に負担かけてる、という意味なんだから。

わたしの税金利用して、あんたの会社のトレーダーのボーナス増やすの、やめて欲しい。ボーナス計算するときは、公的支援が一切なかった状態を仮定して調達コストを計算しなおし、クレジットエクスポージャも、他の「商業銀行」並みだったと仮定して投資益を計算しなおし、それらをベースに、ボーナス決めろ。

それができないなら、GSよ、さっさと「商業銀行」ステータスを返上しろよな。



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17 comments:

Chee said...

漢字で書くと、金満搾取?

ttori said...

CDSが規格化されていないので他のデリバティブに比べて多めにグロスエクスポージャーが出るとは思いますが、ここまですごいとは想像外でしたが。通常の商業銀行ならこんなにリスクはとれない(というか取らせてもらえない)はず。もし監督官庁に「リスクを減らせ!」といわれたら、この人達商業銀行のステータスを返上しそう。政府に金を返したからなんでもあり、はちょっといただけない気がします。

Trinity @ NYC said...

>ttoriさん、コメントありがとうございます。

まったくもって同感です。商業銀行の場合、クレジットリスクとしては、デリバティブスのほかに、実際の融資という形でエクスポージャがありますが、【グラフ3】の注意書きを読むと、モルゲージ融資、ホールセール融資、トレーディング勘定に入らない証券資産があり、それらをすべて合計してもリスクキャピタルの500%ということですので、やはり、デリバティブスのみで1000%という数字を見て(また、それが監督官庁に黙認されているというのを知って)驚くなというほうが無理かと思います。

GSの場合、09Q2ではクレジットのVaRがQ1と比べてさらに上昇していますから、スプレッドが全体的にタイトニングしている中でVaRが上がっているということは、エクスポージャそのものもさらに増やしているのでは、と思っています。詳細はQ2コールレポートを見るしかないですが。

現物くん said...

いつも詳しいNY市場解説ありがとうございます。

東京市場は、総会シーズン終了後公募増資ラッシュとなり、払い込みのための換金売りが株安(下がってはいないんですがNYの上げと比べるととても弱い)を呼んでいるところです。

アナリストによっては政権交代を懸念して外人が売っていると言って憚らない人もいるんですが、増資のほうが影響大きいと私は思います。なんせみずほ1社だけでも6000億円ですし、新規のお金が入ってくるような先高感も無いですから。

しかし実際に外国からみた日本を知っているわけではないので、政局が相場に与える影響について測りかねております。この点について、筆者様はどのようにお考えでしょうか?

雅雄 said...

CDSの引受けてが無いのを逆手にとって
CDSを大量に安値で叩き買いしてるんで
すかね?

二番底が着たり、EUの東欧やアジアの投
資が焦げ付いてEUが大混乱の余波が着て
たらヤバイ様な...

政府の大きすぎて潰せない逆手にとって
いる様に思います。
GS自身の大きすぎて潰せないに賭けてい
る。
でも「大きすぎて、救えない」ぐらいCDS
買い込んでいるのでは?

Trinity @ NYC said...

>現物くんさん、コメントありがとうございます。

アメリカから日本の政局を見ていると、こちらではほとんど報道されないというのもありますが、正直、何が起きてるのか、よくわかりません。日本から見るアメリカよりも、アメリカから見る日本のほうがさらに遠いような気がします。日本株取引で活発に動いているガイジン投資家は、多くが実際に日本内に拠点を置いて現場で動きをつぶさに観察しているひとたちが多いので、わたしなんぞよりよほど日本の政局の動きに詳しいですし、敏感に反応するのではないでしょうか。

個人的に思うのは、日本は今年に入ってから、ワースト・パフォーマーでもありますし、グローバル投資をしている投資家なら米国株が上昇しアロケーション的にアメリカがやや重くなってるでしょうから、ここで政局がらみで目新しい話題が出てくれば、それがファンダメンタルズ的にみて意味があろうがなかろうが、一時的にポジティブ【材料】として扱うかもな・・・なんて思います。小泉なき後の自民が完全無能、ってのは世界中にバレてるので、政権交代が実現すれば、民主党の実態は横においておいても(笑)、小泉流の改革が可能になるのでは、という「スペキュレーション」は働くかもしれないですよね。

ちょうどこの週末のBARRONに、「日本の8月の選挙が株高をもたらすのでは」という内容の記事がありました。ご参考まで。http://online.barrons.com/article/SB124786943538660363.html?mod=googlenews_barrons

Trinity @ NYC said...

>雅雄さん

CDSを「買う」と、ポジション的には「現物の売り」に相当するので、CDSを買いこんだ後に、スプレッドがタイトニングすると、ゴールドマンにとってはネガティブに作用しますが。

GSのCEOがテレコンファレンスで、GSの好成績は自己勘定のトレーディングではなく、顧客のためのマーケットメイキングによるもの、と発言していましたが、これは確認しようがないですからね。誤解のないよう申し上げると、わたしは、GSがガンガン儲けるなら儲けたいだけ儲ければいい、リスクを取りたければ取りたいだけとればよい、と思っています。強者が勝ち、弱者が負ける、それが市場なのですから。

ただ、そうしたリスクテーキングは民間のエクイティ投資家が提供した自己資本「のみ」で行うべきで、公的資金で自己資本が支えられている間にVaRを増加させるというのはマズイだろ、ってことです。公的資金は6月で返済してしまいましたから、ここから先は、自分達で管理できる限り最大限にリスクをとればいいのじゃないでしょうか。ただし、そのリスクが損失に至った場合は、その損失はすべて民間株主が取るにとどめ、もう二度と公的サポートに頼る真似はするなよ、ってことです。GSも馬鹿じゃないから、もちろんそこらへんはわかってるとも思いますしね。

haustin said...

なるほど・・・CDSとGSの相関が、素人の私にも、なんとなくわかったような気がします。ありがとうございます。

本当に、返したとはいえ、税金を一時的に借りたことは覚えておいてほしいです。返せば終わりってもんじゃないだろー、と言いたい。GSのATMカードが見れる日はいつのことでしょうか(笑)

ちなみに、GSがQ1,Q2とCDSのスプレッドのタイトニングで儲けたのはわかりました。が、Q3~も同じように行くのでしょうか?

どっかの誰かは、GSは185ドルくらいまでいくわーといってましたが・・

Trinity @ NYC said...

>haustinさん、コメントありがとうございます。

クレジットスプレッドのタイトニングは6月終盤からやや鈍ってきており、GSがどういうポジションを取ってるのか知りませんが、ポジショニングの仕方次第ではQ3のFICC部門のトレーディング収益はやや停滞する可能性はありますね。(あくまで“可能性”です。)Q2を潤した会計処理変更の恩恵も、Q3で継続するとは思えないですし。

GSが185いくわーっ!って叫ぶのもいいですが、それって、リーマン崩壊前の7月のレベルですよね。ここから更に、どこから収益稼いでくるのか・・・。GSはインベストメントバンキングからの収益が高いという巷のイメージがありますが、仮にFICC部門のトレーディング益が落ち込んだ場合、現在のM&A市場のペースでは、いくらGSといえどもインベストメントバンキングの手数料でFICCの落ち込みをカバーすることはできないと思います。

でも、GSという会社は毎回サプライズ出してくれるので、Q3も楽しみ(?)ですね。GSのATMカードが出てきたら・・・それこそ、思いっきりサプライズですね!(笑)

Anonymous said...

ゴールドスミス(金細工士)とブラックスミス(鍛冶屋)より、ゴールドマンがブラックマンになることを願いつつ一つの希求の質問です。

日本ではバブル崩壊後、銀行(=米の商業銀行)を助けて、生保を殺すというような暗喩がありましが、これは金利低下に伴う生保の逆ザヤ現象を示唆していました。
実際に生保はこれで数社潰れました。

そこでですが、これと同様の現象が米国でも生じているはずだと想像し、これだろうと思ったのが、住宅ローンをベースとした証券化商品がローンの借り換えに伴って逆ザヤ化し、商品価値が毀損したのではと!?
下記にザクッと述べます。

     (構成比)
サブプライム 20 10%(金利は高め)
プライム   80  8%
      100  8.4%

ここでサブプライム全滅(完全デフォルト)なら

サブプライム  0  0%
プライム   80  8%
       80  6.4%

(注)上記の80と6.4%は、元本割れと元本ベースのリターン(ダウン)を示す。

上記に加えてプライム借り換え(低金利へ)なら

  ケース①
サブプライム  0  0%
プライム   80  6%(▲2%)
       80  4.8%
  ケース②
サブプライム  0  0%
プライム    0  0%
        0  0%

ケース②は借り換えで元(ベース)が完全消滅を示す。       

これは元本ベースで再度言えば、
100(8.4%)
 80(6.4%)
 80(4.8%) 又は 0(0%)

住宅ローンの証券化商品の法律的仕組みを正確に知らないが、ケース②はないと思うのでおそらくケース①で考えても、ローンの借り換えで米国民は金利負担軽減で得をしたが証券化商品の購入者たちは損害(時価評価ダウン)が拡大したと想像しています。
もちろん欧州勢にも影響が及んだと当然に推測される。

そして証券化商品に対しても親愛なるCDSが発行されていたはずであるから、上記の想像が正しいとすれば、当然にCDSも影響を受けることになると推測される。

ここら辺はどうでしょうか?
是非、師匠のご見解を賜りたいです。
宜しくお願い申し上げます。

現物くん said...

政局と相場についてとても明快なレスありがとうございました。

こちらでは早くも「民主党政策銘柄」と言われる銘柄群(主に教育関連や農業関連)が物色されておりますが、懸念も無いわけではありません。

例えば、現在700円前後の”最低賃金”を1000円に上げる政策が実現されると、低時給で成り立っている小売や外食にとっては厳しいことになりそうです。また株式譲渡益課税についても、現行の暫定税率10%を将来的には上げる可能性があります。

ただ家計所得が伸びれば内需全体にいい影響が出る可能性も。読みが難しいですね。

さてこちら以外で巡回してるページでもバロンズの記事について言及しているものがありました。いろいろ参考になるかもしれませんのでURL貼っておきます。
http://blog.livedoor.jp/okane_koneta/

Trinity @ NYC said...

>Anonymousさん、コメントありがとうございます。(Anonymousでコメント残してくださるかたが複数いらっしゃるので、今後できましたら、独自のネームでお願いします。)

日本の生保についてですが、最近わたしも年のせいで頭がボケてるので100%確信はないですが、わたしの記憶が正しければ、日本の生保の逆ザヤ問題は、当時の生保のB/S上で大きな割合を占めていた保険商品が金利保証されている商品であったがために、金利下降の恩恵を受けることができず、一方で長期投資をしていた資産側の債券のイールドが下がり、ALM上のミスマッチが起こり、それら金利保証の保険商品がB/S上から自然消滅してゆくしかなく、短期でミスマッチ解消が不可能だったがために起こった、と記憶しています。しかし、トレーディング用としてホールドしていた債券ポートフォリオは金利低下の恩恵でトレーディング益が発生し、P/L上の痛みを緩和していたはずです。また、日本の生保の場合、逆ザヤ問題のみならず、株式ポートフォリオの含み損および不動産投資から発生したロスも極端に肥大して、それがソルベンシー・マージンを激しく毀損し、何社もの保険会社が破綻に至った、と記憶しております。

米国の場合、日本の保険会社が10年前に苦しんだような金利保証タイプの保険商品が割合的に少なく、金利低下による逆ザヤ問題は日本のように深刻にはなっていません。しかし、日本の生保が株式や不動産のような高リスク投資で巨額の含み損を抱えたと同様に、高リスクの証券化商品への直接投資や、クレジットデリバティブス(CDO)に対するCDS発行を通じたリスクテーキングにより、投資ポートからの巨額損失が発生し、その投資損失が自己資本を毀損して財務が悪化する、という状態になりました。その最たる例がAIG、というのはご案内のとおりです。

で、証券化商品についてですが、これは金利が低下することで逆ザヤが生じるのではなく、レファレンスになっている試算(この場合、サブプライム融資)の延滞率が上昇することにより、予想されるキャッシュフローが低下し、それが現在価値(=債券のプライス)の低下を招き投資損失が発生する、という流れになります。また、相次ぐ格下げもスプレッド拡大をもたらし、それも損失拡大に寄与する格好になりました。

しかし、債券市場で取引されているスプレッドというのは、必ずしも、「理論値」どおりには動かないわけです。市場不安が拡大すると、実際のキャッシュフローから導かれる「理論上の現在価値」と、取引されているスプレッドから示唆される証券価値には大きな開きが生じることが多々あります。実際、サブプライム問題勃発の段階で、CDOおよび、それに付与されたCDSのスプレッドは、2年前からものすごく拡大し、ときには、取引価格が理論価値を大幅に下回り、これらに投資していた金融機関は欧州勢も含め、どこも巨額の会計損失を取らされました。しかし、リスクテーキングする体力さえあれば、そういう必要以上にディスカウントのかかった高リスク証券にさらに投資し、後日キャピタルゲインを得る、ということも可能だったわけです。(ゴールドマンの場合は、この手の投資ゲインでも儲けたようです。)

ですから、サブプライム関連の証券化商品およびそれらのCDSに関して言えば、すでに相当手当てが進んでおり、ここから先、さらに金融機関のP/Lに重い負担となってのしかかるというシナリオは、現時点では、可能性は比較的低いのではないでしょうか。(←すでに償却済みであることが多い、という意味。)

問題はプライムの住宅ローンと、商業用不動産で、こちらのほうは、この先どれくらいの損失が発生するのか注意が必要かと思われます。

ご質問に対する答えになっているかわかりませんが、とりあえず。

Trinity @ NYC said...

>現物くんさん

現在700円の最低賃金を1000円に、というのは、わたしもニュース記事で読みましたが、それって、43%以上の上昇、ですよね。生産性がそれについていかないのに最低賃金だけ上げたら、日本企業の収益性はますます圧迫されて株価低下への流れを作るのではないですか?(加えてキャピタルゲインタックスがもっとかかるのならば、日本株に投資するインセンティブはない。)

現物くんさんのおっしゃるとおり、小売や外食産業は厳しくなりそうですね。でも、マクロ的にはどうなんでしょう。日本人の賃金分布の実態を知らないので、あくまで私が勝手に抱いている【イメージ】の話で恐縮ですが、日本の場合「格差、格差」と言ったところで、アメリカの賃金格差とは比べ物にならないわけで、そこで最低賃金の上昇が、マクロでみたときに、どれほどの内需刺激をもたらすもののか、わたしにはどうもピンときません。この記事を読んだときは、多分に民主党のポピュリズム戦略、という印象を抱きました。

現物くん said...

比べ物になるんですよこれが。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%9B%BD%E3%81%AE%E6%89%80%E5%BE%97%E6%A0%BC%E5%B7%AE%E9%A0%86%E3%83%AA%E3%82%B9%E3%83%88

確かにアメリカほどではありませんが、移民受け入れに消極的な日本でこの数字ですから、実質いい勝負と言ってもいいのではないでしょうか。1億総中流と言っていた時代が懐かしいものです。

民主党が時給千円をどれほど真面目に考えているのかわかりませんが、それに耐えうる労働力でなければ企業の海外移転も考えられますね。しかし求人誌等を見ると、海外に出やすい大手製造業の期間社員などは千円に近いところです。出るべきところはすでに出た後かも。中小製造業にとっては悩みどころかもしれません。上で挙げた小売や外食は、首都圏以外ではまず時給千円以上を見ませんので死活問題になりそうですね。800円あたりで政治決着してもこのセクタは打撃を受けそうです。

本日のニュースとして、これまで民主党が難色を示していたインド洋などでの同盟軍への給油活動を、認める方針に転換した報道がなされております。これまでポピュリズムと言われるような言動をしてきた民主党ですが、政権が現実味を帯びるにつれて様々な面で現実路線を考えるようになってきているようです。あんまりコロコロ変わるとそれはそれでマスコミに叩かれることになるんでしょうけど(笑)。

ttori said...

コメントバックありがとうございます。
今回(+前回)のGSの決算数字がサスティナブルかどうか、というのが大きな論点だと思います。実際トレーディングの現場感覚でいうと、「こんなに儲けられるのはいつまで続くんだろうか」という感だとは思いますが。。議論されているCDSのコモディティ化に伴うスプレッドの低下圧力やボラの低下でトレーディングがどこまで引っ張れるか、注目しています。(ただ、ボラが低下すると今度はボリュームが増えてしばらく続くかもですが)。

Trinity @ NYC said...

>現物くんさん

なるほど、ジニ係数でみると、日米にさほどの差は感じられませんね。情報ありがとうございました。でも、感覚的には、日本に帰るたびに日本の(全般的)な豊かさを感じ、自分の両親と夫(←米国人)の両親の老後のあり方を比較すると日本という国はなんと豊かで恵まれた国だろうと感じ、ジニ係数では把握できないライフスタンダードの違いをわたしは強く感じます。米国の場合、現在話題になっている医療保険の問題しかり、子供の教育の問題しかり、同じ1ドルを払って得られるものの「感覚的な価値」に、日米で極端な差異を感じます。

アメリカは、良い意味でも悪い意味でも自己責任だと言って各自に突き放すところがあるので、社会的な強者と弱者のメリハリがつきやすいといいましょうかねぇ。米国のミニマムウェイジは連邦レベルで現在$7.25、それをベースに各州で数字が調整されます。わたしの住むNY州では時給$7.15のようです。ここから税金払って$6ドル残るかどうか。NYで時給$6だと週の手取り200ドルちょっと・・・。厳しいなぁ・・・。

いずれにせよ、日本の政界は遠くからみていると「ったく、なにやってんだろ・・・」と呆れることが多いです。8月に政局変化が訪れたら、まずはお手並み拝見、ですかね。

Trinity @ NYC said...

>ttoriさん

わたしはQ1決算発表のときに、GSの収益性にSustainabilityはない、と実は思っていたんですよね。実際、4月15日付けのMHJ記事をごらんになっていただくとわかりますが、そこに、

決算数値を見る上での最重要ポイントは、「収益が持続可能か(Sustainabilityがあるか)」

であると、太字+赤字+フォント18ぐらいで(笑)強調してます。 http://wholekernel.blogspot.com/2009/04/1q09.html

ですからQ2で同じだけ数字を挙げてきたときは、わたしも正直おどろきました。

Q1とQ2のFICC部門益は数字自体は似ていますけれど、詳細をさらに掘り下げてみれば、おそらく異なる構成になってるのではと推察します。Q2の数字にはCDSトレーディングのみならず、会計処理変更にともない証券化商品の値洗いで生じた益が大きかったのではと想像しています。

CDSの規格化がすすみプレミアムが縮小してゆくとは思いますが、これはわたしの見方ですが、ここ数年、CDSがキャッシュのスプレッドレベルから極端に乖離してワイドニングし、リスクヘッジとしてのCDS使用が困難になっていましたでしょう?規制や政治的圧力もあり、ボラティリティについては確実に是正方向に進んでいくとして、ボリュームの方はキャッシュ(特に証券化市場)が正常化に時間がかかること、また、デリバティブス市場のボリューム増を支えてきたスペキュレーション・マネーの戻りがかつてのようには見込めないことなども考えて、当面はプレミアムの縮小にあわせる形での(市場規模での)ボリューム増は期待しているほどみこめないのでは・・・などとも、チラリ考えております。

そういう環境で、GSがQ3でもFICCトレーディング益をこのレベルを維持できたら、再び驚くだろうと思います。