Thursday, July 23, 2009

ギャンギャンな盛り上がりの陰で、UPSの顔は真っ暗

決算シーズン。パターンとしては、

「(引き続き悪いけど)予想してたほどひどくないみたいだと株価高騰。

一方で予想トントンなら、株価暴落。

今日のアマゾン・ドット・コム(AMZN)はすごかったな。

前の日にeBay(EBAY)が「EPSは29%下がったけど、予想よりマシだった」ってことでギャンギャン上がり、それならアマゾンも、ってことで一緒になってギャンギャン上がった。AMZN、今日一日でで$5.08(5.72%)上昇して$93.87に!

ところが、市場がひけてから実際のQ2決算数字が出てきて、それが「市場の予想とトントン」だったため、「期待裏切りやがって」ってことで、今度はゴーンと$7近く下がって、今日一日のギャンギャン分は帳消しに・・・。

しかし、何に「期待」してたのか。

ったく、この連日の「ギャンギャン」の雰囲気についてゆくだけで、筆者はヘトヘトである。

マイクロソフト(MSFT)も、日中は「期待してギャンギャン」したけど、その後に「実際の数字見たらガッカリ」の失望売りで、後場が引けてから叩き落ちてるようだ。

MSFT、ここ一、二週間のナスダックのギャンギャンに【冷や水ぶっかけた】格好である。明日もギャンギャンは続くだろうか・・・。


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今日のアマゾン株のギャンギャン振りをモニターで見ていたら、フェデラル・エクスプレス(Fedex)の配達トラックが玄関前に止まり、一昨日アマゾンで買った商品が届いた。

筆者はNYのマンハッタンに自宅があるが、北東部メイン州のド僻地に小さいセカンドハウスを持っていて、夏場は避暑もかねて田舎で過ごす。(いま、この記事も僻地で書いてます。)

ここの田舎がどれほど僻地かというと、まず徒歩では、いちばん近くの隣家に行くにも10分以上は歩かなくちゃいけない。一番近いゼネラルストアで車で片道20分、いちばん近い映画館(上映は日に一回、一本限り)は車で片道1時間、いわゆるアメリカの「モール」という大規模お買い物センターに行くには、いちばん近いモールまで車で片道2時間半ハイウェイでぶっ飛ばす必要有り、というぐらいの僻地である。アメリカは広いですからね。日本の知床級の僻地なら、履いて捨てるほどあるんである。

こんな僻地にいながら、買い物に関しては、正直あまり不都合は感じない。

というのも、必要なものはたいがいネットショッピングで間に合ってしまうからだ。

今すぐ必要なものは別としても、何か欲しいものがあれば、洋服だろうが、エレクトロニクスだろうが、洗剤だろうが、冷蔵庫だろうが、書籍やDVDであろうが、ドッグフードであろうが、インターネットで9割以上ことが済む。

ネットショッピングの便利さに気づいてしまうと、お店にわざわざ出かけていく気など起きない。若かったころとちがって、最近は買い物に出かけると疲れるだけ。毎回、愛想の悪い店員に腹立てて帰ってくる。

生鮮食料品だって、マンハッタンでは、Fresh Direct というネットの食料品同日宅配サービスがあり、小額の配達料で、玉ねぎ・ニンジンから肉、魚、アイスクリームまで、一般スーパーで買うようなものなら何でも自宅アパートまで運んでくれる。品揃えも結構豊富なので、これが多忙なニューヨーカーに大人気となった。マンハッタンの街中では、Fresh Directと書かれたトラックが至るところに停まってるし、ダンボール箱に詰められた食料品をアパートビルに運んでいる配達のオニイチャンたちもあちこちで見かける。マンハッタンなんて、5ブロックも歩けばどこにだってスーパーがあるんですぜ。それでも、ネットで食糧買い。我が家も、ビルの玄関出ると目の前がスーパーだが、このサービスを利用するようになってから、自分でスーパーに出かける頻度が減った。

いまや、ネットで買えないものはない。

マンハッタンの大都会にいようが、超僻地にいようが、同じものを、同じ値段で、好きな時間に買えて、配達日も同じ。配達の信頼度も高い。

わたしのようにお店に出かけるのが億劫な人間には、ネットショッピング時代の到来はPCや携帯電話の出現ぐらい画期的な出来事であったな。ありがたい。

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で、アマゾン、である。

筆者は、いまや、アマゾン無しでは生活できなくなっている。書籍だけじゃなくて、なんでもかんでも、アマゾンで買う。

つい先日は、小型のチェーンソーを買った。その前は飼い犬のオヤツを買い、その前は小型のノートブックPCを、その前は大型の液晶テレビをアマゾンで買った。食器もアマゾンで買ったし、マットレスも毛布もシーツも、インスタントラーメンも、庭に置くベンチまで、みーんなアマゾンで買った。

なぜアマゾンかというと、送料込みで比較して、値段が他所より安いことが多いからである。小売店の店頭で買うより確実に安い。うちは、何か買うときは、必ず、アマゾンに同じ商品が出ていないか確認して価格を比較してから買う。

さらにアマゾンのいいところは、売られている商品の多くが【送料無料】になっていて、手元に届くまで数日我慢すればいい。もっと迅速に配達してもらいたかったら、筆者のように年間70ドル程払ってプレミアム会員になると、2日目配達でも送料無料、翌日配達の速達便にしても、重量に関わらず送料5ドル程度である。

もちろん、送料は、あらかじめ商品の価格にうまくプライシングされているのであろうが、消費者の心理としては【送料無料】と聞くと、なんだか得した気にもなる。(笑)

たとえば、先日買った小型のノートブックPCだが、午後4時までに買ったので、送料数ドル払っただけで、翌日の昼までに届いた。車で片道3時間走らないとPC売ってる店が周囲にないというこのド田舎の片隅でですよ、買ってから24時間以内に、新品のPCが手元に届いたんである。価格もNYの小売店より10%近くも安かった。

筆者は、もう2度と、小売の電気店にわざわざ行ってPCを買うことはないであろう。

筆者のビヘイビアが特別なわけではなく、米国の消費者はどんどんネットショップへと流れていっている。

その証拠に、同社の09Q2の業績は、当期利益は今季限りの調整項目がいろいろ入って前年同期比で$158(Million)から$142(Million)に10%下がったが、トップラインの収益は14%増の$4.65(Billion)で、そこそこの業績だった。個人消費が落ち込む中でトップラインの利益は確保。Q2の特徴としては、ゲームソフトとゲーム関連機器のセールスが北米で弱まり、Q2の足を引っ張った模様。(ゲームソフトと機器、今年はダメみたいですね。関係ないが、SONYのブルーレイも、ウォルマートの後押し空しく、米国ではすでに死に掛けておるぞ・・・。)

(ちなみに、MHJ筆者は、断じて、アマゾンの回し者ではありません。)


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アマゾンなどのネットショップの普及を支えているのが、Fedex(FDX) や UPS(UPS)などの「配達屋」である。

ショッパーが自分でお店に足を運ばなくなった分、彼らがこちらにモノを運んでくれる。

今日(23日)はテク関連の株が一日中ギャンギャンの騒ぎだったので無視されていたが、今朝は、その「配達屋」の大御所UPSの業績発表もあった。

このUPSの業績発表とCEOのコメントについて、今日のウォールストリートジャーナルが手短だけど重要なことを書いてたので、忘れないように自分のブログに記録しておく。

Meanwhile, in the Real Economy... (WSJ、7/23/09)

UPSの決算発表については、この記事

UPSのQ2当期利益は前年同期比で49%ダウン。トップラインの売り上げも17%ダウンした。米国内・国際部門ともにリテールセールスの落ち込みが目立ち、需要は引き続き脆弱。

Q3業績についても、市場コンセンサスEPSが59セントに対し、会社予想EPSは45~55セントと弱気。電話会議の席で、パッケージのボリューム(数量)がQ2に続いて5%近くの落ち込みを見込む、と同社のCFOは述べた。

(WSJ記事より)
"We don't see any convincing signs of firming," Kuehn said in an interview. But "it appears that things are flattening out."

「(経済が)底堅くなって来ているという兆候はまだ出ていない」が「悪化の度合いが勢いを失ってきたように見える。」とクーンCFOはインタビューで述べた。



UPSの業績を左右する2大ファクターは、(1)小売の売り上げと(2)工業生産なのだが、UPSが見る限りでは、どちらも極めてネガティブな状態にまだいると言う。

また、全米の学校は9月から新学年が始まるが、普段なら今頃から、新学期用(Back-to-School)需要がチラホラ出始めてもいい時期なのだが、今年は、その新学期シーズンに向けた配達が動き出している様子がみられない、という。

“Our trends so far in July show no material uptick in growth, We don’t have any confidence that either demand or activity is going to pick up substantially.”

「今のところ、わが社の7月中のトレンドは、成長を示唆するような上方への動きはまったく見えていない。我々は、需要についても経済活動についても、目に見えて改善するといったコンフィデンスは全く持ち合わせていない。」(CFOの発言)



UPSの今日の株価は、市場全体の「ギャンギャン」モードにつられて2.3%の上昇であったが、当の会社自体は、朝一からすこぶるネガティブなトーンで業績発表を行ったのだ。

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上で紹介したWSJ記事中に、The Pragmatic Capitalist というブログが紹介されていて、ダウ9000突破で盛り上がってる市場をよそ目に、「今日注目すべき唯一のニュース」として、このブログが、こんなことを書いている。

“UPS and FedEx are, in my opinion, the two best barometers of economic growth in the world. While the market rips higher on “better than expected” earnings and the strong housing numbers they are completely overlooking the fact that UPS sees no signs of recovery. As a middle man in almost every transaction it is nearly impossible to see a sharp recovery that UPS is not involved in.”

「UPS と Fedex こそが世界の経済成長を測る最良のバロメーターであるとわたしは考える。市場は”予想よりもよかった”企業利益と、強含みの住宅統計で盛り上がっているが、UPSが経済回復の兆候がまったく見えていないと述べた事実を市場は完全に見過ごしている。(これら配達サービスの会社は)あらゆるトランスアクションのミドルマンであり、UPSが参加しない状態で力強い回復が起こるなどというのは、ほとんど不可能だ。」


いつもウジウジと暗い話ばっか書いてるMurray Hill Journalであるが、今回もやはり筆者は、この『The Pragmatic Capitalist』というブログの意見に賛同するね。

アマゾンのトップラインの売り上げは伸びてるんであるよ。筆者もどんどん配達してもらってます。でも、UPSの業績は落ちている。小売は全体的に回復からは程遠い。

そんな暗い話ばっか注目してたら、儲からないぞって?

ご心配なく。今年3月に仕込んだFedex株、持ってますんで。(先週売らないで、よかったー!笑)

ゴールドマンが、S&P500の目標レベルを上方修正し、このラリーは継続すると言っているが、ゴールドマンとここ数ヶ月敵対関係になってる人気ブログ『Zero Hedge』は、GSが上方修正するときは、彼らがポジションを吐き出すときだ、これ以上ポジション取れなくなって身軽にならなくちゃいけなくなったから、ラリーは続くなんて言って、自分達はここで売りに転じ、高値で売り抜けようとしてるんだ、と書いていた。

Q3のGSのポジショントークに注意せよ!?(笑)

やっぱ、Fedex株、売ろうかな。(爆))



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6 comments:

Chee said...

メインの僻地、いいですね~。
ニューイングランドが懐かしくて、涙が出そうになりました。

TrinityNYC said...

>Cheeさん

わたしはアメリカなら、ニューイングランド地方が一番好き。四季がはっきりしていて美しい州が多いですよね。メイン州のド田舎、北海道のような気候と雰囲気です。富良野のように、いまの季節、ラベンダーやハマナスが満開ですよ。

現物くん said...

最近、自分の立ち位置がよくわからなくなります。もしかして俺って悲観に過ぎるのか?とか。そんな時は世に数多あるトレーダーさんたちのブログを見て回ったりするわけですが、やはりみんな考えてることは似ている。相場は多数決では動かないということでしょうねえ。

つい先ほど、米民主党の議員が格付け会社に対する大胆な改革を検討すべきと発言したニュースが入ってきました。S&Pやムーディーズのことを指すそうです。だけど私は、自己ディーリング部門を持つ会社が別部署であっても格付けしちゃいけないと思うんだな。

日本の個人トレーダーたちもGSの格付けが怪しいことは知っています。本当にウソが上手い人は8割の真実に2割のウソを混ぜるんでしたっけ(笑)

陰謀論が好きな人たちは、米政府にGS出身者が多いこともあって、GSが本当に困るような規制は米政府には出来ないと考えていますね。力関係はGSのほうが上だと。

haustin said...

GSのポジショントーク!わかります。
かなり警戒モードに入りますね~。
今まで何度、彼らが高値をいって強気な風に見せかけたとたん、しばらくすると下がっていくことがあったか。

今後の値動き、楽しみです。

TrinityNYC said...

>現物くんさん

コメントありがとうございます。わたしも時々フト「わたしってネガティブすぎ?」と思いますわ。(笑) しかし、短期的に株価がこうして上昇しても、それをサポートするファンダメンタルズはそろっていない、と、やはり強く思うわけです。近頃流行りのGS陰謀説も、株価上昇に根拠がないと感じているひとが多いからじゃないか、と思うのですよね。以前の記事でご紹介した1930年のウォールストリートジャーナルでも、暴落後に株価が上昇していた期間、似たような「陰謀説」「株価操作説」などがずいぶんと巷で語られていた、というのを読みました。これが経済ファンダメンタルズがしっかりしたものであれば、そんな疑問を持つこともない、そういうことじゃないか、疑問を投げかけるのは、いつまでも確信が持てない証拠じゃないか、と。

TrinityNYC said...

>haustinさん

最近のでいちばんすごかったのは、原油200ドル、ってやつかしら。(爆)

3月に警戒しすぎてQ2のラリーに乗り損ねた投資家が少なくないから、今回は、ショートカバーだけじゃなくてリアルマネーも入ってきてるみたいですね。でも、上で現物くんさんにも書きましたが、ファンダメンタルズを無視して株価が上がり続けるはずはない。そう自分に言い聞かせ、今週は「小刻み」に(笑)いってみようと思ってます。