Wednesday, May 6, 2009

バンカメ株跳躍:市場は真性マゾ

いよいよ、明日(5月7日)は、米銀ストレステストの発表日である。

正直な気持ち、待ちきれない。

結果が知りたいから待ちきれない、という意味ではなくて、ストレステストの結果を巡ってひと月も続いた【無意味なアホ騒ぎ】にこれでようやく終止符が打たれるかと思うと、ほっとする。

発表を明日に控え、今日のニューヨーク株市場のアホ騒ぎは最高潮に達した。

今朝一番に出された、バンカメが340億ドルの普通株増資(優先株の転換による希薄化)が必要になりそうだというウォールストリートジャーナルのリーク記事を先頭に、どの銀行が普通株での増資をしなくちゃけいけないか、しなくてもいいのかと、今日は一日、次から次へと情報がリークされ、ニュース見出しになって流れ続けた。

フィナンシャルタイムズだったかが、「ストレステストの結果をワクワクして待ってるのはマゾっぽい」と書いていたけど、まさにFTの言う通り。マゾっぽいどころか、真性マゾ、である。

バンカメなんて、今日一日で株価17%アップですぜ。

バンカメの3月末での有形株主資本(TCE)は700億ドルぐらいしかなかったんだよ。それの50%に相当する340億ドルが足りなくなりそうという痛いニュースを聞いた市場は、痛がるどころか、嬉しくて嬉しくて、今日だけでバンカメ10億株も取引される大商い。

どっかの馬鹿がTVで「これで不透明さが払拭された」とかほざいていたが、ヤツがどんな「不透明」なシナリオを描いていたのか、聞かせてもらいたい。

別の馬鹿は「国有化される可能性はなくなった」ともほざいていたが、あれほど、バーナンキやガイトナーがあちこちに登場して、その度に「国有化はしません」と繰り返し言っていたではないか。(2月28日MHJ記事『シティグループのマルチ国有化:一縷の望みに涙を拭け』参照。)

もしも、あなたが、今日一日、バンカメ株がズンズン上がってゆくチャートを眺めているとき、「お願いッ!もっと、もっと、増資してぇぇぇぇええええ!!!!」というマゾヒスティックな市場の叫びが聞こえなかったら、あなたには投資の才能がないと思ってあきらめたほうがよろしい。

というのは冗談だが、いったいどこの世界に、700億ドルの資本基盤の半分が毀損するというニュースを聞いて、飛び上がって喜ぶ阿呆がいるのか?(でも、いたんだな~、これが。)

アメリカ株市場は、もはや、冷静な判断力を失っている。

あさって金曜日は雇用統計が出てくる予定だが、これも、きっと、どこかの馬鹿が出てきて「失業者数はそんなに減ってなくても、失業率のセカンドデリバティブス(失業率の増加率、という意味)が下がってきてる!失業者の増え具合がスローダウンしてる!!」とかはしゃいで、【GREEN SHOOTS】説で盛り上がるに違いない。増加率のセカンドデリバティブスなんて、分母(=失業者総数)が大きくなれば勝手に下がってくれるに決まってるではないか。もう勝手に、セカンドデリバティブスでも、サードデリバティブスでも、やってろッ!

   ★   ★   ★

株式投資というのは、基本的には、その企業の『収益見込み』をベースに株価が決定される、そういう投資であろう。収益が上がると見込まれたら、株価は上がる。

つい2ヶ月前には一株3ドルを切るほど見放されていたバンカメ株が、今日は、12ドル超。3ドルだったときは、たしかに国有化に対する不安から市場はオーバーリアクションしていたかもしれない。

でも、当たり前のことだけど、340億ドルの資本金が足りないというのは、自己資本基盤に340億ドル相当の穴があいてる、という意味だよ。向こう2年間で340億ドルの当期損失になる可能性がある、という意味である。

340億ドルとサクッといいますけれどさ、円に直せば3兆5000億円だよ。

3兆円以上の【ドデカイ損失】が出てくる可能性を前にして、嬉しくなって興奮して買いまくるってのは、これ、完全にマゾ。(あるいは、一種の心神喪失状態か。)

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以前のMHJの記事で、銀行のおおまかな収益コンポーネントについて説明したことがある。(4月19日付けMHJエントリー『緋文字の汚名を晴らしたい:JPモルガン1Q決算』参照)

あのエントリーで説明したように、金融機関の本業の儲けを分析するにあたっては、信用コストが発生する″前″の段階でその金融機関がどれほど収益を出せるのか(=『償却前利益』という)が非常に重要です。

バンカメの本業の収益力を見るために、4月29日に同社から発表された1Q09の財務資料を、ちょっくらのぞいてみた。

この会社の場合、1Q09にメリルとカントリーワイドが連結されたにも関わらず、極端にコアの金利収支が改善してるようには見えないというのが結構哀しい。1Q07の業績を押し上げた債券トレーディング益は一過性の性格が強く、今後恒常的に期待できる種類の収益じゃないから、1Q09の数字は、今後を占う上で、あまりアテにならん。

今年は不況の年で収益がバンバン上昇するような地合いじゃないし、コンサバにみて、この会社の『償却前利益』は1年間に300億ドル、2年間で600億ドルも出るかな、という程度の気がする。

600億ドルの償却前利益が340億ドルの損失になるためには・・・

2年間で1000億ドル近くの償却費用(引当金も含めた信用コスト)が発生する、と当局が判断した、という意味になるんですけどね・・・

1000億ドル・・・10兆円の償却費用・・・シーン・・・

市場アナリストがやるようにスプレッドシートで詳しく計算分析したわけじゃなくて、封筒の裏に手書きで数字並べて計算しただけだから、かなりイイカゲンな計算だけど、雰囲気掴むだけなら、こんなもんでいいでしょ。(笑)

会計処理の変更とかで表面上は少しは手加減されるだろうけど、結局、バンカメの不良資産から発生する償却費用は、目先終了しそうもない、ってことである。

これからまだまだ多額の当期損失が出そうな会社に、P/Eレシオもへったくれもない。レシオの分母、マイナスじゃんか。

それでも、株価は上がり続ける。

シティ証券のストラテジストが数日前のレポートに

「グローバルエクイティ市場は企業収益見通しと分離して、トワイライトゾーンに入った」

と書いていた。(英文レポートはここ。)

筆者は、レポートの内容は全面的に同意はしないけれど、レポートタイトルは気に入った。

シティのストラテジストチームには、FTの「株市場はマゾ」と並べて、筆者から【言い得て妙大賞】を差し上げたい。

   ★   ★   ★

ファンダメンタルズは何も改善してないのに、「金融株は下がり過ぎ」という根拠のハッキリしないコンセンサスだけを頼りに、3月の底以来、米国のインデックスを押し上げ続けた金融株。

しかし、市場に話題を提供してくれた「ストレステスト」の結果が公表されてしまったら、エクイティ市場は次は何に話題を求めるのだろうか。

次に出てくるとすれば、いよいよ、商業用不動産・・・。

しかし、これをネタに、どう盛り上がろうというのか・・・?



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1 comment:

チー said...

それについていくだけの日本の市場。
もはや思考停止?