とりわけ昨今のアカデミアの世界では、この「定量化すりゃーいい」というのが度を越して、目も当てられなくなっているところあり。
先日は、こんな話を聞いた。
こともあろうに、派手なパフォーマンスとジョークで個人投資家の間でお茶の間的人気を博すCNBC局の人気番組『Mad Money』のホスト、ジム・クレーマー(↓)を対象に、これまで彼が番組で推奨した株式のパフォーマンスを調査して、クレーマーのストックピッキング能力についてわざわざ【学術論文】にしたためて発表した大学の研究者がいる、ってんである。
ボストンにあるノースイースタン大学のふたりの教授が書いた『Investing in Mad Money: Price and Style Effects』と題された、この「学術」論文、33ページにわたるマジメな論文である。(全文を読んでみたい酔狂な方は、こちらへ。)
この論文の10ページ目あたりから、アカデミックな論文に付き物の【小難しい数式で表現したモデル】が出てくるが、こういうワケわからん“研究”が現代のアカデミアとPh.D.軍団の実態であるとすれば、実に嘆かわしいことではないか。ヘリコプター・ベンも嘆くはずである。
そういえば、かなり昔ですが、小室哲也が日本のポップミュージック界に旋風を巻き起こしていたころ、日本のどこかの大学の先生が出てきて「小室哲也の生み出す音楽がなぜ多くのひとびとの共感を呼び感動させるのか、学術的に分析したら、その理由が判明した」と、その【研究結果】をマジメに披露していたよ。このノースイースタン大学の教授の話を聞いて、急に思い出した。
小室さんが最近どこで何やってたかは聞いてるけど、小室さんを<アカデミックな切り口>で分析してたあの大学教授のセンセは、いまどこで何やってんだろ。いまだにコツコツ小室研究やってるとは思えんが、あのセンセがしたためた【壮大なる学術論文】は、いまいずこに・・・。
前回のMHJ記事の最後で、投資の世界にも【天才】というのはやはりいて、そういう人を前にすると、自分は「モーツァルトを前にしたサリエリ」のような気持ち(←意味がわからないひとは、映画「アマデウス」をご覧ください)になると暗いムードで締めくくった筆者であるが、アカデミアの世界発のこういう話を聞くと、自分もさほど捨てたもんじゃないと急に思い直し、ちょっと明るくなった次第である。
(それにしても、こんな無意味な研究でヒマつぶしてても大学から給料もらえるんだから、うらやましい。ファカルティとして就職するなら、ノースイースタン大は狙い目か。)
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さて、ここまでは、どうでもいい話。ここからが今日の本題である。
初旬に出された銀行ストレステストの結果発表以降、「材料」としてはたいして良い話はなかった(つーか、悪いニュースのほうが多かった気もするが・・・)にも拘らず、5月の米株式市場は持ちこたえ続け、今日(金曜日)もダウは8500をマークして、3ヶ月連続の株価更新を成し遂げた。
月末のレベルが3ヶ月連続で上昇するのは2007年の8-10月以来のことだそう。
2007年当時も、米国内では短期資金市場(CP市場)は最悪のズタズタ、Citiが手がけていたSIVs(Structured Investment Vehicles)が破裂寸前というウワサはあちこちでささやかれていた。
さらには、住宅価格下落、サブプライム問題の深刻化・・・と、あげれば切りないほど悪いニュースであふれていたのが当時の実態だが、今振り返ると、2007年の夏とダウがピークをつけた10月までの間というのは、やっぱり、今と同じように、悪いニュースは聞き飽きた、何でもいいから、明るいニュースを探したい、というムードで満ちていた。
たとえば、2007年なんかは「米国経済が減速してもBRICsがあるさ!」という【デカップリング(de-coupling)説】に人々はまだしがみついていたから、米金融株がセルオフを迎えても、コモディティリッチなBRICs市場は勢いを失っていなかった。
コモディティブームに支えられた新興国投資に望みをつなぎ、米国の経済成長のかげりに対する不安を押しのけようとしていた、とでも言おうか。
たとえば、2007年なんかは「米国経済が減速してもBRICsがあるさ!」という【デカップリング(de-coupling)説】に人々はまだしがみついていたから、米金融株がセルオフを迎えても、コモディティリッチなBRICs市場は勢いを失っていなかった。
コモディティブームに支えられた新興国投資に望みをつなぎ、米国の経済成長のかげりに対する不安を押しのけようとしていた、とでも言おうか。
米国はじめ先進国からのエマージング市場への資金流入は当時かなり顕著な動きで、それがBRICsの株価を押し上げたりしていた。このムードは2008年初頭まで続き、ゴールドマンが、原油価格がバレルあたり200ドルになるとぶちあげて話題になったのは2008年の3月ですよ、覚えてますか?
2007年当時のニューヨークでは、これらエマージング市場の企業達がIPO資金を求めて怒涛のように米国に押し寄せて、連日連夜ウォール街にお百度参りしていた。
2007年当時のニューヨークでは、これらエマージング市場の企業達がIPO資金を求めて怒涛のように米国に押し寄せて、連日連夜ウォール街にお百度参りしていた。
が、実際にアメリカ経済が崩壊し始めると、デカップリングどころか、モロにカップリングしてましたね・・・。
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今回も3ヶ月連続の株価上昇となったわけだが、少なくとも金融株については、5月は材料的には決して良い月とは言えなかった。それでも、かなり堅調に株価が推移した理由のひとつとしてよく言われるのが、「ショートカバー」。
NY証券取引所が5月27日付けに発表したリリースによると、5月の前半(15日付け)の2週間で、ショートポジションが151億73百万株(4月末)から151億46百万株まで減少したそうで、これは2千7百万株の減少、ショートポジション総数はNYSEにリストされてる発行済み株式数の4%に相当するという。
TrimTab.com というサイトが、『ラッセル3000』でも同様の分析をしていて、こちらのほうは、セクターごとのショートポジションのドルベースでの動きをグラフで示していて、興味深い。
このグラフを見ると、Russell3000のショートのネットポジションは、ドルベースで約58億ドルのカバー、うち、5月に株価上昇が顕著だった金融セクターとハイテクセクターがそれぞれ50%、35%と目だって多かった。逆にネットでショート“セリング”のポジションだったのが、エネルギーセクターと工業株であった。
ともかく”Oversold”(売られすぎ)と判断された株に一斉にショートカバーが入り、短期間で一斉に同じ方向に売買を繰り返しリターンを稼ぐトレーダーが多いような雰囲気がいまは濃厚だから、中には、「(ファンダメンタルズで考えたら)ありえねーだろ」みたいなチャートを描く小型株が出てくる。
たとえば、某ブログで話題にあがっていたチャート:Diedrich Coffee (Nasdaqティッカー:DDRX)(↓)
大御所スターバックスが息も絶え絶えだっつのに、コスタリカ産のコーヒー豆売ってるDiedrichの、どこがそんなによくて、数週間で1500%も株価あがってんのか・・・。こういうのになると、もう、ファンダメンタルズでもテクニカルでも説明つかず、メチャクチャである。(どことなく、インサイダー情報のかほりが・・・)
ノースイースタンの教授たちには、ジム・クレーマーのストックピッキングより、こういうことを学術的に説明してもらいたい。
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小型株ならまだしも、大型株でも、ファンダメンタルズでみたら「それ、ありえねーだろ」みたいな株価つけてるのが一杯ある。
たとえば、JPモルガン。
PERでみたら60倍以上ですよ。クレジットカード融資が相当腐ってきてるらしいしことはCEO自らが数日前に認めていたし、ここは商業用不動産の融資ポートフォリオもかなりデカイし、他の銀行株同様、財務的にはアチコチ不安だらけ。
「勝ち組」であるのは認めるが、ファンダメンタルズでみたら、PER60倍って、説明つかんでしょ?
これは次の機会にでも書きたいと思ってるが、JPモルガンの場合、ワシントン・ミューチュアルを買収したときに買った融資ポートフォリオの簿価(Book Value)と、実際のローン返済のキャッシュフローの現在価値との差が290億ドルもあるらしく、これは現行の会計処理では、将来、会計上の戻りとして収益計上される類のものなので、その調整をほどこすとPERはもっとずっと低くなる、という意見がある。
ま、それもあるかもしれないけど、だからといって、60倍って、どうよ。
テクニカルに見たって、なんだか、シックリここない。JPモルガンの、Short Interest Ratio(空売り残高比率)は、ここのところショートカバーが派手に入ったみたいで、レシオはずいぶん低くなってるんだよ(現在0.7だよ!0.7!)。
これでもなおかつ、6月以降もJPモルガンはじめ金融株が上昇し続けたら、筆者は「やっぱり何か変・・・」と確信することにしよう。(いや、4月28日のMHJ記事でも書いたけど、すでに、ひそかに、なんか臭う、なんか変・・・とずっと疑ってるんですが。笑)
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今日、5月最後の金曜日の米株市場なんて、最後の20分でゴーンと跳ね上がって、5月の最後はダウが8500回復!やりましたーーーっ!
・・・って、はしゃいでいましたけどさ、でも、今日金曜日の最後の20分って、これといって特筆するような話題なんて、何もなかったじゃんか。
なのに、いったいなんなんですか、今日のこのSPYのチャートは!
オカルトか。
うーむ・・・ファンダメンタルズでもない、テクニカルでもない、何か別のパワーが作用しているという【巷のうわさ】は、やっぱり本当ぽいな・・・。
【巷のうわさ】とは、「米政府が関与して株価が下がらないよう裏で操作してる」というウワサである。
さて、真相はいかに?
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