Friday, May 15, 2009

住宅売れなきゃブルドーザーで在庫調整

ミシガン州に住む42歳の郵便局員が、住宅ローンの支払いに充てようと、勤め先から2万ドル相当の切手を盗みネットオークションで売ろうとしていたことが発覚してクビになったというニュースを読み、そのマヌケさに呆れながらも、筆者にはちょっぴり思うところがあった。

窃盗犯として逮捕されちゃったから、彼の持ち家はフォークロージャになることが、ほぼ決まりですね・・・。

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米国の住宅フォークロージャ(銀行による担保物件の差し押さえ)が止まらない。

全米のフォークロージャ物件を調査しているRealtyTracの昨日付けリリースによると、09年4月のフォークロージャ数は34万2000件、前年同期比で32%増、だったそうである。(グラフは全米フォークロージャ数の推移)



これは、平均すると「372戸に1戸の割合で、ローンが払えずに、銀行から差し押さえ宣告を受けた」という意味ですと。

にっちもさっちもいかなくなって職場から切手盗んじゃった・・・というのも悲しいが、アメリカ家庭の多くが、月々の住宅ローン支払いにヒーヒー言ってるわけですね。

09年3月のフォークロージャ件数も34万件だったので、前月からみれば増加はほぼ横ばいではあるが、毎月ごとの増加率なんてのは、最低でも数ヶ月間のトレンドとしてみるべき類(たぐい)のものであって、ひと月だけ見て分析したって、何の意味もない。

これを「横ばいだ!横ばいだー!」とポジティブに解釈して喜んでいたのは、【Green Shoots説】のプロパガンダを24時間TVで流しまくってたCNBC局の連中ぐらいである。CNBC局ったら、視聴者にオバマ政権を糾弾するティーパーティをそそのかしたりして、ついこの間まで政府と仲悪かったのに、いつのまにか政府の御輿かつぐようになってるな。変身早すぎるぞ。

CNBC局は、先週も、米失業率の増加率という【微生物レベル】の話をポジティブに誇張するだけ誇張して、ウキウキしやすい一般大衆をその気にさせようとしてた“常習犯”であるからして、CNBC局のムード作りに惑わされてはいけない。

去年の暮れに銀行が政府からフォークロージャのモラトリアム(一時凍結)を強要されてた期間は、銀行もおとなしくしてたけど、モラトリアム期間が終了したとたんに、その反動で、ドーとフォークロージャが3月、4月と続けて表面化した。

ちまたが予想していたとおり、である。

何年もかけて出来上がった住宅市場のゆがみを、数ヶ月間だけモラトリアムして、その間にささっとフィックスできるはずがない。(CNBC局のラリー・クドローとジム・クレイマーとそのとりまき以外は)誰にでもわかるでしょ、そんなこと。

尚、上のRealtyTracという組織のサイト、RealtyTrac.comには現在150万件の差し押さえ物件が掲載されてるそうですので、興味ある方は、サーチエンジンでお好みの物件を探してみてはいかがでしょうか。

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今年3月に、モルゲージバンカー協会(MBA)が発表したリリースでは、モルゲージローンの延滞率が急増していて、住宅融資全体の11%がヤバそうという事実も忘れてはいけない。

延滞債権というのは【フォークロージャ予備軍】であるからして、ローン延滞率が上昇を続けているのにフォークロージャ数だけが下落トレンドに入ると予想することは、不可能である。

また、フォークロージャ多発の影響で、住宅価格自体の低下も続いているために、ローンから発生する最終損失額は膨らみ続ける公算高し、と考えるのが正しい。

さらには、『オプションARM』のリセット時期がこの春から本格化する。(『オプションARM』=借り入れ後最初の数年だけ低い金利で済むが、それが結局ネガティブアモチゼーションになって、金利リセット時には元本額が膨らむ借り入れ様式。)

このOptionARMの話については、もうかなり前から業界の常識となっていて、いまごろオプションARMの話に驚く関係者は皆無。

つまり、Option ARMの金利リセット開始に伴い延滞がさらに増加するであろうことは関係者なら誰もが予想していたことなので、銀行は銀行でそこそこに予想損失(Expected Loss)として貸し倒れ引当金に織り込んでいるはず

ただし、この文章の「そこそこ」というのと「はず」というのが、ミソ。

彼らが予想している損失額を上回ると、結局は、多額の追加損失が発生して当期利益を減らし、ノーマライズされたP/Eも下がり、株価をヒットする、というシナリオは十分あり、である。(Expected Loss=ELについては、4月28日付けMHJ記事『資産評価のダブルスタンダード』で説明したので、参照ください。)

また実際の損失額がELを激しく上回ると、今度は予想外損失(UL)が膨らんで、またキャピタル不足に陥って、ふたたび増資することになり、一株あたりの株価希薄化・・・という連鎖になる可能性も、いまだに銀行株には、あり。

先日金融当局が発表したストレステストで当局がはじいた「損失予想額」は甘すぎる、という見方が市場に広がっており、将来の増資リスクにはリアリティありと構えたほうがよい。

<注意> ここで注意されたいのは、延滞率11%というのは、30日間以上支払いが延滞しているローン、という意味であって、融資の11%がまるまる全額パーになるわけではない。最終予想損失というのは、[ 融資総額x予想延滞率x(1-予想回収率)]ではじかれる。住宅価格が下がると、回収率がその分下がるため、損失額も膨らむ、というわけである。)

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住宅ローンの延滞率とフォークロージャのすさまじさ。ともに、考えただけで頭がズキズキしてくるが、フォークロージャの嵐がとりわけ凄いことになってるカリフォルニア州などでは、

売れない住宅は損になるだけだから、ぶっ壊しちまえ!

ってことで、新築の、まだ誰も住んだことのない、ピカピカの完成間際の一戸建て家屋を、ブルドーザーで破壊し始めている。

こちらは、先週話題になった動画です(↓↓↓)。南カリフォルニア州の新興住宅地で、デベロッパーが倒産し、銀行に差し押さえられた担保物件を、銀行が売却をあきらめて破壊している、というニュース映像です。



URLはここ

これも一種の【在庫調整】か・・・。

しかしねぇ・・・フォークロージャで家を失う家族が毎月30万件超えてるのにですよ・・・一方では、こうやって、新築のモデルハウスを破壊する、ってさ・・・。

世界中で餓死者数が増加してるのに、価格破壊で、せっかく育てたキャベツを大量廃棄処分にしてた日本の農家を思い出すではないか。

これも、切手窃盗男の事件とならび、昨今の住宅事情に関し、ちょっぴり考えさせられるエピソードであった。


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2 comments:

チー said...

噴出しながら読みました~!
CNBCってワケ分かりませんよね。。。とくにジムクレイマー。おめでたいっつーかなんつーか。笑

やはりまだまだフォークロージャ予備軍は増えていくると思います。だって、そこそこの稼ぎでも、夫婦のどっちかが稼げなくなったらヤバイっていう家庭、ものすごい多いと思いますもん。

そこに失業率の増加でしょう?
まだ仕事のある場所に住んでいる人たちはいいけれど、The United Suburbs of Americaじゃ、モールと病院とビジネスパークが1個っつみたいなところが多いし、失業とともに引越しを考えないといけないような場合も多いじゃないですか。

それで家も売れなければ、フォークローズするしかない。その家を誰も買わない。ゴーストタウン化する。

はやいとこ、ショートセールでもなんでも、家の売買がされるようにしないと、失敗した新興住宅地だけじゃなくて、あちこちブルドーザーが来るようになっちゃいそうに思います。

Trinity @ NYC said...

チーさん、コメントありがとうございます。

このビデオ映像、カリフォルニア州南部、ということだけれど、あたりは、みごとに、何もない砂漠ですね。わたしなら嫌だなー、あたりに何もない砂漠の真ん中で、ピカピカの立派な新築に住むなんて。(それなら、ウサギ小屋といわれようと、ニューヨークのボロボロのマンションのほうがいいです。笑)

住宅価格が高騰し続けている間は、カリフォルニア州が牽引役になって全国の平均価格を吊り上げていましたからねぇ。価格下落のフェーズになると、やはり、カリフォルニア州が牽引役になって全国平均を押し下げる。カリフォルニア・ネバダ・アリゾナ・フロリダ4州を除けば、フォークロージャデータの全国平均は、少しマシになる、という記事もありましたけれど、やっぱり広範囲でおきていることには変わりないですよね。

でも、ここまで下がってくると、私自身もおカネさえあればもう一軒買いたいな・・・なんて思います。ゴーストタウンの物件は嫌ですが、ニューヨークもかなり下がってきています。問題は、「おカネがない。」(笑)