Sunday, May 24, 2009

思想転換を迎えたバーナンキ

アメリカの5月は卒業式の季節だ。

全米各地で、新卒の大学生や大学院生が、角帽とガウンを身につけ式に臨み、学位を手にしてキャンパスを去ってゆく。(今年は超就職難の年だというのに・・・Good Luck!)

米国の有名大学や学部は毎年、各界の著名人を卒業式のゲストスピーカーに呼ぶのが慣例となっている。

筆者も90年代の始めごろニューヨークにある某ビジネススクールでMBAを取得したが、自分の卒業式のときのゲストスピーカーが誰だったのか、まったく覚えていない。スピーチの内容も全然記憶にない。(笑)

先週の金曜日(22日)は、ボストンカレッジのロースクールで、バーナンキ連銀議長がゲストスピーカーとして招待され、卒業生を前にスピーチをした。(スピーチ全文は、FRBサイトのここへ。)

この週末は、アメリカの経済関係のメディアやブログはどこもこぞって、このバーナンキ議長のスピーチを取り上げていたが、その中で、The Daily Capitalist というブログが、なかなかおもしろい点を突いていた。

この The Daily Capitalist というアメリカのブログサイトは、けっこう硬派で読み応えのある金融経済ブログで、そこの投稿者Jeff Hardingの書き物は、筆者もたまに時間をかけて読む。

今日のMHJでは、このJeff Hardingがバーナンキのスピーチについて書いた記事を翻訳し、紹介したい。(MHJも、ときには真面目なことも書く。)

以下はJeff Hardingの寄稿の翻訳です。The Daily Capitalist のオリジナル英文記事は、こちら。
Bernanke: A Stunning Revelation 5/24/09

   ★   ★   ★



バーナンキの驚くべき啓示
by Jeff Harding

連銀議長ベン・バーナンキは、今週行われたボストンカレッジの卒業式でぎょっとするようなスピーチをした。彼の経済思想が根本的に転換したことを認めたのだ。バーナンキの発言の重大さをメディアはどこも気づかなかった。彼は次のようなコメントを吐いた:

(バーナンキのスピーチから)「今日わたしは、我々ひとりひとりの人生に内在している予想不可な局面と、ひとはそうした現実に実際どう対処するのか、について述べたいと思う。ひとりの経済学者かつポリシーメーカーとして、わたしは未来を予測することにかけてはかなりの経験を積んできた。なぜなら、ポリシーを決定するにあたっては、幾通りかのポリシーの選択がそれぞれ未来の経済の進む方向にどう影響を与えるかという予想を立てるのが不可欠だからだ。

そのため、FRB連銀は、経済予測を立てるのに、とてつもないリソースを日ごろから費やしている。同様に、個人投資家やビジネスも、今後経済がどう展開してゆくかをあらかじめ知ろうとする強いインセンティブを持っている。そのため、長年にわたり、非常に頭脳優秀な人々が、最も先駆的な統計手法とモデルツールを用いて経済の将来を占おうと試みてきたと知っても驚くには値しないだろう。しかし、その結果は、残念なことに、たいがいが失望を伴うものであった。

天気予報がそうであるように、経済予測というものも、極めて複雑なシステムやランダムに発生するショックと対峙せねばならず、我々が持っているデータや理解は常に不完全であると思い知らされる。見方によっては経済予測は天気予報よりも難しいかもしれない。なぜなら、経済というものは物理学の法則にしたがって行動する分子の集合体ではなく、おのおのが未来を考えおのおのが独自の予測に影響されて行動を起こす人間の集合体であるからだ。無論、過去の経験から導き出される関係や規則性が、天気の予報者のみならず経済学者にとっても、未来への洞察の助けになるのは言うまでもない。だが、それらの使用には相当の注意を払い健全な疑惑の目を常に向けることが要求される」(スピーチ引用終わり)

このバーナンキの発言はふたつのレベルに分けられる。ひとつは経済予測に失敗したという彼個人の確信、そして、もうひとつは計量経済学という名のサイエンスの敗北を彼自身が認識した、というものだ。

バーナンキの発言をざっとまとめると、

  • 自分は経済のビヘイビアを予測するのに人生を費やしてきた。
  • 未来を予測するのに使われるツールはあまり役に立たない。
  • 経済予測という科学は、物理学的事象の計測に適した機械的モデルに基づいてもダメ。
  • 人間のビヘイビアに関する我々の知識は不完全である。
  • 従って人間のビヘイビアを予測するのは極めて困難。


連銀の金融政策を注意深く適用しさえすれば恐慌は免れることができると信じていた男の発言としては謙虚かつ啓発的な内容ではないか。世界大恐慌を学んだバーナンキは、2002年に、緊縮的金融政策が大恐慌の原因となったという理論を説いたミルトン・フリードマンの90歳の誕生日を祝う席でスピーチし、こんな発言をしている。

(バーナンキのスピーチから)『ミルトン教授と共著者のアンナ(シュワルツ)に申し上げたいことがある。世界大恐慌に関しては、あなたがたの指摘は正しい。連銀は間違った政策を取った。申し訳なく思う。しかし、あなた方のおかげで、同じ間違いは繰り返されることはないと断言しましょう。』(引用終わり)

バーナンキの発言で何がショッキングかと言えば、彼が明らかにオーストリア学派の学説を採用している点である。経済学会で主流となっているのはケインズ派とシカゴ学派であるが、オーストリア学派の主張はそれらとは急進的に異なるものなのである。

(筆者注:オーストリア学派については、「経済思想の歴史」という日本語サイトのここを参照。)

ケインズ派とマネタリストは経済学に数学モデル(↓)を持ち込み、物理的事象を説明するように、人間の行動様式も説明しようとした。

ケインズの基本的フォーミュラ:





だがそれではうまく説明できない、とバーナンキは言うのだ。しかし、1920年代、オーストリア学派はすでにそれに気づいていた。ミーゼズやハイエクのちからで確立された彼らの学説は、経済学のような社会科学を自然科学のようなハードサイエンスに変えようという試みをことごとく拒否した。ハイエクは1974年にノーベル経済学賞を受賞している。彼が、そのときの受賞スピーチでこんなことを述べている。

(ハイエクのスピーチから)「エコノミスト達がポリシーで経済をうまく誘導できないのは、彼らが自然科学の分野で見事に成功を収めている手法をできるだけ自分らも真似て経済を説明しようとする、その態度に原因があるとわたしには思える。我々の分野では、そんなことをしてもエラーをもたらすだけだ。いまの学界では”科学的”な態度と呼ばれているアプローチだが、わたしは30年ほど前にそれを否定した。経済学は計量的アプローチを生み出した自然科学の分野とは異なる分野なのに、思考が慣例に従うという考え方を機械的に疑いもせずそこに持ち込むなど、科学的どころか大いに非科学的なアプローチである、と言わせてもらおう。」(引用終わり) 

オーストリア学派は人間社会は奥が深くて複雑すぎるためにどんな正確な計測方法も適用不可であるとし、経済を形成する何百万何千万という個々の人間が日々決定するものを計量化することなど絶対にできず、計量に用いたデータが正しいデータの選択であったかすらも知りうることはできない、と主張した。

(ハイエクのスピーチから)「市場、および、それに類似する社会的構造に関しては当然、計測することが不可能な事実が数多く存在するし、実際、事実と呼ばれるそのものだって、正確さを欠いた一般的な情報にすぎない。それは周知のとおりである。科学的証拠しか採用しないと誓った当の本人達は、それら事実がもたらす効果を計量的証拠という形で確認することができない事態があらわれると、それらを単に無視することで済ませてしまう。すなわち、彼ら(経済を計量モデルで説明しようとする経済学者達)は、自分達が計測できるファクターのみが唯一関連あるファクター(説明因子)だというフィクションに浸って、意気揚々と前に進もうとしているだけなのだ。」(引用終わり)

計量経済学の”サイエンス”は主要大学のすべての経済学部で学生が習うことである。ハーバードやMITの大学院などでは特に必須科目となっている。オーストリア学派は、それをすべてナンセンスと呼び、そんなものは信頼することはできないし往々にして間違っている、と言う。自国民のビヘイビアをコントロールするために、社会的エンジニアリングのツールとして盲目的に計量モデルを使い続けてきた政府がこの先もそれを続けるのは危険ですらある。

バーナンキ議長は、いま、ようやく、それを認めたのだ。

諸君、これは極めて重要な話ではないか。もしFRB連銀が金融政策の経済へのインパクトの結果を正確に予測しえないと信じているならば、金融刺激策ほか連銀が扱うポリシーに、いったい何の意味があるのか?正確な計量経済モデルを持たずして、いったい何を基準にして金利水準を決定するのか?ケインズ派の財政出動が効果があるかどうかをどう判断するのか?

それに対する簡単な答えは、こうである。これらポリシーには効果はないし、これまでも効果はなかったし、解決よりもむしろ更なる問題を生むだけだ。ブームが来たらまた暴落が来る、そのサイクルを延々と繰り返してきた理由は、そこにあるのである。

ケインズ派は、自分らが作った数学的フォーミュラが経済のビヘイビアをコントロールするのに失敗したことを、何世代にもわたり謝罪し続けてきた。彼らの謝罪は決まってこうだ:もっと早く手を打っていたならば、もっと多額の刺激策を行ってさえいたならば、異なる刺激策を用いていれば、と。だが、もうたくさんだ。

現在起こっている経済クラッシュと恐慌を眼前に突きつけられ、彼が自身で長年信じてきた経済モデルと計量分析のすべてが失敗に終わったことで、バーナンキは芯まで呆然としている。なにもかもあっという間にコントロールを失い、連銀と財務省はすっかりパニックを起こし、この修羅場にケリをつけようとケインズ派とマネタリストの教科書どおりの方法に逐一従った。目下のところ、彼らがトライしたことのほとんどが教科書どおりには機能していない。むしろ、彼らの処方箋は将来に巨大な問題を生む布石になった。高インフレーション、高税、すでに停滞しきっている経済の政府によるさらなるコントロール・・・。

わたしが望むのは、バーナンキ議長が彼のポリシーを再度見つめなおし、インフレと借金に突き進む連銀の方向を転換してくれることである。

計量経済学はサイエンスとしては偽物だ。真の経済ビヘイビアを把握するための方法なら、すぐれたアプローチは他にもある。バーナンキがさらに踏み込み、この卒業式スピーチで見せた啓示の背後にあるアイディアを模索してくれることを切に望む。そうしてくれたら、我々はみな救われる。

(記事翻訳、以上)


   ★   ★   ★

いかがでしたでしょうか。我ながら上手に訳せたと思うが。(←自画自賛w)

筆者は計量的なアプローチすべてが「フィクション」だと断言できるほど、強い確信はない。

けれど、これまでの金融市場が、統計的・計量的な手法に過度に依存して、常識でも判断できるようなことまで計量的に「表現」することで自己満足してたという傾向を、市場参加者全員が長いこと続けていたのは、そのとおりだと思う。

とりわけ、筆者のようにセルサイドのアナリストなんかやってたら、「モデル作り」が商売みたいなもんで、顧客のところを訪問するにも、いちおうそれなりの「モデル」を作ってプレゼン資料にしてお土産に持っていかなくちゃいけなかったから、部下に手伝ってもらって明け方までかかって作成したお土産資料を見せながら、あーでもねーこーでもねーとゴタク並べる、それが「仕事」だったんですからね。

そして、バイサイドのほうもバイサイドで、自分達の投資判断能力に自信がないせいなのかは知らないが、ともかく、モデル!モデル!と騒ぐPMが、やたら多いんである。そういうモデル命のPMの下で働かされてる下っ端のアナリストなんて、モデルに入力するための数字集めるだけに何日も費やして、そのモデルで何を判断しようとしてるのか本筋はそっちのけで「モデル作るためにモデル作ってる」みたいな洟垂れボクちゃん達を、筆者は現役時代にバイサイド訪問中に大勢みかけた。

これは、日米両方の市場前線での自分の体験から言えることだが、とりわけ日本には、数字をたくさん集めさえすればわかった気になる、そういう市場関係者がやたら多い。

決算発表後にどの会社も投資家説明会が開かれるが、せっかく企業トップが並び貴重な話が聞ける席だというのに、「次期の償却費用として御社は何%を見込んでいるのか、その数字を教えてください。」なんつー超おバカな質問をぶつける恥知らずアナリストが必ず何人も出てくる。

そんなのは企業トップじゃなくて、IR室に電話一本入れて聞けばいいだけの話だろが。自分が日夜せっせとエクセルで作ってる自己満足モデルに入力するための【データ】を教えろと企業トップに質問し、それで「質問した気になる」ような馬鹿が日本市場にはグチャグチャいる。(アメリカにもいるけどさ。)

で、馬鹿はセルサイドのアナリストだけかと思っていたら、お前のモデルでは0.05%になってるが俺のモデルでは0.06%だ、お前のモデルは間違ってると喧嘩ふっかけて、ネチネチこっちの時間を無駄にして相手を負かしたような気になる、バイサイドのズレまくりアナリストも後を絶たず。

以前、米銀ストレステストについて書いたとき(3月11日付けMHJ記事『売り疲れのNY市場、はしゃいだ後にすぐに息切れ』)にも述べましたけどね、「計量モデル」なんつーのは所詮は静的なもの、サイコロジーを伴って動く市場のダイナミズムを把握するのは無理だし、前提の置き方次第でモデルのアウトプットなんて何とでもなるものなんだから、そこから出てくる結論は額面どおりに信じてはいけない。0.05%か0.06%かなんてところで議論してるようでは、そいつは一生、この世界で成功はしない。

上で、バーナンキも言ってるように、「それらの使用には相当の注意を払い健全な疑惑の目を常に向けることが要求される」わけである。


   ★   ★   ★


マクロ経済学界の計量嗜好というのもそうだけれど、【計量モデルに頼りすぎて自滅した例】といえば、一昔前のLTCM崩壊のケースしかり、最近では

   - ゴールドマンのグローバルアルファに代表されるクオンツ系ヘッジファンド
   - CDOなどモルゲージ担保の仕組み債デリバティブスと、共倒れしたAIGのCDS
   - 銀行のBIS自己資本比率規制

これらの失敗例に勝るものは、ちょっと見当たらないのではなかろうか。

GSグローバルアルファが2年前突然、全身不随に陥った話はあまりに有名なので、あらためて書くまでもない。(思い出したいひとはこちらの日本語記事へ。)

で、仕組み債のデリバティブスである。

CDOなどのデリバティブスについては、それをデザイン・組成したものも、それに格付けつけてた格付け機関も、それに投資したものも、それにどれぐらい自己資本が必要かを決定する規制当局も、関わったもの全員が、実際、「モデル一本やり」で動いていた。

「サブプライム融資のヒストリカルデータ」をもとに、経験値から高等数学を駆使してモデルを組み、そのモデルに将来のデフォルトとデフォルト深度にともなった損失率を計算させ、そのモデルがはじき出すプライシングに全員が「疑問の目」を一切向けることなく証券売買を繰り返してたんだからな。

過去の経験値ではサブプライム融資のデフォルト実績は5%以下、モデルでは、レファレンスプールのそれが(例えば)25%以上になって初めて損失が発生する、という風に商品を数学的に組み立てて、「大丈夫、急にデフォルトが5倍に増えるわけないじゃ~~~~ん」と、全員で安心してたんである。

そして、「♪・・・だって、トリプルAなんだもん・・・♪」(←注:BGMは「アタックナンバーワン」)の一言を【社訓】にして、CDOの組成時にスーパーシニアの部分を一手に引き受けてたのがAIGとその子会社AIGFPである。

AIGFPのリスクモデルを作ったのが誰かといえば、エール大学の経営大学院で教鞭とるGary Gortonという教授。

少し前になるが、去年10月31日付けのウォールストリートジャーナルに、「AIG失墜の陰で現実世界のテストに失敗したリスクモデル」と題された記事が出て、AIGのリスク管理が、ゴートン教授のリスク計量モデルにいかに依存していたかが紹介された。

Behind AIG's Fall, Risk Model Failed to Pass Real-World Test (WSJ、10/31/08)
http://online.wsj.com/article/SB122538449722784635.html?mod=testMod

ゴートン教授は、モデルが想定していなかった事態が発生したのが原因で、モデルに使われた計量フォーミュラそのものは間違っていないといまだに考えているらしいが、これこそまさに、上でハイエクが「自分に都合の悪い部分は無視する」という“非科学的態度”なのでは、とも思うが。

AIGFPに限ることなく、証券化市場では、数学や物理や宇宙工学などの分野でPh.D.を取ったバリバリの超優秀理系軍団が作ったリスクプライシングモデルがずっと幅利かせていたんだが、ふた開くと、このザマである。

同様に、BIS銀行自己資本規制の必要自己資本額の算出方法というのも、数学とリスク計量モデリングに強いPh.D.の皆様が10年以上もかけておつくりあそばされたクオンツモデルに従ったものなんだが、こっちも蓋開けてみたら、BIS規制下にあった世界中の銀行という銀行が、自己資本不足に陥ってやんの。

計量モデルに過度に依存する従来の体質は限界を迎えたことは、もはや誰の目にも明らか。

かといって、「統計もモデルも無視して、【フィーリング】だけで投資しましょ。」というわけにも、これまたいかん。それなら、プロとアマを分ける必要はないわけでして。

やはり、計量モデルを使った投資判断は今後も続けられるであろうけれど、モデルに人間のほうが振り回されるようになったら、きっとしっぺがえしが来る、ってことなのかな。

どんなに精巧なモデルでも完全なモデルはない。計量モデルへの信頼が失墜した現在、より重要になってくるのは、モデルからはじき出されてきた数字を「読む力」なのだろう。

だがこればかりは、ほとんどアートの域である。アートなんだから、絵を描いたり楽器を演奏したりするのと同じで「才能」もある程度持ってないとできない、とわたしは思うな。

そういう才能に恵まれたとハッキリわかるひとたちに、筆者は何度か遭遇したことがある。あれは、努力で身に着けたというより、持って生まれたセンスのような気もする。そういう人を前にすると、残念ながら、自分はつくづく凡人だと思い知らされたものさ・・・。



・・・あれ・・・なんだか、個人的に暗い結論になってしまいました。

あんまり暗いんで、最後に、2005年のスタンフォード大学卒業式でゲストスピーカーだった、アップル社のCEOスティーブ・ジョブスの希望に満ちたスピーチを聞いて、元気を取り戻そうと思う。

彼から卒業生へのメッセージ:Stay Hungry, Stay Foolish. 






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9 comments:

mikeexpo said...

始めまして、ただのサラリーマンのmikeexpoと言います。貴重なご知見、情報ありがとうございました。
本記事を、日本のアルファブロガー(兼経済学者)のひとりの池田信夫氏のところで紹介したところ、同氏が記事として採用されてますので、念のためご案内申し上げます。
http://blog.goo.ne.jp/ikedanobuo/e/bc75e1c5cd62d8b464a68843d4bf93d7
今後ともよろしくお願い申し上げます。

Chee said...

BCはバーナンキ呼んだのですね。
むずかしいお話をまとめてくださってありがとうございました。
土木エンジニアの私は、金融工学というものに対して、すごくモヤモヤしていたのです。
土木も予知できない自然と向き合う仕事ですが、なんていうんでしょう、理論だけでなく、人類の長年の経験に基づいているというか、自分たちの都合にあえば無理しないで良しとしましょう、失敗みつかったらそのつど補修しましょう的な工学なので、数学ゲームみたいなのがどうもしっくりこなくて。
なんで、あんなに自信満々なんだ~と。。。

バーナンキさんの心境が変わったのって大きいですね。この苦い経験を活かして、これから設計基準書みたいなのが、できてくるのかしら?

NYEEL said...

始めまして。
NY在住10年のNyoといいます。
ブログはしばらく前から拝見していたのですが、コメントは初めてです。

バーナンキさんのスピーチ、興味深いですね。
「人々による未来の予測そのものが未来を変えてしまう。だから難しいんだよ」ってことが言いたかったのかもしれませんね。
天気はどれだけ大勢の人がどんなクレイジーな予想をしても、実際の天気には関係ありませんが。。。

私も金融に関わる人間として、今回のことからは多くのことを学び、反省しました。
過去には数学的な分析方法も一通り学びました。
計量・統計分析はある時間枠中の瞬間的な「状態」を捕らえるには便利だと思います。
しかし、未来を予測する上ではかなり無理があるなと今回痛感しました。

ある経済学などまったく無縁な友人の発言:
「いくらか知らんけど、いっぱいお金刷ってるみたいだなあ。どこに行ってんだろ?少なくとも俺たちのポケットじゃないよな。どっかで停滞してんだよな。ダムみたいに。
もしこれが一気に流れだしたら、えらいことになるんじゃない?
どうかんがえてもデフレじゃないよな、インフレだよな。」

彼のコメントには感覚的であっても本当の意味でのマクロな視点を持っていると感じました。
そして、本来は誰もが持っているはずの本能的な状況把握能力の欠如こそが、今回の悲惨な状況を生んだのではないでしょうか。

momo said...

始めまして。
いつも大変参考にさせてもらっています。
今回の記事は、とても良い情報です。

バーナンキさんの発言。
金融のプロとしては勇気のいる発言だとは思うけれど、ど素人の私にとっては、言っている事は極めて当たり前の事を発言していると思う。それが今までは出来なかったんですね。

さて、これから連銀、及び政府はどんな舵取りをしていくのだろうか? 
オバマさんは、もう州は助けないって明言しているようだし。。。州も連邦政府も火の車だからね。

TrinityNYC said...

mikeexpoさん、こんにちわ。コメントありがとうございます。池田氏のブログ、拝見してまいりました。ご紹介ありがとうございました。こちらこそ、今後ともよろしくお願いします。

TrinityNYC said...

Cheeさん、こんにちわ。Cheeさんは土木エンジニアでいらっしゃるのですね。バーナンキも述べているように、経済や金融は人間が関わって動いているだけに予測どおりには絶対に動いてくれない。モデルを組むのは大切だけれど、目の前に出された数字は、決して鵜呑みにしてはいけない、常に懐疑的になり、どこが不完全なのかを探し続けなくてはいけない、そう思うのです。ところが、自己満足が高じてしまって、モデルを完璧に近づけようとする【作業】にだけ注意が向けられてしまい、完璧に近づくことはできても「完全に完璧になりえることはないのだ」ということを市場は忘れてしまっていたのですね・・・。

神に近づこうという慢心で建てられて崩壊した「バベルの塔」に似ている、という気がします。

TrinityNYC said...

NYoさん、はじめまして。コメントありがとうございます。NYoさんも金融業界にいらっしゃるとのことですが、昨年秋以降のパニックは、すごいものがありましたよね。あれから半年以上が経ち、少し落ち着いてきているようですが、ショックから立ち直る過程で、かつて「当然」とされていたNYウォール街のさまざまな慣行(給与体系も含め)は、もう戻ってはこないのだということを受け入れた(Acceptした)人が多い、そんな印象を持っています。

わたしもNYoさんのようにひととおりモデリングを学びましたが、最後にモノを言うのは、モデルが弾いた細かい数字“そのもの”ではなくて、鳥瞰図的に眺めたビッグピクチャーの中にその数字をどうあてはめるか、という、そこの「判断」の部分じゃないかと感じます。その判断をつける際に、カミソリのように切れ味のいい人たちは実際に存在していて、やはり天才はいるのだ、と何度か思いました。そして、そういう天才たちは精巧なモデルがなくても、するどい判断ができる人たちでした。

TrinityNYC said...

momoさん、はじめまして。コメントありがとうございます。たしかに勇気がいたでしょうねぇ、バーナンキの発言は世界中のPh.D.取った経済学者に喧嘩売ってるようなものですもの。。。

でも、経済学者の論文の中にも、こんなものを研究してどうするんだ・・・みたいな、しょうもない論文も星の数ほどあるし、でも、そういう論文でもかならず、小難しい高等数学の数式を並べて、いちおう学究論文ってことになっているしで、経済学のアカデミアの世界も、一部では形骸化してきていると自覚してるのかもしれませんね。

3月誕生日 said...

とても参考になりました。
よい情報を有難う御座います!