先週の米株式市場は、前半は【ベアな気分】で始まったが、木曜日のウェルズファーゴによる決算発表前のポジティブコメントで、「金融セクターはついに底入れ!」とウキウキ感が一気に戻り、【ブルな気分】で終えた。
4月7日のMHJ記事でも「実際、今四半期の金融機関各社の業績は、そこそこよかった気配が濃厚だ」と書いた筆者であるが、ウェルズファーゴのコメントを読み、「やっぱり!」と、思わず膝をポンと叩いた。
とはいえ、まさか、木曜日の朝というタイミングで、ウェルズファーゴが正式発表より数日も前にこんなコメント出すなんて、誰が予想してたであろうか。
ウェルズによると、住宅関連ビジネスの数字がとりわけよかったことと、買収したワコビア関連の利益も出て、ボトムの当期利益はアナリスト予想を上回ったという。
住宅関連に関しては、政府からの低利資金のおかげで利ざやが拡大、その部分だけみると、なんだか住宅融資は底入れしたようなこと言ってた。
みんな住宅関連では明るいニュースに飢えてるから、インパクトは大きかった。
しかしですね、筆者には、このウェルズの発表は、政府と共謀したニオイが感じられたね。
だって、同じ木曜日、ホワイトハウスでは、オバマ大統領の会見があって、その場で彼ったら、今度は「モルゲージローンのセールスマン」になってたんだもん!
住宅ローンの金利は歴史的低水準にいる、この金利水準ならば7~9百万人の米国民が年間$1600~$2000程度は金利負担が低減するから、さぁ、みんな、どしどしモルゲージのリファイナンスをしましょう!って大統領が言ってました。
参考記事:Obama for Change (In Your Mortgage)(WSJ 2009.04.10)
http://online.wsj.com/article/SB123932215927307049.html
うーむ・・・万能選手オバマ君。ウェルズファーゴという全米一の「退屈な」(ゆえに痛みも少ない)銀行に、住宅関連で明るいニュースを発表させて株価を持ち上げ【露払い】させるなんざぁ、なかなか手が込んでるじゃありませんか。
「株式セールスマン」としてのオバマ君の能力は見上げたものがあったので(3月4日MHJ記事『オバマによると「株は買いどき」』参照)、今回も「モルゲージバンカー」としてのオバマ君の能力に、ぜひとも期待を寄せたいところである。
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個人的なことを少々書かせてもらうと、筆者は持ってた金融株のショートポジションを火曜日のうちに全部オサラバしておいた。いやー、ホント、欲張らなくてよかったよー。(あのまま木曜日まで引きずってたら、怖ろしいことになってた。冷汗)
こういう値動きの激しい相場では、「サッと買ってサッと売る」が鉄則でありますね。
売却した後にさらに株価が続伸して、「あぁ、売るの、早すぎたかなぁ・・・」と思うことはよくあるけれど、自分であらかじめ目標にしていた利益が出たら、その段階で、スッパリ潔く売って利益確定したほうがよい。
ショートポジションも同じである。今回ショートしてた金融株は、狙ったほどの利益は出なかったが、マイケル・メイヨによる地獄からのメッセージで作られた負のモメンタムが消えてしまわないうちに、さっさとカバーして終了したのがよかった。
小口の一般個人投資家が一番陥りやすい失敗は、「もう少し待てばもっと儲かるかも」とか、「一度下がっても、いつかまた上がるはず」とかいう、根拠のない期待をしてるうちに、アッという間に叩き落ち、売るに売れない状況になり、そっと涙をぬぐう、というケースである。(そのいい例が、2月28日のMHJに書いた筆者のシティ株のケースである。笑わば笑え。)
筆者はかつて、いちおう金融機関の財務分析をメシの種にしてたこともあって、シティバンクについては、そこそこわかったつもりでいた。だが、「分析のしすぎ」は、ときに、こういう失態を演じるのである。そもそものところでファンダメンタルズがうまく機能してないときに、ファンダメンタルズを読み込みすぎると失敗するという、いい証拠である。
というわけで、筆者は最近はもっぱらトレンドトレーディングでお小遣い稼ぎにいそしんでいる。
日本では、市場のモメンタムの波に乗っかって超短期で細かくトレードを繰り返す手法は、もっぱら「デイトレーディング(Day Trading)」と呼ばれているけれど、米国では、そういう手法は「トレンド・トレーディング(Trend Trading)」という言葉も使われる。
「トレンド・トレーディング」は、その名の通り、市場のトレンドの波に一緒に乗っかって、そのモメンタムが続いているわずかの間に売買して稼ぐ。トレンド・トレーディングは長期投資ではないので、あーでもねぇこーでもねぇと分析しすぎてはいけない。
筆者と同じように短期間で資金をどんどん転がして小銭を稼ぐ個人投資家が、米国に最近やたら増えてきているらしいというのが3月8日のウォールストリートジャーナルの記事でも紹介されていた。彼らは年金の401(K)資金などでも躊躇せず、コロコロと転がしてるひとがいるようだ。
個人の年金資金は、多くがひたすら「バイ&ホールド」のストラテジーを取って、給料から天引きされたら最初に適当に決めておいたアセットアロケーションのままほったらかし、とか、ミューチュアルファンドの形で10年も20年も持ち続け、というひとは、筆者の周りにも案外多い。
「どうせリタイアしたときのためのお金だしぃ・・・」ということで「バイ&ホールド」してたけど、黙ってホールドしてたら、今回の暴落で価値がどっぷり減っちまった、というひとが続出。このままだと一生リタイアできない・・・と恐怖に駆られた一般人がゾクゾクと【にわかトレーダー】に化してるらしいんである。
トレードの頻度が上がってきているひとつの目安として、NY証券取引所とナスダックでは、証券のターンオーバー(回転率)が33%に上がっているということだ。ターンオーバーが33%ということは、およそ3年で、世に出回っている株式が投資家の手から手へと一巡する、という意味だが、同じ比率がハイテクバブル後の2004年時は、ターンオーバーは4年で一巡り、だったらしい。
株式の売買頻度は高くなっている・・・個人投資家が手数料を落としまくっている・・・ということは、リテール客相手のディスカウントブローカーの業績は、今期はいいかもしれませんね。
リテール客が目の色変えてトレーダーごっこやってるとき、一方のプロはどうだったかというと、米国のヘッジファンドのパフォーマンスを分析するヘネシー・グループ(Hennessee Group)の最近の報告によると、今年3月のヘッジファンド達の成績は、平均して株価インデックスを下回っていた。金融株やハイテク株、小売り、などのセクターをショートしてたマネージャーが多く、これらセクターはどこも3月から急回復したセクターばかりで、株価の上げ下げが激しすぎて、ショートの手仕舞いが間に合わなかったのが主因らしい。
プロのファンドマネージャーやトレーダーですら、こうなんですからね。高ボラティリティの間は、筆者のような「蚤以下のサイズ」の個人投資家などは、プロの扱う額と違って一発で売り抜けられる程度の小額であることをむしろ幸運と捉え、【欲張らないが勝ち】を座右の銘としよう。
さぁ、蚤は蚤らしく、明日も粛々とトレンドに乗っかることといたしましょう・・・。
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ところで、ちょうどひと月前の3月15日付けMHJの記事で、VIX指数が40~50の間をウロウロしていて、市場関係者の多くは、まだまだ警戒心を解いていない、と書いたのを覚えておられるでしょうか。
先週の株市場で、書き残しておきたい情報があるとすれば、このVIX指数が目だって低下した、ってことかな。
過去3ヶ月のグラフを見ると、先々週まで、株価が上昇してもVIXは40のラインがレジスタンス(抵抗線)になってそこから下に突っ切れなかったのに、先週はガタンと下がって、一気に37以下まで落ちた。
この低下トレンドがこのまま継続すると、長期買いの投資家も戻ってくるだろうから、株価は本格的な上昇気流に乗れるかもしれませんね。
ただ、下がったといっても、過去1年間の水準を見るとまだ高水準にいるから、ここで安心するのは、まだ早い。
一部のメディア報道では「いよいよ金融機関も最悪期を脱した模様」という見方が伝えられてたが、ウェルズファーゴのプレスリリースをちゃんと読むと、損失前のコア収益の85%が信用損失(貸出金などの資産から発生する損失)に消えていたことが読み取れる。
考えてもごらんなさい、給料の85%をサラ金に払ってたら、あなた、まともな生活できますか?
ってことで、コア収益に対する信用コストの比率がまだ8割だの9割だのと言ってる間は、「最悪期を脱した」なんてことは、とてもじゃないが断言できないんであるよ。現在が財務ファンダメンタルズの転換期かどうかは、今はまだ早々に判断すべきじゃありません。
だからこそ、分析はしすぎるな、今は超短期のトレーディングで、チャプチャプ波に乗るだけにしておけ、ってこと。(大波を狙いすぎると溺れる、ということも忘れずに。)
今週は金融機関の決算発表が続きます。
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