Thursday, December 4, 2008

ビッグ3救済劇:倒産と負債

今日、ビッグ3の経営者達が、政府からのローン借りるために、ふたたびDCの議会を訪れる。

昨日のCNNの世論調査では、60%以上の一般米国人がビッグ3の救済に反対、という意見だった。

下院議長のナンシー・ペロシなどは「米国の失業へのインパクトが大きいから、倒産(Chapter 11)は視野に入ってない」と力説して、断固として政府が救済すべき、という立場を取ってるけど、救済したって、ビッグ3が競争力ある企業体として甦る確率は低いんだから、救済したからどうよ、と思ってしまう。

前回、デトロイトの本社からプライベートジェットに乗ってノコノコとワシントンまで出てきたら、議会に「顔洗って出直してこーい!」と叱られて、今回ばかりは、さすがの労組UAWもヤバイと感じてるのか、政府救済と引き換えにGMは3万人のクビきりを即座断行する、という条件をのんできた。

オバマの経済チームは、Chapter 11みたいなやり方じゃなくて、ある程度、事前にコーディネートして、倒産の事後ショックをできるだけ和らげるようなやり方で、しかし最終的には会社清算の方向に持ってゆく、という“ハイブリッド”なパッケージ・オプション(Pre-Pack Bankruptcy)を模索しているみたいだ。
http://www.rgemonitor.com/globalmacro-monitor/254529/obama_team_considering_a_pre-pack_auto_bankruptcy


政治サイドは、常に「失業率」のことしか頭にないし、金融取引の詳細にうといから、ともかくビッグ3の倒産を阻止しないと、すでにボロボロになってるこの国の雇用状況が悪化することばっか、考えてる。

でも、Chapter 11 にファイルしたからといって、対象になる企業がその日を持って、すべての工場を閉鎖して従業員とその家族が全員路頭に迷う、という意味ではない。とりわけGMのような超巨大企業が風呂敷に荷物まとめて夜逃げするなんて、現実問題としてできないんだから。




政治フロントに張り付いてビッグ3救済問題を取材しているTVジャーナリズムでは、ほとんど語られない、重要なイッシューがある。

それは、ビッグ3が財務でかかえてる「巨額の借金」どうするんだよ、って話だ。

Chapter 11で清算処理に入ると、株券はゼロになるから、株式の投資家はもちろん投資額=全額パー。株はこういうときはAll or Nothingで単純だから、いいな。

でも、借金主のほうは株主みたいに、あっさりとゼロにならない。裁判所のもとで清算手続きが始まり、債券のシニオリティ(Seniority)に従って、取り分がどれくらいになるかをグチャグチャ決めてゆく。 しかも債券ってのは、カスタマイズがいくらでも効くんで、処理するのは面倒くさいしやたらと時間もかかるんだなー、これが。

金融機関の場合は【(システミックリスクのインプリケーションが)大きすぎて潰せない(Too Big To Fail)】という考え方が(賛否両論あるにせよ)関係者のあいだにある程度浸透していて、その考え方をサポートするアカデミック理論も積みあがっている。

今回、リーマン破綻後に具現化したシステミックリスクの火消しのために、ポールセンが用紙の裏に手書きで作った7000億ドルの金融市場救済策を、米国政府が即決できたのは、そういう理論的裏づけがあるからでもある。

でも、一般の大企業の場合は、アカデミックな理論サポートとか、そんなもん、ない。だから、ただだか300億ドル貸してくれというビッグ3の申し込みにも、政府はすぐにクビを縦にふらない。



ただし、大企業になると、バランスシートがでかいし、借金の額もハンパじゃない。この借金は、みーんな金融機関や市場から借りている。

大企業が突然死すると、この借金の清算過程において、市場が混乱する恐れが多分にあって、貸した額を取り戻せなかった金融機関がそのあおりで自己資本が激減する。

すると、金融機関の資本基盤の弱体化が引き金となって、システミックリスクの具現化につながってゆく、という“間接的”な悪循環が起こる懸念が出てくる。

Too Big To Fail というより、Too Big To Liquidate(=清算するにはでかすぎる)ってやつだ。



今朝のCNNの経済ニュースでは、キンパツのネーちゃん記者が「政府が7000億ドルも銀行に使わなければビッグ3も、もっと簡単に国から借金できたのに。」と言ってたけど、このネーちゃん記者は、まったく何もわかっていない。

あの7000億ドル救済措置の前例がなかったら、GMなんぞがノコノコでてきたって、議会の扉すら開かんだろーが。「どの面下げて」と門前払いに決まってる。

300億ドルや400億ドルなんて借入金は、シンジケートローンの世界では、小さくないけど、銀行からしてみたら、組めない額ではないんである。

じゃ、どうして、銀行は貸してあげないの?というと、倒産リスク高すぎて、怖くて貸せないんである。

そうした「恐怖」を払拭してやるためには、政府が、倒産リスクを無条件で保証(unconditionally guaranteed)してやるから貸してやってくれ、とでも言わなきゃ、銀行側は能面のまま動かない。

で、実際に、そういう折衝が行われていたんだよね。でも、誰も貸してくれないし、貸してくれても法外なリスク・プレミアムふっかけられるから、ビッグ3の資金繰りは日に日に悪化、しかたないんで、政府に「お願い・・・」と頭下げに行った、という図。



実際のところ、ビッグ3の借金って総額いくらかというと、GMだけで$66Billion (6兆円)もあるというんだ。6兆円の借金!どひーー!

GMが今回政府に頭さげた額は、連邦融資$12Billion、クレジットライン$6Billionの合計$18Billion。当座の流動性をまかなうためにはこれぐらい必要、ってことらしい。

でも、6兆円も借金があったら、借りてる相手の数だってハンパじゃないでしょ。世界中に債権者が散らばってる模様です。

6兆円も借金してたら、どこかの銀行だけが借金を取り返しそこなって損こいて終わり、ってわけにはいかないんだよな。

GM倒産の被害は世界中に散らばる・・・そして、ふたたび、リーマン破綻直後のように、グローバルでシステミックリスクの懸念再燃・・・そういうシナリオが、米政府にとっていちばんこわい。デトロイト周辺の失業者がどうなる、なんつーローカルな懸念とは、スケールちがう。

ということで、わたしは最終的には、政府はビッグ3の要求は呑まざるをえないと思う。

昨日3日のNYタイムズに、GMが債権者との間でデット・エクイティ・スワップ(Debt Euity Swap、略してDES)の交渉をしてることが報じられてた。
http://www.nytimes.com/2008/12/04/business/04swap.html?ref=business

いま、GMと米国の金融機関がオタオタしている状況は、日本が金融危機で大騒ぎしてた2000年代入りたてのころ、ダイエーがまさに現在のGMのような状態にあり、当時数兆円もあったダイエーの債務をどうしたらいいんだ、清算したら大損出した銀行も共倒れするぞ、ということで、日本の銀行群がみんなでワーワー悩んでたのを彷彿とさせる。

あのときも、当時ダイエーの主力行だったUFJ銀行が、ダイエー発行の劣後債を優先株にDebt Equity Swapするといって騒いでたのを、急に思い出しました。

あのときの騒ぎとまったく同じ。ただし、ダイエーは日本の外には迷惑かけなかったけど、ビッグ3の場合は世界中に迷惑かかりそうだからな。米国政府にとっては深刻である・・・。

市場の取引現場では、GMのクレジットスプレッドは滅茶苦茶に拡大していて、額面に80%のディスカウントかかって取引されてるいるらしい。ということは、ある程度の評価損は、金融機関側でもすでに計上して吸収してあると見られるから、債権者の側からみたら、GM債務の最終実現評価額が、オリジナル額面の20%以上に決着すれば、むしろ喜ばしい、ということになる。

NYタイムズの記事に紹介されてるアナリストの試算では、GMの無担保債の最終価値は1ドルに対し少なくとも40~50セントにはなるはず、という。ということは、現在の取引額20セントよりも多いわけだから、債権者にとっては、「清算しちゃったほうが、お得」という図である。

政府がウンと言っても、少しでも損失を少なくしたい債権者の集団(しかも、その額6兆円分)が、キャピトル・ヒルを出てきたビッグ3のエグゼクティブ達を渋面で待ち構えている。

政府へのお願い$18Billionで、今年の年末を乗り切るだけで$4Billion、来年$14BillionないとやっていけないとGMは認めたそうだ。でも、$14Billion って、$66Billionの4分の1以下。

政府の登場に不愉快さを隠さない債権者たちは、償還の時期がめぐってくるたびに、GMに難癖つけるだろうな。

債権者の圧力で、GMのバランスシートは縮んでゆく。そして、こういう企業の場合、バランスシートの縮小は、そのまま「失業者の増加」を意味する。株主だって収益が落ちてゆく会社に投資し続ける旨みなんてないから、逃げるが勝ち。

つまり、政府が今回とりあえず救済ローンを提供しても、清算への時間稼ぎになるだけで、自動車業界の失業者の数は増え続ける公算が高いってことだ。

何のための救済なんだか・・・。

1 comment:

taka said...

初コメします^^

GMまさにダイエー彷彿させますね。
でもおっしゃるように世界中に取引先や下請けがいるのはまったく違います。
タイの部品工場や米国にある部品工場からの調達、ひいてはトヨタ系列の会社(デンソー、アイシン精機など)もびくびくでしょう。これが最終的にトヨタやホンダやプジョーやBMWなどに調達なんとして影響してきますからね。日本の場合銀行が持ち株やってるケースが多いですから、まわりまわって新たな問題を抱えるようにも思えますし。
ほんと今回の金融危機はいろんな業界に問題を広めて(というか経営状況をあらわにして)くれましたね。人事でなく来年度は怖いです。