Monday, November 16, 2009

「ヘマな投資」は「犯罪」ではない (3)

週明けの月曜、米株市場、引き続き好調であります。主要インデックス、この13ヶ月で最高。

足元のファンダメンタルズ?んなもん、知ったことか、という雰囲気であります。

このモメンタム、いったい、どこまで行くのか。

株式サイドのウキウキ組のみなさんは、いつもにまして元気一杯、今日もCNBC局に出演し、「雇用統計は所詮、遅行指標。バルティック・ドライ・インデックスは先行指標。先行指標をみてごらん、先行き明るいぜ、イェイ!」とか言ってました。(そういえば、「日本経済だって峠は越したよ、先は明るいよ、イェェイ!」と叫んでるアメリカンもいました。そうなの?)

ここ最近、筆者が耳にした中で最もオプティミスティックなコメントは、先月末あたりだったと思うけど、ラジオ聞いていたら、Tishman というNYに本社のある大手不動産投資会社の役員が、商業用不動産の先行きに暗雲がかかってて銀行から開発用資金が出てこないのでは、という司会者の質問に対し、

「たしかに、商業用不動産市場に対する米銀の貸し出し姿勢には厳しいものがある。しかし、外国の銀行は必ずしもそうじゃない。彼らは、米国の不動産に強い興味を示しているから、資金は外銀から充分出てくる可能性があるし、そこまで悲観的にならなくてもよい。」

みたいなことを口走ったんである。

犬と散歩中にたまたま耳にしたので、正確なクォートではないが、内容はおおむね、こんな感じだった。

外国の銀行?どこ?中国の銀行とかでしょうか?まさか、ロシアの銀行とか?(汗)

日本の某銀行さんが一兆円増資するとかいうニュースを聞きましたが、米国で商業用不動産投資用に資金を融通するために日本勢が資本調達してるとは、筆者にはとうてい想定できないんで、ティッシュマンの言う「外銀」に、邦銀は含まれていないと思われる。

いや、邦銀まで将来の資金源の中に含めて言ってるとしたら、ティッシュマンという会社も、底なしの楽観主義者である。

ティッシュマンが、Blackrock Properties とともにマンハッタンで行った最大級($5.4ビリオン)の商業用不動産投資(Stuyvesant Townという大規模集合住宅プロジェクト)でコケて、つい先週"実質的”にデフォルトに陥り3000億円規模のローン・ワークアウトに入ったという事実なんぞ「どこ拭く風」状態である。$30億デフォルトしたって、次のプロジェクトには外銀がカネかしてくれるだろう、と期待する。

Mmmm....見上げた根性である。

しかし、この半年以上というもの、オプティミストの圧勝ですからね。

ヘレン・ケラーの名言に、「星の秘密を見つけた者に悲観論者はいない。(No pessimist ever discovered the secrets of the stars.)」というのがあるそうだ。

筆者もウジウジばっかしてないで、少しティッシュマンを見習ったほうがいいかもしれない・・・。

見上げてごらん、夜の星を・・・。(今夜、流星が見られるそうなので、朝3時に起きる予定。)

   ★   ★   ★

さて、前回の続きです。(この話、今日で終わりにします、ハイ。)

ジャネット・タヴァコリ氏が Huffingtonpost.com に掲載した自著からの抜粋文は、ここ(↓)で読めます。

Ralph Cioffi: Off the Hook for a Long Time Pattern of Behavior
(Huffington Post, 11/11/09)

[Excerpted with permission from the publisher, John Wiley & Sons, from Dear Mr. Buffett, What an Investor Learns 1,269 Miles from Wall Street, by Janet Tavakoli. © 2009 by Janet Tavakoli]

英語の原文のほうはHuffingtonのサイトで読んでもらうとして、以下は、MHJ筆者による抄訳です。(一部はしょってること了承ねがいます。)





『2007年5月9日、ビジネスウィークの記者マット・ゴールドスティンから電話が入り、エバークエスト・フィナンシャルという会社のIPOのレジストレーション文書に目を通す機会があったかと聞かれた。同社は2006年9月設立された非公開会社だった。私は仕事に追われていて、エバークエストの書類を読む時間はないと断った。だが、マット・ゴールドスティンは翌日も、翌々日も電話をしてきてコメントを求め、このIPOは重要なディールだと思うと言った。

彼の根気に負け、わたしはSECのサイトに行きドキュメントにザッと目を通してみた。そのとき、わたしの脳裏に浮かんだのは「ベアスターンズは、ついに、完全に気がふれたのか」という疑問だった。 クレヴァー(clever)とインテリジェント(intelligent)では意味が違う。

詳細を読むためにプリントアウトしながら、わたしは他の仕事を脇によけて言った。「マット、あなたは正しい。これは重要だわ。」BSAMがマネージしているファンドがCDOのファースト・ロス・リスク(エクイティトランシェ)に投資していることを知りわたしは驚いた。わたしの意見では、そのCDOが対象としている資産は一般投資家向けとしては適切な資産とは言えなかったからだ。すべての詳細に目を通す時間はなかったので、2007年3月にシティグループが組成したCDO投資に着目した。エバークエストがIPOで市場から集めた資金の一部はシティグループが同社に提供したクレジットライン2億ドルの支払いに充てられると思ったのだ。

エバークエストはシティによるCDO投資のトランシェの中で最もリスクが高いとされる“ファーストロス”リスクを取っていた。だがその頃までには、最もリスクが低いとされていた同CDOのAAA格のトランシェに投資していても問題になるであろうと私は感じていた。わたしのこうした懸念は後日その通りになった。このシティが組成したCDOは2008年2月にデフォルトを起こし、組成当初AAA格を付与されていたトランシェもS&Pによってジャンク格に格下げされたのだった。

エバークエストの投資資産は、サブプライムのモルゲージローンに相当のエクスポージャを抱えていた。ドキュメントによれば、同社がエクイティトランシェに投資していたCDOの大部分が、サブプライム住宅融資を担保プールにして組成されたRMBSをもとにして証券化されたものだった。わたしの大まかな試算では同社の投資総額の4割から5割が、こうした証券で占められていた

わたしは懸念に感じられるいくつかの点を、できるだけ一般的な内容にしてマットに伝えた。(1)IPOのプロシードはシティグループのクレジットライン$2億ドル支払いに使われるであろう点、(2)そのシティから受けた融資というのは、エバークエストがBSAMの二つのヘッジファンドからCDOやCDO-Squaredを含む投資資産を買い取るために使われていた点、(3)エバークエストの投資資産には相当高レベルのサブプライム・エクスポージャがある点、など。

マット・ゴールドスティンはその日のうちにビジネスウィークに記事を掲載した。掲載当初、この記事の見出しは「エバークエストのIPO:投資家よ、注意せよ」だったが、後にBSAMからクレームがつき、ビジネスウィーク誌は「ベアスターンズのサブプライムIPO」という見出しに変更した。

ラルフ・チオッフィは、ビジネスウィークに掲載された記事について話したいと、わたしにコンタクトを取ってきた。彼はエバークエストのようなIPOはこれまでもいくらでも市場にでてきている(ただし、ほとんどはSECとディールしなくて済むようにオフショアで行われていた。)といい、BSAMのヘッジファンドとStone Towerで合わせて70%の持分があるが、IPOが行われる日に自分達の持分を現金化する意図はないといった。IPOのプロシードはシティグループへの返済と提携関係のないプライベートエクイティの投資家からのバイアウトに使う予定であると。

わたしは、持分の現金化の意図がないという口頭での約束は何の意味もない、公開市場で売買される証券はいつだって売却できるのだから、と答えた。それに、たとえファンドが大株主でい続けても、リテール投資家にとっていいことなどない、マネージャーのやり方に異議があっても少数株主では何もできないのだから、とも言った。

ラルフはエバークエストの資産に含まれるサブプライムエクスポージャは「実際には非常に小さいパーセンテージしかない」と主張した。同社はサブプライム・リスクをヘッジしているので、時価ベースではサブプライムエクスポージャは実際ネガティブになる、といった。テクニカルに言えば彼の主張は正しいかもしれない。だが、わたしが読んだIPOドキュメントには、「サブプライムエクスポージャは完全にリスクヘッジされていない」と、ラルフの主張とは逆のことが書かれていた。

ヘッジ分を差し引いたネットエクスポージャについて語るのはかまわない。だが、ネットの話をするならば、ヘッジ前の実際の投資額であるグロスエクスポージャについても語るのが通常だ。それに、ヘッジにはコストがかかる。その分、投資リターンは減額されるのだ。

ラルフ・チオッフィはCDOのエクイティ部分は市場で自由に取引されておりマネージするのは困難ではないといった。あなたにとっては簡単かもしれないが、インベストメントバンクや会計事務所らはCDOエクイティ部分の時価評価が困難であると言っていると、わたしは彼に対抗した。もしこれがCDOの私募であるならば、この手の投資に精通しているソフィスティケートされたプロの投資家のみに売られる性格のものだろうが、これは一般公募(IPO)であり、資産が債券投資の場合SEC規制の目を逃れる方法はあるようだが、わたしの意見としては、これは一般のリテール投資家向きではないと思う、と私は述べた。

ラルフは、弁護士と相談して、サードパーティによる時価評価を行うという一文をIPOのレジストレーションに付け足すようにしようといった。私達の会話はどうも互いにずれているようだった。レジストレーションのドキュメントには引受け時にサードパーティによる時価評価を行うとすでに書かれてあったのだから。問題なのは、時価評価をする際、評価に不可欠な「前提条件」が、利益相反の立場にいるマネージャーから提供されるという点だった

ラルフがいつまでも会話を続けたがるので、わたしに何をしてほしくて電話してきたのか、私の方から彼に尋ねた。彼は、わたしにこう言った。「あのビジネスウィークに記事に掲載されたコメントは、あなたが言わんとした内容からずれていて、同記事にクレディビリティは与えたが、あなた自身にとってはいいことはないという内容のコメントを出してくれないだろうか。それに、自分自身でコメントを出したほうが、ご自分のためにもいいんじゃないですかね。」わたしは、底に軽い脅しの雰囲気を感じたが無視し、「自分でコメントを発行するなら、たったいまわたしとあなたが話し合ったポイントついて、さらに詳しく調べて問題提起することになると思うわ。」と言い返した。ラルフは不服そうだったが、わたしが頭の中で「ゾンビのヘッジファンドマネージャー」の姿に彼を重ねて想像していたことなど、彼にはどうでもよいことだった。

(※上記の抄訳に間違いがあれば、すべてMHJ筆者の責任です。)


   ★   ★   ★

陪審員には「乗客をひとりでも助けようと最後まで努力しつづけ海に散った船長」というイメージだった、その同一人物が、このひとにかかると「墓から出てきたゾンビのヘッジファンドマネージャー」( a hedge fund manager from Night of the Living Dead)。

陪審員が抱いたイメージ




ジャネットが抱いたイメージ



ラルフ・チオッフィ本人



どちらのイメージに近いかは、各自で判断ねがいます。

   ★   ★   ★

ジャネット・タヴァコリが言及しているビジネスウィークの記事はこちら。

Bear Stearns' Subprime IPO(Business Week, 5/11/07)

この記事中に、こんなくだりがある。


The sales pitch for the IPO, which Bear Stearns is also underwriting, is that Everquest will "provide attractive risk-adjusted returns" to shareholders by investing in collateralized debt obligations (CDOs)—a sophisticated bond that's made up of pieces of lots of other asset-backed bonds.

エバークエストのIPOの引受けにはベアスターンズも入っているが、本ディールのセールスピッチは、CDOに投資するエバークエスト社に株投資することで、魅力的なリスク調整後のリターンが得られるというものだ。CDOとは、証券化された債券をいくつも集めて作られた高度に複雑な債券のことだ。


このIPOには、ベアスターンズ本社も引受けに関わっていた。これはエクイティのIPOであるから、投資家にこのIPOを勧めてたのは、エクイティ・セールス部隊のはず。こういっちゃなんだが、基本的に株式しか売ったことのないエクイティ・セールス部隊に、エバークエストの資産(CDOのファースト・ロス)がどんな性格のリスクなのか、エバークエストの資産の【リスク調整後のリターン】がどうやって計算されたのかなどを、本当に理解し納得して顧客に勧めていた人間がどれくらいいたのだろう。

2007年も半ばになると、【モデルがはじく理論値】と【市場で実際に取引される際のディスカウント】との間に生じる乖離が大き過ぎて、それらの組成に実際に関わってる担当バンカー達も、それを市場でプライシングするのが仕事のボンド・トレーダー達ですら、内心困惑しきってたんだからね。

ちなみに、CDOのトリプルAのトランシェが、トリプルAの格付けもらえた理由は、AIGやMBIAなどの保険会社やギャランティ会社が、CDOのクレジットリスクに対して、CDSのライター(リスクの取り手)となり、リスクヘッジしていたからである。CDOに対してCDSを出しまくった結果が、あのAIGの顛末だったわけである。覚えておいてほしいのは、AIGが取っていたのは、CDOのトランシェの中でも最もリスクが低い「トリプルA格のリスク」が中心だったんであるよ。

エバークエストが抱えていたのは、トリプルAどころか、格付けすら付いていない「サブプライムCDOのエクイティ・リスク」だった。猛毒のクレジットリスクがさらに濃縮してた感じ。それをIPOするってさ・・・筆者なんかは、ウッと言葉に詰まったきり何も言えん。


   ★   ★   ★


その後エバークエストのIPOがどうなったかというと、5月にSECにドキュメントは提出したものの、6月にサブプライムリスクが急激に悪化、エバークエストのIPOブックには需要が集まらず、同社は6月21日にIPOの取り下げ申請し、ディールは中止になった。2007年6月22日のウォールストリートジャーナルがそれを伝えている

なんだかんだ言っても、BSAMのエグゼクティブ二人については、刑事事件としての判決は出てしまった。

陪審員はBSAMのスキームに問題があったとは見なさず、それどころか「自分のおカネをこの人たちに預けたい」と思うぐらい魅せられて、この事件の刑事裁判は終わりを迎えた。

「バリュエーション困難なCDOのエクイティリスクを、リテール投資家にオファーする」という行為が意味するもの-。

「従来一部のプロ限定で売買されていた特殊証券への投資機会を広く一般にも提供しようとした」と受けとれば、それは「犯罪」ではないかもしれない。しかし、仮にも、プロフェッショナルを自認しプライドある者ならば、そういうアイディア自体、果たしてどうよ。

そして、この判決で透けて見えた「陪審員制度の限界」と、金融史に残るサブプライム問題に加担したとして裁かれた者たちに自分のおカネを預けたいと考えてしまうような「素人投資家の危うさ」。

いろんな側面を持った判決だったと思うな。

次は民事事件として裁かれることになるが、被告の二人には損害賠償請求が生じるかもしれない。

話は飛ぶが、『FROST/NIXON』という映画をごらんになったことがあるでしょうか?ご承知のように、ウォーターゲート事件では、結局はニクソン本人は犯罪者として起訴されることはなく、彼は罷免されずに、大統領をみずから辞任した。

『Froxt/Nixon』トレーラー





あの映画のクライマックスで、自分は「犯罪」を犯したのではないと主張するニクソンに、インタビュアーのフロストが、こう切り込むシーンがある。


” I think the American people would like to hear you say ... One is: there was probably more than mistakes; there was wrongdoing, whether it was a crime or not; yes it may have been a crime too. ・・・(中略)・・・And I know how difficult it is for anyone, and most of all you, but I think that people need to hear it and I think unless you say it you are going to be haunted by it for the rest of your life.”

「アメリカ国民はあなたの口からじかに聞きたいことがある。ひとつは、たぶん、あなたの行為は単に過ちを冒したという以上の行為だったということ。それが(法的な意味において)犯罪であろうとなかろうと、やってはいけないことをやったのだ、と。いや、それは犯罪だったのかもしれない、と(中略)それを認めるのがどんなに困難かはわかっています。誰にとっても、特にあなたにとっては困難の極みでしょう。でも、国民はその言葉をあなたから聞きたがっている。あなたが自分の口からそれを言わなければ、あなたは一生、それに取り憑かれて生きてゆくことになるでしょう。」





★ ランキングに参加してます。よろしければ投票クリックお願いします。★
↓↓↓↓↓
にほんブログ村 アメリカ経済
人気ブログランキングへ

7 comments:

TheSyntaxError said...

非常に素晴らしい記事でした。今後も楽しみにしています。

haustin said...

S&Pも1100超えましたね~。テクニカル的にはまだまだ行きそうですねぇ。ちょっと下がっても、出遅れたと思ってる人たちが参入してきて・・・というサイクルのようですね?

クリスマス商戦もどうなんでしょうか。うちの近所のモール、結構にぎわってます。このままずーっとあがるとは到底思えませんが、しばらくこののりは続きそうですね!?

去年のロスはすっかり取り戻してるので、欲張っていまさらアロケーションは買えずにエクイティは40%のままひっそり年を越えそうです。今年は(ってまだあと1ヶ月以上ありますが)Bondもかなりあがりましたよね。YTDで35%とか!保守的なポジションにしていてもいい年でした~。(暴落しないで終わってほしいです♪)

ROM人 said...

>>資金は外銀から充分出てくる可能性があるし


これって欧州系の銀行のことですか? 残ってるところってそれくらいしかないような気が・・・・・(米国比で大陸欧州の銀行はまだマシ???)

それともただのポジトーク?

TrinityNYC said...

>TheSyntaxErrorさん
コメントありがとうございます。ブログ拝見しました。SLOANは、CDOなどの高等数学を用いる金融商品の問題については、そこに最も近い位置で分析できるアカデミアのひとつではないでしょうか。MITコミュニティがクレジットディリバティブスの現状をどう捉え、今後をどう考えているのか、個人的に興味あります。今後もよろしくお願いします。



>haustinさん
バーナンキが「コモディティバブルじゃない」なんていうから、みんな、すっかりはしゃいじゃいましたね。ウッカリなのか、意図的なのか、読めないところがベンらしい。(笑) 意図的だとしたら、長期債は売りだな。(爆)

昨日は小売りセクターも話題になってましたね。どこも4Q見通しをかなり控えめに出しているけれど、わたしは、会社によって4Qの業績は3Q以上にメリハリがつくような気がしてます。サックスは3Qはよかったけど、グッチのバッグが5割引なら、あたしも、一個ほしい。でも、3Qにグッチ買ったら、4Qにもうひとつ買う気はない。



>ROM人さん

どこの外銀のこと言ってるんでしょうかねぇ・・・。欧州勢といっても、米銀や邦銀同様、自己資本規制でどこもピーピー言ってるし。HSBCがちょっと明るさ見えてきてるようなこと言ってますが、HSBCも商業銀行の性格強いし、加えて、HSBCは香港に足場を移してアジア重視の姿勢をハッキリ示したわけだし、HSBCがサブプライムで火傷した北米で、次は商業用不動産って、シナリオとしては、ちょっとありえないと思うんですが・・・。となると、欧州勢でも、投資銀行としての性格が強いところのみ。それって、だれだ?昨日の講演でバーナンキも、商業用不動産の証券化市場が機能してないと名言してましたから、(1)融資をずっとB/S上に持ち続けることができるほど資本力があるところ、かつ、(2)調達コストをものすごく低く抑えることができるところ、ってことですね。でも、それって、いまどき、ゴールドマンぐらいしかいないんじゃ・・・(汗)。

ino said...

金融の知識無しの素人ですが、何とか図にまとめてみました。
http://picasaweb.google.co.jp/inoue275/AAA#

※素人なので間違いが沢山あると思いますが、お許しを
※下記の日銀のレポートも参考にしました(理解したと言いがたいですが)

 証券化商品のリスク特性の分析 -- 再証券化によるレバレッジ上昇のインパクト --
 http://www.boj.or.jp/type/ronbun/rev/rev08j06.htm


憶測ですが、下記の①~③の状態がBSAMに限らず業界に蔓延して
いたんでしょうか?
そうであれば他の投資銀行や商業銀行も同様な事をやっていて
商業銀行であればSIVにエクエティーを買わせていたんでしょうか?

 ①問題の背景に売れにくいエクエティーの引受け手がプロなど
  に限られていて、なかなか売り切れない状態になっていたの
  ではありませんか?

  エクエティーまで買い手がきちんとつかないと仕組み債がロ
  ーチンできない(シニアの買い手ばかりでは仕組み債が成り
  立たない)。

 ②そうした中で自身が作ったファンドのエクエティーの部分を
  自分が買ってでもローチンしたい。
  でも、これって「タコ配」になるんでは?マズくない?

 ③それで別会社を作ってエクエティーをファンドの投資者の一
  人と装って買わせていた。



さてラルフ・チオッフィは銀行から借りた資金で、エバークエス
トがエクエティーを買っているのを知っていて、下記の③~⑤の
間でエバークエストのIPOを行を行なおうとした(一般の投資者
の無知につけ込んで)。
エバークエストがエクエティーを持っている事は、売った本人で
ある(買った本人でもある?)ラルフ・チオッフィが知らないわ
けが無い。
③以降にエバークエストにエクエティーを売っていたのなら悪辣
の極みですね(③以前でも酷いですが)。



 ①2003年に[1]ファンド設立
 ②2006年8付[2]ファンド設立
 ③2007年4月、サブプライム市場は暴落
 ④2007年5月、エバークエストのIPO ← IPOが成立していれば、エバークエストの株を買った人は大損
 ⑤2007年6月、問題のファンド凍結

ino said...

m(_ _)m すみません改行位置調整しました

金融の知識無しの素人ですが、何とか図に
まとめてみました。
http://picasaweb.google.co.jp/inoue275/AAA#

※素人なので間違いが沢山あると思いますが、お許しを
※下記の日銀のレポートも参考にしました
(理解したと言いがたいですが)

 証券化商品のリスク特性の分析
 -- 再証券化によるレバレッジ上昇のインパクト --
http://www.boj.or.jp/type/ronbun/rev/rev08j06.htm


憶測ですが、下記の①~③の状態がBSAMに限らず業界に
蔓延していたんでしょうか?
そうであれば他の投資銀行や商業銀行も同様な事をやっ
ていて商業銀行であればSIVにエクエティーを買わせて
いたんでしょうか?

 ①問題の背景に売れにくいエクエティーの引受け手が
  プロなどに限られていて、なかなか売り切れない状
  態になっていたのではありませんか?

  エクエティーまで買い手がきちんとつかないと仕組
  み債がローチンできない(シニアの買い手ばかりで
  は仕組み債が成り立たない)。

 ②そうした中で自身が作ったファンドのエクエティー
  の部分を自分が買ってでもローチンしたい。
  でも、これって「タコ配」になるんでは?

 ③それで別会社を作ってエクエティーをファンドの投
  資者の一人と装って買わせていた。



さてラルフ・チオッフィは銀行から借りた資金で、エバ
ークエストがエクエティーを買っているのを知っていて
下記の③~⑤の間でエバークエストのIPOを行を行なお
うとした(一般の投資者の無知につけ込んで)。
エバークエストがエクエティーを持っている事は、売っ
た本人である(買った本人でもある?)ラルフ・チオッ
フィが知らないわけが無い。
③以降にエバークエストにエクエティーを売っていたの
なら悪辣の極みですね(③以前でも酷いですが)。

 ①2003年に[1]ファンド設立
 ②2006年8付[2]ファンド設立
 ③2007年4月、サブプライム市場は暴落
 ④2007年5月、エバークエストのIPO
 ⑤2007年6月、問題のファンド凍結

TrinityNYC said...

>雅雄さん

コメントありがとうございます。この分野は実に特殊で、私自身もクレジットの分野にいたとはいえ、CDOの組成に直接関わる仕事してたわけじゃありませんから、基本的な知識は多少あっても、こんな程度の知識では現場ではぜんぜん役には立ちませんので、わたしも基本的に「門外漢」です。

ご承知かと思いますが、プールに集められた資産は個々の顔を失います。「プール全体でひとつの資産の固まり」とみなされ、その固まりのパフォーマンスをベースにトランシェとしてリスク配分するので、プールの中の個別資産のひとつひとつと各トランシェが直接繋がっているわけではありません。そこのところ、明確に記事中書かなかったので、ご注意ください。

ところで、エクイティ部分を外部に全部売り切らずに証券化を行った原資産の持ち手に残るというのは、証券化ではよく行われることで、それ自体は目新しいことではないです。また、特別目的会社を別途作って売れ残りを移管したり、リパッケージしたりするのも、サブプライム問題が表面化するより以前から行われてました。

ここで「目新しい動き」としては、エクイティ部分やメザニンの中でもリスクの高い劣後部分を、積極的にポートフォリオに組み込むヘッジファンドやプライベートエクイティ、超富裕層投資家などが【新たな投資家層】として証券化市場に登場した、という点のほうかと思います。投資家ベースが拡大するという構造変化があったのです。

彼ら【新投資家層】が、こうしたエキゾチック証券に積極投資するようになった背景は、金利低下で資金を安価で調達できるようになったことで、過去のデフォルト経験も、証券化プロダクトの場合は、比較的優秀な成績を収めていたので、まさに「リスク調整後のリターン」としては魅力的に写ったわけですね。

でも、彼らのような機関投資家は、資金調達能力のみならず、ヘッジ能力、情報収集および分析能力など優位に立っていて、だからこそ、手を出せた、と思います。それでメシ食ってるプロなんだから、自己責任でやれると思ったら、お好きにどうぞ、ってな感じ。

でも、一般の個人投資家の場合は、そうはいきませんよね。チオッフィが第2のファンドをローンチした頃は、すでに一部のヘッジファンドなどでは慎重になっていて、ジョン・ポールソンなどがショートに移ろうという頃です。この分野を長年専門にやってきたチオッフィらが、そうした市場の変化に気づいていなかった、というのは、わたしにはちょっと信じがたいのですが。

ヘッジファンドに売れなくなってきたから、(うちの親みたいのが混じっている)一般市場にハイリスクを垂れ流し、というのは、イチローが相手かまわずプロ野球であろうが草野球であろうが出てきて自己の打率を伸ばそうとするのにも似て、恥ずべき行為とわたしは思います。その投資商品の中身を誰よりも知り尽くしている者だからこそ、ますます、です。