今日はまず、筆者の「ブラック・フライデー偵察レポート」から始めたい。
NYマンハッタンには、どでかい駐車場にどでかい売り場スペースが隣接している、いわゆる「郊外型のモール」なるものはないのだが、34丁目と6番街に、自称「世界最大のお店(The World's Largest Store)」Macy'sがあり、その周辺に、K-Martがあったり、JCPennyがあったり、H&M、Gap、Victoria Secret、Old Navy、その他もろもろ、郊外型モール内に必ず入っているような店舗が固まってる地区がある。
だから、そこに行けば、マンハッタンにいながらにして、完全とは言わないまでも、おおよそのモールの疑似体験ができる、とでもいいましょうか。ま、要は、その一角は「ちょっとダサい庶民アメリカンの集うエリア」なんである。NYCにウォルマートがないのが残念なんだけどね。
で、今年のブラックフライデーがどんな按配なのか非常が興味があった筆者は、実地観察に行ってきた。
まず、米国ミドルクラスのショッピングメッカ、Macy'sから。Macy'sといえば、全米最大サンクスギビング・パレードのスポンサー、そして、全米最大独立記念日花火大会のスポンサーである。(写真は外と内部。クリスマス用飾りつけ。)
筆者が行った時間帯は、Door Crashers(ドアをぶち破る人たち)と呼ばれる「開店前から鼻の穴膨らまして店の前に並んでる皆様」が帰ってしまった午後の時間帯だったので、そのせいもあるのかもしれませんが、正直な感想として、さほど混んでませんでした。
クリスマスプレゼントとして人気の高いキッチン用品の階に最初に行ってみたんだけど、そこそこ人は入っているが、レジに長蛇の列ができている、というわけではなかった。並んでる人が何を買ってるのかも注意してみたけど、小型オーブントースターとか、調理用ボウルのセットとか、包丁セットとか、なんか実直。プレゼントにするの?と何気なく列のひとりに聞いてみたら「ううん、自分で使うの。」という返事。
続いて、婦人服売り場に行ってみた。絶句するほどガラガラ。だ、だいじょうぶですか、この階・・・。
家具売り場も、疲れて椅子にボーと座ってるひとはずいぶんいたけど、店員と家具の購入について相談してる客は、そんなにいない。シーツや枕などの寝具売り場も、レジに人が数人しか並んでいない。
かなり不安になってきて、次の階に移ったら、そこだけ、ものすごい人の数で熱気があふれていた。
その階とは、「婦人靴売り場」。老若女女(男女ではなくて女女)が、安売りになってる靴だのブーツだのを、形相変えて次々に履いて試してた。女はみんな、イメルダ症候群か。
そして、ちょっと悲しかったのは、イメルダ達がこれでもかこれでもかと安売り靴を次々試し履きしている間、無理やり買い物に連れてこられたらしき男性達が、婦人靴売り場の備え付けの椅子に座って、放心している姿だった・・・。
東京日本橋や銀座のデパートでも、これと全く同じ光景をよく見かけたものである。ロンドンのデパートでも、パリのデパートでも、妻が買い物終わるまで放心して座って待ってる男性をちょくちょくみかけた。これって、世界共通なんだな、きっと。
Macy'sに続いて、K-Martに行ってみたが、ここはもっと人が少なかった。フラットパネルTVが目玉商品として山積みになっていたけど、そんなに人が集まってる風でもなかった。
他の店もあれこれ入ってみたけど、普段の週末よりは人は多いけれど、年末商戦という熱気は、どこも、あまり感じられなかった。
筆者が入った店の中で唯一、レジに長蛇の列ができていた店は、Old Navy のみ。Gapグループのひとつだが、Gapブランドよりさらに一段安めの価格帯のカジュアルウェアを売るんですよね。(写真は混み合うOld Navy内の様子。)
Gap Inc.(NYSE:GPS)という会社は、収益部門としては、おなじみブランドGapのほかに、ちょっと高めの価格帯のBanana Republicというブランド、安めの価格帯のOld Navyというブランド、そして、国際部門の4つに分かれる。同社の3Q09業績は去る11月19日に発表になっているが、これら主要4部門のうち、3Qに唯一セールスを伸ばしたのが、Old Navyだった。消費者は安い服へ、安い服へと移行したのが見て取れる。
Gap Inc. 第3四半期の前年同期比ネットセールス増加率
北米GAP: -7% (3Q08) → -7% (3Q09)
北米Banana Republic: -11% → -6%
北米Old Navy: -18% → +10%
インターナショナル: -1% → -6%
値段が安いだけあって品質も合わせて落ちるんだが、ジーンズ一本買うにしても、Banana Republicだと一本70~80ドル、Gapだと40~50ドルのところ、Old Navyだと20ドル前後でジーンズ買えちゃう。
混雑するOld Navyのお店の中で、しばらくジーとみんなどんなもの買ってるのか観察してたんだけど、どうやら「20ドル札一枚でもお釣りがくる服」が人気のようであった。客はたくさん入ってるんだけど、高めの商品には集まってないの。
何ゆえにMacy'sの婦人靴売り場だけあの時あんなに人が集まってたのかは知らないが、そのほかの場所では、今買っておかないと損する、みたいな焦燥感が、買い物客たちの側に感じられないわけですよ。「ま、バーゲンはここだけじゃないしぃ・・・」みたいな「ゆったり感」すら、そこには漂っていた。 50%OFF、60%OFFになっていても、さらなるディスカウントを期待している。
筆者も何か買おうかなと思ったが、何を手にとっても「これが無くても死なないし・・・」とすぐ考えてしまって買う気が起きない。結局、近所のスーパーよりKマートのほうが皿洗い機洗剤が1ドル安いってんで、それを買ってきた。だけど、それってクリスマス商戦と何の関係もないし、だいたいバス代往復4ドル50セントもかけて行ったのに、皿洗い洗剤で1ドルセーブ。なにしに行ったんだか・・・。
ということで、ニューヨーク34丁目界隈の、庶民のためのショッピングエリアにて、筆者が勝手に得た印象は、「やっぱ、今年は、全体的に、売れてないわさ・・・」である。
APの記事によると、今年のブラックフライデーの売り上げは、聞き取り調査で去年対比で0.5%増という推計だそう。筆者の実感も、そんなもんだったな。
0.5%のうち、0.3%ぐらいはTVや電子機器類、残りは婦人靴じゃないのかという疑問も一瞬湧いたが・・・。
ここから先は、実際の小売統計が出てくるのを待つとしよう。
何の役にも立たない偵察レポートですみません。
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