ブログ更新をサボり気味だった今年を反省し、大晦日の今日、カウントダウンの前に、あえて最後のエントリーに挑戦することにしました!
(と言っても、来年も注目すべき話題をいくつか備忘録としてまとめておいて、年があけてから、それぞれゆっくり考えよう、という魂胆です。笑)
(話題1)米株市場は来年も上がり続けるか?
前回のMHJにも書いたように、2010年には経済回復が明らかに進行したが、これが2011年も継続できるかどうか(Sustainableか)が注目ですね。
米株ファンドのマネージャー達は、なかなか強気な様子です。リーマンショック後の暴落の記憶が生生しすぎて、一昨年も去年も回復ストーリーを信じることができずに負けた人が少なくなかったので、来年は同じ間違いはしないぞ!と腕まくりらしいです。
<注目記事> Stock fund investors bank on 2011 (Market Watch, 12/31/10)
- 米国の分散型株ファンドは2010年は19%アップ、とりわけ第4四半期の12%アップで大躍進。
- SP500の15%アップ、ダウの14%アップを超えた。
- 海外株ファンドは年14%アップ、第4四半期は7.4%アップに留まり、米株ファンドの好調さが目立った。
- “We avoided sliding into the abyss. While the economy is still weak, Corporate America is in pretty good shape.”(深みにはまることは回避できた。経済はまだ弱いが、米の企業セクターは非常に調子がいい。)
- …markets are volatile by nature, and so the real story of 2010 is that many investors missed the rally — again. More than $81 billion exited U.S. stock mutual funds in 2010 than came into them.((第2四半期は株価は13%も下降したが)市場というものはそもそもがボラが高いのが当たり前なのだ。2010年の話としてで覚えておくべきは、多くの投資家が2009年に続き「またもや」株のラリーを逃した、というポイントだ。今年、米国株ミューチュアルファンドからは、流入した額より$81billion(810億ドル)も多く流出したのである。)
- … fund investors will have to live in the momentum. 2011 marks Year 3 of the four-year U.S. presidential cycle, and a president’s third year typically has been a winner for stocks. It’s also the third year of the bull market that began in March 2009, and every bull market since 1949 has seen a third year, according to S&P. (ファンドの投資家はモメンタムに乗らなければ始まらない。2011年は大統領任期の3年目にあたり、この3年目というのはたいがい株価にとっては勝ち年になる。また、2011年は2009年3月に始まったブル市場の3年目にもあたり、1949年以来、どのブルマーケットも、必ず3年間ブルが続いたのだ。)
と、まぁ、「大統領3年目はブルだ!」とかいう、ほとんど【おみくじ占い】のような予想話(笑)されてもこっちは困るわけだが、2011年も、経済指標が出される度に一喜一憂する年になりそうです。
(話題2)2013年以降PIIGS国債の債務リストラは現実になるか?
今年は年初から年末までソブリン・リスクにつきまとわれた年でありました。欧州当局とIMFとでまとめた超大型救済パッケージが用意されたにも関わらず、市場は落ち着くどころかそのバックストップ(Backstop=いざと言う時のための準備)を鼻でせせら笑い、ソブリンCDSは夏以降に再びワイドニング基調に入った。ギリシャなんて、今や10年対独スプレッドも960bpsまで行ってしまい、民間資金への独自アクセスはほぼ不可能な状態が続いている。
そんな中、年末に出てきた、この話。EU/IMFに返済期限延長を求めたギリシャが、EU/IMFのみならず、商業銀行や海外ファンドから借りた民間への債務に対しても返済期間延長を求めているらしいのだ。
<注目記事> Greece in talks on extending debt repayment: source (Reuters, 12/31/10)
- EU/IMFの救済資金(€110billion)の期限は2013年、その期限が切れたら、高債務を患う国は債務リストラを余儀なくされるのではという懸念が市場を去らない。
- ギリシャの債務の70%が海外筋のポートフォリオに保有されている。
- ECBのヴァイス・プレジデントであるルカス・パパデモス氏が最近、ベルリン、フランクフルト、ロンドン、ブリュッセルを走り回っている、との情報を地元紙が入手。
- 2013年から2015年に償還がくるペーパーを中心に、10年から最高30年までの返済期間延長のお願いではないか、と。
- ギリシャは2021年までに€110billionのEU/IMF救済ローンの返済を行わなくてはならないそう。期間延長により経済回復の時間稼ぎで市場に安心感を与えるのが関係者の狙い。
- ギリシャのGDP対比債務は2011年に152.6%(€348bn)になる。
そんな混乱続くユーロ圏に、1月1日から正式にエストニアが加盟。
クルーグマン氏が自身のブログに短いエントリーを載せています。
<関連記事> Congratulations to Estonia — or Maybe Condolences? (NYT, 12/31/10)
「エストニアよ、おめでとう――いや、お悔やみ申し上げますというべきか?」という記事タイトルだけで、中身はおわかりでしょう。
(話題3)米の住宅価格はまだ下がる?
まずは金利市場の話から。
<注目記事> Bonds' dramatic year sets stage for higher rates (AP, 12/31/10)
米国の金利状況については、いろいろ言われておりますが、上記記事のように、来年はトレジャリー・イールドは上昇するという見方は多いかと思います。ひとつは株市場と同じ「景気回復が本格化する」という見方、そして、「インフレ懸念が台頭する」という見方、いろいろあり。
ただし、拙ブログでも何度も書いてきたことでありますが、個人も、企業も、おカネは結構持っており、その資金が金融機関に回って国債買いにつながるという流れは、年が変わったからとて、そんなに急激に変化するものなのか。そこらへんについては、住宅と雇用の両面がまだまだ心もとないことから、筆者は株式サイドが考えているように単純な図式にはならないのでは・・・と感じています。ここらへんについては、筆者もよく読ませてもらっている、ブログ『金融市場Watch Weblog』のエントリー『2011年のマーケットを考える(2)』を一読されることをおススメします。
で、住宅市場のほうなのだが、米国の住宅価格はまだ20%は下がるだろうという暗い記事を読んだ。
<注目記事> Home Prices Are Still Too High (WSJ, 12/30/10)
以下引用:
In January 1998 the 10-City Index was at 82.7. If home prices had followed the 3.35% annual 100 year trend line, then the index would have arrived at 126.7 in October 2010. This week, Case-Shiller announced that figure to be 159.0. This would suggest that the index would need to decline an additional 20.3% from current levels just to get back to the trend line.
(1998年1月には10都市のインデックスは82.7だった。もし住宅価格が過去100年のトレンドラインどおり年率3.35%の成長だったら、2010年10月には同インデックスは126.7になるはずだ。今週出されてきたケース・シラーによると、10月の指数は159。トレンドラインに回帰するだけでも、現在の水準からまだ20.3%下落する必要がある、という意味だ。)
With a bleak economic prospect stretching far out into the future, I feel that a 10% dip below the 100-year trend line is a reasonable expectation within the next five years, particularly if mortgage rates rise to more typical levels of 6%. That would put the index at 114.02, or prices 28.3% below where we are now. Even a 5% dip would put us at 120.36, or 24.32% below current prices. If rates stay low, price dips may be less severe, but inflation will be higher.
(経済回復の見込みがまだよく見えていないことを考えると、住宅価格が100年のトレンドラインを向こう5年で10%下回るというシナリオはさほど無茶苦茶な話とも思えない。特に、住宅ローン金利が従来の典型的な水準である6%に上昇するとしたら、十分有り得る。住宅融資金利が6%になった場合、インデックスは114.02と試算され、それは現水準より28.3%下落を意味する。たとえトレンドラインを5%下回るとした場合でも、インデックスは120.36(現水準より24.32%下落)になる。もし、住宅融資で低金利が継続すれば、落ち込みは緩やかになるが、高インフレに繋がるだろう。)(引用終わり)
「来年はオバマ3年目だーい!」とウキウキ踊ってる連中の顔に冷や水ぶっかけるような話ではある。(笑)
実際、住宅融資の世界では、
- オリジネーションの9割がいまだにGSE保証に依存している状態が続いていて、商品市場と株式市場にはリスク資金が流れ込んだ一方で、住宅リスクを取ろうという民間資金はほぼ不在の状態
- 第3四半期のフォークロージャ件数は第2四半期対比で30%以上の大幅増加でサプライは減少せず
- 米都市部20地域の10月の住宅価格は20地域すべてで低下、多くの地域で2006年のピーク以来底値更新が続いている。
それが、米住宅市場の実態である。
これはMHJ筆者が感じるところだが、議会のフォーカスが住宅問題から税金問題に移り、住宅市場をなんとかしようという「政治的意思(Political Will)」が目だって衰退していったのも、2010年の米政界の特徴だったように思う。
(話題4) 米国の高失業率は改善するのか?
米失業率は一進一退で10%に手が届きそうなあたりをウロウロしているが、失業期間のデュレーションが伸びている。いったん失業すると、復職できない人が増えているんである。
そこにこんなニュース。
<注目記事> Five years without work? Labor department will now track it (NBC News, 12/29/10)
- 米労働統計局はこれまで失業期間2年までの統計を記録してきたが、2011年からは失業期間5年までを統計対象とする、と発表した。
- 最近のデータでは、新しい仕事がみつかるまでの平均的な失業期間の長さは33.8週間(約7ヶ月)だったのだが、この期間は延びる一方。
- また年齢の高い労働者ほど、期間が長くなる傾向がある。
- さらに、最高99週まで出される失業保険を使い果たしてしまった労働者――彼らはナインティナイナーズ(99ers)と呼ばれる――の状況はさらに苦しく、99週間以上も失業してしまったら、まず職は見つからない。
- 政府がいまからわざわざ統計対象の失業期間を2年から5年に延長するぐらい、現失業者の復職の見通しは立ってないということか。
これを聞いて、トホホ・・・と思ってたら、さらにこんなニュースが。
<注目記事>10,000 Boomers a Day Need Jobs (AP, 12/27/10)
2011年1月1日より米国では毎日1万人づつ65歳を迎えるというのである。べービーブーマーが定年退職の年齢に入るためで、これは向こう19年間も続くらしいんである。
バブル絶頂期には「ベビーブーマー需要」とかいって、ブーマーは退職後もおカネをガンガン使うという薔薇色シナリオに関係者は自分の頬も薔薇色に染めて期待していた。ところが、それもバブルと一緒にガラガラと崩れ落ち、彼らはおカネ使うどころか、退職に備えた準備が足りていないから65歳以降も働かなくちゃ食っていかれへん、というんである。
- 1980年には民間セクターの39%が退職後に定額のペイアウトが保証された年金を有していたが、現在はその数字は15%に満たない。
- ブーマーの42%が401(K)プランを持っているが、株式へのアロケーション比率が一般に高く、過去10年間S&P500は全然伸びなかった。
- 退職後の虎の子として自宅不動産を暖めてきたが、自宅バリューは約3分の2になってしまった。現在ホームオーナーの22%にあたる1100万人が、家の価値より借金額が多いアンダーウォーター組。
- 55歳から64歳の層の51%が退職後は生活水準を下げなければならないというボストンカレッジの調査あり。
- 貯蓄が足りない。1970年~80年には個人の貯蓄率は10%近かったが2007年にはマイナス1%に落ちた。
- 50代、60代で401(k)プランを持っているグループも、2009年末時点で平均残高は15万ドル以下だった。
- 55歳から64歳のグループの約3分の2が2007年に住宅ローン残高$85000(メディアン値)
- 4人に3人が社会保障年金を受け取れる62歳に即座に受け取りを希望したため、将来の受け取りフローが少なくなる。
- 55歳で処方薬を必要とする典型的な男性の場合、国が補償するメディケアと追加的保険に加入する場合、将来のメディカルコストとして$187000が必要。65歳女性の場合はさらに多く$213000必要。
- 55歳以上の失業者の平均失業期間は45週間で、若い層より12週間長い。リセッションが始まった2007年12月には20週間だったので倍増以上したことに。
- 2011年に65歳になるグループの40%が、「動けなくなるまで働くつもり」という調査。
「動けなくなるまで働きたい」と言っても、職がないんじゃよ、職が・・・
(話題5) 中国はどうなる?
今12月末に行われた中国の利上げは、彼の国のインフレ懸念が以前に増して強まっていることを示唆している。金利上昇は上記の米国のケースと同じく、中国不動産セクターに影響してくる話なので、2011年も中国経済の動向からは目が離せなくなりそう。それに、商品相場だってデマンドは中国、米国企業だってデマンドは中国ですんで。
2010年の初めは、米の経済回復が軌道に乗るかどうかがよく見えず、業務基盤が米国内に限定されるセクターは業績は期待できないけれども、成長高い海外での事業に強い米企業の業績には大いに期待できる、という話で持ちきりだった。
実際、マクドナルドだの、コカコーラだの、フェデックスだの、そこらへんの大企業はそのシナリオどおりに海外での売上げが業績好転に大きく貢献した2010年だったわけであります。で、その「海外の売上げ」と言う場合、多くは「中国およびアジア」の話をしてるわけなんである。
2011年についても、やはり同じような見方は存在していてあちこちで語られているのだが、2010年に語られていたストーリーラインで、2011年にも引き続き株価上昇をサポートするためには、中国経済の成長ぶりと米企業への利益貢献度が、2010年のそれを上回る「上方サプライズ」でも見せてくれないとね。だって、ある程度株価にもう織り込まれちゃってるわけだから、予定通り程度の成長でさらなる株価押し上げ要因になるのか?と思うわけである。
で、その中国ですが、あちこちでゴーストタウンがやたら出来てるらしいんだが・・・(参考:A Personal Tour Of China's Eerily Vacant Commercial Real Estate )
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というわけで、年末の今日、2011年になっても引きずるであろう【暗い話】を特集してみました。
あと1時間ほどで、ニューヨークも年が明けます。これだけ暗い話ばっかしてて、ハッピーも何もないもんですが(笑)
★ HAPPY NEW YEAR!!! ★
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