Wednesday, December 29, 2010

リカバリーのモメンタムは継続するか

今日は12月29日。2010年も、あと二日で終わりです。今年もあっという間でした。

今年は、ブログ更新がサボり気味で反省。来年は、もっと書き溜めたい、と考えております。(ブログ更新はサボってますが、最近始めたフェースブックにチョコチョコ目に付く傍から記事などを貯めてます。そちらも、よろしければ、寄ってください。)

さて、今年のクリスマス直後のニューヨークは、数年ぶりの猛烈な雪嵐に見舞われ、JFKやニューアークなど近辺の主要空港は軒並み閉鎖。(写真は筆者のマンハッタン自宅付近で26日夜に撮影。)





連日、除雪車が繰り出しているものの、嵐から3日経った今日も、まだ道路脇は雪でグチャグチャのひどい有様である。大量の雪に弱い大都市の典型ニューヨーク市は、【雪かき要員】として昨日は700人、今日は1200人を臨時に雇い、日常生活の復旧に務めているが手間取っているらしい。

(動画は除雪車に引っ掛けられてズタズタにされる路上駐車の自家用車。撮影者のニューヨーカーFワード満載に注意。Hat Tip @gohsuket




それでも、クリスマスで貰ったプレゼントを「自分が本当に欲しい品物」と交換するために26日と27日にデパートに出かけてゆくという【全米年末のお約束行事】のために外出してた勇敢な人もいたようだが、ロイターによると、この週末は客足が例年の6.8%減少したとのこと。(当たり前。あの嵐で客足増えてたら、むしろ怖いだろw)しかし、売上げ自体は4%増加して、11月の強気のFedexの占いを裏切ることなく、今年の年末商戦はなかなか調子がよかったのである。


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しかしね、消費者のみなさん、驚くほどお金を持ってるんですねー。

我が家なんかは、バブルの頃に調子こいて買い物ばっかして家中に不必要なものが溢れてしまった己の愚行を深く反省し、『モノがないのはいいことだ』を座右の銘に据え、以前なら衝動買いしてたようなものも、いまや買う前にしつこく品質・評判調査をし、本当に欲しい物なのか熟考に熟考を重ねて、価格もどこが一番安いかネットで調べ、グルーポンなども酷使して、徹底的に「家計ディフェンスモード」に入っているよ。

だが、我が家のように爪に火をともすような生活(笑)をしてる家庭はむしろ少数派らしく、アメリカ人の個人消費支出(Personal Consumption Expenditure)は、実際ズンズン上昇しているんである。(グラフはCalculated Riskから。)

(図1)



この第4四半期なんか、リセッションに入る寸前の07年の支出ピークを上回るほどの旺盛さなんである。

しかし、(1)米失業率は10%近くをウロウロしている、(2)政府からの住宅購入補助金がなくなった2010年は住宅価格は下がり続けている―これら2点を考えただけでも、クビをかしげてしまう。

次のグラフは、個人所得(Personal Income)から移転所得(Transfer Payments)※ を差っぴいたものだ。(グラフは2005年時点のドルで調整済み、縦軸は先立つピークからの落ち込み度。Calculated Riskより)

(図2)



(※ 移転所得とは、家計が受け取る失業保険や年金などのことで、給与のように生産に関係しない所得のこと。)

このグラフを見ると、2010年に入ってから移転所得を除く個人所得は確実に好転しているのがわかるが、それでも70年代半ばの景気冷え込み時の個人所得の落ち込み時と同程度のシビアさで、ピークの95%強程度しか回復していない

懲りずにまた借金増やしておカネ使ってるのかといえば、12月7日に出されたFRBのデータを見ても、消費者クレジットの残高は、昨年に続き2010年も一貫して減少傾向を辿っている。

それでも、ピークの2007年当時を上回る消費支出ができる理由は、これ如何に?答えは簡単、「移転所得が大きいから」に他なりませんね。

要するに「政府がくれたお金」を使ってるのである。


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これについて、経済コラムニストのJohn Lounsburyが「もしも移転所得がなかった場合、米国GDPはどの水準にいるか」を試算していた。移転所得そのものはGDPには含まれないが、それを使って消費者が支出すれば個人消費となってGDPを押し上げる、というのである。

以下が彼が示したグラフ。

(1)移転所得は、リセッション前のトレンドラインから、およそ$250bn上方に乖離。




(2)この移転所得の乖離分が「なかったもの」と仮定して調整を加えたGDP※。(グラフ青は発表された実質GDP、赤は調整後。)



※ 試算に用いられた前提は、マルティプライアーは1、他の経済活動への影響はない、という単純なもの。これについては、Lounsbury自身が反論・批判されても自分はデフェンスできないと述べているので、前提条件そのものに異論ある方は、ご自分でモデル組んで考察してください。


(3)1Q2008=1として横軸はその後の四半期、縦軸は累積GDPとし、リセッションからの回復度合いをオフィシャル実質GDPと上記調整後GDPとで比較したグラフ。


上のグラフから読めることとして:


  • 移転所得がない場合はGDPの落ち込み度合いは深いVの字になる。
  • 過剰な移転所得が、景気の落ち込みを2%以上緩和した。これは移転所得の恩恵。
  • しかし、6四半期後(2Q09)に縮小が底を打って拡大サイクルに入ってからの累積GDP(回復度合い)は、赤線・青線がパラレル(平行線)に推移する。
  • 上述した前提のもとでは、移転所得の恩恵は拡大フェーズでは消滅したようにも見受けられる。
  • 過剰移転所得がなかった状態では、累積GDPはいまだピークより3%近く低位置におり、オフィシャルなGDP数値が示すほどは、実体経済の部分で回復フェーズが完了したとは言い難い。


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なるほど景気回復そのものはこうしてみると実際に起こっている。

起こってはいるんだが、問題は「政府からのおカネ」がこの先もらえなくなっても、現在のGDPリカバリーのモメンタムがこのまま続くかどうか、というところでありましょうね。

青と赤の線が底打ちしてからはパラレルで動いている(=個人所得は増加している)わけなので、モメンタム継続は実際可能なのかもしれない。市場(とりわけ株式市場)はそうした「持続的な景気の自律回復」への期待が非常に強く、(例によって)ウキウキ感で「気分はブル」になっている。

しかし、上の(図1)個人消費支出の推移グラフの「形状」から判断するに、消費がここからさらに一本調子で上昇できるかどうかは、12月の消費者信頼感指数が予想に反して鈍っていることを考え合わせると、やや心もとない。仮に、移転所得が今後減少する事になった時に、個人所得の増加も合わせて鈍化すると、必然的に消費は下降サイクルに入ってくるわけだ。

Loundsburyによると、2008年から2010年の約2年間で、米国債発行額はおよそ$570bn増加した。この額は、移転所得として国民の手に渡り同期間に消費された額にほぼ匹敵する、という。

この政府の【大盤振る舞い】が、過去のリセッションと比較して、どれほど強烈かを示唆する興味深いグラフがあったので、最後に貼っておく。(グラフはEconomPic Data、ソースはBEA






企業・個人・政府のそれぞれの貯蓄(Savings)がGDP対比でどう動いたか―1930年代からの推移である。グラフで点線になっているのは、これら3つの貯蓄のネットであるが、ここ2年ほどの米国の貯蓄は全体でネガティブ圏に入っているのであった。

個人は行く先の不安から貯金をし、企業もバランスシートにキャッシュ貯め込んで派手な投資は控えている。だが政府のそれは大きくマイナスに落ち込んでおり、全体まとめるとマイナス。

しかし、この「全体としてマイナス」というのは、1930年代以来アメリカでは初めての事態なのだ。80年代の銀行危機の時だって、90年代のデリバティブス危機のときだって、2000年代のハイテクバブル崩壊のときだって、アメリカは「全体としては」常にプラス圏にいた。


ブログEconomPicは、このグラフを示しながら、こう書いている。

What does this mean? It means the economy has been reliant on external sources of financing for our current level of consumption, which is sustainable… until it isn’t. Put another way, maintaining our current level of growth isn't completely in our hands at the moment.

This will either reverse at some point in the future with:

- Absolute savings increasing through a higher savings rate, which will cause the economy to slow (all else equal) as we get our balance sheet in check (i.e. what is going on in Europe)
- The growth of the private sector, which will allow the absolute level of savings to increase without a large increase in the savings rate as a percent of GDP; the denominator will grow, rather than the numerator in the savings as a percent of GDP ratio (i.e. the goldilocks scenario)

このグラフが何を意味するだろうか。これは、現時点の消費水準を維持するために、米国は外部資金に依存している、という意味だ。この状況は、それを持続できなくなるまで持続する。言い方を変えれば、現在の経済成長の水準を維持できるか否かは、すでに我々の手を離れてしまっている。

以下のいずれかが起これば、将来どこかの時点で、(コントロールを自らの手に取り戻すよう)状況がリバースする可能性がある。

(A) 貯蓄率を上げることで貯蓄の絶対水準を上昇させる。わが国のバランスシートを改善させる間、(それ以外はすべて同じと仮定して)景気の回復を遅らせることに繋がる。(これは、まさに現在、欧州で起こっている状況だ。)

(B) プライベートセクターの成長。貯蓄率を大幅に上昇させることなくとも、貯蓄の絶対水準を上げる。分子の貯蓄を上げようとするよりも、分母のGDPを成長させる。(ゴールディロック経済のシナリオ。)


あと数日で2010年も終わりを迎えようという今、株市場で頻繁に語られている強気見解は、あきらかに(B)のシナリオで走っている。

ただし、債券市場のほうは、どうも、株市場と同じ意見を共有しているようには見えないのだが。

1 comment:

Anonymous said...

EU圏が互いに国債の持ち合いして
社会主義国化、実際支えているのは
輸出生産国のドイツだけ
他は国力無しで、歳費の節減に動き
公務員の給与引き下げ、教育費の節減で
学生や公務員がデモ、暴動化
やがて破綻する、それに連動して
中国が(EUの債権買い支えている)破綻
今の中国はバブル末期、いつ破綻するか
2011~2012年には崩壊。
韓国はウオン安で、輸出好調だが
実力は無し、すぐに巻き込まれる
次に米国、BOAのサブプライム爆弾が
露見し金融パニックへ損失は100兆円規模だが
波及して500兆円分ぐらいの腐った資産が
溶けはじめ、州単位で破綻
現時点ではフロリダが学校のトイレットペーパを
生徒が家から持ち込んでいる緊迫財政
この頃から戦争景気に持って行きたいアメリカ
相手は中国、その中国は危険を察して
軍事拡大と米国債買い支えるから、仲良くしよ
と言い寄り中、中国バブルが飛ぶと
資源国家の豪州が大打撃、鉄鉱石暴落
アルミも銅も暴落、石油産出国は、安泰だが
アメリカが横取りに仕掛けるかも
イランが先か中国が先かきな臭い動きが
有りそうな2011年、さらなる大不況が
来る、今の内に自家発電気と大きな冷蔵庫
井戸水吸いあけ、ろ過給水、食料確保と
自家農園、買いだめした方が良いかも
一気にインフレに動く予感
株価なんて暴落です,空売りできる所は
大儲けできるんだろうね