Tuesday, December 14, 2010

小売は予想通り好調(しかし、そこまでして買いたいか・・・)

今日(14日)は、米商務省から11月の小売統計が出されてきた。結果はなかなか明るく、前月比で0.8%増。10月値も上方修正されて、前月比1.2%から1.7%にアップ。11月は2007年11月以来の高水準(ただし名目)になったという。



だが、このセクターをマジメに追いかけてるわけではないこの筆者ですら、「小売はどうやらクリスマスまでイケそうだよ」という話は、『今年のホリデーショッピング動向』として11月の半ばのMHJエントリーに書いていたぐらいなんだから、「ええっ!それって、すっごく明るいニュースですよねっっ?!」と(無理して)驚いた顔して目を輝かせるのは、芝居がかっているぞ、そこのCNBC。

ってことで、個人的にはそこまではしゃいでみせなくともと思うものの、エコノミスト達はやっぱりはしゃいでいて、今日のウォールストリートジャーナル記事によると、同紙が聞き取りしたエコノミスト55人の第4四半期のGDP伸び予想の平均は、先週の段階2.6%(季節調整済み)だったのが、この明るい小売ニュースと10月の輸出増の報告を受けて、3%超に上方修正する動きが続いているらしい。(グラフは過去3年間のGDP推移、WSJより)





では、その明るいニュースの中身をもう少し詳しくみてみたい。

Bespokeのサイトに、わかりいいグラフがあったので、拝借することにする。

まずセクター別の前月比伸び(名目の数値)。Nonstore Retailers(店舗を持たない小売=ネットショップ)が、小売全体の0.83%の伸びに対して、2.07%と健闘。一方、Electronics & Appliances (電気機器・家電)はマイナス0.82%と落ち込んだ。



今日は、家電小売最大手のベストバイ(BBY)がアナリスト予想を下回った上、年間ガイダンスを下ぶれさせたこともあって株価が15%も叩き落ちた。



家電小売部門の、小売総売り上げ全体に占める割合は、2.27%と2001年10月以来の低水準。


ところが、ネット・リテーラーの同割合は一直線に伸びており、全体の8.33%になっている。この傾向は、米国では、ウォルマートやメイシーズといった大手小売もネット販売の増加率が全体の増加率を大きく上回る状態が継続しているので、この先も、割合は拡大しそうであるな。



今日出された数値で、ネットストアの雄アマゾンと、家電の雄ベストバイの明暗がはっきりついた感がある。ベストバイの場合、目玉商品のTVなどの価格が強い圧力を受けているのに加え、3DTVやネットTVなど次世代商品が、思っていたほど売れなかったことも原因のひとつ。

自分自身の生活態度を振り返ってみても、カウチポテトで受動的にTV見てるよりも、自分からネットに情報探しに行ったほうが楽しいモンね。消費者の普段の行動も変わってきていて、製品売上げにメリハリがついてきているのだろうな。

11月14日のエントリーで、Fedexがネットショップの売上げからくる年末商戦の小包配達動向に相当な自信を覗かせていたことを紹介したが、上の表は、その裏づけにもなったわけである。

というわけで、今年の年末商戦は(予想通り)まずまず、といったところだが、今年も残すところ、あと2週間。

来年も、この消費トレンドが継続回復できるかどうか、Sustainabilityがあるかどうかが、キーですね。(←この高失業率でどうやって、という極めて基本的な質問なのでありますが。)


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さて、以下はどうでもいい話。

筆者は毎年、ブラックフライデーに早朝から店の前に並んで開店とともに店になだれ込むドア・クラッシャー(Door Crushers)達の姿をTVで見て「よーやる・・・」と呆れているわけだが、先日ある動画をみつけて、そのすさまじさにゾッとした。

自分が買い物依存症候群を患わっていないことに、しみじみとした感謝の気持ちさえ湧いてきたほどである。

昨年のブラックフライデーに、(どこの店舗か知らないが)ウォルマートに朝4時の開店と同時に飛び込んで商品のエレクトロニクスを奪い合う、気の狂った人達の動画(↓)。



しかしね、繰り返しますが、これは「昨年の」様子だからね。

昨年末といったら、失業率はうなぎのぼり、暗い雰囲気漂う年末商戦で、いつもなら散財しちゃう浪費癖アメリカン達が必死に自分と戦って無駄遣いしないように心がけた、そういう年末だったんであるよ。

そういう年でも、INSANEな人達はやっぱりいて、この騒ぎ。しかも、どう見ても、どいつもこいつも、貧乏人風。

そこまでして、買いたいか・・・。

今年2010年のブラックフライデーにも、ミルウォーキー市のウォルマート店の入り口付近で「いらっしゃいませ係」を任されている100歳のお婆ちゃん従業員を、37歳の狂気買い物客女が「るっせーんだよ、ババァ!」と突き飛ばして怪我を負わせる事件が発生した。

この狂気買い物女は逮捕され、お婆ちゃんも軽い怪我で済んでよかったが、目の据わった太った買い物客が何百人・何千人も早朝から押し寄せるブラック・フライデーに、100歳のお婆ちゃんを入り口に立たせておくウォルマートがあるというのにまず驚いたし、それ以上に、失業率が9.8%になってるこの国で、100歳になっても働いてるひとがいるという事実にも、筆者は正直驚いた。(100歳の従業員って、雇用統計では、どう扱われるんだろう・・・と、これまた実にどうでもいいことを考えた。)

本エントリー最初のグラフからかいま見える、過去5年の推移:

  • 2006年のXmas=「もっと買え!もっと買え!」
  • 2007年のXmas=「まだまだ~!」
  • 2008年のXmas=「お先真っ暗」
  • 2009年のXmas=「お金貯めよ・・・」
  • 2010年のXmas=「自暴自棄」


カネもないのに互いを突き飛ばしてでも「買わにゃあかん!」と思い込んでるINSANEな人達の体力と財布の中身が、2011年にどこまで続くか、注目したいところである。

1 comment:

masuoka said...

春山さんが、英語にはもったいないという言葉はないと仰っていたことを思い出しました。