Sunday, November 14, 2010

今年のホリデーショッピング動向

はやいもので、今年の感謝祭まで、あと2週間たらず。

アメリカでは感謝祭が終わると、毎年恒例の「ブラック・フライデー」、ホリデー商戦本番である。

一昨年はリーマンショック直後の11月で、まだ事態の深刻さに気づいていない人もいたようで、殺到した買い物客に踏み倒されてウォルマートの従業員が死亡するという異常事態が起こっていた。

しかし、昨年に入ると失業率の連続悪化が消費者心理を冷え込ませ、気温が下がって消費者心理がさらに冷え込む前に買わせちまえ!と、夏休みの真っ最中の7月から早々と「クリスマスコーナー」なんぞをこしらえるトホホな小売店も出て、夏の盛りにクリスマス商戦の皮切りやったりしてたんである。

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では、今年の消費者心理はどんな具合か、というと、

以下、11月13日の日経新聞記事より:

ロイター通信が12日伝えた11月の米消費者態度指数(速報値、ミシガン大学調べ)は69.3となり、前月の確報値から1.6ポイント上昇した。同指数が改善するのは3ヶ月ぶりで、市場予想(69.0)もやや上回った。水準は金融危機後の最高である6月(76.0)以来の高さ。

現在の景況感を示す現状指数は79.7と2ヶ月ぶりに上昇。将来の景況感を示す期待指数は62.7と2ヶ月連続で上昇した。消費者の米経済の見通しは、小幅ながら改善している。米連邦準備理事会(FRB)が米国債の追加購入をきめたことを受け一年後のインフレ見通しは3%と、前月の2.7%から上昇した。

これらの数字を、エコノミストらがどう読んでいるか、というと、

以下、US Consumer Sentiment Rises More Than Expected (CNBC.com, 11/12/10) より抜粋

"The slight improvement in sentiment suggests that spending will continue at close to its current rate through Christmas, which is better than expected even a few months ago. But it's not going to be enough to make a material dent in the unemployment rate," said Christopher Low, chief economist at FTN Financial in New York.

「信頼感に若干の改善が見られたことは、クリスマスまでは現在の水準に近いところで消費が推移することを示唆する。数ヶ月前と比べると良くなっているといえるだろう。だが、これにより失業率が目立った減少を見せるかといえば、それには及ばない。」ニューヨークのFTNフィナンシャル社のチーフ・エコノミスト、クリストファー・ロー氏は言った。

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クリスマスプレゼントをお届けにあがる運送会社はどうであろうか。

Fedex社は、この年末ホリデーシーズンの配達量は、去年同時期より11%増えるだろう、などと明るいことを言っている。(以下、11月11日の同社のプレスリリースより)

Fedexによると、「例年12月中旬の週が一年で最も忙しくなる時期」だそうで、「一年で最も忙しかった日」と「その日一日」に配達された荷物の個数の過去5年の実績、および、今年の予想は、
  • Dec. 12, 2005 – 9.8 million shipments
  • Dec. 18, 2006 – 10.6 million shipments 
  • Dec. 17, 2007 – 11.5 million shipments 
  • Dec. 15, 2008 – 12.0 million shipments 
  • Dec. 14, 2009 – 14.2 million shipments 
  • Dec. 13, 2010 – 16.0 million shipments projected 

あれ?去年は消費者心理は冷え切っていたのでは?とお思いになる方もいるでしょう。重要ポイントはですね、この数字はFedexという小包配達屋の数字、つまり、彼らの配達個数の伸びの背後には、アマゾンのような大手ネットリテーラーの大活躍があったんである。

Fedex社は、今年もそうしたネットリテーラーの活躍をおおいにあてにしているらしく、リリースの中にこんなことを書いている。
Items such as books from large internet retailers and retail inventory such as apparel, personal consumer electronics and luxury goods will drive FedEx holiday volumes.
大手書籍リテーラーの本や、被服・消費者向けエレクトロニクス(家電)・高級アイテム(ジュエリーなど)のリテール商品在庫が今年の年末ホリデーシーズンの配達個数を延ばすであろう、とFedexは見ている。)


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アマゾンにばかりオイシイ思いをさせるものかと、今年は、リテール最大ウォルマートが、オンラインショッピングの拡大でアマゾンに殴りこみをかけ、話題になっている。

ウォルマートも、ずっと前からオンラインでの商品提供はやってきているが、話題になった理由は、全米に何千もの大店舗を構える最大級の小売店が、「12月20日まで、オンラインショップのホリデー商品6万点、送料無料、返品の際も同じく無料!」とぶち上げたからだ。

Wal-Mart May Help Usher In Permanent Free Online Shipping (Fox Business, 11/11/10)


この「送料無料」というのは、いまや米国でネットリテールを営むものなら誰もが避けて通れない道になりつつある。昨年のリテール業界でのアマゾン一人勝ちの背景には、アマゾンが大規模に進めた「送料無料サービス」の貢献が大きい。

上のFox Businessの記事で、調査会社ComScore社の調査によると、ネットでのリテール・トランスアクションの41%が送料無料となっており、ネットショッピングを楽しむ買い物客の55%が、もし送料無料のオファーがなければ、そこでは買い物はしない、と答えている、という。

また、同記事では、小売大手のMacy's(そう、昨年、「ブラックフライデー偵察ルポ」としてMHJで紹介した、あのMacy'sである)も、この第3四半期の会社全体の売上げは6.6%増に留まったが、ネットショップでの売上げだけなら24%増だった、というのである。

Macy'sのように、主要な消費圏に大規模店舗を構えているデパートでも、ネットショップの売上げが全体を引っ張ってくれているのがミエミエ。

Fedexがネットショップ経由の配達注文に、いまから胸躍らせてワクワクしてるのも、十分納得できるわけですね。

今回のウォルマートの送料無料オファーのニュースは、その流れにダメ押しをかけるという意味で注目された。

ウォルマートの送料無料オファーがついてる製品6万点の中には、SONYの大型フラットパネルTV42インチ型とか、結構大きな家電もはいってますし。

大手小売りのネットショップが、こういう嵩張る商品にも送料無料を打ち出すことで、大手にボリュームで対抗できない小規模ストアは、ネット上の送料無料化の流れから、さらなる痛手を被る可能性がきわめて高くなってきている。


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さらに、もうひとつ、ウォルマートの話題。

2010年のブラック・フライデー用広告がリークして、ウォルマートが今年売りまくろうとしている商品とその価格が見えてきた。

Wal-Mart's Black Friday 2010 ad: Electronics top deals (CNN Money, 11/13/10)

リークされた広告によると、以下のような$500以下の家電商品が、ドアバスター・バーゲン商品(Door Buster Bargains=ドアを蹴破って客が殺到するバーゲン、の意)としては、なんつっても目玉らしい。「家電が目玉」なのは毎年そうだけど、今年はさらに安くなってる気がするな。


  • Emerson製 32インチ 720p LCD HDTV $198
  • Emerson製 42インチ 1080p LCD HDTV $398
  • LG製 42インチ 1080p LCD HDTV $478
  • Magnavox製 WiFi ブルーレイプレーヤー $68
  • Apple製 8GB iPod Touch $225 (プラス、ウォルマートお買い物ギフトカード$50ドル分進呈)
  • Kodak製 C183 14メガピクセル 3インチ LCD デジタルカメラ $59
  • HP製 15.6インチ 250GBハードドライブ ラップトップ $298

ウォルマートは、感謝祭明けのブラック・フライデー、午前5時に開店、11時まで商品がなくなるまで売りまくる予定だそうである。


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ということで、今年のクリスマスショッピング動向として確実らしいことは、以下の3つ。

1) ネットショップは今年も元気、大手小売も参戦、競争圧力でプライス低下
2) 「ネットで買えば送料無料」の流れにダメ押しがかかりそう
3) ドアバスター、今年も狙い目は家電(ただし$500以下)

といったところでしょうかね。

(次回に続く)

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