Tuesday, January 19, 2010

「シティ4Q09決算」ツイッターまとめなど

今日は、マサチューセッツ州の上院議員特別選挙の投票日ということで、投票結果が注目されていた。

マサチューセッツ州というのは、政治家といえばケネディ・ファミリーといった土地柄で、長いこと民主リベラル一色の「真っ青な州」の筆頭であった。わずかひと月前は、30%の大差のマージンつけて民主優勢と言われていたんである。

それゆえに、民主党側も油断してたな。

民主側が故エドワード・ケネディ(←47年間も同州の上院議員を務めた)の後釜として持ってきたのは、有権者とろくに握手もしないような「冷たい能面女」。同州のAttorney Generalとしてはなかなかのやり手らしいんだが、故ケネディが得意としていた「宴会に呼びたくなる」「人好きする」「空気が読める」そういうパーソナリティをまったく持ち合わせていない、政治家としては致命的な人物であった。

片や、共和側がぶつけてきた候補者は、ポピュリストの極地、昔セミヌードフォト撮らせたぐらいのハンサム男で、「あまり頭はよくなさそうだが、耳あたりのよい言葉と明るい笑顔で有権者を魅了する」、いわばサラ・ペイリンの男性版のようなひとであった。

投票日が近づくにつれ、ジワジワと両氏のマージンは縮まり、世論調査で共和側がリードするという、民主側には「想定外」の展開となり、オバマら大御所が現地に応援に駆けつけたりしたが、結局共和党ブラウンが民主党コークリーを下して、「真っ青の州」に共和党上院議員誕生。

この特別選挙が注目された理由は、ひとつには上院の60議席確保が崩れ、これで、オバマ悲願のヘルスケア改革法案通過がゴール目前で頓挫するだろうということ、そして、この選挙結果はマサチューセッツ州だけの問題ではなく、誕生丸一年目を迎えるオバマ政権に対する「通知表」にも相当すると考えられていたからだ。

「真っ青な州」で民主が負けたことは、オバマ政権の経済政策そのものにNOが出されという意味にもなり、彼の政治的な求心力が本格的に下がっていることを示唆するわけだし、これでさらに勢いを増すであろう保守共和勢力が、ますますオバマの政策に対して、いちいち難癖付けてくることは容易に想像つく。

さらには、ここのところ、やたらとゴソゴソ動きまわっている「Tea Party」(ローカル保守の草の根運動)がメインストリームに躍り出てくる段取りも揃ってきたような気もする。Tea Party軍団のアイドルといえば、サラ・ペイリン。これに、マ州のスコット・ブラウンも加わって、来月4日にテネシー州ナッシュビルで行われる予定の「全国Tea Party集会」ではさぞかし鼻息荒くなることであろう。

投票日の今日(20日)の米株市場では、共和勝利というシナリオにベットして結果を先取り、オバマケア頓挫⇒保険会社の勝利⇒ヘルスケア関連銘柄上昇という流れに押されてダウは100ポイント以上上昇。

CNNはじめマスコミはヘルスケア改革への影響ばっかに気をとられているが、今回の選挙結果で忘れてならないのは、今年度以降の米国債発行の見通しに不透明さが増した、ということである。

2009年12月21日付けのMurray Hill Journal記事『米国債発行上限問題は来年も蒸し返し確実』で述べたように、昨年暮れに、米国債の発行残高が法的上限ビチビチに迫り、議会により上限引き上げがなされたが、当初2兆円増加の予定だったのが、反オバマ勢力に押し戻される格好で、わずか2900億ドル引き上げるにとどまった。しかも、たった2900億ドルなのに、下院では賛成218・反対214の僅差。

民主側はそれでも、2010年中間選挙前にガツンと一気にやってしまおうと踏んで、「目先引き上げが必要な額」でひとまず妥協したんである。共和側もクリスマス休暇に行きたいのに2900億ドルで年末吹っ飛ぶの嫌だし戦いは来年の楽しみにして、とりあえずここは賛成しとこ、みたいな感じ。

しかし、これも、まさか1月のマサチューセッツ州特別選挙でこんなどんでん返しが起ころうなどとは双方ともに誰も想定していなかった。

オバマの経済政策と米国債発行は切っても切れない関係ですからね。

「とりあえず必要な額として2900億ドル」だったので、上限見直しは、どのみち、まもなく議会で再開しなくちゃいけない議題。どうなることやら。

ここで政治的な思惑が先行して米国債発行スケジュールになんらかの影響が及ぶ事態になると、米国債市場での需給期待に加え、失業対策などの政策実行や、住宅ローン金利の行方など、ありとあらゆる物事に影響出ざるをえないから、いろんな意味で要注意ですな・・・。


   ★   ★   ★


さて、20日の朝は、シティグループの4Q09決算の発表があった。前回のJPM同様、プレスリリースをざっと読んで連続ツイッターで印象を書きなぐったので、前回のMHJ記事で取り上げたJPM同様、ここに記録しておくことにする。

つぶやき#1: 【シティ】ざっと見た印象としては、収益は全体的に縮小気味、融資ボリューム自体が縮小してるのと、沈静化してきてるとはいえまだ資産マークの額が大きく、特にリテール部門でクレジットカード関連の落ち込みが思いっきり足引っ張ってる感じ。預金は結構増えてて、ここはフランチャイズの強みか。

つぶやき#2: 【シティ2】信用コストは減少トレンドだけど、四半期期中の信用コスト額の増減は、B/S縮小の効果もあるから、いちがいに良い悪いはいえない。こういうときは、P/L上の償却コストの額(コスト)増減よりも、B/S上の引当金ストックが貸出金残全体に対しどれ程期待損失見込んでるかを見るべき。

つぶやき#3:【シティ3】で、その引当金ストックだが、シティの場合、全融資残高の6.1%で、3Qの5.9%から上昇。覚えてますか?JPMは、この同比率は5.5%だったのを。でも、シティの場合はJPMより、リテール融資の割合がドバッとでかいんで、JPMよりこの数値が大きくなるのはあたりまえ。

つぶやき#4:【シティ4】あくまで個人的な勝手な「感触」でありますが、6.1%でもまだ足りんな、多分。証券業務のほうではFICCがどーんと落ち込み。予想通りでサプライズなし。アドバイザリーの手数料収入でFICCの落ち込み補ったが、JPMのような強さは感じられず。

つぶやき#5: 【シティ5】09年度決算は特別項目(TARP返済関連、ドイツのリテール銀行売却益)がやたら多くて、表向きの数字だけ拾っても、ようわからん。全体的な印象はトップラインがどの部門でも目だって落ちてきてるのが気になるし、引当金を過小評価してないかが今後の焦点かもね。

つぶやき#6: 【シティ6】海外部門の売却は今年度も続くような気がするし、売却益でレガシー資産から発生する損失を今後も吸収させていかんことには、トップラインが回復してゆくというシナリオはまだ見えない感触。この銀行の場合、縮小均衡の道を辿り国内業務の比重が徐々に高まってゆくんではなかろうか。

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「海外部門の売却は続くのではなかろうか」とMHJ筆者は書いたのだったが、プレス発表から数時間後の電話コンファレンスで、シティのCEOパンディットは「シティの強みは海外業務、今後も海外に力入れてゆく!」と力説していた。

あれ~、そうなんですかい。私の見方と違うじゃん。

前回の3Q決算でMHJに3Q09決算についての印象雑記を書いた時、バンカメ(BAC)とシティ(C)では同じ赤字決算でもトーンの異なる決算だ、とMHJ筆者は述べた。

そこで筆者はこう書いたんである。

Cは、投資銀行部門、商業銀行部門ともにフランチャイズの衰退が激しく、財務指標も全体的に見劣りし、かつての強みだった海外部門からも損失発生がとまらず、現行のビジネスモデルのままでは、遅かれ早かれ、不良資産の増加に押しつぶされるんじゃなかろうかという印象を持った。Cは、資産のリスクに対し資本基盤が弱すぎる。この銀行は今後、海外オペレーションの切り売りと米国内の事業縮小が従来以上に加速して、いずれ Too Big To Fail のカテゴリーから外れるかもしれない、とすら感じた。

これが3Q09の感想だったのだが、今回(4Q09)のシティ決算を見てどうかというと、前回述べた内容と基本的にはあまり変わらなかった、というのが正直な感想である。

たしかに不良資産から発生する償却コストやフェアバリューへのマークダウンなどは、最悪期からみれば落ち着いてきている。しかし、相変わらず償却コストは高いし、この会社の場合クレジットカード部門の損失が非常に重たく、12月のクレジットカードのデータによるとカードローンの資産はまだプレッシャー受けているという図も否定できず、重しはなかなか取れない。

(参考)December Data Show US Credit-Card Cos Still Under Pressure (WSJ, 1/15/10)

また、ホールセール向けの貸出金が、CDS(ヘッジコスト)の重みで逆ザヤになっており、この分野の収支がいまだにマイナスになってるみたいなんである。これも、結構痛いなぁと感じた。

前回JPMのプレスリリースを読んだときは、15ページもあるリリースだったにもかかわらず、斜め読みでも結構すす~と大まかなイメージが浮かんだ。ところが、シティのリリースはJPMのそれよりずっと短いのに、カッと目を見開いて読まなくてはならなかった。

というのも、やたらと修正項目がありすぎて、まっすぐサクサク読めなくて、読んでるうちになんだか目がまわってきたんである。ツイッターでも書いたが、こういう、読んでるうちに目が真ん中に寄ってくるような財務数値を並べるということ自体、いかにアクロバティック会計やってるか、ってことである。

筆者も長年銀行アナリストやりましたけどね、こんがらかった説明する会社ほど、たいがい、ろくな話がなかったもんである。

(余談だが、証券アナリストのレポートも同様で、こんがらかった分析をするヤツほど、たいがい、分析の結論自体は底が浅く、薄っぺらな内容をゴテゴテと飾って小難しい話に仕立てていることが多い、そんなもんである。)

ま、それはどうでもいいんだが、JPMとCの2社を見て、大手金融機関の4Q09決算の共通項として出てくる話は、
(1)FICCのトレーディング部門はスプレッド縮小、トレーディングのボリューム減、ボラティリティ低下により、3Qまで収益に寄与したトレーディング益は低下。アドバイザリーなどの手数料収入で一部相殺。

(2)信用コストや不良資産のマークダウンは前年同期比でみるとやや落ち着いてきてはいるが、資産額そのものも減少していて、期中償却コスト増加率が低下トレンドを描くのには、その資産減少効果も含まれている。だが、資産内容そのものはまだ悪化が続いている。


これからまだ、MS, BAC, WFC, GS などの発表が控えているが、ストーリーとしては、程度の差こそあれ、上の2点から極端に乖離したものにはならないような気がする。

あとは、誰も注目してないけど、BACがメリル買収で手に入れたビジネスラインが一年を経過してどう貢献してきてるのか、というのが筆者には興味あるところ。

そして、もうひとつ、モルガンスタンレーのCEOがジョン・マックからジェームズ・ゴーマンにバトンタッチされ、新CEOがここからどんなストラテジーで新生MSを引っ張ってゆくのか、それも興味ある。

今年1月16日に、ニューヨークタイムズがMSの新CEOについて記事を掲載した。

Morgan Stanley Tries on a New Psyche (NYT, 1/16/10)

この記事でゴーマンは、「MSは自分でコントロールできないようなリスクを取ったり、サイクルの終わりかけで不動産投資にロングになったり、いろいろ失敗したが、その教訓を踏まえ、新しいMSとして生まれ変わったのだ」みたいなことを述べた。

だが、不動産のリスクには相当慎重になり、稼ぎ頭だった債券部門は縮小し、メリルほど大きくないプライベートバンキングを引きずり、ゴールドマンほど派手なプロップ・トレーディングはせず・・・筆者からみると、結局、どんな会社になろうとしてるのか、いまだに、輪郭がよくつかめないのである。

このNYTの記事の中に、筆者の注意を引く数字があった。

Guy Moszkowski, an analyst at Bank of America Merrill Lynch, notes that Morgan Stanley has about $17 billion in capital committed to its institutional securities business, compared with his estimate of around $40 billion at Goldman and $33 billion at JPMorgan.


バンカメ・メリルリンチのアナリストによると、モルガンスタンレーは機関投資家向けの証券ビジネスに$170億のキャピタルを振り向けたが、この数字は、ゴールドマンの$400億やJPMの$330億と比べ少ない。
”Institutional Securities Business”というと、要は、機関投資家相手の投資銀行部門である。投資銀行業務の成功には、フランチャイズとキャピタル、そのどちらも必要。

GSやJPMの半分のキャピタルで、MSが果たしてどこまで張り合えるのか。

MSの新CEOがどんな手腕をみせてくれるか、お手並み拝見というところか。




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2 comments:

HAL909 on Twitter said...

はじめまして。twitter でのコメントと
ブログを読ませて頂いております。

シティグループの北米以外の部門では、
ラテンアメリカ、インドを含むアジアが
収益の大きな部分を占めていたように記憶
しております。そのためこの地域の経済状況
に収益が影響を受けます。

また、おおせのとおり北米のクレジット
カード事業の貸倒れが、収益に大きな影響
を及ぼします。

1993年から2003年までシティグループに
おりましたが、現在他の業界におります。
アメリカでの金融規制案に対するコメント
など楽しみにしております。

Trinity @ NYC said...

>HAL909さん

はじめまして、コメントありがとうございます。去年から、シティの欧州ビジネスに関して、縮小なり緊縮を示唆するニュースが続けて聞こえてきていますんで、海外事業の整理としては、まずは欧州からということになりそうですね。欧州は列強の数が揃いすぎてて、自己資本が弱いままで競争してゆくには環境は相当厳しいと感じます・・・。

93年から03年までというと、黄金時代も経験なさったわけですね。もし私の書いてる内容で「思い込み」と感じられる部分があれば、遠慮なくご指摘ください。