Monday, December 31, 2012

2012年も年末になってしまいました!

気がつくと、2012年12月31日です。

前回のエントリーはなんと2月。10ヶ月もエントリーをサボってしまいました。

今年は、昨年の延長のようなニュースが続いたせいもあって、積極的に経済関係のニュースを追いかけてブログにしたためようという気持ちがなぜか失せてしまいました。そうこうしてるうちに年末を迎えてしまった、というわけです。

アメリカでは11月に大統領選挙があり、オバマ大統領が再選を果たしました。オバマ一期目は、彼が政権を引き継いだばかりの4年前と比べると、あの最悪期は脱したものの、4年間途切れることなく民主と共和の二党間が対立する状況が続いて、これといってパッとしないうちに選挙本番を迎えたという感じ。

オバマ政権下での経済復興にちから強さが見られなかったことで、オバマに対する失望の声は少なからずあったものの、それでも、米国は極端な保守へのシフトを歓迎はせず、ミット・ロムニーを推す共和側は十分な票を取れず、オバマ民主政権の続投を許した。

今年の大統領選のテーマは後にも先にも、Jobs! Jobs! Jobs! ということだったわけだが、2007年のリセッション以降、米国の雇用状況がどう回復してきているかは、このおなじみのチャートをどうぞ。(Calculated Riskから)


縦軸は就業数がピークの時を0.0%としており、リセッション後のジョブマーケットの回復振りを見ることができる。ピーク時から数えてすでに58ヶ月が経っているが、落ち込み方が激しかった分、いまだに米国の雇用は水面下にいる。戦後の景気後退に起こった雇用悪化の中では最悪、回復に要する時間も最長で、回復がこのペースで続くとすると、ゆうにあと数年は現在のダラダラ状態が続きそうだと示唆する図である。

ただしポジティブな点も強調しておくと、ダラダラと長期間かかってはいるが、着実に戻してきている、ということでしょうかね・・・。

筆者としては、2013年の米国経済も、2012年のようにこれといって印象的なイベントが起こらないまま、ダラダラ&ノッタリと回復を続けてゆくのではないかと思っているのだが、米国内外どこからともなくショックが襲ってきて、このチンタラ回復曲線が途中で腰折れて下降線に変わらないよう祈るばかりである。

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さて、筆者の私生活のほうである。

米国経済は2012年はいまいちパッとしない状態だったが、筆者個人にとっての2012年は、大きな変化が訪れた年だった。

その大きな変化というのは、1993年から20年近くも住み続けたマンハッタンのMurray Hill地区のアパートを売却してしまった、ということだ。

2012年は、その前年や前々年と比べるとNYCの住宅不動産市場に結構底堅い雰囲気が出てきたという手ごたえを強く感じた年だった。

このアパートは、2011年にも売り物件として出したのだったが、2011年の間は、まだBottom Feeders(底値を漁り買い叩くバイヤーのこと)が多いという印象で、こちらの言い値に近いビッドで食いついてくるバイヤーがなかなか現れてこなかった。そこで、いったんリストから外した。

ところが2012年に入り、不動産市場が活発になりだす春先に再び売り物件としてリストしてみると、こちらの希望売却価格から極端に乖離していないレベルをスタートにビッドを入れてくる買い手が実際に何組も現れた。


最終的には、リスティングプライスから3%のディスカウントがかかった売却価格で交渉がまとまった。ディスカウントがかかったとはいえ、破格の安値だったわけでもない。マンハッタン内の同様のエリアの同様のユニットの価格と対比させても、だいたい期待値に収まったのではと思う。

いわば、「そこそこのお値段」で、それなりのキャピタルゲインも伴って売れたわけだ。2008年からインベントリーが着実に減少しており、マンハッタンにはもう、超お買い得物件は残っていない。

私たち夫婦が93年から賃貸(サブレット)していたこのユニットを元のオーナーから買ったのは、前回マンハッタンの不動産がボトムをつけた1995年。さらに1997年には隣接していたもうひとつのユニットを当時の破格値で買い増して、1999年に二つのユニットを繋げ、かなり広めのアパートに改装・改築して住んでいた。

住み始めた1993年から売却した2012年までの19年間に、バスルームやキッチン、ユニット接続など、4度にわたる大規模な改装工事を行ったのだが、2軒のユニットのオリジナルコストに改装コストを加えたコストベースよりも高い値段で売れた。

この不動産市況下でもそれなりのプロフィットを出せたのは、ひとつには当該物件を17年間という長期に渡って所有したこともあるが、もうひとつは、ニューヨークシティという地の利、である。「不動産はLocation, Location, Location」という言葉があるが、マンハッタンという場所に不動産を抱えたのは正解だったとつくづく思った次第である。

NYのコンド・Co-op市場のブローカーとしてで大きなシェアを持つ「Corcoran Group」が、つい先日発表したばかりの『マンハッタン住宅不動産:3Q2012の四半期レポート』に、私が住んでいたMurray Hill地区を含むMidtown EastのエリアのCo-op 売買状況について、こう書いている。

The Midtown East co-op market experienced significant median price gains this quarter. Median price increased 10% from last year and 14% from last quarter. Average price per square foot reached $732 this quarter, representing a 4% increase from last year and 3% increase from last quarter.

「ミッドタウン東側(マンハッタン島の北限57丁目、南限34丁目、西限5番街、東限イーストリバーに囲まれたエリアを指す)のCo-Op市場で売却された物件のメディアン価格は2012年第3四半期にめざましい上昇がみられた。メディアン価格は前年同期比で10%、前四半期対比で14%の上昇率だった。スクエアフットあたりの平均価格は$732に上昇、これは前年同期比で4%、前四半期対比で3%の伸びだった。」(注:スクエアフット=Square Foot=0.092平方メートル)

「前年同期比で10%以上の上昇」というのは、上述したとおり、2011年と2012年のマーケットにおいて私自身がセラーとして売買に参加してみて、実際に手ごたえとして得た感触そのもの、である。

あの物件をあと数年持ち続けていれば、おそらくもう少し高い価格で売却できたのかもしれない。しかし、投資というのは、欲の皮をつっぱらかしてばかりいても始まらない。

売るタイミングが来たと思ったら売る、そして、次のフェーズに移るのだ。

マンハッタンの住処を7月に売却した後は、数ヶ月間メイン州の田舎小屋に引きこもって夏を過ごした。そして、今年10月にマンハッタンの北側に位置する郊外ウェストチェスター郡に一軒家を購入し、ふたたびニューヨーク近辺に戻ってきた。

NYから北に電車で一時間の場所に新拠点を構え、わたしの人生そのものも新たなフェーズに入ったのだ。

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ということで、このブログ名の元になったマンハッタンの『Murray Hill』というエリアの住民ではなくなってしまいました。

でも、ブログ名称をいまさら変更するのも面倒だし、20年以上も住んだからいまだに愛着もあるので、このまま書き続けることにします。

今年も、いろいろな方との出会いがあり、TwitterやFacebookなどSNSでのおしゃべりも楽しませていただきました。

あと5時間もすれば、ニューヨークも2013年を迎えます。

みなさま、今年もお世話になりました。2013年も引き続きよろしくお願いいたします。

Tuesday, February 28, 2012

向こう数年はダメダメが住宅不動産のコンセンサス

前回は、地域によっては(←ここ重要)、賃貸料が上昇してきてますね、という話をした。

しかし、住宅価格となると、どうも失速気味。今朝発表されたケース・シラー・インデックスは20都市平均で0.5%下がり、2003年1月以来の低水準に戻った。(グラフはCalculated Riskから)

グラフ1:ケース・シラー(87年以降、季節調整前ノミナル)


グラフ2:ケース・シラー(88年以降、季節調整後、YoY増加率)


ノミナルのチャートでみるとそこそこ下げ止まり感は見えるものの、持ち上がるのに苦労してる。(形状としては、富士山の格好をした日本の不動産価格のグラフにソックリですな。)

増加率でみても、オバマの政府補助プログラムでいったん水面上に出たものの、またマイナス圏に戻って、はい上がれない状態にいる。

前回のエントリーでは、アネクドータルにはやや底打ち感が出てるエリアがNYにはある、と書きましたけれど、ちょっと持ち上がってきたな~という雰囲気が出てくると、鳴りを潜めていたシャドーインベントリーが、待ち構えていたようにゴチャーッと市場に出てきたりする。

そのため、なかなか需給に硬さが出ない。全米でシャドーインベントリーは膨大な数に登ると言われているため、需給がソフトなままではなかなか価格上昇にモメンタムがつかない。住宅価格は、さらなる大幅下落は避けられたとしても、需給がヤワヤワのために、価格急上昇というシナリオは目下のところ存在していないも同じ。

今日のBBCでは、ニューヨーク・シティから東に向かって2時間ちょっとのところにあるロングアイランドの超高級リゾート住宅地のハンプトンズ(Hamptons)の不動産の状況がレポートされていた。




ハンプトンズといえば、フィッツジェラルドの名作『華麗なるギャツビー』のスノブな舞台。

昔から、富裕層の別荘地として知られたエリアで、ここはミリオン・ダラー・ホームが数多く建ち並ぶ。そんなハンプトンズで、30年来と言われる不動産不況が深刻化、富裕層でも持ち家を維持できなくなっている。価格が$1ミリオン以上のディストレス物件が、ハンプトンズだけで1000以上も売りに出ているというのだ。

米史上初めて富裕層が、他のどの層よりも速いレートで持ち家を失っている。

BBCニュースのビデオで紹介されているのは、当初$6ミリオンで売りに出された物件だが、もう5年も売れずにこうして空き家になっている。持ち主は銀行への借金返済のために何が何でも売らなくちゃならなくて、現在は当初の言い値の半分の$3.2ミリオン。銀行側もこの価格を承知してるそう。

NYエリアの不動産鑑定の専門家Miller SamuelのJonathan Millerは、このBBCのインタビューで「不動産に関して明るい数字がチラホラ踊って見えるものの、向こう数年はまだまだダメ、というのが市場コンセンサス」と語っている。


Saturday, February 25, 2012

住宅価格は上がらなくても家賃は上がる

住宅価格は下がっているが、賃貸のほうは上昇し続けているというNYタイムズの記事。

(NY Times, 2/24/2012)

ただし、どの街でもそうだというわけではなく、地域差はかなり明確。

下の図(NYタイムズから)によると、ワシントンDCはリセッションが始まって以来、リーマンショックもなんのその、一度もマイナスに陷ることなく上昇し続け。テキサス州経済が好調なオースティンも好調。ボストン、シアトルなども好調。サンフランシスコ、ニューヨークは一度激しく落ち込んだが急上昇で復活モード。

一方いまだに住宅市場の深傷が癒えていないLA、フェニックス(アリゾナ州)、ラスベガスはいまだディープにマイナス圏。フロリダ州オーランドも賃貸料の上昇鈍い。(図をクリックすると拡大します。薄い線が全米平均。)




ワシントンDCの場合は、民間がグシャッと潰れて虫の息だった間でも、やれ救済だ、新たな規制の作成だ、政府主導の景気刺激プログラムだ失業対策だ、なんだかんだ、と政府関係の仕事だけはワンサカあって、不況であればあるほど盛り上がるという、気味悪い地域キャラ(笑)が功を奏していると思われる。

サンフランシスコは、シリコンバレーのハイテク関係の職で盛り上がっているところは盛り上がっているそうで、レント急上昇なのもうなづけますね。

ニューヨークに関していうと、金融街はいまだ昔の元気は取り戻していないものの、「不動産はLocation! Location! Location!」の言われの通り近郊からマンハッタン内への移動も起こっていたりして、マンハッタン内の賃貸(レント)は実際目立って上昇していて、それに呼応するように、売買物件のほうも、賃貸が多いゾーン(60~70平米程度の居住面積の1ベッドルームから1.5ベッドルーム(Junior 4と呼ばれる)物件)の回転率が高まってきているのが、なんとなく感じられる。

筆者は去年から、Zillow.comTrulia.comStreeteasy.com などの不動産検索サイトを駆使して、かなり熱心にニューヨークとその近郊の物件価格を睨み続けてきているのだが、マンハッタンの中およびブルックリンの一部では、エリアによっては物件の価格下げ止まり感が顕著になってきているのがわかる。

賃料は上がり続けるうえに、モーゲージ金利も史上最低値のあたり(現在30年固定で4%以下)にあるということで、一部ではお買い得感が出たり潜在バイヤーの触手が動いていることは間違いない。

住宅を買った場合と賃貸をした場合とでどちらが有利かを考慮する際、住宅を買った場合のキャッシュ・アウトフロー(全額個人所得税の控除対象になっている住宅ローンの金利分を調整後の実質賃料換算値)と賃貸のキャッシュ・アウトフロー(毎月払う家賃)を対比させる【Rent Equivalence】で比較してみるのがアメリカでは一般的に行われているが、上記NYタイムズの記事で、どちらが有利かをビジュアル化してみせてくれる計算機のインターアクティブサイトがあったので、紹介しておく。

Is It Better to Buy or Rent?

このサイトで「例」になってるケースは、現在月額家賃1,100ドル払っているひとが、17万2千ドルの家を年率5.5%のローンを組み頭金20%でプロパティ税1.35%の地域に購入した場合、5年で賃貸するより購入したほうがよくなる、という計算結果である。

住宅資産や賃料の年率上昇率、モーゲージ・ローンの借入期間や売却時のキャピタルゲインの税控除対象額など、いろいろ試算の前提を変えて計算することができるすぐれもの。

遊び始めると面白くて止まらなくなるかも・・・。


Monday, February 13, 2012

オバマの2012年度予算概要

【メモ】今日出された、2012年10月1日から始まる米国の年度予算。

わかりやすい図表。(単位:$ビリオン) WSJから

歳入:$2,902 
歳出:$3,803
赤字:$901

(クリックすると拡大します。)


財政赤字は2012年度にいったん膨らみ、2013年度から縮小してゆくという見込み。


赤字縮小のためには、歳入を増やして、歳出を縮める(という【予定】)。



内訳では、軍事費を削減しても、医療費は年々上昇し続ける。



さらに、別のWSJの記事から、以下のグラフ。歳入と歳出の過去トレンド。こちらもわかりやすい。



そして、Outlays(歳出)がReceipts(歳入)を上回った状態が続くと、国家の借金はどうなるかというグラフ。わかりやすい。




Saturday, February 11, 2012

預貸率の国際比較 from 日銀資料

さっき、日銀の白川総裁による講演の邦訳を読んでいた。

アジアにおける金融:バンキング・ビジネスと資本市場
(国際コンファレンス・前夜ディナーレセプション(日本証券業協会主催)における基調講演の邦訳, 2/9/2012)

(以下引用)

もともとアジアの金融機関は、「国内預金をベースに貸出を行う」という伝統的な――あるいはベーシックな――ビジネス・モデルに立脚してきました。実際、アジア各国の貸出/預金比率をみると、100%を下回る国が大半を占めています(図表1)。国内預金を主たる資金調達源とするビジネス・モデルは、ホールセール市場への調達依存度が高い場合に比べて、資金流動性リスクが低いと考えられますが、今回の金融危機においては、この点もアジアの金融機関にとってプラスに働いた可能性があります。


確かに、日銀総裁が言うとおり、アジアの銀行の預貸率は100%以下(=預金が貸出金を超えている)に固まっていて、この比率であれば、イザ!という時、バランスシートに急激に強い流動性ストレスがかかることは避けられるでしょうね。

しかし、このグラフで筆者がむしろ目を惹かれたのは、逆に、PIGS諸国がどこも預貸率で130%を超えている方で、市場資金への依存度が高い分、流動性リスクにモロにさらされているという点だな。

ソブリン危機が銀行B/Sの流動性に思いっきり悪影響を及ぼしているというのは、誰もが多かれ少なかれ“感触”としては抱いていただろうけれど、こうしてグラフにしてもらうと、その感触にハッキリと輪郭がついてくるような感じ。こんな格好のバランスシートしてて、ある日突然価値が半分になるかもしれないような某国の国債なんて、誰がホイホイ喜んで買えますか?

昨年11月末から世界中の中央銀行からリクイディティのプレゼントがドカンドカン落とされて、12月のサンタクロース・ラリーをもたらし、市場流動性への懸念は以来かなり落ち着いてきているようであるし、昨年夏・秋に「死に体」状態にあった欧州銀行シニア債の発行が可能になってきているということも、拙ブログの1月12日のエントリーで紹介した。

だが同時に、預貸率がこういう状態の銀行システムなのに、そこでシニア債が正常に発行できない状態が夏からしばらく続いたというのは、欧州銀行の当事者らにとってはどんだけシンドかったか、(いまさらながら)想像できるな。また、本当の意味で銀行債市場が正常化してくれないと、このストレスは容易にはなくならない、ということも。そして、ここから示唆されることとして、貸出側の強い締め付けは続きそうですよね、ということも。現状はECBのファシリティにおんぶに抱っこでいれるから、まだ首の皮は繋がってますけど。

先週は、ギリシャ救済資金の大前提となってる歳出カットでギリシャ政府はその案を最終承認したというニュース。

Papademos Gets Cabinet Approval for Second Greek Bailout
(Bloomberg, 2/11/2012)

しかし、市場では、もう2年も市場で取りざたされてきたソブリン危機がこれで収束に向かうと楽観的に考えている人は少数派のようにも見える。

Greek Bailout Gains Could Fade Fast
(Wall Street Journal, 2/10/2012)

Why the Greek Bailout Doesn’t Change Much of Anything
(Time, 2/10/2012)

まぁ、いろいろあるけど、その国の銀行システムが流動性不安抱えたままで、実態経済のほうはギクシャクしないで安定してゆく、というのはちょっとあり得ない組み合わせなように、わたしは個人的に思っているんで。

Tuesday, January 31, 2012

欧州の若年層の失業率

66年ぶりの豪雪に見舞われたというスイスのダボス。「魔の山」は天にも見放されたのか・・・。

今年のダボス会議に出席されてる(らしい)竹中平蔵氏のツイートがTLを流れてきた。


「ユーロ圏各国の自助こそが必要だ。」はい。

しかしですよ、氏のこのツイート上に、こころに留めておくべき重要なインフォメーションが何かひとつでもあるであろうか。

ダボス会議の経済フォーラムとしての地盤沈下も、そろそろ目に余るようになってきたな。

昨年のちょうど今頃、このブログに『ダボス会議に出席なさりたい方のために』という記事を書いていたのだが、今年はなにかトピック拾って記事を書こうという気すら起こらない。今年も、去年の記事に書いたとおりです。

ただし記録しておこうと思ったのは、Zerohedgeの記事で紹介されていた欧州のワカモノの失業率のチャート。16歳~24歳の労働者の場合、欧州圏全体では20%程度だが、ギリシャ・ポルトガル・スペインの懸念されてる3カ国ではそれより目立って高く、しかもトレンディングアップしている。


スペインの若者は、ふたりにひとりが失業中とな・・・。

今回のダボス会議で欧州リーダー達が「失業対策の必要性」をことさら強調するはずですね。しかし債務削減のために財政緊縮を進めるのはいいが、やりすぎると、この失業率の数値はさらに悪化しかねない。

今日付けのGlobe&Mailに若年層失業について記事が載っていた。具体的な数値が出ていたので、書き留めておく。

The rising toll in Europe: Young, jobless and hopeless
(The Globe and Mail, 1/31/2012)

  • ユーロ圏17カ国の失業率は平均で10.4%。EU圏全体になると9.9%。
  • だが国別に見ると差が大きい。
  • 同率が低いのは、オーストリア(4.1%)、オランダ(4.9%)、ルクセンブルグ(5.2%)。
  • 高いのはスペイン(22.9%)、ギリシャ(19.2%)、リトアニア(15.3%)。
  • 若者層になると状況は深刻。EU全体で22%、国別ではスペイン(48.7%)、ギリシャ(47.2%)、スロバキア(35.6%)。
  • ドイツの失業率は史上最低6.7%まで低下。

ドイツの場合はユーロ圏内で最も共通貨幣の恩恵を受けてきて、また昨今のユーロ安の影響も享受して一人勝ち状態ではあるが、スペインやギリシャなど、この失業率の状態で更なる財政緊縮を進めてゆくとなると、経済を支える屋台骨そのものに悪影響はでないのだろうかと、こちらが心配になる。若年労働者層の出力が低いままだと、将来の各国の債務返済プラン(←非常に長期に渡る話)にも響いてくる話。

同記事の最後のパラグラフ。

・・・the future will continue to look uncertain with the result we could have a lost and disaffected generation which in turn will mean that any measures to bring down debt levels will also fail."
(経済の低成長と競争力の低い労働市場という問題に取り組む戦略をリーダー達が見せないと)この行き場を失い不安に満ちたジェネレーションを抱えたままでは、この先どんなに債務レベルを下げようと頑張っても失敗しかねない。
「Come up with a strategy - 戦略を考えよ。」はい。

だけど、【a】strategy を考えろと誰もが言うが、【the】strategy を出してくる人は見かけない。抽象的な「~べき」は誰もが語るが「具体的にどうよ」となると答えはない。

しかし、待てよ、そういう状態こそがまさに、ダボス会議そのもの、ではないか・・・。

Wednesday, January 25, 2012

オバマのためにニュートに投票?

24日夜は、オバマ大統領による一般教書演説があった。

演説は、オバマのスピーチの動画とトランスクリプト全文が同時にみれるNYタイムズのこちらが非常にいいです。
President Obama's Fourth State of the Union Speech
(New York Times, 1/25/2012)

筆者も夜9時からTVの前に座って演説を聞いていたのだが、オバマの姿を観ながら、もしも、これ、しゃべってるのがニュートだったらと想像して、心底ゾッとした。 

そう思う人が多いという前提で、今後の戦略としては、民主党員もみな共和党のフリして予備選挙に参加してニュートにガンガン投票し、ニュート選んでオバマ楽勝、という風に持ってゆくのが、いちばんいい。 

そんなことを考えるのは私ひとりではなくて、クリスチャン・サイエンス・モニターに同様の記事があった。

Like Obama? Vote for Gingrich
(Christian Science Monitor, 1/20/12)

In most states, however, unaffiliated voters can vote in either party’s primary, and partisans, in some cases, can cross party lines to vote in the other party’s primary. In these states, which include Texas, Ohio, and Illinois, Obama supporters should show up and vote in the Republican primary – and, for strategic reasons – they should vote for Newt Gingrich.  
Many people are unaware that there is considerable variation in primary election systems – across both states and parties. The Supreme Court has ruled that states cannot dictate primary election participation rules to parties, and parties in many states do not restrict participation to partisans. So Democrats in these non-closed primary states can show up and vote in the Republican contests. Given the shear number of Democrats in these states, their influence in Republican contests can be considerable.

(拙訳)多くの州では、どちらかの党に所属していない有権者でも予備選挙で投票することができる。また党員であっても、党派のラインを超えて相手の党の予備選で投票することも可能な場合もある。テキサス、オハイオ、イリノイなどがそうした州の例だが、オバマのサポーターは共和党の予備選挙に出かけていって、戦略的な理由からニュート・ギングリッジに投票するべきだ。
多くの人に知られていないことだが、予備選挙システムは州によっても党によってもかなりのバリエーションがある。州は予備選挙の参加者ルールを支持政党でくくることはできないという最高裁の判決があるし、多くの州は参加者を党員に限定していない。そのため、こうした党限定にしていない州の民主党員は共和党員のコンテストに出向いていって投票できるのだ。これらの州の民主党員の数を考えれば、共和党コンテストでの影響は相当なものになろう。

予備選参加者ルールを党でくくれないという「最高裁判決」があるなんて、筆者もこの記事読むまで知らなかった。

自分らの推す候補者の勝利を確実なものにするために、他党員が敵政党のプライマリー(予備選)に出向いて戦略的に投票するというのは、過去に実例があって、1930年代のニュージャージー州の知事選挙では、2万人の民主党員が共和党プライマリーにおしかけてゆき、『One-Day Republicans(一日限りの共和党員)』と呼ばれてスキャンダルになり、大騒ぎだったそうだ。

NJ州ジャージーシティ市のサイトに、その記述がある。

In a field of four candidates, Judge Carey lost to State Senator Morgan F. Larson, of Perth Amboy through an electoral sleight-of-hand implemented by Frank Hague. Twenty thousand Democrats, mostly from Hudson County, invaded the Republican Primary to insure Carey’s defeat. The “One Day” Republican scandal rocked the State.

2万人も他人の庭に押しかけていったとは・・・アメリカ人は、政治に熱くなる人がほんと多いですねww (記述も「invade」という単語を使ってて笑った。)

ニュートはこれまでいくつかの州で開かれた党員集会や予備選挙で、共和党内の政敵ロムニーを相手にかなり健闘しているものの、上述のクリスチャン・サイエンス・モニターの記事にもあるように、本選になれば彼の過去の発言のブレや人物像がいろんな角度から突っ込まれやすいというのと、イデオロギー的に考え方が極端すぎて中道票が取りづらい、といった理由から、共和党内でも、「ニュートではオバマと戦えない」「共和党最終候補者としては弱い」という見方が依然と根強い。(だから、相手がニュートならばオバマは勝てる、という見方がある。)

一方のロムニーだが、彼の場合はルックスと頭の回転のよさでは共和候補者の中ではいちばん大統領らしく(笑)、消去法で行けばロムニーになるだろうと考える人が実際多いし、また、共和内中核ネオコン軍団も(やはり消去法で)ロムニーを推すと決めたようだ。

だが彼は、プライベート・エクイティのベイン・キャピタルの創始者で、「政界入りする前はウォール街のハゲタカだった」というイメージがどうしてもつきまとい、またビジネスの成功者として年収もハンパない金持ち。リーマンショック以来「悪徳ウォール街」に責任押し付け魔女狩りに便乗して票集めしてきた米政界だけに、彼のそういうバックグラウンドが本選でどう影響するかいぶかしむ人もいる。

24日のオバマの一般教書演説では、富裕層にやさしい(というか、配当収入や投資キャピタルゲインにかかる連邦税率が15%で低いんですよね)個人所得税の現状を是正するよう訴える内容も含まれていたが、ロムニーの場合、まさに、この「投資収入で食ってる富裕層」に相当する。


ミットはずっと個人所得税の申告書を公開を拒んでいたが、周囲から連日圧力かけられて、ついに公開するハメに。


それによれば、彼の2010年の年間所得は$20ミリオン超、年間$3ミリオンの寄付を行なったが、年収のほとんどが投資収入であるため、税金支払額は$3ミリオン、つまり、「不公平」とされてる15%程度の実効税率なんである。2011年もやはり$20ミリオン超の収入。

Romney Paid $3 Million in Federal Taxes in 2010
(NPR, 1/24/2012)


筆者はなんだかんだ言って最後はロムニーが最終候補者になるだろうと思ってはいるのだが、個人的には、例の「わんこ事件※」でヤツの本質を見た気がして、ロムニーは生理的に好かない。ヤツが最終候補になっても、何がなんでもオバマに再選していただきたい。

※「ロムニーわんこ事件」につきましては、パーソナルブログのほうに以前書きましたので、ご興味あるかたは、こちらをどうぞ。
Dogs Against Romney
(Fast Lane Slow Life II, 1/14/2012)


Friday, January 20, 2012

アメリカの学費ローン破産

今朝、ワンコの散歩途中にラジオを聞いてたら、全米の大学の学費上昇の話題が出てた。番組司会者のトム・キーンは、どこのパーティに行っても、親が集まれば「どうやって子どもの大学費用を払おうか」しか話題にでてこない、といっていた。(この話題のBloomberg RadioのクリップMP3はこちら。)

いま、アメリカで最も学費が高いのはニューヨーク大学(NYU)でおよそ6万ドルだそう。そしてコロンビア大。4年で24万ドル。家が一件買えるではないか。

しかし、大学に行くのに一年で6万ドルとかかかったら、よほど優秀で奨学金を相当額貰えるか、あるいは親がある程度裕福でなければ無理だな。卒業と同時に10万ドルだの20万ドルだのといった借金を抱えてしまったら、リベラルアーツ系の学部を卒業しても、卒業後のそれ系の仕事でもらえる給料を考えたら、とても払えない。

ラジオによると、全米平均になると2万~3万ドル台だそう。しかし、学費が比較的リーズナブルな州立大学でも、州の財政難で大学への補助金が減らされており、それが授業料上昇の形になって学生(とその親)にのしかかって来ているという。カリフォルニア州では州立大学の学費上昇率が前年比で10%超えている。

オキュパイ・ウォール・ストリートで叫んでいた学生達の中にも、こんなんじゃやっていけんと吠えている学生は少なくなかった。米国では学生ローン破産が社会問題となっていて、昨年の秋、オバマがこれに対し、学生ローンのリスケ案を発表してました。

Obama to Lay Out Student-Debt Plan
(Wall Street Journal, 10/26/2011)

政府が用意している学費ローンの他にも民間金融機関から借りた学費ローンもあって多重債務に陥ってる学生もアメリカには少なくない。オバマ案はそれらを一本にまとめてリファイナンスし、金利も減らしてあげよう(といっても最高0.5%だが)という内容のプログラムである。

わたしの知り合いでも、住宅バブル盛んなころ、ホームエクイティローンを引き出して子どもの学費や寮などの生活費に充てているという親が何人か実際にいましたよ。親は親で、子どもを大学に送るために借金してんだよな。

で、アメリカの学費ローン破産の問題がどれだけヤバイことになってるかというと、Huffpost のこの記事。

Obama's Student Loan Plan Guide
(AP / Huffington Post, 10/27/2011)


Q: How big a problem is student loan debt?
A: Total outstanding student debt has passed $1 trillion, more than the nation's credit card debt, and average indebtedness for students is rising. The College Board said Wednesday that the average in-state tuition and fees at four-year public colleges rose an additional $631 this fall, or about 8 percent, compared with a year ago. The cost of a full credit load has passed $8,000 – an all-time high. The board said about 56 percent of bachelor's degree recipients at public schools graduated with debt averaging about $22,000. From private nonprofit universities, 65 percent graduated with debt averaging about $28,000. Experts say those average amounts usually are still manageable, at least for those who finish a degree. But they are concerned about the rate of increase, the growing numbers with substantially more debt and the increase in those apparently in over their heads repaying them. The Education Department said in September that the national student loan default rate for the 2009 budget year had risen to 8.8 percent.
(質問)学費ローン借金問題は、どれぐらい大きい問題なのですか?
(答え)学費ローンの残高総額はすでに1兆ドルを越していて、米国のクレジットカードでの借入残高よりも大きい。学生ひとりあたりの平均借入額は上昇を続けている。大学理事会(Collage Board)によると、4年制州立大学の秋学期の授業料は、1年前と比べて$631ドル、およそ8%上昇した。フルタイムの学生が取得しなければならない単位数の必要経費は$8000を超え、これもこれまでで最高値。公立大学を学士号を得て卒業した学部生の56%が卒業時に平均22000ドルの借金を抱えている。私立大学卒業生の場合は65%の学部生が平均28000ドルの借金。専門家らは、こうした平均レベルの借金額であれば、少なくとも学位を取って卒業すれば、卒業後の支払いもなんとかなると考えている。しかし懸念となっているのはむしろ上昇率のほうで、これよりはるかに大きな借金を抱えて卒業してくる大学生の数が急増しており、払い切れないことが明らかな学生の数も増えている。教育庁によれば、2009年度の学費ローンのデフォルト率は全米で8.8%に増加したという。



学費ローンを借りた学生の9%近くがデフォっていて(デフォるの定義=9か月延滞しちゃってる)、この数値、現在も更新中。
上述したWSJの記事によれば、大学の授業料は年間5.6%上昇しており、2009年度の学費ローンのデフォルト率は8.8%、その前年度は7%、一年で大きく上がったようだ。2005年度のデフォルト率は4.6%だったそうなので、5年待たずして倍増したことになる。


しかし、FinAid.orgの調べだと、学生の実に4分の1から3分の1が卒業後の最初の支払いをミスってるという話で(おそらく、不況で卒業後すぐに職が見つからない学生もいるのも理由のひとつかと思われ)、「潜在的」な延滞者は、すでにデフォっている9%(3千600万人のうち400万人)よりずっと多く潜んでいる。

学生の中には、シランプリしてればそのうち貸した方も忘れてくれるだろうと甘いことを考えてる輩もいるようだが、自己破産しても、学費ローンはその対象にならないので、払い続ける義務は消すことができない。


下の図は、全米学生ローンのデフォルト率推移。(Federal Student Aidのサイトから)




フルタイムの学部生のうち、学生ローンを借りた学生の割合はこちら。(大学のタイプ別)


これを見ると、学費ローンへの依存は大学のタイプに関わらず全体的に上昇しており、NYUのようなFor Profitの私立大学の場合、90%以上の学生が学費ローンに頼っている、ということになる。

また、ローンを借りる先も、政府がバックになっているローンプログラムの他、民間からの学生ローンを借り入れる学生の数が急増しており、10年前は5%かそこらだったのが、2008年には3倍の15%に迫ろうとしていた。




Educationsector.orgという団体のサイトに、他にもたくさんのグラフが掲載されており、ことの深刻さが垣間みえます。下は2009年の古い記事ですが、背景を知るのに非常に参考になります。

Drowning in Debt: The Emerging Student Loan Crisis
(Education Sector, 7/8/2009)


Thursday, January 19, 2012

欧州ソブリンは小康状態

先週13日の金曜日にS&Pがフランスの欧州ソブリンをトリプルAからダブルAに格下げし、イタリアその他の欧州国8カ国も格下げになった。

Europe Hit by Downgrades
(Wall Street Journal, 1/14/2012)

実際の格下げが公表される前に、あちこちの「当局関係者」だの「政府高官」だのが予告編よろしく次々リークしまくるものだから、13日の株式相場は、リークでヘッドラインが出てくるたびにいちいち反応。メディアも一緒になって興奮してた。

今日になると、怒り心頭に達したイタリア当局が米格付け会社を【市場操作の疑いで家宅捜査した】というニュースまで出てきた。担当アナリストの家を家宅捜査して、「何」を探そうとしてるんでしょうね・・・。記事によると、罪状は「昨年5~7月にイタリアの財政や銀行システムに関する偏った情報を流し市場を捜査した疑い」だそうです。

まぁ、イタリア政府の気持ちもわからなくはないですよ。90年代後半から2000年度前半にかけて、邦銀や日本ソブリンの格下げが続いていた頃、危機の渦中で目の周りにクマ作っていた日本の関係者らも、家宅捜査とまではいかなくても、格付け会社に対して似たりよったりの反応して騒いでましたからね。

「日の出ずる国ニッポンが、何ゆえ、アフリカのボツワナなんぞより、格付け低いんだ!!」

と、ほうぼうで関係者が喚き散らし、在日ボツワナ大使館が傍らで「何故ワシら?」と当惑してるのもお構いなし、ツバ飛ばしてボツワナをdisりまくり格付け会社を呪い倒し、その品のなさ、みっともなさたるや、海外から失笑・苦笑を買ってたのも、今となっては懐かしき思ひ出・・・。

いずれにせよ、市場が不安定なさなかにどんどん格下げのニュースが出てくるというのは、何を今更な感があるとはいえ、間違いなく「ヘッドライン・リスク」となっていろんな相場で咀嚼されるから、まるきり無視もできないよね。

格付けと債券クレジット市場の動きの関係については、過去にいくつかエントリー書きましたので、ご参考まで。

米国債格下げは最も重要性の「低い」問題 (MHJ, 8/5/2011)
- CDSのImplied Ratingと市場パーセプション (MHJ, 11/27/2010)

★   ★   ★   ★

で、その格付つけられてる肝心の債券はどうよ、というのが今日書き留めておきたい本題なんだが、実際のダウングレードにはほとんど反応せず、概して関連発行体のスプレッドは落ち着いている。

フランスが格下げされたらトリプルAを失うと懸念されてた欧州救済ファンド(EFSF)も、予定どおり格下げされてAAAからAA+に落とされてしまったわけだが、この格下げを受けた後にEFSF発行の債券の対独スプレッドがどうなったかと思っていたところ、このチャートを頂戴しました。(Thanks to @BourseBXL)


これを見ると、欧州に対する悲観度が一気に高まった11月ごろに、対独スプレッドが150bpsを突破、11月21日には205bpsまで駆け上がっていた。

この段階で、フランスの格下げはある程度シナリオとして織り込まれていて、その後、ECBがドカーンと流動性供給の動きに出たりして、市場での極端な緊迫感は抑制されている。実際の格下げニュースが来たところで、さほど動かない。

買い手側からは、このロイターの記事によると、「日本はこれまでもEFSF債を買い入れてきたし、格下げで(投資家としての)日本のスタンスが変わることはない」("Japan has bought them by certain amounts and our stance will not immediately change just because of the downgrade," Azumi told reporters after a cabinet meeting.)との、安住氏の力強いサポートのお言葉も。

ただ、格下げ公式リリース発表前でギクシャクしていた13日のWall Street Journalの記事には、こういう記述もあったんですよね。

Yields are surging across the EFSF curve on news that two EFSF guarantors, France and Austria, might suffer a downgrade. "I am seeing only sellers in France and Austria and EFSF is feeling the impact," said a trader.

EFSFのギャランター(保証を出す側)の一角でああるフランスとオーストリアが格下げされるかもしれないというニュースを受けてEFSFのイールドカーブは全体に持ち上がっている。「フランスとオーストリアの国債には売りしかいない状態で、EFSFもインパクトを受けている」とトレーダーの言葉。

19日の今朝は、スペインとフランス国債のオークションがあって、どちらも需要は底堅くあった模様。

Strong French bond auctions show investors ignoring downgrade; easily raises $12 billion
(Washington Post, 1/19/2012)

しかしですね、国債オークションがこうしてうまくいってるのは、ECBがバカスカ買い上げて新発債の需給の調節やってる、というのが背景にあるんじゃなかろうかな。上のトレーダーの言葉にもあるように、懸念が出てくるとドイツ国債以外の欧州債は売り一色になってしまう、そういう地合いにいるには違いないんである。

上述した、拙ブログ記事『米国債格下げは最も重要性の低い問題』で筆者は、米国債が格下げされようがされまいがどうでもいい、米国債ほど信用力が高くかつ流動性が高い債券は他にない、市場への影響は限定的だろうし、格下げはむしろ政治的な側面から問題になる程度と述べ、実際そのとおりになった。格下げ後は、ヘッドラインに翻弄されてボラが上がった株市場などから資金が米国債へと流れ込み、米国債のイールドは逆に下がった。

だが、スペイン国債やフランス国債は、米国債とは、違う。

中央銀行のバカスカ需給調節におんぶに抱っこでなんとか消化されている。

言ってみれば、現在の欧州の一種の小康状態は、またいつ熱がぶり返すか判らない、そういう危うい状態にまだいるのだ、と筆者は感じるのである。

Thursday, January 12, 2012

欧州の資金市場は相変わらずナーバス

数日前、ツイッターで、日本の90年代後半の金融危機と07年のグローバル金融危機について、ブツブツとひとりごとをつぶやいていたのだが、それを@Speculatorbidさんがまとめてくださってたので、ありがたく頂戴いたします。





年の暮に市場の大方が予想していたとおり、2012年にはいってからも、欧州問題は一進一退を続けているな。ナーバスな動き。

いろいろな憶測や観測が飛び交って、そのヘッドラインのいちいちにマーケットは浮かれたり落ち込んだりして反応しているけれど、やはり、いちばん根本的なところで、「資金市場の警戒ぶりがハンパない」というのは、重たい事実ですね。

上のツイートまとめのいちばん最後のほうに出てくる「銀行が資金を抱え込んでる」という話、重要ですね。年末を無事越せたものの、政府当局が期待してるようには銀行はスッスッと動いてくれず、抱え込みは解消せず。

市場全体を包み込んでいるFEAR(怖れ)は、そう簡単には消えない。リクイディティを流しこんでも流し込んでも、サラサラ血液のようにお金が循環してくれない・・・。

上のまとめでブツクサ言ってたツイートのうち、どこから情報得たのか裏付けつけていないツイートがいくつかあるので、それの出典(?)のニュース記事リンクを、以下に控えておく。


(1) 「米金融機関が欧州エクスポージャをガクンと落としたというおエラいさんの発言」というのは、テレグラフのこの記事。

Debt Crisis As It Happens: January 9, 2012
(Telegraph, 1/9/2012)

この記事の19:28のところに、アトランタ連銀のロックハートが「欧州ソブリンへのエクスポージャ、特に弱小国へのエクスポージャを相当減らした」と述べたという記述あり。

19.28  Mr Lockhart added that the Fed would not rule out more money printing even if steady growth and "acceptable" inflation made it harder to justify:
Steady even if unspectacular growth accompanied by inflation in the neighborhood of 2pc justifies some reluctance to change, in either direction, the (central bank's) accommodative policy [...] At the same time, I think slow progress toward full employment justifies continuing consideration of whether more can and should be done.   

On European sovereign debt exposure, he said:
American financial institutions have reduced their exposures fairly substantially, particularly to peripheral countries.

 (2) 「欧州銀行のシニア債発行が年明けになって好調」というのは、こちらの記事。

European Banks Learn to Love the Bond Market
(Wall Street Journal, 1/10/2012)

記事の抄訳は以下のとおり。

欧州の銀行債市場は死んだ・・・などと言われていたがそれは誇張だったのではないかという見方が出てきた。1月に入って最初の10日間で、欧州銀行はユーロ建ての無担保シニア債を€14.9 billion ($19.02 billion)発行、ソシエテ・ジェネラルによると、これは2011年後半の半年間に発行された額の26%増し、とか。欧州銀行は、シニア債に加えて、€13.75 billionのカバード・ボンドも発行した。銀行債市場はまだ脆弱ではあるものの、年初は好調なスタート。2012年は欧州銀行債のロールオーバーが€800 billion来る予定。
 発行体はスカンジナビア、オランダ、U.K.など比較的信用力の強い地域に限られているものの、フランスの銀行も市場資金にタップできた。
 背景としては、①ECBの期限3年ローン(※1)が12月に実行され、2月にも2回目の3年ローンが控えており、銀行の突然死シナリオの可能性が後退したこと、②投資するサイドはキャッシュバランスを積み上げていたこと、③銀行側もユーロ圏の危機はすぐには消えることなく当面継続するという見解を受け入れたこと、④銀行自身のデレバレッジングと預金の増加が調達の必要性を和らげたこと、など。モルガン・スタンレーの試算では、銀行によるシニア債新規発行はネットで4年連続マイナス、減少額は€225 billion。
 とはいえ、センチメントが逆転することは多いにありえる。イタリアとスペインの国債スプレッドが拡大基調なのと、ギリシャの債務リストラの進捗が懸念。預金保護を目的とした規制当局の意向、および、カバード・ボンドやECBローンといった有担保調達の増加の両面から、無担保シニア債の劣後化の可能性が潜在的に残っている不安もある。資金市場がどこまでリスクを取るつもりかもはっきりしていない。スペインやイタリアの銀行が発行体の場合、シニア債の新規発行はこれより困難になるだろう。
市場のボラティリティは高いままになろうし、政治リスクが浮上して改善の目を摘んでしまうかもしれない。だがレギュレーターが欧州銀行のバランスシート強化促進に成功すれば、無担保シニア債、特に各国の最良銀行が発行したシニア債は、高いリターンをもたらす可能性はある。

※1 ECBの期限3年ローンと銀行のバランスシート上のブタ積みについては、2011年12月28日付のMHJ記事を参照。


(3) 「日本のCDSが中国のCDSよりワイド」というのは、次のチャートを参照。


オレンジが中国のCDS、緑が日本のCDSで、過去1ヶ月の相対推移。(1ヶ月前を基準値=0とした時に【相対的に】各々がどれぐらい%でワイドニングしたか、というグラフです。絶対値のチャートじゃないことに注意ね。)

スプレッドの「絶対値」でみると、今日1月12日現在では、中国のレベルが146bpsに対し、日本が154bpsで、ややワイド。

まぁ、ソブリンのCDSについては以前も書いたことありますけど、日本のCDS水準が中国のそれに近づいてたのはもうずいぶん前からの話でして(※2)、さらにいうと、絶対値がどこにいるからどうしたといった話でもないんで、ここのところ中国よりワイドになってるからといってギャーギャー騒ぐほどのこともないとは思いますけどね。(今日の日経新聞が書いてたような、「財政再建への取り組みが遅れれば、欧州にかかる市場の圧力が日本にも及びかねません」(ドキドキ)みたいなこじつけっぽい理屈でばかり動いているわけでもないんで。)

ただし、CDSの推移というのは、対象となる債券の発行体に対する市場評価を示唆する数値の一角であることは確かなんで、いちおう目にはいったからには、書き留めておきまする。

(※2)日本のCDSが中国のそれに近づいてるぞという話は、2009年11月30日付MHJ記事『ソブリンCDSについて』に書いてます。2年以上前からだよ。自慢しちゃうけど、先見の明があったので、読んでね~(笑)。

Wednesday, January 11, 2012

アメリカ人の肉食度下がる

いまさらですが、明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願いいたします。

年初の抱負は、

「Murray Hill Journalをもっと頻繁に更新する」

の【はず】でしたが、年末年始の食べ過ぎでボケー・・・としてるうちにすでに11日になってしまいました。さぁ書くぞ!と気合いを入れて机に向かうと、なぜか書く気が失せてくるので、

「気合いを入れずに、短くてもこまめに更新する」

を今年の抱負にしたいと思います。特に昨年の後半は更新サボり過ぎて、ブログを振り返っても何がマーケットで起こっていたのか自分でもわからないという情けないことになってしまった反省があるので、今年はこれを回避したいと思ってます。

★    ★    ★    ★

ということで、2012年最初のエントリーは、アメリカ人が肉を食べなくなってるという(実にどうでもいい)脱力系話題から。

Americans are eating less and less meat
(Washington Post, 1/11/2012)

WaPoの記事によるとアメリカ人一人あたりの牛肉の消費量はかれこれ20年に渡って減少傾向にあり、鶏肉・豚肉も近年減少トレンドが明確。




筆者は分厚いアメリカンなステーキが好物で、特にニューヨークにはそれぞれ熟成のための倉庫を持っている老舗のステーキハウスが数多くあり、ステーキについては、アメリカは美味いといつも思う。

だが、米国農務省の予想によると、平均的な米国人は5年前の2007年と比べて12.2%少ない牛肉を食べるそう。

このトレンドの背景として、記事には理由がいくつか挙げられている。


  1. 肉類の価格上昇(新興国の肉消費量が上がり米国からの輸出が増えて国内での価格が上がっている。エタノール等植物性燃料のとうもろこし需要が増えて畜産向け食糧の餌の価格が上がっている、など)
  2. あるいは、アメリカ人の食生活の変化(肉ばかり食べるのはカッコ悪い。ベビーブーマーの高齢化で肉食メニューへの嗜好が変わってきている、など)。
  3. あるいは、農業向けに多額の補助金を出す政府のポリシーが消費量になんらかの形で関わってきているのではないか、など。


理由はいろいろあれど、アメリカ人の肉食度は確実に下がっている

★   ★   ★   ★

とはいえ、肉全体の消費量でみると、アメリカ人一人あたりの消費量は120~130kg もあって、日本人の軽く2.5倍のお肉を食べるんだって(2007年時点)。日本人の肉の消費量はこの50年で9倍に増えたそうだが、米国人は(減ってきてるとはいえ)まだその2倍以上肉食べてんのね。

しかし、この国の肥満問題は全然解消していない。肉食度が減っていると言っても、その代わりに野菜類をバリバリ食べてるわけではないし、食事量そのものが減ってるわけでもなく、コーンシロップ入り飲料をガブ飲みし、糖質・炭水化物ばかりバカスカ摂取しているから、もっともっとアメリカン・デブになっている。


米国では、20歳から74歳までの成人のObesity(肥満)が全体の30%を超えている。ちなみにObese(肥満)の定義はBMI(Body Mass Index)が30以上、Overweight(太りすぎ)が25~30だそう。ObeseのみならずOverweightも加えると、アメリカ人の実に75%が「デブ」となってて、世界一の肥満国。

いや、ほんと、アメリカ人、太り過ぎですってば。私は「肥満」には相当しないけれど、今年のもう一つの抱負として、もう少し痩せたいとは思う。

・・・とかいいつつ、今夜は近所のハンバーガーが美味しいお店に食べに行く予定。カロリー高いけれど美味しいんです。(年初から反省の色なし。)