Tuesday, January 25, 2011

ダボス会議に出席なさりたい方のために

また、今年もダヴォス会議の時期が近づいてきた。

このダボス会議に実際に出席するために、どれくらいお金がかかるものなのだろうか。

24日のNYTのDeal Bookが、ダボス出席にかかる経費の一部を垣間見せてくれている。

もし貴方がダボス会議に出席なさりたいならば、以下の料金表を参考に。


* <無名の庶民向け> 一番べーシップなプランで、メンバー料金5万スイスフラン($52000)プラス入場チケット一枚$19000、合計$71000。
* <少し顔知れてる方向け> Industry Associate プランにアップグレードなさると、$156000(メンバー料金プラス入場チケット一枚含む)
* <CEOなどハイエンドクラス向け> Industry Partnerプランにアップグレード、$301000(同上)
* <カバン持ちを複数引き連れるレベルのお客様向け> Strategic Partnerプランにアップグレード、メンバー料金$527000、プラス、お連れになるカバン持ち要員それぞれに規定の入場チケットを別途お買い求めいただきます。

また現地での宿泊・交通等につきましては、


* 宿泊プラン:5ベッドルーム1週間賃貸$140000
* メルセデスSレンタル:$10000
* NY-チューリヒ間ファーストクラス$11000
* プライベートジェットご利用なら$70000
* チューリヒからダボスまでのヘリコプターご利用は片道$3400 
*(エコに敏感な方のために、無料集団送迎バスもご用意しております。)

さらに、滞在中、コネ作りのためにディナーやパーティ開催を希望される方のために、

* ディナーパーティ主催なさりたいなら、ゲストお一人あたり$210から
* カクテルパーティ一なら、1時間$8000、2時間で$16000
* もっと大掛かりなパーティを開催なさるおつもりなら、$250000


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ちょうど2年前のMHJで、このダボス会議についてエントリーを書いた。
魔の山は、ブルジョワ去ってアイボリータワーの住民来たる(成金は下界で戦死)

当時はリーマンショック後間もなく、公的資金で救済されたウォール街の会社のCEO達が、世間から非難をゴウゴウ浴びていた最中で、こんなパーティにノコノコ出て行ったら議会やマスコミでどんなに苛められるかわかったもんではないという空気が満ち満ちており、彼らはほぼ全員欠席したのであった。

しかし、そんなことなど、遠い昔。

今年は主要金融機関や大企業のCEOの皆様方、ほぼすべてがダボスにお集まりになり、出席者数では過去最高になりそうとの予想。みんな、グーグル社が開く恒例大パーティを楽しみにしているそうです。


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しかし、このダボス会議。

スイスのリゾート地に集まる天上人よろしく、こんな国際大会議を毎年開催することで、(参加者がコネ作るという以外に)何か経済会議としての重要な意味があるのだろうか?

去年も、ダボス会議の開催中、連日連夜メディアでは「こんな話が出た」「あんな話が出た」というニュースが伝わってきたのだが、それを聞きながら「おっっ!!」と思わず身を乗り出したモーメントなど、ただの一度もない。

どれもこれも、すでに市場では語りつくされた古臭い話ばかりを、お偉いさん達(および、なぜか、ロック歌手とスーパーモデルとハリウッド俳優らも混じってw)が、あーでもねーこーでもねーとこねくり回しているだけ、という印象強し。

いま去年の今頃を振り返り、何か印象に残った情報がダボスから出てきたかを筆者は必死に思い出そうとしている。

しているのだが、覚えてることとえいば、当時米国でのリコール問題で大揺れの最中だったトヨタ自動車会社の豊田社長が、

「そういえば、ダボスではトヨタ車じゃなくてアウディに乗ってたな・・・」

といった、実にどーでもいい話ぐらいしか、MHJ筆者は思い出せないのだ。


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そんなことしか記憶に残らない国際会議(※入場料おひとり様19000ドル)に、はたして意味はあるのか。思い出せないのは、単にわたしの頭が悪いからか。

ひとり心の中でずっとそう悩んできた筆者だったが、米の経済金融ジャーナリストFelix Salmonが、「意味なんかねーよ」とハッキリ言い放ってくれた。

Davos: Where epic shifts are converging (Reuters, 1/10/11)

以下、フェリックスのコラムから引用。

...But Davos does tend to attract the kind of people who can straight-facedly pretend to believe that entering the human age, or the New Reality, or unleash and leverage human potential as the key competitive differentiator to win, or entering a new era, or epic shifts are converging, or talent is the new ‘it’ actually mean something.

The panel that these people have put together is prototypical Davos: dean of this, best-selling author of that, general secretary of the other, plus a CEO and a corporate president. There’s no shared expertise here, and there won’t be any real debate. Instead, they’ll all intone sonorously in an attempt to appear visionary and important, as jet-lagged delegates ask themselves why on earth they dragged themselves out of bed at 7am Swiss time (which is 1am New York time) to listen to such pablum.

(拙訳)ダボスは、「ヒューマンの時代へ」とか「新リアリティ」とか「勝利を導くための競争差別化への鍵となる人類の潜在性を解放しテコ入れせよ」とか「新たな時代への突入」とか「壮大なるシフトの収束」とか「才能こそが次の”それ”」とか、この手の文言が実際に何かを意味しているのだと信じているフリが真顔でできる、そういうタイプの人々をひきつける場所なのだ。

こういうタイプの人達が並ぶパネルこそが、ダボスの得意技。どこそこの大学の学長だの、ナンタラとかいうベストセラー作家だの、どこかの国の総書記だの、それに加えて、どこかの会社のCEOや社長が顔を並べる。そこには、共有された専門知識などないし、本物のディベートも行われることはない。だが、パネルに座ってる人々は全員が、会場の目を引きつけ自分がより重要に見えるようにと、堂々としかも厳かに意見を述べる。そして、それを聞いてる参加者たちは時差ボケをこらえながら、何が楽しくて、こんな陳腐極まりない話を聞くために、スイス時間の朝7時(ニューヨーク時間の夜中午前1時)にベッドから起き上がらなくてはならないのか、と自問しているのだ。

(引用終わり)

自分と同じことを考えていたひとがいた、しかも、私が大好きなFelix Salmonではないか!

あー、スッキリした。(笑)

ということで、この「何のエキスパティーズも共有しない重要な人達が並んで陳腐な意見を厳かに発言する」パネルディスカッションの去年(2010年)のフォーラムのひとつ(動画)を、以下に貼っておこう。



この長々としたパネルディスカッションを聞き終えて、筆者の印象に残ったことはというと、

「中国のエリート要人は英語がうまいな・・・」

なんだ、それ。(笑)

敢えていうと、壇上で並んで発言した、日本の仙谷氏と、中国のZu Ming氏の発言内容および英語力の差が歴然すぎて、これは、この二人の個人に限ったことというよりも、日本と中国という「ふたつの国家」が国際舞台においてそれぞれ与える印象そのもの・・・とやや愕然とした、去年のダボス会議の場面であった。

2011年の今年のテーマは、欧州ソブリン危機やコモディティ高がメインテーマに含まれるらしい。(相当語りつくされたテーマのような気もしないでもないが)今年も、また、「厳かなパネルディスカッション」を聞いてみることにしよう。

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