今日は6月21日。ワケわからんうちに、すでに3週間近くが経ち、ギリシャ問題はその後発展したのかしないのか、それすら、もはやわからないというメチャクチャな状態になっている。
いまこれを書いているこの瞬間にも、ギリシャ首相が信任されるかどうかで秒読み態勢に入っているとかメディアは騒いでいるが、ハッキリ言わせてもらうと、「だからどうした」。
ギリシャ問題を「先延ばし」するための案にユーロ圏関係者が同意するのを「先延ばし」しているうちに、気がつくとあら一年経ちましたね、そういう話である。そして、その間にもCDSは天井ぶち抜けて下がる気配もなく、前回の記事に書いたようにデフォルトの定義に抵触するかどうか喚いてたかと思うと、ドイツは民間資金の関与が必要だのなんだのとこれまたワケわからん話を持ち出してきて、一方のイギリスは(ユーロ圏ではないものの自国の銀行システムがドップリ間接的にエクスポージャしてるくせに)「救済なんて考えられない」とか言い出して、まだまだ、ぐっちゃぐちゃ。
いずれにせよ、「デフォルトだけは何がなんでも回避するのじゃ!」という【執念】みたいなものだけは、強烈に感じ取れるのであった。
そこにきて、英エコノミスト誌に興味深いグラフがあったので、紹介したい。
(Economist, 6/20/11)
同記事を要約すると、こんな内容。
セオリーでは、ソブリン債のデフォルトが引き起こす経済ダメージが極めて大きいという懸念があるが、本当にそうなのか。過去の例をみると、デフォルト起こした国はしばらくの間資金市場からの締め出しを食らうことは確かだが、デフォルト後の経済成長へのペナルティのほうは短期間で収束する。アルゼンチンのケースでは、2001年12月のデフォルト後、GDPがマイナス10.9%に落ち込んだが、その翌年には跳ね返って経済成長が始まった。ウルグアイ、ロシア、インドネシアのケースでも、同様の状況がみてとれた。ただし、これらの数字を解釈する上で、デフォルトしたから経済成長に至ったと考えるのは注意を要すると経済学者たちは言う。というのも、国債のデフォルトというのは大概その国の経済サイクルで谷にいるときに発生するので、デフォルトに至るまでの数年間はとりわけ成長率は劣悪な状態にいることが多い、それでバウンスしたように見える。また、国によってはデフォルト後さらに経済状況が悪化した国々(グレナダ、カメルーン、ベリーズ、ドミニカン共和国など)も実際あるので、ウルグアイの例があるからといって必ずしも安心はできない。
デフォルトさせれば経済よくなるとは限らない、ということである。
さてさて、ギリシャはどうなるであろうか・・・?
ギリシャの場合、問題はギリシャ一国にあるのじゃなくて、その周辺に債権者としてくっついている他国とそこの銀行システムにどういう悪影響が及ぶのか、それが皆目わからないし、誰もそんなリスクはとりたくなくて、なかなか解決をみられないでいる。
少し前にツイッターでも述べたのだが、もしこれがギリシャ一国の問題で(=ここにユーロ圏という関わりさえなければ)、問題の大部分をギリシャ国内にとどめておくことができるのであれば去年のうちにとっくにデフォっていただろう、と思うのである。何故ここまで、いつまでもウジウジウダウダグダグダやってるかというと、ギリシャという国がどうなるか、じゃなくて、関係者は全員「自分の国がどうなっちゃうか」が一等心配だからである。アテネの路上でデモして騒いでいる公務員の老後のことなんぞ、最初から、誰も知ったこっちゃない。
デフォらせることに難色を示すのは、デフォルトのケースに前例がないからではなくて、ユーロ圏のようなドデカイ経済圏全員を巻き込むデフォルトのケースとして、前例がないのである。
ロシアのケースはルーブル建てのドメスティックの国債をデフォらせて、ロシア国内銀行の大規模崩壊を防ぐ目的でリスケした。ロシア危機の当時、海外も当然悪影響は受けた事実はあるわけだが、今回はユーロ建てでギリシャ国外で広く持たれており、他国の銀行システムも一緒に巻き込んじゃうということが、問題を深くし大きくしている。
6月2日のエントリーでも書いたとおり、市場はすでに、デフォルト前提で動いている。格付け機関と関係者との「デフォルトの定義」をめぐる表面的な議論も、CDSプレミアムの継続的な上昇をみれば、基本的には無視されている。ただ、ここで、リスケジュールを強行させたとして、ギリシャ一国のリファイナンスについては「ガス抜き」が起こるだろうが、そこから派生する副作用については、誰にも予測はできていない。