Tuesday, June 21, 2011

デフォるか、デフォらないか(それが問題だ)

6月2日に、本ブログで『ギリシャ、Caa1に格下げで「HALL OF SHAME」入りを果たす』と言う記事を書いたのだが、あの時、ちまたでは、ギリシャ救済策は6月4日か5日には決まっているはずだった。

今日は6月21日。ワケわからんうちに、すでに3週間近くが経ち、ギリシャ問題はその後発展したのかしないのか、それすら、もはやわからないというメチャクチャな状態になっている。

いまこれを書いているこの瞬間にも、ギリシャ首相が信任されるかどうかで秒読み態勢に入っているとかメディアは騒いでいるが、ハッキリ言わせてもらうと、「だからどうした」。

ギリシャ問題を「先延ばし」するための案にユーロ圏関係者が同意するのを「先延ばし」しているうちに、気がつくとあら一年経ちましたね、そういう話である。そして、その間にもCDSは天井ぶち抜けて下がる気配もなく、前回の記事に書いたようにデフォルトの定義に抵触するかどうか喚いてたかと思うと、ドイツは民間資金の関与が必要だのなんだのとこれまたワケわからん話を持ち出してきて、一方のイギリスは(ユーロ圏ではないものの自国の銀行システムがドップリ間接的にエクスポージャしてるくせに)「救済なんて考えられない」とか言い出して、まだまだ、ぐっちゃぐちゃ。

いずれにせよ、「デフォルトだけは何がなんでも回避するのじゃ!」という【執念】みたいなものだけは、強烈に感じ取れるのであった。

そこにきて、英エコノミスト誌に興味深いグラフがあったので、紹介したい。

(Economist, 6/20/11)


同記事を要約すると、こんな内容。

セオリーでは、ソブリン債のデフォルトが引き起こす経済ダメージが極めて大きいという懸念があるが、本当にそうなのか。過去の例をみると、デフォルト起こした国はしばらくの間資金市場からの締め出しを食らうことは確かだが、デフォルト後の経済成長へのペナルティのほうは短期間で収束する。アルゼンチンのケースでは、2001年12月のデフォルト後、GDPがマイナス10.9%に落ち込んだが、その翌年には跳ね返って経済成長が始まった。ウルグアイ、ロシア、インドネシアのケースでも、同様の状況がみてとれた。ただし、これらの数字を解釈する上で、デフォルトしたから経済成長に至ったと考えるのは注意を要すると経済学者たちは言う。というのも、国債のデフォルトというのは大概その国の経済サイクルで谷にいるときに発生するので、デフォルトに至るまでの数年間はとりわけ成長率は劣悪な状態にいることが多い、それでバウンスしたように見える。また、国によってはデフォルト後さらに経済状況が悪化した国々(グレナダ、カメルーン、ベリーズ、ドミニカン共和国など)も実際あるので、ウルグアイの例があるからといって必ずしも安心はできない。


デフォルトさせれば経済よくなるとは限らない、ということである。

さてさて、ギリシャはどうなるであろうか・・・?

ギリシャの場合、問題はギリシャ一国にあるのじゃなくて、その周辺に債権者としてくっついている他国とそこの銀行システムにどういう悪影響が及ぶのか、それが皆目わからないし、誰もそんなリスクはとりたくなくて、なかなか解決をみられないでいる。

少し前にツイッターでも述べたのだが、もしこれがギリシャ一国の問題で(=ここにユーロ圏という関わりさえなければ)、問題の大部分をギリシャ国内にとどめておくことができるのであれば去年のうちにとっくにデフォっていただろう、と思うのである。何故ここまで、いつまでもウジウジウダウダグダグダやってるかというと、ギリシャという国がどうなるか、じゃなくて、関係者は全員「自分の国がどうなっちゃうか」が一等心配だからである。アテネの路上でデモして騒いでいる公務員の老後のことなんぞ、最初から、誰も知ったこっちゃない。

デフォらせることに難色を示すのは、デフォルトのケースに前例がないからではなくて、ユーロ圏のようなドデカイ経済圏全員を巻き込むデフォルトのケースとして、前例がないのである。

ロシアのケースはルーブル建てのドメスティックの国債をデフォらせて、ロシア国内銀行の大規模崩壊を防ぐ目的でリスケした。ロシア危機の当時、海外も当然悪影響は受けた事実はあるわけだが、今回はユーロ建てでギリシャ国外で広く持たれており、他国の銀行システムも一緒に巻き込んじゃうということが、問題を深くし大きくしている。

6月2日のエントリーでも書いたとおり、市場はすでに、デフォルト前提で動いている。格付け機関と関係者との「デフォルトの定義」をめぐる表面的な議論も、CDSプレミアムの継続的な上昇をみれば、基本的には無視されている。ただ、ここで、リスケジュールを強行させたとして、ギリシャ一国のリファイナンスについては「ガス抜き」が起こるだろうが、そこから派生する副作用については、誰にも予測はできていない。

【記事】Banking's Moment of Truth

NYTのコラムニスト、Jon Noceraのコラム。

記事の出だしが、こう。

Capital matters. Let me put that another way. The current fight over additional capital requirements for the banking industry, eye-glazing though it is, also happens to be the most important reform moment since the financial crisis broke out three years ago. More important than the wrangling over Dodd-Frank. More important than the ongoing effort to regulate derivatives. More important even than the jousting over the new Consumer Financial Protection Bureau.

Capital matters. 

まさしく。ベーシックにして核心を突く一文。

長年銀行セクターのアナリストをした自分は、この出だしのパラグラフに同意せざるを得ないな。銀行という業態の将来も、事業の行方も、四半期ごとの業績も、すべてはキャピタルとそれをめぐる規制に収斂する。

(NY Times, 6/21/11)

『Basel III』と銘打って、新たな自己資本規制の枠組みがバーゼルから出されているが、そこでは大枠として、今後、銀行が求められる自己資本の額は7%、大手銀行には上限3%として追加キャピタルが要求されるというベース。ここにさらに、各国の事情を考慮し、各国の銀行規制当局がこの枠とは別個に自己資本必要額を決めることもあり。

欧州の銀行群はかつて、表面上のキャピタル・レシオでは米銀よりもはるかに高いレシオを誇っていたものだが、それは現行のバーゼルのルールが随所で「歪んでいる」のが理由であって、欧州の銀行の実質的なキャピタルクッションが厚いからではない。Basel IIIの新たな枠組みについて、欧州の銀行は米銀以上に自己資本を多くつまされることに対して拒否反応を示しているようだ。それについて、Noceraは、米銀に他国よりも厳しい自己資本規制をかけることは米銀の競争力を傷つけるという意見があるが、そんなものは取るに足らない議論だと切り捨てる。

Indeed, every argument put forth by the big banks and their Congressional spokesmen against higher capital requirements have been demolished by Admati as well as Simon Johnson, the banking expert, whose devastating rebuttal can be found in The New York Times’s Economix blog. But the idea that they will make U.S. banks less competitive with European banks deserves particular scorn.

European banks, to be sure, have fought fiercely against higher capital requirements. It’s not really because they hope to get a leg up on the rest of the world, though. It is because these banks are in far worse shape than the banks in other parts of the world; they can’t afford higher capital requirements.

「欧州の銀行たちが厳格な自己資本規制に反対の意向を示すのは、競争力云々の話ではなくて、欧州の銀行の自己資本が世界の他地域よりもずっと酷い状態にあって、実際問題としてそんな金銭的な余裕がないから。」

たしかに、ギリシャ問題がここまで長引くのも、ギリシャのデフォルトは、欧州銀行システムの問題に直結してしまうから。

しかし、だからこそ、自己資本はできるだけ多く持たせろというストレートな意見は、筆者は賛成だな。リスクウェートの算出を小難しいモデル使ってあれこれいじくってみたりしたのが、まさにBasel 2だったわけ。それがクレジットバブル破裂とともに、いかに欺瞞に満ちた規制だったかがバレたのみならず、あれだけグチャグチャ押し問答して多くのリソースを無駄にした上、みごとなばかりにコケたのだから、いまさらキャピタルの「最低」必要額を探るために利用されたBasel 2の二の舞になるよりも、もっとシンプルにキャピタルは分厚くしろ、というイニシャチブを押し通せと筆者も思う。

大きすぎて潰せない(Too Big To Fail)は過去も存在したし、これからも存在する。それが必然的にモラルハザードを誘発して、過度のリスクテイクに繋がってきたし、今後もやっぱり同じメンタリティは続く。小さく分解しろという考えもあるが、それは一般預金者も含めたユーザー側が支払うトランスアクションコストを高くする。大銀行でも潰してしまえという意見には、金融市場のフローの面から最初からリアリティはない。ならば、オペレーションがうまくいっている期間に大規模銀行に課されるキャピタルサーチャージは、将来の救済費用への前倒し払い的意味からも、分厚くしなければダメと思う。

Sunday, June 5, 2011

【備忘録】東電2012年3月期決算予想

東京新聞の5日付け朝刊に、TEPCOの2012年3月決算を試算した内部資料に関する記事。

東電 賠償除き赤字5700億円 12年3月期試算

東京新聞の記事って、過去記事を読もうとすると消えてたりするので、後日のために【備忘録】として、全文をここに張っておこう。

【経済】
東電 賠償除き赤字5700億円 12年3月期試算

2011年6月5日 朝刊

東京電力が予想を非公開としている二〇一二年三月期の単体業績を試算した内部資料が四日、明らかになった。福島第一原発の停止や火力発電などへの切り替えに伴って燃料費が八千三百億円増加。今後見込まれる巨額の賠償金を計上していないが、純損失は約五千七百億円に上り、前期の一兆二千五百八十五億円に続く大規模な赤字となる。

社債発行による資金調達が困難になるため、ことし三月末に約二兆一千億円あった現預金は急速に流出し、一二年三月末に一千億円を割り込む計算で、手元資金がほぼ枯渇状態となる。

数兆円規模に達するとされる賠償金の支払いのためには、銀行団の一段の融資や政府支援が不可欠な財務状況に陥る。

財務の健全性を示す指標となる純資産は、ことし三月末の一兆二千六百四十八億円から約半分の六千九百五十億円へと大幅に減少。自己資本比率は過去最低となる5%台に落ち込む見通しだ。

試算は、今後支払うことになる賠償金は現時点で算定が困難なため、仮払金の五百億円分を計上するにとどめた

主力金融機関などから四月までに受けた二兆円規模の緊急融資は、燃料費の増大や社債償還などがかさむため、一二年三月末までに底をつく。現預金も六月末時点で一兆六千億円、十二月末に五千二百億円にそれぞれ減少。一二年三月末には約九百五十億円となる見込みだ。

資金を工面するため、六千億円規模の資産売却を進める一方、人件費を五百億円強減らして全体で三千七百五十億円に圧縮する。

記事中の数値のいちいちが非常に現実的に感じられ、東電の財務体質が急速に悪化・崩壊してゆく様子が、上の数字をみるだけで手に取るようにわかりますな。

人件費削減だけでは、燃料コスト上昇分を相殺する足しにもならず。資産売却しても賠償金捻出には程遠い。資金繰りの問題は特に深刻。

今後、東電がらみのスキームを考える上で、同社の財務諸表がどのように変化してゆくかは、極めて重要な話だ。

以前、某著名(or 自称?)経済学者がある時点のバランスシートだけを取り出して「国民負担は1兆円以下に減らせる」と喚いている記事を見かけ、それを読みながら、その超絶無知ぶりになぜかこちらのほうがこっぱずかしくなり、読みながら顔が赤くなったほどであるが、この手のアホ談義は、使えないオッサン同士が新橋のガード下あたりで泥酔の勢いかりてやっててもらうことにするとしよう。

上の東京新聞の記事を読む限り、こういう「専門家によるアホ談義」につきあってる時間の余裕は、どこにもない。このままでは東電という企業がかなり近い将来破綻してしまう現実的なリスクが透けて見える。それを念頭に置き、①電力出力確保と②賠償金捻出という二つの最優先事項を、くれぐれも冷静にインテリジェントに国会で議論して東電救済スキームを作ってもらいたい、と願うばかりだ。

Thursday, June 2, 2011

この道は(ルーズベルトが)いつか来た道?

前回、ギリシャの格付けCaa1という記事を書いてポストしたら、やはりM社が、(政争にケリつけられずウダウダがこれ以上続いたら)米国債の長期格付けを引き下げ方向で見直しにかける可能性があると「警告」したというニュースが出た。(「警告」です、あくまで、「警告」。)

(Reuters, 6/2/11)


米国債発行額上限をめぐって、米議会では相変わらず、民主と共和で対立し合ってて、完全に政治問題化している。共和側はオバマが提案した歳出カットでは納得できない、もっともっと歳出へらさなければ、上限引き上げの方だってウンと言わないぞ、と言い張って、上限リミットを「人質」にしてオバマ民主政権を追い詰めることに躍起になっているわけである。

この問題については、4月18日のMHJ記事『合衆国が取れないリスク』にも書いたので参照されたし。

しかし、昨日(6月1日)の午前に出されてきた雇用統計と製造業統計では、往復ビンタ張られた米経済である。

(ウォール・ストリート・ジャーナル日本版、6/2/11)

(以下WSJ日本版より引用)

米サプライマネジメント協会(ISM)が1日発表した5月の米製造業活動は拡大幅が大幅に縮小。一方、別に発表された同月の民間部門の新規雇用数もほとんど増えず、米国の第2四半期(4-6月)経済に対する懸念が増幅されるのは必至だ。 
(引用終わり)

早朝からこのニュースで冷や水ぶっ掛けられた昨日の市場は、10年債は3%割れ、ダウは280ポイントも下落。今日2日も、明日金曜日の雇用統計を控えていて様子見モード、10年金利は冒頭のニュースで3%を戻していたものの、とてもじゃないが積極的にリスク・オン(Risk On)などというムードは、どこにもなし。

なのに、ワシントンDCの舞台に目を移すと、相変わらず「歳出カット歳出カット」と、ナントカの一つ覚えのように絶叫しているわけである。

いまここでディープな歳出カットをマジで実行したらどうなるのか、米国債発行できずに本当にデフォったらどうなっちゃうのか・・・そんな不安は下院議長のベーナーはじめ共和の側だって少なからず抱えているわけだし、「ここで限度超えてやりすぎたらブーメラン・・・」という自覚と計算も働いている。

なのに、それでもやっちゃう内向き政治パフォーマンス。

要するに、この問題はほとんど純粋に「政局化」してるわけだ。(別名:大統領予備選前のオバマいじめ)

こっちは毎日の食費やガソリン代の遣り繰りで忙しいっつーに、アホか。

ん?そういえば、極東のどこかでも、被災地のみなさんほったらかして、首相降ろしの内輪パフォーマンスを延々と繰り広げていた某国がありましたね。

(下の写真は、政局猿芝居を呆れて眺めている国民の目。場所は変われど、目つきは同じ。)



★   ★   ★   ★

ポール・クルーグマンはじめ、ケインズ派のマクロ経済界の重鎮達は、こういう政界アホ芝居が煮詰まるだけ煮詰まって、本当に引き締めモードに突入してしまうかも・・・と警戒しており、最近マクロ経済のフロントでは、あちこちで「1937」という数字が踊る。

1937、つまり、別名『Roosevelt Recession』と呼ばれる1937年~38年にかけての景気後退のことだが、当時のルーズベルト大統領と中央銀行は、大恐慌から回復したという判断のもとに歳出削減と金融引き締めを行い、その途端にまたまたリセッションに逆戻りしちゃった、という過去の失策を象徴する数字である。

クルーグマンは、経済成長が継続すると期待されだした2010年の初めにも、NYタイムズに『あの1937年の雰囲気』という題のコラムを書き、失業率はまだまだ高い、経済指標がちょっと良くなってきたからといって、ここで軽はずみなことはしないほうがよいと釘を刺した。

(NYTimes, 1/3/10)


そして、昨日もまた、自己のブログに『2011年は1937年?』という短い記事を掲載。

(NYTimes, 6/1/11)


この短いエントリーでクルーグマンはNY連銀のエコノミストGauti Eggertssonの記事を紹介し、1937年と現在とで米国のマクロ経済の状況は非常に似通っていると主張している。皮肉屋のクルーグマンらしく、「ただし、連銀は同じ間違いは犯さないと言うGautiの意見には反対だ、そりゃー、(Gautiは連銀の人間だから)連銀のリサーチは間違えないかもしれないけど、ECBはきっと間違いを犯すだろうし、連銀理事会だって政治的なプレッシャーをいまガンガン受けていて何やるかわからないもん」と辛らつな書き方をしている。

MHJ筆者が目を惹かれたのは、「1937年当時の失業率は2011年の現在よりも高かったが、現在と同じ測り方に引き直せば、10%以下になる」という一文。

ちなみに、NYタイムズの記事によると、大統領選の投票日に失業率が7.2%を超えていた政権で再選を果たした大統領は、ルーズベルト以来、ひとりもいないそうである。

ギリシャ、Caa1に格下げで「HALL OF SHAME」入りを果たす

昨日、Moody's社がギリシャの格付けをCaa1に格下げ。

(Bloomberg, 6/2/11)


それにしても、Hall of Fameならぬ、Hall of Shame(恥の殿堂)とは、すごい記事タイトルであるな(苦笑)。

ギリシャ・ソブリンのCDSプレミアムは1500bpsあたり、いまやベネズエラを300bpも抜いて、絶対数値なら堂々の1位である!格付け的にも、M社の場合は、Caa1より低い格付けを誇る国家はエクアドルのCaa2のみ。(ちなみにエクアドルは1999年にデフォり、2008年にまたデフォったという成績。)

欧州関係者は、ギリシャ債のデフォルトをなんとか回避しようと、「期限延長だけするので、リスケ(Reschedule)じゃないもん。リプロファイル(Reprofiling)と呼んでネ!」とかいうガキ騙しのような案で走ろうとしていたが、やはり格付け会社から「リプロファイルかなんか知らんが、どういう名称つけようが、デフォはデフォ!」と冷たく突き放され、ガックリ膝をついた。

(Market Watch, 5/20/11)


さらに、「トロイカ体制」敷いてるはずの欧州関係者の内部でも、どうやってできるだけ市場にショックを与えないような形でこの国の債務再編を果たそうかについて意見は分裂してたりして、ECBは「リプロファイルかなんか知らんが、それやったら、中央銀行としては、担保としてのギリシャ債はもう受け入れることできませんから!」と冷たく突き放すようなことを言い、それにもガックリと膝をついた。

(Daily Markets, 5/19/11)


このままでは、近々償還迫ってる分のロールオーバーできねーよ(その結果、古典的なデフォへと突入)という危機感ばかりが湧いてくるわけで、先日のBloombergは、なんとか資金を引き寄せようと、新たに発行する分には【飴】を用意している、と伝えていた。その【飴】だが、記事によると、現在発行されてるギリシャ国債よりも優先順位が高く、クーポンも高いというような話らしい。

(Bloomberg, 6/1/11)


ということは、なんですか、既存のギリシャ国債は新発国債よりも「劣後」するわけですか?ギリシャ債のCDSのクオートは今後はシニアと劣後でダブルクオート?Subordinated Government Bond とでも呼ぶのですかね?(笑) それに優先するといったって、エーゲ海の島でもなんでも売れる資産は売っていこうか、とか言ってる国で、数年後の資産の清算価値はどうなっておるんでしょうか・・・。

とか、疑問は次々湧いてくるわけですが、まぁいずれにせよ、あと一歩後ずさりしたら崖から堕ちる、ぐらいの瀬戸際に立ってるわけでありまして、ここでB1からCaa1に落とされたといったって、げげーー!と驚くほどでもないよな。

昨日出されたムーディーズ社のプレスリリースには、こんなことが書いてある。(抄訳はMHJ筆者)

Greece’s Caa1 rating incorporates Moody’s assumption that current negotiations between the Greek government and the Troika will result in further official support for the Greek government and (以下略)

ギリシャのCaa1格付けには、ギリシャ政府とトロイカ(注:IMF+ECB+EU)との交渉で、ギリシャ政府への更なる正式支援が施されるだろうという前提が織り込まれている。

「支援 by トロイカ」を続けてもらっても、それでも果てしなくデフォに近い状態になりそうなんで、Caa1とな。通常、「B」の文字を離れて「C」の文字が格付けについてくると、その債券はデフォルのは時間の問題。ここまできたら、デフォるかデフォらないかよりも、実際にデフォったら、その後に元本をどれぐらい取り返せるか(リカバリー)というのを債券投資家は考え出す。

M社によると、彼らの格付けシンボルと、期待されるリカバリーの度合いは以下のような関係だそうである。


つまり、Caa1の今はデフォっても90~95%ぐらいは取り戻せるかもよ、といった見解のままM社は様子見してますよ、ということである。見通しはネガティブなので、もしかすると、Caa1からもっと下がる可能性もありますよ、と言っている。

トロイカは見捨てない?でもデフォに果てしなく近い??サポートの内容がはっきりしたら、もっと格下げくらうかもしれない??

禅問答を聞いているような感覚に陥るが、そこで重要になってくるのが、FTAlphavilleで紹介されてた、M社のリリースから引用された次の一文だ。(抄訳、太字はMHJ筆者)

Our recent study of sovereign defaults shows that post-default recoveries for investors have averaged just over 50%, based on the 30-day post-default price or pre-distressed exchange trading price. There is a wide range around this average, with recoveries ranging from 18% to 95%, and no rated precedent for a developed-world sovereign default in modern times. However, a sizeable discount would be needed to have a meaningful effect on Greece’s debt trajectory, and our expectation is that any restructuring would involve a loss of at least the historical average for private sector lenders.

ムーディーズ社による最近の調査では、デフォルト後30日のプライスかディストレス交換前のトレーディングのプライスをベースにすると、デフォルト後のリカバリーの平均は50%をやや上回る程度。この平均値の周囲には18%から95%までという広範囲で数値が散らばっており、さらに近年には、格付けされた先進国のソブリンデフォルトの前例が存在しない。しかしながら、ギリシャの債務のトラジェクトリーに意味ある影響を与えるには、かなりのディスカウントが必要であり、この先いかなる再編を行うにしろ民間セクターの貸し手にとっては少なくとも過去平均程度の損失が発生するであろうと考えている。

つまり、どうがんばっても、最終的にはギリシャの債権者には、現在のCaa1という記号が示唆する程度(=90~95%は回復する)よりははるかにシビアな損失出そうだから覚悟したほうがいいよ、損失の程度によってはもっと格下げ来るよ、とM社は考えてるらしいんである。

今週中にもトロイカ軍団の最終支援案は固まると見られているが、仮に目先のデフォルトが回避できたにしても、ギリシャ国のマクロ経済や財政状況から判断するに、長期的には投資適格と呼べる信用力には戻りそうもないよね、ということだ。

そりゃーそうであろうな。現在のドロドロな状況が一朝一夕で生まれたわけでもなし、元に戻るのだって、一朝一夕じゃ戻りませんて。

それに、んなこと、いまさら格付け機関からわざわざ言われなくても、みんな、そうじゃないかなーと考えてるから、CDSのスプレッドが1500とかになっちゃうわけでありまして。