Thursday, February 17, 2011

合言葉は「エジプトの次はウィスコンシン」

財政難に喘ぐウィスコンシン州で、共和党の新知事が歳出カットを断行しようとしたところ、それに反対する住民らが猛反対、とりわけ削減対象となる公務員らを中心にプロテスターと化した群集が広場に集結しデモが繰り広げられている、と話題になっている。

同州ではデモに参加するため教師たちがいっせいに休暇を取り、マジソン市の公立学校は2日間休校になっているそうだ。




<<関連記事>>
Angry Demonstrations in Wisconsin as Cuts Loom
(New York Times, 2/16/11 上の写真もNYTから)

今朝ツィッターで「これからアメリカでは、こういう光景が、あらゆる州で見られるようになるかもしれないなぁ・・・」とつぶやいたところ、すぐに、同州の大学に留学されておられる方から、返信ツイートを頂戴した。(Thanks to @sayako66)


なんと合言葉は「エジプトの次はウィスコンシン!」だというのである!組合よ、労働者よ、立ち上がれ!?!?

NYTの記事によると、ウィスコンシン州の州予算は今年度だけで$137milの赤字、その額は、向こう2年間で$3.6bnに膨れ上がるという。

6週間前に同州知事になったばかりの共和党スコット・ウォーカー氏が進めようとしている案は、①州の公務員の年金と健康保険の本人負担分引き上げなどの実弾に加え、②公務員の組合の弱体化を目指して組合による給与引き上げ要求の制限などをうたった集団交渉権の縮小、というのも含まれているらしい。

同州の公務員の平均給与は年間$48,348。知事案では、年金基金に給与の5.8%を拠出(現在はそれよりもはるかに低い拠出分)、健康保険の本人負担分を12.6%に引き上げ(現在は6%前後)てもらう、とのことで、夫婦で公立学校の教師をやってる場合月々の手取りが$1200ドルも減ってしまうケースもあるようだ。

ウォーカー知事は、「公務員や組合員は負担増に反対し騒いでいるが、ウィスコンシン州のミドルクラスの労働者家庭は更に重い負担を余儀なくされている。この州の平均的な住民たちは、この案に強い反対は示さないと思う。」と言い切り、強い姿勢で臨む意思をのぞかせている。

このウィスコンシン州の動きは当然他州も黙って見てはいられない。経済が上向いているテキサスなど一部の州を除き、ほぼどの州でも財政難・予算赤字に喘いでいるのが現状で、しかも「不況で歳入が減少する中、公務員の年金・保険の負担が重過ぎて、予算を黒字化できない」という共通項をどこの地方自治体でも抱えているからだ。

NYTは、ウィスコンシン州の公務員の間に「共和政権が不況を言い訳にして組合の弱体化と解体を計ろうとしてるのだ」という批判があることを紹介し、先の中間選挙で共和党が勝利した州では、このウィスコンシンの動きをなぞる知事も出てくるのではないか、と述べている。

だが、議会を民衆が占拠する様を眼前にした同州の議員たちはやはり動揺は隠せないようで、怒れるプロテスターと財政赤字に挟まれてドキドキしているらしい。組合員とその家族も大事な【票田】ですからね・・・。

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さて、この公務員の年金問題だが、去年の夏に、当時カリフォルニア州の知事だったシュワルツネガーが、「公務員の年金に今すぐ手を打たないと、カリフォルニア州は爆発する。ウダウダやってるヒマはない!」とウォールストリートジャーナルに寄稿して、話題になった。

<<当時の記事>>
Public Pension and Our Fiscal Future
(Wall Street Journal, by Arnold Schwarzenegger, 8/27/10)

その当時の記事から「衝撃のグラフ」を紹介したい。

上のグラフが、リセッションの最中の2008年から2009年にカリフォルニア州で失われた職の数(黄色が公的セクター、赤が民間セクター)。下のグラフは、2011年以降指数関数的に上昇が見込まれているカリフォルニア州公務員の年金コスト、単位$ビリオン。



この寄稿文の中で、シュワ知事は、同州が使えるおカネのうち実に80%が州公務員の給与および福利厚生に使われており、この部分の伸び率は同州歳入全体の伸び率の3倍に相当すると指摘。これに、公務員年金と退職後のヘルスケアコストが加わり、同州は退職した公務員への給付金だけですでに$550bn(50兆円弱)の負債を抱えている。民間セクターの労働者の場合、2007年から同州は100万人の失業、平均的401(k)も2割減。一方、公的セクターでは州が一人当たり$1mn相当の退職セービングを保証して、55歳で退職してから死ぬまで月々$3000(インフレ調整される)を受け取ることができる。

シュワ知事は自分は過去5年間、州の年金債務をこれ以上増やすのは止めろと訴えてきたが毎回却下された、しかしもうウダウダしてはいられない、州年金改革は即着手が必要だ、と「全国紙」に訴え出たのである。

西海岸の知事の叫びを東海岸で読んだ筆者は、「(ウワサには聴いていたが)カリフォルニア州、ヤバイじゃん・・・」と認識を新たにし、同時に「我がニューヨーク州も、負けずにヤバイに決まってる・・・」と背筋を不安が貫いた。

だが、その後シュワちゃんは任期を終えて知事を引退。今年からブラウン新知事の州政府が走り出し、その後、この公務員の年金問題がどう転んだのか、加州住民ではないMHJ筆者はフォローしてないので知らないが、その後なにか派手な対策が取られたというニュースが西海岸から聞こえてきた記憶はない。多分【先延ばし】になっているのではなかろうか・・・。(カリフォルニア州在住の方、間違ってたらご指摘くださいね。)

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予算のツジツマ合わせるために、あっちをちょっと切ってみたり、こっちをちょっと切ってみたり・・・。

そうやって騙し騙して走ってきた予算もついに騙しが効かなくなって、ウィスコンシンでは、冒頭で述べたとおりの大騒ぎ。

痛みを取ってもらうと断行決意した知事の自宅は怒り狂った人々に取り囲まれて、警察が出てきてストリートを閉鎖する事態にまでなったという。

(引用) 
“For us, it’s simple,” said Mr. Walker, whose family home was surrounded by angry workers this week, prompting the police to close the street. “We’re broke.”

【For us, it's simple.  We're broke.  】
(話はシンプル。我々には、もうおカネがないんだよ。)

アメリカ人が「合言葉」とすべきは、実はこっちなのかもしれないよ。$1ミリオンの退職金保証されてる人達が「労働者よ、エジプトに続け」もなにも、ないでしょーが。

【For Us, It's Simple - We're Broke】ハイウェイを走る車のバンパー・スティッカーに、いかがでしょうか。

7 comments:

桃太郎ママ said...

米国は州レベルで非常事態になってますね、日本は国レベルで財政逼迫してますよ。負担(消費税アップや配偶者控除廃止)を嫌がり受益ばかりを主張する国民自体がKYそのもの。もう打つ手がなく、ずるずる行くしかないのかも・・・と超悲観的に考えてます。

Chee said...

バンパーステッカー作って下さい!

今日はWSJのBanks Go Straight to Public Borrowersに関する記事を書きました。このあたりのことは、私には難しくてわからないのですけれど。^^;
Murray Hillさんはどうお考えかな~なんて気になります。(誘導)

Yoshi said...

すみません。
ウィスコンシンに前留学して
今の騒動もリアルタイムでデモ様子が入ってくるのでコメントを残させてください。

現在のデモは公務員の待遇ではなく
公務員の団体交渉権を認めるか認めないかに焦点が当てられています。
公務員の組合側も待遇については交渉の余地があるが 交渉をする権利の侵害についてはなし の方向で固まっています。
ウィスコンシンは公務員の団体交渉権を認めた初めての州なのでこの州で団体交渉権が弱められること(インフレ調整以外の交渉権がなくなる)で他の州に飛び火することが懸念されているんです。

民主党側も
http://voices.washingtonpost.com/blog-post/2011/02/wisconsin_democrats_boycott_vo.html
でわかるように法案自体は通るけれどこれだけは譲ることができないとしています。

多分十分承知だと思いますが現在のデモが必ずしもお金の問題だけでないことも強調していただけると幸いです。

Cootre said...

日本の税収は40兆円くらい。公務員の給与は35兆円くらい。公務員改革を行わずに法人税減税、消費税アップを国民が受け入れるのは難しい。消費税アップの必要性を感じている国民は決して少なくない。しかし、官僚利権に切り込めなければ何をやっても結局彼らの利益にしかならない。
消費税増税ありきの議論は財務省の扇動そのもの。年金ひとつとっても、消費税増額と年間4.1%のリターンを前提にしている。GPIFの過去10年間のリターンの単純平均は4%には遠く及ばない。つまり消費税を増額しても年金ももはや守られない可能性が高い。そんななかで消費者(需要側)から絞りあげても焼け石に水に思える。

Trinity @ NYC said...

>Yoshiさん

ウィスコンシンのデモで、団体交渉権云々については本文中で②として触れています。民主側がそれを主張して投票棄権してることも知っています。けれど、他州に逃げて同席に就き交渉すること自体を拒否するいまの民主議員のやり方が、「団体交渉権」を守ろうという姿勢なんでしょうかね?この問題は、突き詰めればカネの問題。個人がもらえるカネの問題であり、州が払わなければならないカネの問題。それ以上でもそれ以下でもない、と私は思います。デモしている人々も団体交渉権を失うことによって、将来もらえるカネが減る、それを心配してるわけなのだから、「崇高な理念の問題」のフリをした、「現実的なカネの問題」と私は捉えています。

Anonymous said...

桃太郎ママへ

日本で必要なのは税金のUpではありません。デフレの時に税金をUPする事は間違いだと歴史が証明しています。今日本に必要なのはインフレ政策です。消費税UPことKYです。

Anonymous said...

公務員の給料を保護したいなら、彼ら公務員がもっと税金を支払えば良いのでは?自分の給料の財源を自ら確保すれば一件落着。

さっさと公務員止めて自ら仕事を確保した者勝ちじゃん。首切られた公務員向けサービスとか儲かりそう。