債務上限問題で最終の詰めに入っている米議会。本日東部時間午後1時に暫定案で採決の予定。
政府といえども一般家庭と同じ、入ってくるお金より出てゆくお金のほうが多ければ、手元のキャッシュは減り続ける。
WSJに掲載されてるこのグラフがすごい。黒線は実際の手持ち現金残高、赤の点線は5月2日に財務省が試算したもの、赤の実線はBipartisan Policy Center(両党派ポリシーセンター)が試算したもの。BPCの試算では若干余裕はあるものの、【断崖絶壁状態】であることには変わりなし。
図の下の注意書きに、
Treasury 'extraordinary measures' occur in one lump sum on May 16, and generate $232 billion cash.
(5月16日に財務省による「臨時措置」がとられ$232bnの現金が創出された。)
とあるが、「5月16日の臨時措置2320億ドル」で時間稼ぎしてなかったら、とっくに水面下に没していましたね、という図でもある。
この「臨時措置」であるが、5月2日付けのLAタイムズの記事で、米連邦政府はまず債券の発行額を抑えるために、州自治体向けに発行しているSLGS証券(State and Local Government Series securities、これも法定上限の対象としてカウントされている)の発行を止めると述べている。
Treasury to take 'extraordinary measures' to avoid hitting debt limit, Geithner warns
(LA Times, 5/2/11)
このSLGS証券なるものは、州自治体政府が地方債を発行したプロシードでより高利回り(=高リスク)の証券に投資してアービトラージによる収益を得るインセンティブを抑える目的で1972年に持ち込まれた制度で、もしプロシードが余った場合は、それをロー・イールドのSLGS債に入れておきましょうね、という、いわば「お父さんが、子供がお小遣いを無駄遣いしないように一時的に預かってあげる」みたいな証券である。だが、これも連邦政府にとっては立派な「借り入れ」であって、まずは、これを止めた。
そして、その代わり、上限にカウントされる対象にならない相手を見つけては方々からカネ借りまくって、手持ちの現金が底をついてしまうことになっていた5月16日に$2320億ドルのキャッシュを作り、とりあえず支払いに支障をきたさないよう血と涙が滲むような【遣り繰り】を、米財務省はこの数ヶ月強いられてきたのである。
この「いろんなところからちょっとづつお金集めて遣り繰りする」という話を、MSNBCのJohn Schoenが、
It was the Treasury's equivalent of looking under the couch cushions for stray nickels.
(「ソファのクッションの下に5セント玉が落ちてないか探す」の財務省版)
と形容していて、思わず声をあげて笑ったが、「上限問題にケリついたら、この仕事、辞めたい・・・」とガイトナーが漏らすのも無理はなかろうて。
目下3兆ドルの歳出削減を睨み、議会は話し合いを煮詰めている模様。
米国での状況は、Wall Street JournalのLive Blog: The U.S. Debt Battleが頻繁に更新されて、現在の状況を把握するのに、とてもよい。
Sunday, July 31, 2011
Saturday, July 30, 2011
【ニュースクリップ】 7/28/2011, 7/29/2011
MHJ別館にポストされた英文ニュース記事まとめ。
以下の記事のリンクはこちら。(7/28/2011分)
以下の記事のリンクはこちら。
以下の記事のリンクはこちら。(7/28/2011分)
- 高齢者の依存度国際比較 (Business Insider)
- トヨタのピックアップトラックTacoma、新モデル (WSJ)
以下の記事のリンクはこちら。
- 米国債が格下げされてもMBSは安泰(by BarCap)(Housing Wire)
- 財務省はオーソリティ失効前日に、短期米国債$50bnを発行する (CNBC)
- グルーポン、フォースクエアのパートナーになる (Mashables)
- 米政府よりアップル社のほうがキャッシュ持ってる (Financial Post)
Thursday, July 28, 2011
【ニュースクリップ】 7/27/2011
昨日MHJ別館にポストされた英文記事のまとめ。
以下の記事のリンクはこちら。
以下の記事のリンクはこちら。
- 米の郵便局4000箇所近く閉鎖の方向 (NYT)
- 米国債の最悪シナリオ下での金融機関への影響 (Bloomberg)
- 米国債格下げのトレーディングフロントへの影響 (Business Insider)
- 米国債のCDSカーブが初めて長短逆転 (WSJ)
Wednesday, July 27, 2011
【ニュースクリップ】 7/26/2011
MHJ別館に昨日ポストした英文ニュースまとめ
以下のニュースのリンクはこちら
以下のニュースのリンクはこちら
- 米国の債務はどうやってここまで大きく膨れたか(NYT)
- IMFは近く資金を増やす必要ありかも、とラガルド(WSJ)
- ムスリムじゃないけどムスリムっぽい (動画ジョーク)
- ISDAによると、米国債がデフォルトしたらCDS支払いまで猶予は3日(Reuters)
- 共和党を激しく非難するNYTの社説(NYT)
Monday, July 25, 2011
前回の続き Togetter『続・証券アナリスト、というお仕事』
前回ポストした、証券アナリストについてのまとめが、思いのほか好評で、さらにいくつか書き留めておきたいポイントもあったので、続編としてまとめた。
前回のだけ読むと、アナリストの将来はお先真っ暗、このままでは消え行く運命にある職業なのではなかろうか・・・と思った方もいるかもしれない。だが、決してそんなことはない。その時その時の市場の状況や規制環境に翻弄されることはあっても、アナリストは証券会社の商品の一部、アナリストが提供するクオリティの高い分析や、中立の立場からの投資判断・オピニオンは市場の効率を高めるために必要な要素、と私は思っています。
アナリストは単なる人気商売でもなければ、資格商売でもない。小手先の分析ノウハウを身に着けたり、本人の営業努力で社内外に顔を売ったからとて、どうなるものでもない。
「あのアナリストのオピニオンならば傾聴するに値する」――市場関係者からそう評価され信頼されるようになって、ようやく存在価値が認められる、そういう仕事です。
以下のTogetterが見えない場合は、リンクはこちらです。
前回のだけ読むと、アナリストの将来はお先真っ暗、このままでは消え行く運命にある職業なのではなかろうか・・・と思った方もいるかもしれない。だが、決してそんなことはない。その時その時の市場の状況や規制環境に翻弄されることはあっても、アナリストは証券会社の商品の一部、アナリストが提供するクオリティの高い分析や、中立の立場からの投資判断・オピニオンは市場の効率を高めるために必要な要素、と私は思っています。
アナリストは単なる人気商売でもなければ、資格商売でもない。小手先の分析ノウハウを身に着けたり、本人の営業努力で社内外に顔を売ったからとて、どうなるものでもない。
「あのアナリストのオピニオンならば傾聴するに値する」――市場関係者からそう評価され信頼されるようになって、ようやく存在価値が認められる、そういう仕事です。
これからプロのアナリストを目指すワカモノの皆様には、自分の発信するオピニオンに自信を持ち、より高みに向って日々精進するプライドの高いアナリストになっていただきたい。
以下のTogetterが見えない場合は、リンクはこちらです。
Saturday, July 23, 2011
Togetter 『証券アナリスト、というお仕事』
某著名美人タレントのお相手が某大手証券会社のアナリストだということで、にわか注目が集まっている(?)「アナリスト」の世界。
Twitterで語った「アナリストというお仕事」をまとめたので、ここに貼り付けておきましょう。
(下に内容が表示されない場合は、リンクはこちら。)
会話の中に出てくるギョーカイ用語は、ご存知ない方のために、下に注意書きとして書いておきます。
<<ギョーカイ用語集>>
Twitterで語った「アナリストというお仕事」をまとめたので、ここに貼り付けておきましょう。
(下に内容が表示されない場合は、リンクはこちら。)
会話の中に出てくるギョーカイ用語は、ご存知ない方のために、下に注意書きとして書いておきます。
<<ギョーカイ用語集>>
- ベース:基本給(Base Salary)のこと。ウォール街の給与体系については以前ブログで書いたことがありますが、リーマンショック前までは、基本給は低めで、その代わり、その年の利益に従い支払われるボーナスが非常に大きく、ボーナスのほうが基本給より大きい、時には数倍、なんてのは極フツーだったのです。(でも、リーマンショック後にウォール街のボーナスを減らしやがれ!という怒りの世論が沸騰し、その結果何が起きたかというと、ボーナスは確かに減ったがその代わりベースを引き上げるという、アホな結果になりました。)
- ブティーク・ファーム:ある特殊な業界の投資関連業務を専門に扱う小規模な証券会社のこと。大手の場合は証券の種類や扱う業界の種類など広く網羅する総合証券会社で、それと対極にある。
- ジュニア、シニア:アナリスト業界と言うのは基本的に「丁稚システム」であり、シニアアナリストの下にジュニアアナリストとしてつきシニアめざして何年か奉公するわけ。入社直後から業界持たせてもらって偉そうに顧客の前で意見述べるなんてことは、許されません。
- セル、バイ:セルサイド(Sell Side)、バイサイド(Buy Side)の略。セルサイドとは要するに証券会社のことで、証券を「売り込む」側。バイサイドというのは要するにファンドなどの機関投資家のことで、セルサイドに注文だして証券を「買う」側、すなわち証券会社の顧客。
- IB:Investment Bankingの略。投資銀行業務のこと。IPOなどの「ディール」を手がけるお仕事。ディールが成功すれば、引き受け手数料などの手数料を受け取る。
- フロー:顧客の注文に従って証券を売買し、売買手数料を受け取るお仕事。
- プロップ:Proprietary Tradingの略。顧客のためではなく、会社の自己勘定でリスクを取り証券の売買をするお仕事。売買から生じる損益はそのまま会社の業績になる。
- フロント:セルサイドで、バイサイドの外部顧客と直接やり取りする人たちのグループ。フロントの業務に属するアナリストが客向けに推奨オピニオンを出したり、マスコミに出たりする。(IBやプロップの業務に属するアナリストは、一般の外部顧客にはオピニオンを出さず、所属する部署の目的のためのみに情報提供する。)
- レーツ、クレジット:セルサイドのフロントは大きく分けて株式部と債券部に分かれるが、レーツもクレジットも共に債券部の構成要素。レーツ(Rates)とは金利商品、主として国債を扱うグループで、クレジット(Credit)とは企業債や仕組み債およびそれらのデリバティブスを扱う。
- MD: Managing Directorの略。外資証券会社の役職ヒエラルキーにおいては、MDはある意味「すごろくの上がり」に相当し、MDのタイトルもらうと年間の報酬もガクンと高くなるのだ(笑)。
- HF: Hedge Fund(ヘッジファンド)の略。機関投資家の種類のひとつ。トレード頻度も額も高く、ゆえに落とされる手数料も多いため、セルサイドの上客。
Tuesday, July 19, 2011
【メモ】米銀は米国債のデフォルトの準備をしている??
今日流れてきたツイートで、目を引かれたのは、これ。
米銀は米国債がデフォルトする可能性を考えて「準備している」というバンカメのCFOの発言。
ギョ!と思い、この裏づけを検索すると、CNBCのサイトにも同じブリーフが流れていた。確かに、そう言ったらしい。メモしておこう。
米国債の上限引き上げ問題は、まだ完全に決着は出ておらず、上限を引き上げたいオバマ政権との取引条件として共和は「増税絶対反対」の立場を譲らず、膠着状態が続いている。
8月2日が決着のデッドラインとされているが、実質的には、手続きやら何やらもあるため、7月22日までに議会で合意を得ないとヤバイと言われている。
この問題については、本ブログで『合衆国が取れないリスク』という記事を書いたが、その記事の日付が4月18日。あれから実に3ヶ月、内容的にはほとんど進展がなかった、ということにも驚く。日頃温厚なオバマも、先週はキレかけてましたが、そりゃーいいかげん、キレるよね。
格付け機関は(例によって)状況が悪くなればなるほどハシャぐ、といういつもの癖で、ムーディーズもS&Pも、米国債を格下げ方向でウォッチにかけた。しかも、彼らは「上限引き揚げても、格下げにならないという保証はありませんので、そのおつもりで。」と言ってみたり、「法定上限なんていうモノがあること自体がリスクだ、そんなもの、やめてしまえ。」と言ってみたり、底意地の悪さ全開、である。
米国債のみならず、ファニフレのエージェンシー債も相当抱えている米銀セクターとしては、格下げになると、それらの証券が実際にデフォルトは起こさなくとも、これらの保有証券のリスクが高まると判断されるために、自己資本にプレッシャーがかかってくる。
それでなくても、住宅セクターへのエクスポージャでこの先もまだ損失が発生しそうで、自己資本にのしかかるプレッシャーから復配もままならないとささやかれているバンカメからしてみたら、この上さらに米国債とエージェンシー債から「さらなる重し」が発生することになると、まさに泣きっ面にハチ。
上のCNBCの記事で、バンカメのCFOが「デフォルトが起こる可能性とそれが引き起こすエフェクトの研究に余念が無い」と言うのもうなづけますな。
米銀は米国債がデフォルトする可能性を考えて「準備している」というバンカメのCFOの発言。
ギョ!と思い、この裏づけを検索すると、CNBCのサイトにも同じブリーフが流れていた。確かに、そう言ったらしい。メモしておこう。
米国債の上限引き上げ問題は、まだ完全に決着は出ておらず、上限を引き上げたいオバマ政権との取引条件として共和は「増税絶対反対」の立場を譲らず、膠着状態が続いている。
8月2日が決着のデッドラインとされているが、実質的には、手続きやら何やらもあるため、7月22日までに議会で合意を得ないとヤバイと言われている。
この問題については、本ブログで『合衆国が取れないリスク』という記事を書いたが、その記事の日付が4月18日。あれから実に3ヶ月、内容的にはほとんど進展がなかった、ということにも驚く。日頃温厚なオバマも、先週はキレかけてましたが、そりゃーいいかげん、キレるよね。
格付け機関は(例によって)状況が悪くなればなるほどハシャぐ、といういつもの癖で、ムーディーズもS&Pも、米国債を格下げ方向でウォッチにかけた。しかも、彼らは「上限引き揚げても、格下げにならないという保証はありませんので、そのおつもりで。」と言ってみたり、「法定上限なんていうモノがあること自体がリスクだ、そんなもの、やめてしまえ。」と言ってみたり、底意地の悪さ全開、である。
米国債のみならず、ファニフレのエージェンシー債も相当抱えている米銀セクターとしては、格下げになると、それらの証券が実際にデフォルトは起こさなくとも、これらの保有証券のリスクが高まると判断されるために、自己資本にプレッシャーがかかってくる。
それでなくても、住宅セクターへのエクスポージャでこの先もまだ損失が発生しそうで、自己資本にのしかかるプレッシャーから復配もままならないとささやかれているバンカメからしてみたら、この上さらに米国債とエージェンシー債から「さらなる重し」が発生することになると、まさに泣きっ面にハチ。
上のCNBCの記事で、バンカメのCFOが「デフォルトが起こる可能性とそれが引き起こすエフェクトの研究に余念が無い」と言うのもうなづけますな。
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