Sunday, February 7, 2010

付け焼刃ノート「ギリシャ」

ギリシャが騒がしい。

CDSのスプレッドも仰山ワイドになって、大騒ぎである。

去年の11月の終わりに、ドバイ騒ぎが持ち上がり、あのときソブリンCDSについてMHJ記事を書いた。

   * ソブリンCDSについて(MHJ, 11/30/09)
   * ソブリンCDSについて(2) (MHJ, 12/9/09)

今から2ヶ月前に書いた記事をいまいちど読み返してみると、市場で警戒感が高まり始めていた11月末ごろのギリシャのCDSスプレッドは200前後。それが12月に入ると、格付け機関がガタガタと動き出し、CDSスプレッドはいっきに250bpsへ。

その後もソブリンリスクに対する市場の危機感は強まるばかりで、ギリシャのCDSスプレッドはついに400超へ!

スプレッドの動きをみてれば、ギリシャの債務問題がさぞかし深刻化しているのだろうというのは、どんなウスノロでも想像が付く。

いろんな人が、あちこちで、「ギリシャはこの週末が正念場だ!」とか「デフォルトさせても問題はない!」「いや、ある!」とか言ってるのを目にするから、自分もつられて「むむっ、正念場なのだなっ!」とは思う。

だが、ここから先の進展を自分なりに分析しシナリオ構築できるかと言われると、さほどの知識はぜんぜん持ち合わせていない。

欧州ならではの背景や、当該国同士の複雑な政治的力関係をよく知らずして、どうしてギリシャ・ソブリンが現在置かれている立場をきちんと理解なんぞできようか。

ということで、ギリシャ関連の記事を今日(6日)の午前中いくつか読んでみたが、結論としては、

「やっぱ、よく、わかんねぇな・・・。」(爆)

どだい欧州の土地勘すらないんだもん、ギリシャなんて、10年ほど前アテネに観光で3日ほど行ったことがある程度だし。

しかし、ギリシャ関連のノイズはしばらく続きそうである。いちおう【最低限知っておくべきこと】ぐらいは知っておきたいではないか。

いろいろ読んだ中で、無知な自分にもわかりやすかったのは、英エコノミスト誌の2月4日付けの記事。

A Very European Crisis (The Economist, 2/4/10)

日頃、欧州経済やユーロを追いかけてる人達には常識のような話なのだろうが、MHJ者には財政悪化に至る背景など初めて知ることも多かった。以下は、上の記事を読みながら箇条書きした【付け焼刃ノート】です。(グラフも同誌から。)

(※気づいたところあれば、ご指摘ください。)

   ★   ★   ★


1.ギリシャの現在
  • 去年、ギリシャの財政赤字はGDP対比で12.7%
  • グラフ1は、財政赤字のGDP対比、および、債務残高のGDP対比。ギリシャの場合、PIIGSの中でも、どちらのレシオも、目だって高い。
  • 財政問題への懸念から、ギリシャ10年債のイールドは先月下旬に7.1%、ドイツ国債をベースにしたスプレッド、G+400bps超に拡大。
  • 事態に対処するため同国が出したプランは、(1)2012年までに同比率を3%まで落とす(ECは承認済)、(2)燃料への課税引き上げ、(3)パブリックセクターの給与凍結の延長。
  • 財政赤字の対GDP比を今年中に8.7%まで落とす予定。
  • 今年の4月と5月に借り換えの必要がある債務は200億ユーロ(280億ドル)
  • 3月中に市場での信頼回復ができない場合、借り換えは事実上困難、デフォルトか救済措置のいずれかに至る可能性あり。

 2.ギリシャ財政悪化→債務危機への経緯
  • ギリシャの財政状態は慢性的に問題を抱え、過去200年のうち半分はデフォルト状態。
  • 2001年にユーロ圏に12番目の加盟国となるが、その時点ですでに財政赤字はGDPの100%超。多くが通貨ユーロに悪影響を与えると懸念した。
  • だが、ギリシャからすると、ユーロ加盟国になったことで以下の恩恵:(1)インフレや通貨切り下げの心配がいらず、(2)金利低下で政府の借り換え条件が良好化、95年からの10年でGDPに占める国債利払いの割合が6.5%低下、(3)長期借り入れが可能となり、消費も活発に。
  • 結果、2008年まで、GDPは年率4%の伸び。
  • GDPの順調な伸びと、ユーロ圏の一部であるという気の緩みが公的債務の問題を隠す格好となり多額の財政赤字は解消されず。
  • インフレ率はユーロ圏平均を常に上回り、競争力が低下。
  • 海外からの借り入れ依存の傾向を強めるようになり、経常収支は2008年にはGDPの14.6%に拡大。
  • 銀行システムがToxic Assets(不良資産)にエクスポーズされていなかったこともあり、リーマンショック後も経済は比較的安定しているように見えた。2009年の財政赤字見込みは対GDPで5%のはずだった。
  • だが10月の選挙の後、実際の財政赤字は12.7%あることが発覚。加えて、前政権が見込んでいたよりも経済の収縮幅は大きく(マイナス1%)、個人消費はそれよりさらに落ち込み、重要な収益源であるVAT税収が減少。
  • 選挙中に公共工事向け支出も増やしており、財政赤字に上乗せ。
  • ギリシャが出す統計への信頼は崩れ去り、フィッチとS&Pが格下げ。ドバイの問題発生で債券投資家はソブリンリスクに敏感になり、スプレッド拡大。
  • 12月半ば、同国政府は赤字削減策を新たに打ち出したが市場も格付け機関も納得せず。信用格付けはA-からBBB+へとさらに格下げ。
  • 今年1月25日、5年債6.2%を80億ユーロ発行、ブックは順調に250億ユーロ集まったが、数日のちにスプレッドは再び拡大基調。中国がギリシャ債購入を取りやめのニュース(両国とも否定)もセンチメントを悪化。


  • グラフ2はPIIGSの10年国債につくスプレッド(対ドイツ国債)。
  • ギリシャが大幅拡大するのと対照的に、アイルランドは公的セクターの給与7%カットなどのドラスティックな財政均衡策が市場に評価されタイトニング。
  • ギリシャも公的セクターの給与削減、および、公的年金受け取り開始年齢の引き上げなどを匂わせているが、市場では、十分と判断してもらえず。

3.救済措置の方法
  • 債務肩代わり(Debt Assumption)⇒EU協定にはドイツの強い要請で1991年から「no bail out」条項が含まれ、他国の債務の肩代わりはできないことになっている。 
  • ブリッジローン⇒ユーロ圏の信用力の高い他国(例えばドイツ)とのアレンジ。これの政治的問題点は、救済側の国の有権者からの支持を得づらいこと。また、融資条件を設定する際に他国が相手国の予算に直接口を挟む格好となること。90年代中ばに米国がメキシコに同様の支援を施した際、この点が問題となり、結局IMFの仲介を頼まざるを得なくなった。
  • ユーロ圏内の支援資金⇒圏内の一国がキャピタルマーケットで調達できなくなった際のバックストップになるメカニズムがない。
  • EU圏内の支援資金⇒ユーロ国に使用できるローンファシリティがあるが、この基金は去年の春、ハンガリー等の国々に使用するのを前提に上限が500億ユーロまで引き揚げられた。必要が生じた際は、EU諸国がバックアップして債券を発行する形を取る。
  • ただし、EU圏内の資金を用いる問題点は、イギリスやスウェーデンなどのユーロ圏外の国が巻き込まれること。ユーロ圏に加盟するのを頑として拒んだイギリスがギリシャのために負債を引き受けるかは不透明。(イギリスの年金資金はギリシャ国債にかなりエクスポーズされているものの。)
  • IMFの世話になるのはプライドが許さない⇒欧州他国の支援を仰ぐよりIMF資金にタップしたほうが実効性は高いものの、ユーロ圏内の国がIMFの世話になることは、通貨ユーロのレピュテーションを傷めると気にしている。
4.あるいは、デフォルトへの道
  • グラフ3はPIIGSの経常収支の対GDP比。
  • デフォルトの選択⇒ギリシャ一国のデフォルトがユーロ圏の他国発行の国債にも伝播する(Contagion)のをユーロ圏要人は非常に気にしている。伝播が起こると、次に危機を控えているのはポルトガル。デフォルトのシナリオは可能性低い。
  • ユーロ圏からの脱退⇒強制的に脱退させられる可能性は低いが、自ら出てゆくのを選択するのはできる。だがその場合は、(ユーロという安定通貨のステータスを失うため)バンクランの可能性を排除できず。また、インフレリスクの台頭から借り入れコストが急激に上昇。

   ★   ★   ★

このThe Economistの記事と一部重なる内容で、ウォールストリートジャーナルも、ギリシャに対しどんな救済策を打つべきかを書いている。

ギリシャ救済策を考える (WSJ日本語版, 2/1/10)

WSJの記事は、The Economist誌も言及していた「500億ユーロのEU救済資金」を使用すべきだという意見だ。

カナダでのG7が終了し、トリシェ欧州中銀総裁は、「ギリシャの赤字削減に期待、可能だと確信する」と記者会見で述べたそうだが、「期待」とか「確信」とかいうポジティブな(だが曖昧な)言葉を吐いてお茶を濁す以外に、現在のところ、これといった具体案には到達しておらず、どうしようもない、という苦渋がのぞく。

週明けは、こうした要人の発言に一喜一憂して、スプレッドがワイドニングしたりタイトニングしたりするのだろうが、いずれの方法を用いるにせよ、ギリシャの債務問題の解決には、なんらかの政治的、経済的な副作用を伴いそう。

かといって、借り換え時期が目の前に迫っているわけだから、ダラダラ・ズルズルと問題を先延ばしするわけにもいかないだろう。

市場は来週も引き続き、ソブリン・リスクに敏感なまま動きそうだ。



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4 comments:

Porco said...

試験前にノートを借りた気分です。
助かります。

モンテカルロ・モナコ said...

夏が来たら、メーン州で水上スキーなどせずに、ギリシャにトリップ。
エーゲ海もいいけど、まずは陸路でアルバニアでしょう。
国境ですばらしいものが視界に飛び込むはずである。
そんでもって、ギリシャに引き帰して、今度は海、つまりエーゲ海にでも。
OH~~、サントリーニ。 爆発・ぼ~ん。
そして、クレタ、サイプロス経由でハイファにイン。
コバルトかターコイズ・ブルーの海がアナタを魅了した後に、ベングリオンと同様の詰問が待っている。
そして、嘆きの壁にキッスして、約1000m下って、マイナス400mで酸素濃度の高い、死海でプカプカっしょ。
アラビアのロレンスよろしく、「アカバ」と叫んでエイラットで熱帯魚を見ましょう。
夏のバカンスの提案でした。

Trinity @ NYC said...

>Porcoさん

恐縮です・・・w



>モンテカルロ・モナコさん

すごいメニュー。問題は、カネがない。

Anonymous said...

ユーロ圏財務相会合、ギリシャ支援具体策協議しない=関係筋
2010年 02月 13日 11:06 JST(ロイター)
あるユーロ圏関係筋は「(財務相会合では)詳細な(支援)計画は協議されない。まだ緊急事態ではない」と述べ、ギリシャをめぐる状況はそこまで深刻ではないと付け加えた。

結局、緊急事態じゃないから救済しないという結論になりそうですね
なんじゃ、そりゃw