Tuesday, August 11, 2009

(いまさら)雇用統計

前回のMHJ記事エントリーから、すでに丸2週間が経ってしまった・・・。

3年ぶりに実家から家族がアメリカに夏休みで遊びにきたりしてるところに、ひどい夏風邪をひいてぶっ倒れ、ブログ更新ができませんでした。

今年の夏風邪はひどい。微熱がなかなか取れなくて、だるい感じがもう1週間も続いている。

先週だされた雇用統計、「いまさら」感が強いが、自分が何を考えてたのかの記録のためにも、書き残しておくことにする。

(グラフはすべてEconomPicData より。)

   ★   ★   ★

8月7日(金曜日)にDepartment of Labor(米労働省)から発表された7月の雇用統計のリリースを読んだ。

非農業部門月間雇用者数の増減については、昨年11月から今年4月までの月平均(マイナス64万5千人)に対し、7月はマイナス33万1千人と約半減。失業率も前月の9.5%から9.4%に!

この「9.5% → 9.4%に低下」という部分ばっかメディアでは報道されてましたけれどさ。

このリリースの1ページ目まではよかったんだが、2ページ目に移ると、ちょっとイヤな詳細情報が満載ではないか。

【イヤな情報その1】長期に渡り失業し続けてるひとの数、増える。3人に1人の割合で半年以上失業状態。

下のグラフみると、27週以上継続して失業しているひとの数だけ伸びてるんですよね。失業してもすぐ次の仕事みつかったひとはいいけど、だらだら半年以上仕事しないでいると、仕事がなかなか見つからないのであろうか。

ということは、MHJ筆者も結構だらだらしてるから、この先永遠に職場復帰はあきらめろ、ってことだろうか・・・。(あ・・・また熱出てきた。笑)




【イヤな情報その2】民間人の労働市場参加率が低下。人口に対する労働人口の割合も減る。

つまり、「俺は働くぜ!」とみずから進んで積極的に仕事探してるひとが減ってる、ってことである。

案外知られていないのだが、この手の統計では、定義上、積極的に仕事を探さないようなひとは失業率のレシオ計算には最初から分母にも分子にもカウントされないんである。

「失業率」というのは、労働省が(統計処理に必要とされる数のみ)各家庭に直接調査を行って失業してるか否かを尋ね、失業してます、と答えると失業率の【分子】となる。

一方、【分母】のほうは、Labor Force(=労働力)。Labor Forceの定義は、「就業に適した年齢で、かつ、仕事をやる気満々のひと」である。

仕事さえあれば今すぐ仕事に就くことができる状態で過去4週間積極的に仕事探しを行ったひとは、Labor Force の一員に加えてもらえるが、最初から仕事に就く気のないひとや、4週間以上職も探さずブラブラ遊んでたひとは Labor Force に入れてもらえない、そういう統計なんである。(よく考えてみれば、実にイイカゲンなレシオであるな。)

だから、失業率が低下してるといわれたら、単に分子だけじゃなくて、分母はどうよ、ってのも抑えておきたい。

で、今回の統計をみてみると、たしかに分子はちょっとよくなってますよ。

だけど、「(定義上)Labor Force から出て行ったひと」も増えてるわけ。

下のグラフは6月と7月のLabor Forceの増減率の比較であるが、「労働市場から出て行ったひと」はとくに20歳以上男子で目だって増えた。



人口全体に対する雇用数の割合はというと・・・過去25年で最低。「雇用市場そのものが縮小している」の図。



25年よりもっと長いスパンでみると、人口全体に対する雇用人口の割合は現在が最低なわけではない。



(だが、現在と比べると、60年代70年代は女性の社会進出がまだまだで、労働市場には構造変化があった。)

一週間の労働時間を雇用人口率に乗じて調整し、アメリカ人がどれほど就業に時間を費やしているかを示したグラフが、下。



結論:アメリカ人労働者は、過去40年で、いま、もっとも、働いてない。


【イヤな情報その3】パートタイムが増える夏場に、パートタイムの数は、季節調整前、前月比で横ばい。

このパートタイム労働者は involuntary part-time workers (経済的理由からパートタイムに就いてるひと)とも呼ばれる。要は、仕方ないんでパートで働いてるひとたち、である。

リリースによると、リーマンショック直後の去年の秋と冬は、パートタイムの数は急増したが、その後4ヶ月は連続で減りもせず増えもせず横ばい、だそうである。

春はともかく、夏も横ばい。

パートタイムが増えてないのは、パートの仕事口すらもないから、なんじゃないのか?

失業率は確かに0.1%【改善】したが、これを【改善】とよべるものだろうか。

ポール・クルッグマン教授が自己のブログで、今回の失業率【改善】のニュースについて、こう書いている。

The basic story is that things are sort of stabilizing — but they’re definitely not improving yet.

基本的に、(労働市場については)事態は【安定】してきたと言うことはできても、【改善】しているとは言えない。


まったく、そのとおり、と思う。

みなさんも、夏風邪にお気をつけください。



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4 comments:

Yumi said...

しばらく更新ないな~と思ってたら、夏風邪とは....。これって苦しいんですよね(経験済み)。少しよくなりましたか?

とても興味深い記事をありがとうございました。経済も高成長からかなり緩やかになってしまっていますね。私は考えようによってはこれでもいいかなと思うのですが、果たしてアメリカのライフスタイルがこれについていくか....ですよね....。

無理をなさらずお大事に。ご家族のみなさんと楽しい時間をすごしてね。

現物くん said...

ご病気を召してらっしゃるのですね・・・。復帰一発目はFDIC危機についてか、もしくはGSのHFTについて書かれるのではないかなーなどと期待しながら待っております(笑)。お大事に。

TrinityNYC said...

>Yumiさん

コメントありがとうございます。NYCに戻り、数日でふたたびメイン州に舞戻ってきました。マンハッタン、蒸して暑くて、耐えられん。体はすっかり治りました。お気遣いありがとう。



>現物くんさん

コメントありがとうございます。おかげさまで体のほうはよくなったんですが、親が8月いっぱいアメリカのほうに滞在しているので、なかなか落ち着いてモノを書く時間がとれません。でも、数年に一度の親孝行なので、ブログはちょっと閑散となっちゃってます、おゆるしを(笑)。 FDICの危機、なるほど、いいトピックですね。こころにとめておきます!

Anonymous said...
This comment has been removed by a blog administrator.