Saturday, February 11, 2012

預貸率の国際比較 from 日銀資料

さっき、日銀の白川総裁による講演の邦訳を読んでいた。

アジアにおける金融:バンキング・ビジネスと資本市場
(国際コンファレンス・前夜ディナーレセプション(日本証券業協会主催)における基調講演の邦訳, 2/9/2012)

(以下引用)

もともとアジアの金融機関は、「国内預金をベースに貸出を行う」という伝統的な――あるいはベーシックな――ビジネス・モデルに立脚してきました。実際、アジア各国の貸出/預金比率をみると、100%を下回る国が大半を占めています(図表1)。国内預金を主たる資金調達源とするビジネス・モデルは、ホールセール市場への調達依存度が高い場合に比べて、資金流動性リスクが低いと考えられますが、今回の金融危機においては、この点もアジアの金融機関にとってプラスに働いた可能性があります。


確かに、日銀総裁が言うとおり、アジアの銀行の預貸率は100%以下(=預金が貸出金を超えている)に固まっていて、この比率であれば、イザ!という時、バランスシートに急激に強い流動性ストレスがかかることは避けられるでしょうね。

しかし、このグラフで筆者がむしろ目を惹かれたのは、逆に、PIGS諸国がどこも預貸率で130%を超えている方で、市場資金への依存度が高い分、流動性リスクにモロにさらされているという点だな。

ソブリン危機が銀行B/Sの流動性に思いっきり悪影響を及ぼしているというのは、誰もが多かれ少なかれ“感触”としては抱いていただろうけれど、こうしてグラフにしてもらうと、その感触にハッキリと輪郭がついてくるような感じ。こんな格好のバランスシートしてて、ある日突然価値が半分になるかもしれないような某国の国債なんて、誰がホイホイ喜んで買えますか?

昨年11月末から世界中の中央銀行からリクイディティのプレゼントがドカンドカン落とされて、12月のサンタクロース・ラリーをもたらし、市場流動性への懸念は以来かなり落ち着いてきているようであるし、昨年夏・秋に「死に体」状態にあった欧州銀行シニア債の発行が可能になってきているということも、拙ブログの1月12日のエントリーで紹介した。

だが同時に、預貸率がこういう状態の銀行システムなのに、そこでシニア債が正常に発行できない状態が夏からしばらく続いたというのは、欧州銀行の当事者らにとってはどんだけシンドかったか、(いまさらながら)想像できるな。また、本当の意味で銀行債市場が正常化してくれないと、このストレスは容易にはなくならない、ということも。そして、ここから示唆されることとして、貸出側の強い締め付けは続きそうですよね、ということも。現状はECBのファシリティにおんぶに抱っこでいれるから、まだ首の皮は繋がってますけど。

先週は、ギリシャ救済資金の大前提となってる歳出カットでギリシャ政府はその案を最終承認したというニュース。

Papademos Gets Cabinet Approval for Second Greek Bailout
(Bloomberg, 2/11/2012)

しかし、市場では、もう2年も市場で取りざたされてきたソブリン危機がこれで収束に向かうと楽観的に考えている人は少数派のようにも見える。

Greek Bailout Gains Could Fade Fast
(Wall Street Journal, 2/10/2012)

Why the Greek Bailout Doesn’t Change Much of Anything
(Time, 2/10/2012)

まぁ、いろいろあるけど、その国の銀行システムが流動性不安抱えたままで、実態経済のほうはギクシャクしないで安定してゆく、というのはちょっとあり得ない組み合わせなように、わたしは個人的に思っているんで。

3 comments:

Kamome said...

リンクが切れてしまっていますね。

アジアにおける金融:バンキング・ビジネスと資本市場
http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2012/ko120210a.htm/

TrinityNYC said...

>Kamomeさん、ありがとうござます。教えていただいたリンクに修正しなおしました。

ビジネスマナーの資料 said...

とても魅力的な記事でした!!
また遊びに来ます!!
ありがとうございます。。