Friday, May 28, 2010

米銀の破たん件数について

リーマンショック後は、ほぼ毎週、金曜日になると、FDICからどこそこの銀行が破綻した、という内容のリリースが出されてくる。

今日(28日)の金曜日も、ご多聞にもれず、フロリダ州の3行、カリフォルニア州とネバダ州それぞれ1行、合計5銀行が潰れたというリリースがFDICから出されていた。

例えば、フロリダ州の3行破綻を知らせるFDICのリリースによると、これら3つのBank of Florida破綻銀行の総資産はそれぞれ、US$595Mil、US$641Mil、US$245Milで、銀行としては比較的小さい銀行だ。だが、この3つの銀行破たんにより、FDICが被る処理コスト(=すなわち、国民負担)は3行合計で推計US203Mil、総資産対比で14%が、「もう戻ってこないお金」として、あの世に逝った。

銀行が破綻すると、破たん処理コストが莫大にかかる。今回の14%などというのは可愛いもんで、債務超過額が膨らんで総資産対比3割4割といった膨大な最終コストが発生することも、銀行破たんの世界ではザラである。

銀行というのは、なにせ、総資産額が大きい業種でありますから、破綻されたりすると国民負担が膨大になる。(「破綻させてしまえばいい」などと軽~く言ってるひとは、破綻後の処理コストが自分のフトコロを直撃することをよく考えてから、言いましょう。)

下は2008年、2009年、2010年それぞれの銀行破たん件数をグラフにしたものだ。2週間前のグラフだが、今年に入って破綻ペースがさらに速まっていることがわかる。(2010年だけなら、今日付けで78行)

Source: TheChartStore.com (hat tip Big Picture)

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28日のウォール・ストリート・ジャーナルに、米国北西部(シアトルのあるワシントン州やオレゴン州のあたり)の銀行の建設関連融資の不良化が進み、銀行破たんが地元の経済回復を妨げかねないという記事が載った。


地元新聞によると、ワシントン州では今年さらに9件の銀行破たんが起こる可能性があると懸念されているらしい。ワシントン州は全米でも破綻件数が多い州として上位にあがっており、もし実際に更なる破綻が続けば、金融危機勃発以来、この州では4分の1近くのコミュニティバンクが消滅したことになってしまうという。


ワシントン州やオレゴン州のような比較的こじんまりした州の小規模銀行らが、なぜそこまでの建設ブームに沸き、結果として深刻な不良資産を抱えることになったかというと、すぐ南に位置するカリフォルニア州の急激な住宅バブルが隣州の北西部へとスピルオーバーしたからだ。

上述のWSJの記事中に、米国で2008年からの銀行破たんが広がっていった様を非常にビジュアルに示す動画が掲載されている。動画の下には、総資産額とともに、これまで破綻した米銀一覧表もあり。



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北西部の銀行破綻について、少々触れておく。




上の円の面積は破綻銀行の資産額を示すが、米国の北西部が極端に大きな円で覆われている。

これは、2008年9月にJPモルガンチェースに吸収合併されたワシントン・ミューチュアル(Washington Mutual、通称WaMu)の本社がシアトルにあったせいだ。

WaMuは破綻時の総資産3000億ドル以上、米国最大のS&Lで、破綻規模としては米国史上最大だった。WaMuのフランチャイズは全国規模だったので、シアトル近辺でのみ生じた破綻ではない。

とはいえ、地元最大銀行の破綻は、当然、地域経済に悪影響を及ぼし、その後も地域の小規模銀行の破綻が続いている。


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米国では、今日5月28日だけで5行が破綻し、2008年危機年以降の破綻数累計は、240件を超えた。

240数行の多くが資産規模が比較的小さな地域金融機関。小規模銀行が多い理由は、(1)システミックリスク懸念がない、(2)受け皿を見つけやすく迅速に破たん処理を進められる、等の理由から、小規模地域金融機関に対しては、一般に救済措置は講じられないからだ。

FDICのシーラ・ベア会長も、商業不動産へのエクスポージャは、中小金融機関に集中している点を指摘している。

現在のところ、FDICの「問題ある銀行」リストには700以上の金融機関がリストされ、このリストに載った銀行の23%が過去に実際に破綻したという。


以下は記事から抜粋。

Time: Commercial real estate lenders have about $1.4 trillion in loans coming due in the next few years. Midsize and regional banks have big exposure. Worried?

Bair: It is true that the smaller banks have more commercial real estate as a percentage of their assets and they will tend to be more impacted by the troubles in that sector. But we've known about it for some time, and the overwhelming majority of banks, even those that have commercial real estate concentration, have built up good-sized loan loss reserves to absorb the losses. So I think most banks will weather this just fine.


タイム:商業不動産貸付けのうち、向こう数年間で約1.4兆ドルの借り換えが起こります。このセクターには中小金融機関が大きなエクスポージャを抱えています。心配しておられますか?

ベア:総資産対比で見ると、小規模金融機関のほうが、より高い割合で商業不動産に貸し付けており、そのセクターで問題が生じれば彼らがインパクトを受けることになろうというのは事実です。しかし、それについては前々からわかっていることですし、商業不動産融資の集中度が高い銀行を含めても圧倒的多数の銀行がすでに損失を吸収するに必要な貸倒引当金を積み上げています。わたしはほとんどの銀行は、(次の2~3年を)耐えていけると考えています。

米国には8000を超えるFDIC参加金融機関が存在する。現在その10%近くが「問題あり」とFDICに認識されている、つまり、ベア氏が言う「圧倒的多数」というのは、残りの90%のことだ。

ただし、問題銀行リストに載る銀行数が、「FDICが発表するたび増えていく」という事実も、ついでに書き添えておきたい。

初頭のグラフで見たように、今年は最初の5ヶ月ですでに昨年数の半分以上の銀行が破綻した。今年も破綻数はかなりの数にのぼることが予想される。

  • FDICが把握している「非公式問題銀行リスト725行(5月14日付)」はこちら。(Source: FDIC via Calculated Risk)

1 comment:

ぐりぐりももんが said...

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と言うわけで拙い英語ですみませんでした。
たたき上げなもんで、書けてるのか書けてないのか、よく分からずに仕事をしております。