Saturday, November 29, 2008

年末商戦【初日】の売り上げはまずまず、でも食料インフレは09年も続行の雰囲気

ある調査の推計では、昨日(金曜日)のブラック・フライデーの売り上げは、前年比3%増加の$10.6 Billion (106億ドル、約1兆円)だったみたいである。

昨日の日記に書いたように、買い物客たち、店員をぶったおして踏みつけにして死亡させるぐらいの勢いで突進してったんだろうから、これで前年比10%減なんて数字が出たら、死亡した店員が浮かばれないよ。
3%増・・・まずまずの出だしだけど、ポイントは年末商戦初日がどうか、じゃなくて、この勢いがいつまで続くか、ですからね。
今年のホリデーギフトに充てる予算は、アメリカ人ひとりあたり $616 で、昨年より29%少なくなりそう、というギャロップの調査もあるから、初日飛ばしても息切れしてくる可能性あり。
しばらくは様子見ですな。


それよりも、食糧インフレは09年も継続しそうという、米農務省のアナウンスメントのほうが気になるなぁ。

原油高とともに穀物の取引価格も異常な上昇をみせたせいで、07年、08年とアメリカの食糧小売価格は年率4~5%も上昇した。
農務省によると、09年も4%上昇を覚悟しましょう、とのこと。(それでも、前回予想の4.5%より0.5%下方修正されたそうですが。)


原油価格はどんどん下がってガソリンの価格も2ドル切ってる。
グラフをみれば、トウモロコシも小麦も、同様に暴落の図だけれど、卸価格の高騰の影響が小売価格まで出てくるまでに1年ぐらいのタイムラグがあったように、穀物の取引価格低下の恩恵も、一般家庭のテーブルに届くまでは、しばらくかかるみたい・・・。
(下のグラフは、上が小麦、下がトウモロコシ、12月もの@シカゴ、過去一年の推移。)






Friday, November 28, 2008

狂気のブラック・フライデー

サンクスギビングの祝日は、毎年11月最終木曜日、と決まっている。

翌日の金曜日は、『BLACK FRIDAY』(黒字のフライデー)と呼ばれ、全米の小売店が一斉に年末大セールをスタートさせる日。

そのブラック・フライデーの今日、ニューヨーク市郊外で、ある悲劇が起こった。

ロングアイランドのValley Streamという街のモールにあるウォルマートはブラックフライデーには朝5時から開店ということで、早朝から買い物客が店の前に群れをなしはじめた。

正面入り口には2000人近くのショッパーが開店を待っており、ギャーギャー押し合いへし合いしていたが、開店5分前の4時55分、正面入り口のドアが壊れ、買い物客が我先にとワーーーッと店内になだれ込んだ。

そのとき、店の内部で入り口前に立っていたウォルマートの従業員が、雪崩のように飛び込んできた客の塊りになぎ倒され、下敷きになった彼は、病院にかつぎこまれたものの、一時間後に死亡した。
http://www.nytimes.com/2008/11/29/business/29walmart.html?bl&ex=1228107600&en=95e0984e8f92cc7c&ei=5087%0A


このニュースを読んで、「狂ってる・・・」と思った。

大恐慌以来の不景気といわれてるさなかに。

明日の給料がどうなるかもわからんというときに。

クレジットカードの支払い延滞が全米で急増しているというのに!

この国には、まだ、朝5時前から店の前に並んで、店の入り口のドアをなぎ倒して店の従業員を踏んづけてでもショッピングしたいひとが大勢いる、ってんだから。

ラジオニュース聞いてたら、全米のどのモールも、朝から買い物客で溢れてる、というではないか。

これを『全米狂気の買い物依存症』と呼ばずして、なんと呼ぶ。

しかしね、朝5時から目をランランとさせて買い物しまくらなくちゃいけない理由は、あたしなんかには全然わかりませんな。

ブラックフライデーには朝からモールに行って買い物せにゃあかんというのは、「例年の儀式」というより、むしろ、ある種の「強迫観念」なんじゃないでしょうか。

政府支給のフードクーポンで買った冷凍ピザで夕食済ませて、赤ん坊の哺乳瓶にコカコーラ入れて飲ませて、子供には朝昼晩ドーナツ食べさせてるようなだらしのない女が、ブラックフライデーには朝からデカイ尻をゆすってウォルマートのフロアをドタドタとカート押して走り回る・・・。

ああ・・・なんとおそろしい図・・・。

どうせ買うなら少しでも安いものを、ってのはわかるけどさ、そんなに買い物するお金があるなら、少しでも貯金したらどうなんだと、わたしは言いたい。

アメリカの貯蓄率、2005年と2006年にマイナスになったんである。
http://www.msnbc.msn.com/id/11098797/

年を通じて貯蓄率がマイナスになったのは、大恐慌直後の1932年と1933年、そして、2005年と2006年の4回しかない、ってんである。

マイナスですよ、マイナス。

お給料の1%でも2%でもいい、給料日のたびに、ちょっとづつでも貯めるという心がけが、この国のひとたちには、まったくといっていいほどないんだから。

ピルグリムとインディアンが仲良く『感謝の宴』を開きました、なんつーおとぎ話を教えてるヒマがあるのなら、「貯蓄の大切さ」を小学校から子供たちに教えろ!とわたしは言いたい。

今年は景気がこの有様だから、このクリスマス商戦が前年比でどれほど落ち込むか、市場では誰もが固唾を呑んで見守っている。

「落ち込むだろう」ってのは、コンセンサスとしてすでに株価に織り込まれている。問題は「どれぐらいのレベルまで」落ち込むか、ってことよね。

予想よりも落ち込み方が激しかったら株価はさらに下がり、予想よりよかったら株価は上がる。ボラティリティは激しいだろうな。

でも、そんな株価の上がり下がりも、しょせんはその場その場の短期的な動きでしかない。

長期的には、先行き暗いことに変わりはない。

こういうときこそ、地道に小銭の貯金である。CASH IS KING!

Wednesday, November 26, 2008

GSとMS、FDIC保証付債券を無事発行―めでたい話の脇でLIBORは上昇

モルガンスタンレー(MS)が、$5.25Billion規模のシニア債券を「難なく」発行できたというニュースを読んだ。

米政府の金融市場安定化政策の一環として出されてきたプログラムに参加して、FDICから保証をつけてもらって市場で債券調達したんである。

発行条件は、Forbesの記事にあるとおり。
http://www.forbes.com/afxnewslimited/feeds/afx/2008/11/26/afx5748632.html

$5.25Billion(約5000億円)は期間とクーポンがそれぞれ異なる3つのトランシェに分かれていて、最長トランシェは3年ものシニア債、クーポンは3.25%、とある。

昨日は、ゴールドマンサックス(GS)が、MSとほぼ同様の条件(3年、3.25%、$5Billion)で、やはりFDIC保証債を発行をしたとも聞いた。

保証債だからトリプルA格。3年で3.25%だから、プレミアムが200bpsついたってことだけど、200bps程度のスプレッドでそれぞれ$5Billion も発行できたことは、昨今の最悪の債券市場の状況からすれば、【実にめでたいニュース】である。

いくらFDICの保証がついてると言ったって、3.25%ってのは、発行体からすれば、良条件のような気がするな。GSやMSの場合、CDSが800bpsだの900bpsだのとプライシングされているわけなんだから。

このプログラムでは、FDICから保証をつけてもらうために100bpsの手数料を政府に払わなくてはいけないそうなので、最終コストとしては4.25%。それでも、いまどきの調達コストとしては、悪くはないよね。

発行体にとっての好条件ということはつまり、投資家からしてみたら条件悪い、って意味だけど、金融危機の“主役級”の金融機関が発行する債券を、向こう3年、200bpsで引き受けてあげましょうという、性根のやさしい買い手は、どこのどいつだ?(笑)

GSやMSのバランスシートの規模からいえば、$5Billion 程度の調達できたといって手放しで喜んでても始まらないけど、「正常な調達」ができたのは半年ぶり以上だというのだから、その意味で【めでたい】と言ってよかろう。

しかし・・・

GSやMSだから発行できた、という点は忘れちゃいけないな。これ、Citiなら、どうよ、と、あたしでも思っちゃうもん。

この【めでたいニュース】のすぐ脇で「LIBORは上昇してる」という【めでたくない】見出しが目にはいった。
http://www.bloomberg.com/apps/news?pid=20601087&sid=au4kwH69UVjY&refer=home

Libor-OISスプレッドは拡大してる、という。うーん・・・スワップのほうがそんなに高くついてるか・・・

コンフィデンスが「回復期」に入ったと呼ぶには、まだまだ時期尚早ですね。

いまどきの資金市場のコンフィデンスの欠如の激しさときたら、底なしに深いな・・・。

ホワイトカラー vs. ブルーカラー

今朝、某トークラジオを聴いていたら、某コメンテーターが、こんなことを述べていた。

「金融機関向け7000億ドルの政府支援は即決したのに、自動車のビッグ3の救済案は額がずっと少ないにも関わらず、来月まで議論おあずけ。ウォール街にばかり優先して米政府が巨額の金融支援を続けるのは、ホワイトカラーとブルーカラーを差別しているのではないか。」

ハリウッド映画に出てくるゴードン・ゲッコーみたいなVillainのイメージでウォール街を捉えてる世間一般のひとたちには、どうして金融機関を優先的に救済しなくちゃいけないか、そこは、なかなか理解しづらいところではあるな。

でも、ビッグ3があんなことになっちゃったのも、なんだかんだ言ったところで、ゴールデンパラシュートのことしか脳裏にないコンコンチキの経営陣、すなわち、ビッグ3のホワイトカラー連中がまともな経営戦略を練れなかったという事実と、そういうホワイトカラーと対立することしか能がなく、労使共同でグローバル競争に立ち向かおうという態度を片鱗もみせなかったブルーカラー労組のせいである。

ビッグ3を救済したって「市場経済がドツボにはまっている」という現実には、何一つ変化は訪れやしない。「アメ車産業はアメリカのプライド」なんつー精神論なんぞ、腹の足しにもならんしな。ビッグ3を救済することで当事者以外に唯一恩恵を受ける者がいるとしたら、GMやFordの債券投資家ぐらいでしょ。

でも、金融機関を支援するのは、グリーディなCEOのボーナスを払えるようにしてあげるのが目的じゃなくて、(1)金融機関の資本金に厚みをつけ現在以上の信用収縮を阻止すること、そして、(2)資金の流動性を促してやることで資金繰り倒産の負の連鎖を防ぐこと、という、金融システムとグローバル経済全体を網羅する超どデカイ話をしてるんだもん、優先されるのはあたりまえ。

ホワイトカラーとブルーカラーがどうしただの、いかにも経済音痴のジャーナリストの考え付きそうなポイントだが、市場経済の観点からすれば、ズレていることはなはだしい。

文句があるなら、ウォール街のホワイトカラーじゃなくて、政府からカネ恵んでもらうのにプライベートジェットに乗ってお願いにくる、ビッグ3のホワイトカラーに言え。