Wednesday, July 15, 2009

ゴールドマン強し!(商業銀行ステータス、さっさと返上しろよな)

今週は決算発表花盛り。

昨日(14日)の朝はゴールドマンサックスの2Q決算結果が発表され、市場予想を大きく上回る結果であった。

株価の方は実際の発表を待つまでもなく、先週からアナリストによるGSの買い推奨がどんどん出ていて、株価はすでに上がってた。先週は、Guy Moszkowski(メリルの銀行アナリストで、アナリストランキングでは常に上位)がGSのトレーディング収益が絶好調になるといって強気「買い」推奨でいったん上がり、また、今週に入ってからは、別の有名銀行株アナリストのMeredith Whitney(シティの崩落を予言して一気に無名から有名になり、今年オッペンハイマーを辞めて独立し調査会社を立ち上げた)がGS決算発表の前日にCNBC局に出演して、やはりGSに対して超強気コメント。

「ベア派」で知られるメレディスが強気だ、ってんで、GS株、さらに勢いに乗りました。

しかしね、このメレディスですけれどさ、この【変身振り】は、いったいなに?

彼女はシティが潰れるかもと予言して的中し有名になったんだが、株アナリストのくせに、あの銀行がつぶれそうだとか、この銀行は収益半減するとか、そういうネガティブな話ばっかする「超弱気アナリスト」だった。

4月7日付MHJ記事『決算間際、どうしてもウジウジしちゃう』では、「株アナリストのくせにいつもウジウジ弱気」の代表格として、マイケル・メイヨというアナリストのことを紹介したが、メレディスが登場するとマイケル・メイヨが強気に見える、それぐらいメレディスってのは、「金融株はダメ!」というオピニオン一本槍で名を成したアナリストなんである。

独立して会社立ち上げたばかりのころも、クレジットカード貸出の与信費用(クレジットコスト)が膨大になるという論説をウォールストリートジャーナルに発表したりして、「ダメ、ダメ、ダメ」ばっか言ってたんである。

だから彼女の豹変ぶりに皮肉な目を向けてるものは市場には少なからずいて、彼女の今年5月のビデオクリップ(↓)をわざわざ探して掲載するブログもあったりで、冷笑してる向きは少なくない。















ついでだから便乗させてもらうが、5月には、彼女ったら

"The underlying core earnings power of these banks is negligible."
(金融セクターに、コア収益を生む力なんて、ほとんどない。)


と発言してたよ。このクリップから、まだ2ヶ月ですぜ。

ゴールドマン株がまだ100ドル行くかって頃も、「GSが100ドル超えるなんて、ありえない!わたしならGS株は絶対に触らない!!」とギャーギャー叫んでたくせに。失業や住宅価格や延滞債権などのファンダメンタルズは悪化してるのに「100ドルでも高い株」が急に「150ドルでも安い株」になるとは、あなたの適正株価分析モデル、ちょっとあたいにみせてごらん、と言いたくもなるではないか。

とはいえ、そもそも上値を狙う株の世界で、証券買わせるのが商売のセルサイドにいるものが、下向きの話ばっかしてたってラチあかんからな。そこがセルサイドの株アナリストのつらいところ。

証券会社に雇われの身の時は給料は確実にもらえるけど会社が売ろうとしてるものを悪く書くなという(暗黙の)圧力にさいなまれ、独立したらしたで好き勝手なこと言えるけどオピニオンそのものが売れなきゃ生活できないし。

メレディスも、独立当初はちょうど金融不安真っ最中だったのを幸いに、「トレードマーク」のネガティブな話ばっかで売ろうとしたけど、その後、メレディスの推奨とは裏腹に、肝心の金融株はどんどん上がっちゃって(←理由は不明だが、笑)、新会社のフトコロも寒くなってきたのであろうか・・・可愛そうにな・・・。

   ★   ★   ★

ということで、元アナリストの自分が言うのもなんだが、マーケットでえらそうにオピニオン述べてる「有名」アナリストの意見なんつーものは、絶対に額面どおり信じてはいけない。半分以上ディスカウントかけて聞いておいたほうがよろしい。

とりわけ、セルサイドの銀行株アナリストは、こういっちゃなんだが、クレジットや債券の世界のことはほとんど知識はない。あちこちで金融機関のクレジット投資について知った風なこと言ってるけれど、彼らのほとんどは自分が何言ってるのか実はわかっていない。

証券会社というのは、同じ会社の中にいながらにして、債券部門(為替・コモディティ含む)と株式部門とでは水と油ほども異なる間柄で、トレーディングフロアも異なれば、部署同士の交流だって年末クリスマスパーティ以外はほとんどない。

だから、株式アナリストになると、本人が債券側で実績積んだことがあるという場合は別として、株サイドのみで生え抜きでやってきたものになると、債券のトレーディングフロアなんて立ち寄ったこともないというのが多いし、CDSの取引の現場を実際にみたこともなければ、クレジットデリバティブスに関わってるのがどんな投資家で、彼らがどんな分析をしていて、どんな風にキャッシュボンドやCDSの値決めしてるのか、みたいなことも、おそらくほとんど知らない。

それは、アメリカに限らず、日本でも事情は同じである。

実際、CDOの問題が表面化してきた2007年、MHJ筆者は当時バイサイドにいて、そのファンドでは日本の某銀行の株を買うかどうか考えていた。で、筆者は、日本の某著名銀行株アナリストに電話して某邦銀のCDOへのエクスポージャの現状について質問したんだが、さすが「著名」なだけあって態度だけはやたらデカかったが、流れるように説明してくれるのはいいんだけど、彼がCDOのリスクヘッジについて完全無知であることは3分も話さないうちに明らかになった。だって、CDOとCDSと、アルファベットが似てるせいもあるけど、話しながらしょっちゅう取り違えたりするんだもんなー。著名な方に恥じかかすのも悪いと思って黙って聞いてたけど、バレバレでしたよ、XXXさん・・・。(爆)

ということで、しつこいようだが、アナリストの意見はあくまで「参考程度」に聞いておくにとどめましょう。投資は自己責任で。

   ★   ★   ★

で、メレディスのレポート読んでヒマ潰す気もなかったんで、実際にGSから発表されたQ2リリースを自分で読んでみた。

前回(Q1)のGSの決算のときは、筆者は(『ゴールドマン1Q09決算について雑感』という4月15日付け記事で、「債券トレーディング収益がQ1好成績の元」ということを書いたが、今回も、同トレーディング部門はブイブイで、引き続き絶好調。

主要3部門の部門別に業務収益(Net Revenue)をみると(同社のリリースから翻訳)

【インベストメントバンキング部門】:14億4千万ドル、特に株式引受手数料は2Q00に達成した最高記録を上回った。昨年度Q2より15%下ぶれたけど今年度Q1より75%増。メリルやリーマンなどの競争相手が消えて、生き残り組みの中でも、業界内に勝ち組・負け組のメリハリがついたから、明らかに勝ち組のGSが、インベストメントバンキングで好成績あげるのは別に不思議じゃないですね。GSのフランチャイズ、やっぱし強いもんな。

【債券/為替/コモディティ部門(FICC)】クレジット商品の取引がとりわけ好調で68億ドルの収益、四半期としては過去最高。絶好調だった今年度Q1からはほぼ横ばいだけれど、昨年度Q2(3月~5月の3ヶ月)と比較すると、186%増、つまり、およそ3倍の儲け。

【株式部門】:31.8億ドルの収益、こちらも四半期としては過去最高。株市場がドツボにはまってた今年度Q1と比較すると盛り上がりを見せたQ2は60%増。株市場が衰えをまだ見せてなかった昨年度Q2と比べても、28%増

   ★   ★   ★

【株式部門】の数字見てて気がついたこととして、トレーディング収入がジャンプしたこと。株式部門はコミッション(セールス通じて売買するときの手数料)、とトレーディング(自己勘定含む)のふたつのチャネルから収益があがるようになっている。

エクイティコミッション(単位ミリオン$)は、$1234M(2Q08)→$974M(1Q09)→$1021M(2Q09) と推移して、株式市場の盛衰どおりに動いているんだが、注目は、もう一方のエクイティトレーディングのほうである。

トレーディング収入のほうは、$1253M(2Q08)→$1027(1Q09)→$2157(2Q09)と推移して、今四半期は、株暴落前の前年度同期の倍近い数字なんであるよ。

NYSEで取引されるてるボリューム自体はどんどん下がってきているというのは6月30日付けMHJ記事『介入のかおりプンプンの2009年前半が終了』で紹介したとおり。

それでも、トレーディングで前四半期の倍も稼げるとは、これいかに。

答えは「プログラムトレーディング」にありそうであるな。MHJでは前にも、取引のフローがいびつなのはプログラムトレーディングが活発な証拠だと書いてきたが、一回一回の取引を100株とかの小口に分割してチマチマと電光石火のスピードでコンピューターにトレードさせるHFT(High Frequency Trading)というトレーディング手法が、ここのところ、やたら幅を利かせているんである。

このHFTだが、マーケットメーカーが市場にリクイディティを供給する目的でプログラムトレーディングは実際行われているわけだが、これに携わると大手証券会社は一株あたり「4分の1セント」というキックバックを証券取引所から「お礼」としてもらえるそう。実際にトレードをやってくれるのは高速のコンピューターで、人の手はかからんし、HFTでトレードすればするほど儲かるワホワホの仕組みである。

NY証券取引所が発表するプログラムトレーディングのボリュームランキングによると、GSはその分野では常時2位を大きく引き離しトップ独走。

でも、あんまりド派手に動いてたから注目集めちゃって、こちらの金融ブログではあちこちで「GSがHFTで相場を操作してる」という批判が相次いで出てきていた。ブロガーによるGS批判の高まりは、FTやブルームバーグなどのメジャーメディアもこれに飛びついて紹介するぐらいの盛況ぶり。

GSの広報部は「ブロガー連中め、ったく、ハエみたいにうるさいやつらだ・・・」とシランプリ決め込もうとしてたみたいだが、NYSEがデータ公表の際にGSをデータに含めるのを(意図的かどうか知らんが)忘れて、またまたブログ界でそれを指摘され「NYSEも一緒にグルになって、何かを隠している!」と叩かれまくり、挙句の果てには、つい先週、そのHFTプログラムに直接関わっていた元GSのプログラマーがプログラムのコード窃盗の容疑でFBIに逮捕され、一般メディアにまで注目されるようになり、さらには、逮捕の際のコメントで司法当局の担当者が

「このプログラムコードを使うと、市場操作が可能だから」

と(ウッカリ)口滑らせてしまったもんだから、またまたブログ界はその発言に鬼の首取ったように沸き立って「やっぱり、GSはプログラムトレーディングで株価操作してやがったんだな!!」と書かれまくる、というオマケつき。他にもロックミュージック雑誌だの、ニュースウィークだの、GS周辺をブンブン飛んで嗅ぎまわる虫の数は増える一方。

ま、そこらへんの話は下世話な意味で面白いから、別の機会にもっと詳しく書くとして、いずれにせよ、決算結果をみても、4月~6月まで相場全体のボリューム低下著しかった株市場でもGSはトレーディングでこれだけ稼いだ。やっぱ、これは、世のヒンシュク買うほど派手にプログラムトレーディングやったおかげ、といっても過言ではないのではないでしょうか。

   ★   ★   ★

しかし、MHJ筆者がやっぱり注目してしまうのは、FICC部門の好成績の背景が「とりわけクレジット商品が好調で」というくだりである。

確かに、4月~6月はクレジットスプレッドが全体的にタイトニング傾向にあったので、クレジット・エクスポージャが高いほど、そこからの儲けは大きくなる。FASBの会計基準変更で資産側に流動性の低いクレジット投資(いわゆるToxic Assets)を抱えてても結構好き勝手なバリュエーションできるようになったし、そういう会計上の恩恵も間違いなく、受けましたね。

GSの場合、あきらかにクレジットトレーディングに相当チカラを入れてたわけで、ここでいちばん重要なのは、一体、これだけのトレーディング益挙げるのに、どれだけのクレジットエクスポージャ取ってたんだよ、ってことである。

                (続く)



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Sunday, July 12, 2009

1930年7月12日

Conservative observers still cautious, although many now believe market has established resistance level likely to hold.

「市場参加者の多くがレジスタンス・レベルは確立されたと考えているが、保守的な見方をする者はなお警戒している。」

   ★   ★   ★


MHJ筆者が毎日楽しみにしているサイトのひとつに、『News From 1930』というブログサイトがある。

今年の6月からスタートした新ブログで、1930年の同日に書かれたウォールストリートジャーナルの主要記事を要約して毎日掲載してくれるサイトなのだ。

NYダウは1929年386ポイントまで上昇した後、同年10月に195ポイントまで下落。実に49%の大暴落であった。その歴史的な大暴落の【翌年】に、米市場ではどんな話が話題になっていたのかを知ることができて非常に面白い。

興味深いのは、当時流れていたニュースの行間に連日垣間見られる「マーケットの根強いオプティミズム」だ。

冒頭に紹介した文は、1930年7月12日分として、今日の同サイトに掲載されていた内容の一部だ。

約80年前の今頃「レジスタンス・レベルは確立されたと多くの市場参加者が考えていた」という。これで底を打ったと思ってるひとが少なくなかったわけですね。

だが実際はどうだったかというと、周知のとおり。7月12日には200台だった株価は、1932年に40ポイントをマークするまで底値を更新し続けた。(グラフをクリックすると拡大します。)



   ★   ★   ★


現在発行されてるWSJと『News From 1930』を毎日併せて読んでいると、人間というのは、つくづくオプティミスティックな生き物なのだというのを感じる。(無論、それが人類の強みでもあるのだから、オプティミズムを否定しているわけではない。)

そして、人々の思考パターンや、あるニュースへの反応の仕方というのも、80年前と今日(こんにち)とでは、さほど違いがない、ということも。

当時書かれていた内容が、今日現在市場で流れている分析や情報に酷似していることもある。

たとえば、1930年6月2日のWSJに掲載された、こんなコメンタリー。

National City Bank of New York anticipates an early recovery. Admits that so far recovery hasn't been marked, but “business has been on the down-grade for nearly a year and in the past 30 years depressions have rarely lasted for a longer period”. Says the danger now is excessive pessimism as opposed to a year ago when it was optimism. Admits serious problems including the worldwide business downturn and fall in commodity prices, but the country has repeatedly demonstrated ability to recover in the past. For the last 30 years, with the possible exception of 1914 (WWI), when business has begun a depression in one year it's always at least started the recovery before end of next year. True that if we look back further there have been some more prolonged depressions (panics of 1873, 1884, 1893). But U.S. business was much less diversified then, and “lacked the recuperative power demonstrated in more recent years”. Also, money markets were uncertain then, as opposed to current easy money conditions. With credit conditions this favorable and the past record of recoveries, predicts a recovery starting slowly in the summer and apparent by fall.

ナショナル・シティ・バンク・オブ・ニューヨークは早期の経済回復が期待できると述べた。現状、リカバリーはまだ起こってはいないものの、「企業の格下げはすでに1年も続いているし、過去30年間に起こった景気後退が回復するのに長期を要することはなかった」というのがその理由。一年前のオプティミズムと対照的に、現在は過剰なペシミズムを抱くことが、むしろ危険であると言う。グローバルに起こっているビジネス鈍化とコモディティ価格の下落は深刻な問題であるものの、過去、米国は繰り返し景気回復する能力があることを示してきた。過去30年の例でみると、1914年(第一次世界大戦のあった年)を除き、景気後退が始まった一年後からみて、その翌年の終わりまでには必ず景気回復が始まっている。さらに過去までさかのぼれば、景気後退の期間がもっと長期に渡ったケースも確かにあった。(1873年、1884年、1893年のパニック。)しかし、当時の米国のビジネスは現在ほど多岐に渡ってはおらず、「近年みられたような回復力に当時は欠けていた。」さらに、当時はマネーマーケットが不安定で、現在のように安易に資金が手にはいらなかった。現在はクレジット市場のコンディションが良好であり過去の回復の歴史を持ってすれば、景気はこの夏に徐々に回復、秋までにはそれが明らかになるであろう。


少し前に、MHJ筆者は上とまったく同じ内容の業者レポートを読んだばかりのような気がするのだが・・・(アナリストは当時からぜんぜん進化していないという証拠か?笑)

ちなみに、上のコメントを出した National City Bank of New York というのは、現在のシティバンクの前身である。

1930年の6月から7月にかけて株価はずるずると下がるのだが、こうしたオプティミズムに満ちたマーケットコメントは連日紙面に登場し、逆を言えば、マーケット参加者はそうやって日々不安と戦っていたのであろう様子が伺える。

★   ★   ★

1930年7月9日のWSJには、ワシントン・アーヴィング(Washington Irving)による『The Great Mississippi Bubble』という著書の書評が掲載された。著者のアーヴィングは、それよりさらに一世紀も前の1837年の市場クラッシュの頃に生きていたひとで、この本が題材にしてるのは、アーヴィングの時代からさらに一世紀以上前にさかのぼった1719年に実際にフランスで起こったバブル経済崩壊の過程だ。

18世紀の始めごろ、アメリカのミシシッピ川周辺はフランスの植民地だった。ミシシッピ川周辺の土地価格の上昇を見込んだバブルが本国フランスで発生、それに続くバブル破裂でフランス経済は大打撃を受けた。The Great Mississippi Bubble と呼ばれるこのフランスの経済バブルと崩壊の顛末は、19世紀のバブル崩壊を経験したアメリカ人たちの興味をそそり、その100年後、1929年の大暴落直後、ウォールストリートジャーナルがその本を再び取り上げた。

アーヴィングの本には、こんなくだりがあった。
The boom - "Every now and then the world is visited by one of those delusive seasons when the 'credit system,' as it is called, expands to full luxuriance; the broad way to certain and sudden wealth lies plain and open ... "

The bust - "a panic succeeds, and the whole superstructure built upon credit and reared by speculation crumbles to the ground, leaving scarce a wreck behind."

【ブームの訪れ】 「時折、この世は、欺瞞に満ちた季節の訪れを迎えることがある。それは、俗に言う“クレジット・システム”が最高潮まで拡張するときだ。そういうとき、確実に突然に富を手に入れる道が目の前に開けてくるかのように見えるのだ。」

【ブームの破裂】 「だが、その後はパニックが襲う。クレジットの上に作り上げられスペキュレーションに支えられた壮大な建物がガラガラと地上に崩れ落ち、後にはほとんど何も残らない。」


18世紀の出来事を記した19世紀の本が、20世紀の新聞に紹介され、その古い記事を21世紀に読んでるあなたは、いったい何を感じるだろうか。

   ★   ★   ★

1930年の6月というと、グラス・スティーガル法のプロポーザルが、グラス上院議員により、議会に提出されたときでもある(6月18日)。それまでは財務長官は連銀のボードメンバーに名を連ねていたが、このプロポーザルでは、財務省は連銀から完全に離されるべきとされ、「連銀の独立性」を主張する内容となった。

連銀の独立性などは、とうの昔になくなっているではないか、と6月20日付けMHJ記事『金融規制改革案の目玉は改革よりもポリティクス』に書いた筆者だが、バーナンキ議長の行く末について政界でノイズが高まっており、金融機関を取り巻く規制環境も、当時のように、この先、かなり厳しくなりそうだ。また、共和党ロン・ポール議員を筆頭に「バンカメとメリルの合併に連銀がどう関与したのかを明らかにするために連銀の監査を行え」という追求の手も忍び寄ってきており、この夏は「連銀の独立性」というテーマがふたたび注目をあびそうだ。


   ★   ★   ★

昔の記事を読みながら筆者が強い興味を引かれた話は、1930年前後の「マンハッタン高層ビル建設ラッシュ」である。

1930年6月15日の記事によると、「スカイスクレーパー・インデックス(The Skyscraper Index)」なるインデックスまであったようで、当時、ニューヨークシティの中心地とウォール街周辺は、現在のマンハッタンの摩天楼でも代表的とよばれる重要な高層オフィスビルの建設ブームの最中であった。

そのひとつ、1930年5月に完成したのが、クライスラー・ビルディング(写真)。

当時の米国の自動車産業は世界的景気後退で国内販売低迷に加えて輸出も伸び悩み、相当の痛手を受けていた。

1930年7月12日のWSJには、自動車産業に対する悲観論が当時の市場にはびこっていたことを匂わせる記事がある。

Auto industry pessimists should realize that with 27M cars on the road, “replacements alone guarantee a fair rate of activity for the industry.”

「自動車産業に悲観的見方を抱くものは、路上には2700万台の車が走っていて、これらの車の買い替え需要だけでも、自動車産業の活動をそこそこに維持できると保証されているのだということを認識すべきである。」



たしかに、恐慌で一時的に需要が急激に落ち込んだ米自動車産業ではあったが、世界王者としての米国の圧倒的な地位は揺るごうはずもなく、クライスラー・ビルは、その象徴でもあった。

ジェラルミンのボディにアールデコのデザインがほどこされ陽を浴びて銀色に輝く同ビルは、いまだにニューヨークの摩天楼の中でも異彩を放つ美しいビルだ。マンハッタンからクライスラービルを取ったら、風景の印象が変わってしまう、それほど印象の強いビル。クライスラービルの誕生が、株価低迷で沈んでいた当時のニューヨークに、どれだけ希望を与えただろうというのは、想像するに難くない。

その11ヵ月後にはエンパイア・ステート・ビルも完成。

当時の記事を読むと、そのほかにも、 40 Wall Street(現在は内部改装されてトランプ・ビル) や AIG本社ビルがやはりこの頃に完成している。

これらのビルは、今日でも、その風格といいセンスといい、ニューヨークを代表するビルばかりだ。エンパイアステートビルがこの頃立てられたというのは知っていたが、それ以外でも、ウォール街近辺の代表的な高層オフィスビル群が大暴落の直後に次々とできあがったのだと、いまさら知って、驚いた。

当時のNY不動産開発は「失業対策」という側面もあり事業が継続されたのであろうが、これだけの建築物を大不況のさなかに休むことなく建て続けることができたという、当時のアメリカが持っていた若さとエネルギーに圧倒される。

とりわけ、つい先日、ワールド・トレード・センターの跡地建設が州財政の悪化で頓挫しそうだという話題をここに書いたばかりでもあり、当時のニューヨークダウンタウンのオフィスビル建設ラッシュと、現在の商業用不動産市場のていたらくを比較して、ちょっとばかり、へこんだ。

   ★   ★   ★

1930年6月のWSJの記事には、日本についての記事もいくつか出てくる。

1930年6月11日の記事。

Japan is suffering a severe economic slump. “Early in May leading shares of the Tokyo Stock exchange ... hit the lowest level since May 1908.” Five small banks were forced to close in April, which may have worsened the panic. Exports in the first 4 months of 1930 dropped 24% from 1929. The government is being asked to help the unemployed with a program of public works.

日本は非常に厳しい経済スランプに陥っている。東京証券取引所では5月初旬に1908年5月以来の安値をマーク。4月には小規模銀行が5行閉鎖に追い込まれ、パニックに油を注いだ。1930年の最初の4ヶ月の輸出高は前年同期比で24%減。日本政府はインフラ事業のプログラムで失業者吸収を迫られている。



そして、1930年7月11日の記事。

Japan discussing ways to build a domestic auto industry - may help lighten impact of London Naval Treaty on shipyards. Current Japanese auto market is almost insignificant; domestic production is about 400 cars/year.

日本では国内に自動車産業を作ろうという計画が持ち上がっている。
ロンドン海軍軍縮会議によって受けた痛手を和らげようというのが目的だ。現在、日本の自動車市場は極めて小さい。年間の国内自動車生産台数は400台。


クライスラービルが完成した年に、日本では自動車産業立ち上げの動きが始まろうとしていた。なんという逆転。

AIGのヘッドクォータービルは、つい最近、韓国のデベロッパーの手に渡った

クライスラーとAIG・・・。

当時と今とでは、米国のパワーも立場も、ずいぶん変わったものだと思い知らされる。

米株市場は3月から、4ヶ月間連続でラリーが続き、市場も一時的にオプティミズムがはびこったが、7月に入ってからはパワーが続かずショートラリーに終わった。

ここから先の市場が1931年や1932年ような状況に向かっているとは思わないけれども、今回の世界的な景気後退から這い出すためには、米国はもう若くない、ひとり牽引役としてはパワーが残っていないのだと強く感じる。



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Saturday, July 11, 2009

トータルリターン狙うならIOU?

前回のMurray Hill Journalでは、カリフォルニア州が7月2日に発行したIOUの「証券」としての位置づけがハッキリしていないことは問題で、(収集趣味の一環でeBayで買ってるコレクターは別として)一般の証券と同じように売買なんかできるか、と書いた。

投資に関わるものなら、誰だってそう思いますよね。法的な裏づけが明確じゃないというのは、それ自体が「リスク」だもん。

極端な話、MHJ筆者が紙ナプキンの裏に万年筆で「借用書」とサラサラ書いて支払い待ってもらうのと基本的には同じなんだから、そんなもんにフツーの値段つけて売買できますか。

この問題に対し、SECは9日付けでリリースを発行し、市場のこうした懸念にいちおう答えた。リリースによると、

(1) IOUは連邦証券法のもとで「証券」であるとSECは考える。
(2) 従って、IOUをの売買に関しては、詐欺行為などを禁止する証券法が適用される。
(3) 証券法が適用されるということはつまり、売買を仲介する者(あるいはシステム)も、ブローカーとしてSECに登録しなければいけない。
(4) ということはつまり、IOUの仲介者とセカンダリー市場を提供するものはSECの監督下に入る。

ということで、Craiglist や eBay がわざわざ自ら進んでSECの厳しい監視に入ってまでIOUを売りたいかというと、疑問である。でも、証券法の目の届かないところで売買しても、それは正規の売買とは認められない、という意味でもあるのだから、eBayで買っても後日換金できないかもな。個人で売買しようとしてる方は、あらためて、お気をつけくださいネ。

   ★   ★   ★

SECが正式に「IOUは地方債の一種である」とお墨つけてくれたんで、高リターンを狙うヘッジファンドが興味示すかもしれない、という記事が今朝のウォールストリートジャーナルにのっていた。(記事はこちら。)

もし大手銀行がIOUの引き受けを拒否し続けるのであれば、IOUのセカンダリー市場を立ち上げようと考えている会社があって、需要サイド(機関投資家)の興味もすでに結構出てきているという。

このカリフォルニアのIOUは、7月2日に発行されて、償還は3ヵ月後の10月2日。年率にして3.75%の利子がつくことになっている。それのどこがそんなに魅力的なのか、って?

表面利率だけみたら、一般銀行発行のCD(一年もの)のレートよりいいってぐらいで、「高利率」という感じはしないけれど、【トータルリターン】でみたら、ディスカウント次第では、これが結構魅力的になるんですよね。

【トータルリターン】(Total Return)というのは、表面上ついている利率に従って支払われる利子収入(株式の場合は配当収入)とキャピタルゲインで得られる利益の総額が、投資額(コスト)に対して生んだリターンのことである。

上のWSJに、こんなくだりがある。

・・・even if they bought the IOUs just a month before the payment date at 99 cents on the dollar, they would collect the full interest of 3.75% and earn 1% for the month. On an annualized basis, that is 15.75%.

・・・仮にIOUを償還日のひと月前に額面1ドルに対して99セントで買ったとすると、年率3.75%の利子に加え、その月だけで1%のキャピタルゲインも得る。年率換算すると、これは15.75%に相当する。


コストとして99支払ったものがひと月後に100になって償還されるというキャッシュフローは1%のキャピタルゲインを生む。ひと月で1%ということは、1%x12ヶ月=年率12%、それにクーポン3.75%で、合計15.75%、という意味だ。

今すぐキャッシュがないと困っちゃう売り手にしてみたら、額面100に対し99にディスカウントして売り払うのは、さほど悪くないかもしれない。一方、それに投資する側にしたら、年率15.75%の投資リターンなんだから、結構オイシイ話ですよね。

実際問題として、全米最大の州政府がデフォルト起こすというのはやや非現実的なシナリオなんだから。

前回のMHJでは95とか90とかにディスカウントしてくれないと買う気ないと書きましたけどね。

仮に、筆者がこれを、いますぐ95のディスカウントで買ったとすると、償還までほぼ3ヶ月あるから、5%÷3ヶ月=ひと月あたり1.67%のキャピタルゲイン。年率換算すると、1.67%x12ヶ月=20%。それにクーポン3.75%が加わって、年率23.75%である!

リスクフリーに近い発行体が出す「証券」のトータルリターンが23.75%!!!

やっぱり、欲しいな、IOU。(笑)

   ★   ★   ★

SECというオーソリティが「プライスの交渉可能な(negotiable)証券」である、と、お墨つけてくれたのは、(eBayとかじゃなくて)正規のセカンダリーマーケットが生まれる、というのと同じ意味。

このセカンダリーマーケットの市場規模がどれくらいになるかという話だけど、これ、供給増えてくれば、結構繁盛するのではなかろうか。

(ま、見方によっては、「売り手側がキャッシュがないと困るのに、議会がだらしないからIOUなんて発行しちゃって、もらったほうは、それにディスカウントかけてでも現金化するっきゃない」という、いわば、【州政の失敗に付け込んだ、あこぎな取引】ではありますけれども・・・。)

カリフォルニア州の議会はいまも相変わらずウダウダとポリティクスやっていて問題解決には近づいていないらしく、今月だけで30億ドル(3千億円)のIOU発行予定だが、このままウダウダが続けば、もっともっとIOUを発行するかもしれない。

さらに、最近読んだNYタイムズの記事によると、我がニューヨーク州もカリフォルニア州に負けないくらい州議会がグチャグチャになっていて、やれ民主だ、やれ共和だと分かれて、本質論から離れたところで政治議論を繰り返しているらしい。ということはですよ、下手すると、NY州からもIOUが発行される運びになるかもしれないし、そうなると、セカンダリー市場に流れ込んでくる供給も、もっと増えるかも。

IOUのセカンダリー市場、さて、どこまで繁盛するのか。


   ★   ★   ★

ところで、まったく話は変わるが、去年共和党のマケインの副大統領候補として出たサラ・ペイリンが、連休寸前に突然、アラスカ州知事の役職を辞任。

なぜ今辞めたのか、ということで、方々でスペキュレーションが続いている。

2012年の大統領選に出る準備を開始する気なんじゃないかとか(←冗談じゃない!)、トークショーホストになってTV番組に出演するんじゃないかとか(←目立ちたがりの彼女なら、やりかねない)、いろいろ言われてるが、実際のところは、彼女が知事を勤めている間にさまざまな「権力の乱用」が目立ち州財政に190万ドルの損害を負わせたというクレームに対する調査が入っており、それのディフェンス/リーガル費用がすでに50万ドルを超えていて、現職を退かない限り、リーガル費用がどんどん膨れ上がって個人破産するかもしれないから、という有力説が浮上している。

今回の突然の辞任にあたり、

I quit this job because I'm not a quitter!
(わたしは途中で物事を投げ出すような人間じゃない、だから、この仕事を辞めるわ!)

と言ったとか、言わないとか。(相変わらず、彼女の言ってることは意味不明だが。)

MHJ筆者は、去年の選挙中にサラ・ペイリンがTVに登場するたびに虫唾が走っていたひとりなので、彼女が破産しようとどうなろうと知ったことではないのだが、さっきこんな写真をみつけてしまったので、今日のMHJエントリーは内容も薄いことだし、薄いついでにお詫びもかねて、最後にくっつけておきたい。



アイダホ大学時代のサラが来ているTシャツの胸には、なにやら予言めいた内容が・・・。

I may be broke but,
I'm not flat busted.

(スッカラカンでも、へこたれない。)

恐るべし、サラ・・・とことん、がんばるつもりか・・・。

トークショーの番組持つのはかまわないけど、次期大統領選に出てくるのだけは、どうかかんべんしてね。



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Wednesday, July 8, 2009

カリフォルニア州、IOU発行

7月4日の独立記念日の連休でボケてたら、あっというまに8日になってしまった。

さて、6月27日付けのMHJ記事『金欠のカリフォルニア、IOUは回避できるか』のアップデートを少々しておきたい。

結局、あの記事を書いた後も州議会では何も進展せず、同州はIOUを発行する運びとなったのはすでにご承知ですね。

カリフォルニア州が発行したI.O.U.、見たことありますか?こんなのだそうです。




ウソです。

しかし、カリフォルニア州のI.O.U.、発行早々、問題が山積みである。

<問題1> EBAYやCraiglistなどのネットサイトでIOUの売買が始まっちまった。7月だけで30億ドル以上(3000億円以上)のIOUを発行する予定だというのだから、このまま放置してたらIOUのブラックマーケットができてしまう。偽造も横行する。そのため、関係当局は急遽、

州からIOUを直接受け取った本人以外の者(=すなわち、ネットでIOUを買った不特定多数のひと)が換金目的で金融機関にIOUを持ちこんでも、売った本人がその人に売ったと証言する内容の“公的文書”をIOUと一緒に提示しなければ換金できない

ということにして当座しのぎ。これを既存の証券取引所で売買できるようにするかどうかはSEC次第。

で、添付せよという、その“公的文書”なるものは、IOUを州から受け取った本人および公証人(Notary Public)の双方のサインがなければ文書としての法的拘束力はないそうですので、ネットでお買い上げの方は、後日現金化するつもりなら、お気をつけあそばせ。

<問題2> さらに、IOU発行を契機に、格付け会社のフィッチがカリフォルニア州発行の地方債(GO=General Obligation Bond)の格付けを格下げ。フィッチは、ついこの間(6月25日)、同GOをシングルAからA-に一段階格下げしたばかりで、7月6日にさらに2段階のBBBまで下げた。同州はおよそ6兆円近いGOを発行済みだそう。

他の格付け機関(Moody'sとS&P)もフィッチに追随することがほぼ確実。これでカリフォルニア州の信用格付けは全米で最低、「地方債なのに格付け機関各社トリプルBでそろいぶみ」などという、かなり嘆かわしいステータスになりそうな気配である。

ちなみに、日本の地方債でいうと、財政パンクしかけた大阪府ですら、たしか、AA格とかじゃないですか?国家の格付けがトリプルAだってのに、その国で最大の経済圏が発行する地方債がトリプルBって、そんな話、聞いたことないっつーの。

<問題3> IOUを現金化するには銀行に持っていくわけだが、バンカメ、シティ、JPモルガン、ウェルズファーゴなど大手金融機関はどこも、「IOUの持込による現金化は今週の金曜日まで」と宣言。(昨日のウォールストリートジャーナルの記事はこちら。)

銀行の言い分としては、IOUを引き受けても、今度は銀行自身がそれを現金化するためのプロセスが整備されていないし、偽造券が混じる可能性も高いから、そんなもの、たくさん引き受けるのはリスク高くて嫌だ、というんである。

銀行が現金化してくれないと、IOUを受け取った債権者は州が小切手を送ってきてくれる10月まで、その現物をジー・・・と持ち続けて待っていなくちゃいけない。カリフォルニアの小規模コミュニティバンクなどでは引き続きIOUを窓口で換金してくれるそうだが、金額が大きくなったら、自分が口座を持っている銀行で換金するのが最も安全で当たり前。

だから、大手銀行がどこも今週一杯で引き受けてくれないとなると、IOU受け取った債権者の中には、資金繰りで冷や汗かくひともいるかもしれない。

(そうやって、州民の州政府への怒りは、さらに膨れてゆく・・・)

   ★   ★   ★

しかし、それもこれも、I.O.U.などというシロモノの金融市場での位置づけがアヤフヤなために生じる問題、である。

いちおう、発行体はカリフォルニア州という全米最大の州政府、年利3.75%という金利付き、米国通貨と換金性があるわけだから、表向きは立派な「債券」である。

だが、証券としての位置づけはこころもとなく、いわゆる「SECの規制対象」になっている証券じゃないし、一般証券のように証券取引所で取引されてるわけでもなく、換金ルートがあらかじめ確保されているわけでもなく、偽造だってお手の物、となったら、誰がそんなもんをまともな証券として取り扱ったりトレードしたりしたいだろうか。

でも、年利3.75%と聞いたとき、MHJ筆者は、買えるものなら買いたい、と思った。

だって、このIOUには年利換算で3.75%の利子がつくんだよ。いまどき、3.75%の年利がつく一年ものCDなんて、アメリカにありますか?CD感覚で保有するなら、この利率、悪くないんじゃない?

bankrate.comでいまアメリカで買える銀行発行CDを見てみたら、年利は平均で1.856%。銀行発行のCDは小額ならFDICの預金保険がついているから基本的にリスクフリー。

3.75%と1.85%の差、1.9%(190bps=ベーシスポイント)は、【リスクプレミアム】、つまり、FDIC(米国政府)の信用力とカリフォルニア州政府の【信用力の差】である。

カリフォルニア州政府がデフォルト起こす確率のほうが、米国政府が米国債でデフォルトする確率より高いと考えるひとが多い、すなわち、カリフォルニア州の【クレジットリスク】は米国のそれよりも高いと思われてるわけである。

さらには、一般の地方債(GO)とちがって、IOUは換金したいときにスンナリ換金できるかわからんという【リクイディティ(流動性)リスク】も、偽造かもしれんという【オペレーションリスク】まで高レベルで一緒にくっついてくるわけだし、(これは筆者には定かではないが)IOUは弁済順位から言っても一般債券(GO)よりも順位が低いんではなかろうかと思われるため、全体のリスクプレミアムとして190ベーシスポイントが妥当かどうか、意見は分かれるところでありましょう。

で、債券市場参加者の意見として、(もしIOUを一般債券としてトレードできるとしたら)どうかというと、「んなもん、額面どおりに買えますか。トレードしたけりゃディープ・ディスカウントかけてね。」というのが大勢のようである。

つまり、額面100ドルだったとしたら、90ドルとか95ドルぐらいにしてトータルリターン上げてくれないと、表面利率(クーポン)の3.75%だけじゃ割りにあわない、証券としては買いたくない。

これからさらなる格下げが待ってる州なんですもん、クレジット投資としては、ディスカウント要求するのがあたりまえ。

怖いのは、IOUをどう取り扱うかというルールや法的整備が整う前に、カリフォルニア州のIOU発行が呼び水となって、全米にいろんな州発行のIOUや準紙幣が出回り始めることである。

そして、連邦政府も、大型景気刺激パッケージを再度用意する必要があるとあちこちで言われてて、そのうち、こんなのまで、ちまたに出回るのでは、と不安である・・・。



これを持参すれば(正規の)米国通貨に換金してくれる銀行窓口は日銀だけ、とか・・・。


   ★   ★   ★


だが、I.O.U.はともかくとして、一般地方債(GO Bond)のほうはどうだろう。

筆者は個人的には、カリフォルニア州政府がGO(一般地方債)でデフォルトを起こす確率は極めて低いと実は考えていて、前回同件について書いたときに紹介したカリフォルニア州地方債のCDSのグラフを見たとき「安い!買いだ!」(←「CDSを売る」というのと同義)と直感的に思った。もっと安くなりそうだ。いまだに現役でアナリストやってたら「カリフォルニア買う準備しろー!」とわめいてることであろう。(笑)

しかし、残念ながら、CDSの売買ってのは一本10万ドルからですので、筆者みたいな「蚤以下の個人投資家」の出る幕などどこにもない。債券ってのは、個人が積極的に参加できる株式とちがって、プロ限定の世界ですかんね・・・。

デフォルト、すなわち、債務不履行ってのは、「予定通りにお支払いいたします」という契約を破る行為であるが、ひとつには、(1)クーポンで払うといっていた利子を払わずに踏み倒す、ってのと、(2)支払いを延期してもらう、ってのと、ふたとおりある。(1)の場合は投資家に実損が生じるが、(2)の場合は定義上はデフォルトだけど経済的な損失は限定的なものになる。

筆者は地方債市場は本業としてやったことないんで、ややいいかげんな知識しかないが、カリフォルニア州の場合、GO債券のホルダーである債権者は、州法で決められている教育関係の支払いが済んだら、すぐその後に、同州から支払いを受ける「権利」を持っており、シュワちゃんの部下達の給料よりも優先的にGO債権者は利子をキャッシュで受け取れることになってるんである。

だから、州の金庫にキャッシュが足りなくなってきたら、シュワちゃんの部下達は給料をIOUで受け取る羽目になるかもしれないけれど、GO債券の保有者は優先的にキャッシュを受け取る。

利払いに必要なキャッシュもなくなっちゃったら・・・その場合は、もう仕方ない、債権者に頭下げて待ってもらうしかない。

だが、「GO保有者がカリフォルニア州政府から利子踏み倒されて経済的損失蒙る」という(1)のシナリオは、「州職員全員が雇用主の州政府から給料踏み倒される」というシナリオより先に実現する可能性は低い。

逆を言えば、州職員の給料払うためには、まず債権者への利子を優先して払うっきゃない。つまり、(1)で定義されるデフォルト可能性は極めて低い、という解釈である。

ただし、カリフォルニア州の問題は、遠くから眺めるかぎり、どうやら州議会の面々が、DCの中央議会の政治家に負けないへっぽこぶりで、そういう市場ルールをぜんぜん理解できずにポピュリズムを振り回す議員がそろってる様子なので、完全にポイントはずした議論を持ち出してきて政治問題化させる、そういうリスクがなきにしもあらずである。

いまどきの米国の地方債市場でいちばん大きいリスクは、この手の政治リスクかもしれない。


   ★   ★   ★


さて、同件について書いた6月27日のMHJ記事に登場した同州の財政担当コントローラーのJohn Chiang氏であるが、7月5日のニューヨークタイムズ日曜版マガジンに掲載された超長文記事『Who Can Possibly Govern California?』を読んでたら、

The state faces a $24 billion deficit, and Schwarzenegger recently joked that his finance director has been placed “on suicide watch.”

同州は240億ドル(2兆4千億円)の財政赤字に陥る可能性を控えており、シュワルツネガーは最近、彼の財政担当ディレクター(=Chiang氏)に
自殺しないように見張りをつけてる、と冗談を飛ばした。

という一文があった。

シュワちゃん、ジョーク言ってる場合か・・・。

Chiang氏よ、どうか気を確かに持ち続けてください・・・。


   ★   ★   ★


ところで、以前も述べたが、地方政府の財政難はカリフォルニアのみならず全米に広がっている。全米州政府の困窮振りを書いた英エコノミスト誌の記事の翻訳版がJBPressに掲載されているそう。(元ネタはPorco Rosso Financial Blogより。)

我がニューヨーク州も、ご多分にもれず、かなりヤバそうである。

それの一種“象徴的”な話を、ウォールストリートジャーナルで読んだ。

911テロで崩壊したワールドトレードセンターの跡地であるが、あそこに新たに追悼ビルも含めた5本の超高層ビルを建築中だが、その跡地新開発プロジェクトが、どうやら、クレジット市場の緊縮と州の財政難のダブルパンチで、頓挫しかかっているらしい。

WTC Talks Approach Stalemate (WSJ 07/08/09)

記事から引用。

A 2006 development agreement that divided responsibility for building on the site has unraveled as Mr. Silverstein has failed to secure financing for his buildings there, and the Port Authority has failed to meet its own scheduling and budget targets.
(中略)New York City Mayor Michael Bloomberg, who is running for re-election this year, said the project is "closer to stalemate" Monday, and urged the Port Authority to meet Mr. Silverstein's financing demands. Mr. Bloomberg serves as chairman of the effort to build the memorial at the site, but the fate of the overall project lies with New York and New Jersey's governors, who control the Port Authority.(中略)The Port Authority, primarily a transit agency, refuses to finance more than one of Mr. Silverstein's office towers, fearing that doing so would prevent it from fulfilling its core mission of operating bridges, tunnels, ports and airports.

(デベロッパーとポートオーソリティ=NY/NJ州交通局=との間で)2006年に結ばれた同意書ではWTC跡地の建設の責任所在は分割されることになっているが、シルバースタイン氏(デベロッパー)はビル建設に必要な資金を市中で確保するのに失敗し、ポートオーソリティ州側はスケジュールとバジェット調整に失敗した。(中略)次期再選をもくろむブルームバーグNY市長は月曜日、「プロジェクトはステールメイト(前にも後ろにも進まない)の状態に近づきつつある」と述べ、ポートオーソリティ側に、シルバースタイン氏が要求している資金確保に早急に手をつけるよう促した。ブルームバーグNY市長は追悼碑建設に関わるプロジェクトの会長だが、このプロジェクトそのものが成功するか否かは、ポートオーソリティを管轄下に納めるNY州とNJ州の知事たちの決断にかかっている。(中略)ポートオーソリティは主として交通機関を司るエージェンシーだが、シルバースタイン氏が経てようとしている5本のビルのうち一本しか資金支援はしたくない模様で、それ以上このプロジェクトに資金を都合すれば、橋やトンネル、港湾や空港、といった彼ら本来のコアミッションを遂行することができなくなることを懸念している。


WTCの跡地は、あの事件からすでに8年近くが経っているが、いまそこに足を運んでも、生々しい記憶が蘇る。

びっしり隙間なく高層ビルが立ち並ぶマンハッタン島の中に、あんなに巨大な空間が、いまだに「空地同然」で残っていることで、あの事件を忘れたくても忘れられないひとのほうがニューヨークには多い。

州の財政難が続き、あの場所も、当分は放置されてしまうのだろうか・・・。

それでなくても気の滅入る話が多いのに、WTC跡地のプロジェクトも頓挫しそうと聞いて、また暗くなった。




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Thursday, July 2, 2009

実在するのか?PPT(米国版PKO)

前回のMHJ記事で紹介した、CNBC局のビデオクリップで、先物トレーダーのLarry Livinが「連休前でマーケットがガラガラのときに、あえて雇用統計を発表するなんて、市場予測よりも悪い数字が出されてくるというサインじゃないのか」とジョークを飛ばしていたが、彼の“予言”通りであった。

6月の雇用状況は再びズブズブ、市場予測36万3千人に対し、それより10万人も多い46万7千人が新たに失業者グループに加わった、という。(実際にはいまだに失業してるが、失業保険をもらえる期間が過ぎてしまったがために失業統計から脱落した人数がこの数字には含まれていない、ということも覚えておいてください。)

今回の雇用統計で、さらに筆者の目を引いたのは、政府関係の雇用まで5万7千件も減った、というんである。6月22日付MHJ記事『求む!(ジェームズ)ボンド・アナリスト』で、民間の失業者は減ってるけど、政府関係はどうなんだろうと疑問を持っていた筆者であるが、政府関係機関ですら、就職は難しくなっている様子である。ま、ジェームス・ボンドばかり、何万人も増えても仕方ないからな。 

ダウはこのニュースを受けて、当然、219ポイントもゴーンと下落。

今日もいつものように朝からCNBCをつけっぱなしにしていたのだが、いつもなら、どんな悪いニュースが出てきても経済は回復に向かっているとプロパガンダを流し続けているCNBC局で、キャスターのひとりが、「悪いニュースにはネガティブに反応する、今日は、そういうノーマルな市場に戻っただけ」と言ったのを、筆者は聞き逃さなかった。

ノーマルな市場」・・・・?

じゃ、「いつもはアブノーマル」なんですかい?うっかり本音を出したな!あとで局の上司にしかられるぞ!(笑)

悪いニュース続きなのに株価はあがる【オカルト相場】に4月から6月まで3ヶ月間も付き合わされて、筆者もいよいよ狂ってきてるのだろうか、最近はこうやって、悪いニュースをあえて良いニュースに変えようと努力している輩(やから)の【揚げ足とり】に喜びを感じるくらいしか、やることがなくなってきた。

話はぜんぜん変わるが、これを書きながら、いまもCNBC局をつけっぱなしにして見てるのだが、さっき(7月2日米東部時間午後4時半ごろ)、ペプシコーラ社のCEOが出て「日本経済は景気回復の兆し(Green Shoots)が出てきている、日本市場は明るい!」とこぶし固めてわめいてましたぜ。ふーん・・・日本もいよいよGreen Shoots、力強い景気回復を迎えるときがきたんですねぇ・・・輸出依存の日本経済がねぇ・・・でもつい先日、グローバル・トレード・フローの統計みたら背筋が寒くなるぐらい急降下してましたけどねぇ・・・ペプシの本社ヘッドクオーターはデフレと円高の日本で高い輸入ワインはやめて安いソフトドリンクを今以上にバカスカ飲むようになるのを期待してる、ってことなんでござんしょうかねぇ・・・へぇぇ・・・。

で、日本在住のみなさんは、ペプシコ社のCEOによる「ジャパン・グリーン・シュート説」に賛同しますか?

   ★   ★   ★

さて、今日の本題に入ろう。

【PKO】というアルファベットを見て、あなたはすぐに何を考えるだろうか。

国連による平和維持活動(Peacekeeping Operations)を思い起こすあなたは、『素直ないいひと』です。

【PKO】=Price Keeping Operations と考えるひとは、『スパイ小説やフィクションだらけのノンフィクションの読みすぎか、007映画の見すぎで何を見ても【国家の陰謀】と結び付けてしまうのが癖になっちゃった、そういうどうしようもないひと』か、あるいは、『証券市場に長くいすぎたために性格が歪んでしまったひと』のどちらかです。

MHJ筆者は、もちろん、最後のケースである。(爆)

Price Keeping Operations、名づけて【PKO】とは、政府が介入することで日本株式市場が値崩れを起こさないようにするという意味で、日本の市場関係者の間では、しょっちゅう「今日はPKOが入ったんじゃないのか?」みたいな会話が仲間内で交わされ続けてきた。

いちおう資本主義で自由経済のもとに自由市場を謳歌する日本国であるからして、もちろん政府は、「はい、今日はいっぱいPKOやりましたよ~!」などと言うわけがない。

だから、【PKO】というと、なんとなく、一般大衆の知らないところで秘密裏に行われている「コンスピラシー(陰謀)」の匂いがする、とでもいいましょうか。(笑)

為替の世界での日銀介入や、債券の世界での国債買取、みたいのは、むかしから世界中どこでも行われているし、政府が介入するのは別に珍しくもないのでは?と考えるひともいるかもしれない。

しかし、国有化は別として、政府が「株式のオープンマーケット」で民間会社の株式を買うという行為は、自分達が発行元の国債や為替の需給調節とはワケがちがう。政府がエクイティを買うってことは、キャピタリズムの哲学自体にかかわってくる話であって、株価形成と透明性という側面でも物議をかもし出すのは必至だから、表立って正々堂々と政府が市場から株式買いあげても許されると公言するような政府は、まずいないんである。

日本には、“公的”に認められているPKOの形態として、政府が銀行のバランスシートから直接株を買い上げる「株式買取機構」や日銀による株買取りってのがありますね。日銀が2002年に株買うってことになったときだって、当時の日本では相当の物議があがった。(政府の銀行からの株買取については、2月3日付MHJ記事『保有株買取のデジャブ』参照。)

しかし背に腹は変えられない、ってんで、結局、日銀はものすごいマーケットリスクを日銀自身のバランスシートに抱えることになるのを承知で銀行から株式を買い取り、民間銀行から中央銀行へとリスクトランスファー(Risk Transfer=リスクの移転)したのであった。もしも日銀もBIS規制の対象銀行だったら、あの当時、日銀がBIS規制で求められる自己資本比率をクリアできたのか、わかったもんではない。

しかし、強烈な金融危機がふりかかって市場がパニックしている最中は、んなこと言ってられない、ってのもありますからね・・・。

<注> BIS自己資本規制というのは、銀行が抱えるさまざまなリスク(クレジットリスク/ソブリンリスク/マーケットリスク/金利リスクなどなど)に対して自己資本を保持することが求められる。株市場のボラティリティが上昇すると、保有株式という資産に内在するリスク量が上昇し往々にして含み損が発生するため、コストベース会計で表記された名目残高(簿価)が変化しなくても、必要となる自己資本額は上昇し、自己資本比率の低下を招く。この問題に対処するには、規制対象の資産そのものを減少させてリスク量を減少させる必要があるが、それは株市場に大量の「売り」が発生するというのと同義になるため、すでに株式市場が極端に低迷していた2002年当時の日本では、銀行から日銀へのリスクトランスファーによって各民間銀行のリスクアセットを低減させて、銀行自己資本の温存に努めたのであった。


   ★   ★   ★


米国でも株価急落の場面は何度も起こっているが、そのたびに、市場関係者の間でささやかれるのが

Plunge Protection Team(略してPPT) 

の存在である。

日本の市場関係者たちが「今日もPKOが入ったな」と囁き合うのとまったく同じ様にして、アメリカでは「PPTが動いているのかな」といった会話が起こるのである。

【Plunge Protection Team】という言葉が広く市場で用いられるようになったのは、1997年2月23日にワシントンポストに掲載された同名の記事が最初といわれている。

ブラックマンデーが起こった1987年10月19日の半年後、88年3月に、当時大統領だったロナルド・レーガンの直礼(Executive Order No. 12631)で急激な市場環境悪化にどう対処するかを話し合うワーキンググループが作られた。メンバーは、財務長官、連銀議長、SEC議長、コモディティ扱うCFTC議長の4人と、そしてもちろん、大統領自身であった。

【PPT】の意味は、Plunge (株価急落)、Protection(防衛)、名づけて『株価急落防衛チーム』!とぉーっ!

当初は、Plunge Protection Teamという名称はこのワーキンググループのニックネームのように使われていたが、次第に「株価操作」というネガティブな意味が前面に出てくるようになった。【政府介入というコンスピラシーの疑惑】が市場内に持たれるようになったのは、2005年、カナダのヘッジファンドSprott Asset Managementのアナリスト2人がまとめた某レポートが巷で話題を呼んだのが発端であった。

Sprottが顧客に配ったこのスペシャルレポートは、

『Move Over Adam Smith: The Visible Hand of Uncle Sam』
(アダム・スミスよ、そこ除けろ:アンクル・サムの見えてる手)

というタイトルがつけられ、延々40ページ以上にわたり、合衆国政府が株式市場にひそかに介入し株価操作を行っているという“アネクドータルな証拠”を集めた内容である。(アンクル・サム=Uncle Sam=合衆国政府のニックネーム)

2005年にこのレポートが話題を呼んだ当時、このレポートを紹介したユタ大学のサイトに、こんなパラグラフがある。

The Plunge Protection Team was institutionalized in 1989 as a follow-up from this working group, and originally included the top public-sector financial authorities. Its role was apparently tested with the Friday, October 13 1989 stock crash. In this case, too, a sudden rush of aggressive buying of index futures contracts via the MMI saved the day. There appear to have been a considerable number of interventions in the wake of that, with the group expanding to include the heads of major banks. Thus, for example, the markets after September 11, 2001, received a heavy dose of intervention. The need for this intervention was so great that its outlines emerged quite clearly in the press.

PPTは1989年にこのワーキンググループのフォローアップとして結成され、当初は他の規制当局も含まれていた。PPTの役割は1989年10月13日に株価が急落したときに明らかにテストされていた。
このときも、MMIインデックス(Major Market Index)のフューチャー・コントラクトのアグレッシブな買いが突然膨大に流れ込み、その日の急落を救った。そのときから、メジャーな金融機関のトップ達が関与してオペは拡大し、そうした市場介入は何度にもわたり行われているようだ。たとえば、911後のマーケットでは非常にヘビーな市場介入が散見された。(911直後の)介入の必要性はあまりにも明らかで、そのためマスコミの目にも留まるようになった。


「インデックス・フューチャーのアグレッシブな買いオーダーが突然膨大に流れ込んだ」ですと。

あれっ?それって、つい最近どこかで聞いた、取引終了間際にインデックス・フューチャー20万本とかいう話に似てませんこと・・・?(笑)

だが、実際に【PPT】が市場の現場で暗躍しているのかどうかは、無論、誰にもわからない。

【PPT】を信じる人もいる。

陰謀ストーリーが好きなブログ連中の空想物語、という人もいる。

従って、公の場で【PPT】の話を真面目にとりあげるものはいないし、それを真面目に取り上げようとすると、みんなで寄ってたかって、「んもー、そんな陰謀説、作り話だよ~、フィクションの読みすぎだってばー」ってな感じで、周囲から苦笑を招くのがオチである。

去年のリーマンショックの熱が覚めやらない頃も【PPT】の話題はあちこちで耳にした。去年11月、CNBC局でまさに「その」話題が取り上げられたときのクリップをYouTubeで見つけた。



上のクリップでは、去年11月18日のCNBC局の番組中に、FortressのトレーダーのScott Nationsが【PPT】による介入と株価操作が行われている可能性があるとコメントしたのだが、同局のキャスター達は全員がスコットの発言を一笑に付し、「そんなこと真面目に信じてるなんて馬鹿みたい、ぷぷぷ」という目を向けていたのがよーくわかる。

だが、スコットがこのときしゃべった内容は、前回のMHJ記事でとりあげた同じCNBC局の番組クリップに登場したLarry Livinがしゃべった内容とは、基本的に同じなのだ。

去年11月にはニヤニヤして真面目に取り上げなかったCNBC局のキャスターふたりは、数日前の番組でもLarry Livinと一緒に登場している。だが彼らは今回は、Larryに対してはScott Nationsに対して見せたような「馬鹿にしくさった態度」は見せていない。それどころか、「Larryの言うことに同意する」とまで言っている。

断っておくがMHJ筆者は陰謀説にはほとんど興味ない。ロスチャイルドがどうした、とか、フリーメーソンがどうした、みたいな話を聞くと「かんべんしてくれ」ってな感じ。このブログも政府陰謀説を広めるために立ち上げたわけではない。

しかし、こと市場の動きに関してだけは、何度にもわたりここMHJで書き続けたように、3ヶ月ぶっつづけで、自分自身が「なんだか変」と感じ続けたのは事実だ。

自分のガッツフィーリングが正しいなんて述べる気も、毛頭ない。だが、長いこと市場の近くにいて「市場の動き」と「(分析以前に)感覚的なものとして得られる実体経済の強弱」とが、ここまで長期にわたって整合しなかったことはこれまで一度もなかった、と正直思っている。

そして、市場でそれなりにリスペクトを得ているプロ達が主要メディアのあちこちに登場して同じことを述べてるのがいい例で、「何か変だ」と感じている者は、半年前と比べ、明らかにその数を増している――。

   ★   ★   ★

この2005年に出されたSprott Asset Managementによるスペシャルレポートだが、オリジナルはここで読める。全41ページの長いレポートだが、興味のあるかたはどうぞ。

このレポートの中には、日本政府も米国政府に加担している、というくだりがあっておもしろい。今日は長くなってしまったので、次回のMurray Hill Journalで、その部分をちょっと紹介したい。(今すぐそこの部分を読みたいひとは、オリジナルレポートの34ページ目からです。)




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