Sunday, March 15, 2009

孤独なアトラス、苦肉の「派遣」採用

ニューヨーク市場の先週は、昨年11月以来で最高の上げ幅になった。

ウォールストリートジャーナルは土曜日(14日)朝の紙面のトップで、

『経済安定の兆候を受け株価上昇』
Signs of Stability Drive Up Stocks
http://online.wsj.com/article/SB123698782128925923.html

というタイトルの記事を掲載し、2月の米小売り統計が予想よりマシだったことを「兆候」のひとつに挙げていたけど、証券市場が『売り疲れ』気味なのと同様に、一般アメリカ市民もクリスマス以来ずーっと買い物控えてて、たとえ貯金があったとしても将来不安だからと言うんで大根の尻尾も煮て食う赤貧生活を敢えて送り(←うちだけか?)、そういう『我慢疲れ』が出てきてるんじゃないのかな。

実際わが身を振り返っても、12月と1月はグッと我慢してたけど、2月に入ったら、筆者は何故かお買い物しちゃった。新しい食器セットなんて、買っちゃった。いま無くては困るものではないにも関わらず、なぜか買いたくなった。46型のフラットスクリーンテレビも買っちゃった。「クリスマスには何も買わなかったし、1月も我慢したから、ご褒美ねー」とか、ワケわからん理由で、お買い物。

筆者の場合はまちがいなく、年末年始に消費を控え過ぎた挙句の反動、すなわち「我慢疲れ」である。

3月も引き続き小売統計に明るさが持続して見えたら、「兆候」と呼ぶことにしよう。

しかし、筆者が住むマンハッタンの街なかを歩きまわると、どの通りにも、前のテナントが店仕舞いして出て行ったきり空き家のままの店舗が目立つ。近所のバーの横を金曜日の夜に通りかかったら、客がひとりポツンとカウンターに座ってテレビ見てた。マンハッタンの街なかで、金曜の夜に、バーの客ひとりって・・・。

マンハッタンの街なかを歩く限り、少なくとも「明るさ」らしきものは、まだよく見えない。感触としてはむしろ、ますますひどくなっていってる、という印象のほうが強い。

   ★   ★   ★

現在のニューヨーク株式市場の特徴をひとことで言えば、

「インベスター市場ではなく、トレーダー市場」

だということだ。ファンダメンタルズで長期で本腰入れて買いに入ってくるインベスターは少なく、モメンタムを利用して小刻みに短期売買を繰り返すトレーダーばかり。

確かに先週ダウは上がりましたけどさ、そのパターン見たら、火曜日に上がったら水曜には息切れ、木曜にまた上がったら金曜は息切れ。

息切れ起こす日の朝は、決まって、取引開始前から買い注文がドッサリと積みあがっていた。そのおかげで寄り付き直後は前日の勢いのままゴーンと上がるけど、すぐに益出しの「売り」が集中して、ゴーンと下がる、その繰り返し。トレーディングのボリューム(出来高)は取引開始のベルが鳴った直後に集中し、午前11時ごろには、ボリュームの勢いはなくなってる。

ラリーが長続きしないんだ。

VIX指標は、今年に入ってから40~50のラインあたりをウロウロしている。先週も株価があれだけ上昇したのに、VIXは40のラインがレジスタンス(Resistance=抵抗線)になっていて、そこを突っ切ることはなかった。



つまり、世のトレーダー諸君は、まだまだ市場の様子を警戒しているらしく、今週以降は、下手すれば、ふたたびセルオフ(Sell-Off=大量の売り)が襲ってくる可能性もある、ってことだ。

あくまで「可能性」ではありますがね。

VIXについては、去年12月12日付けのブログエントリー(『合衆国の世紀は実際に終わっていたのか』)で言及したが、あれを書いた3ヶ月前はまだVIXが80だの90だのと騒いでいたんで、その頃と比べたら40まで下がってきたのは良くなってきたように見えるかもしれない。

しかし、VIXの40ラインってのは、2年ほど前にニューヨークの市場心理が目に見えて冷え込み始めたときに40ラインを突き抜けて「オーマイガッ、VIXが40行っちまったぜ、大丈夫かよ、おい!」とトレーディングフロアでたいそう話題になった、そういうラインですので注意が必要だ。

VIXがまだこんな水準にいるのに、週末に「景気回復の兆候でてきたよーん!」なんつー新聞見出しにウキウキ踊らされるようなプロのトレーダーはいない、と思うな・・・。

   ★   ★   ★

さて、そのウォールストリートジャーナル(WSJ)であるが、先週木曜日(12日)の紙面で、同紙が行ったアンケート結果を紹介していた。

どんなアンケートかというと、アメリカの著名エコノミスト54名に「オバマ大統領、ガイトナー財務長官、バーナンキ連銀議長について、景気回復に向けて彼らはうまくやれているか、3人それぞれに成績をつけてください」というアンケート。

結果によると、今回回答を得た49名のエコノミストの42%が、オバマ政権の経済対策には不満を抱いているそうだ。そして、3人それぞれにつけられた成績点は、

   ‐大統領オバマ君 59点
   -財務長官ガイトナー君 51点
   -連銀議長バーナンキ君 71点

アメリカの大学では一般に60点以上取れないと落第点ですからね、オバマ君もガイトナー君も、

「もっとがんばりましょう。」

筆者も、先日のブログで、「PER」の「P」が何かを言い間違ったオバマ君の成績を「B-」とつけましたがね、世の中のエコノミストは、オバマ君に対し、筆者よりさらに辛い点数をつけた模様である。

特に、ガイトナー君の場合、前代のヘンリー・ポールソン君の57点(今年1月の同調査結果)をさらに下回ってしまったので、もっともっと徹夜してがんばらなくてはなりませんね・・・。

しかし、このWSJの記事中にあった次の文章には笑ったよ。


"Many of the economists, however, have repeatedly miscalculated how severe the downturn would be. Indeed, they pushed ahead yet again their forecasts for when a recovery would begin. On average, they expect the downturn to end in October. Last month, they said the bottom would arrive in August."

『しかし、これらエコノミストの多くが、今回の景気後退がどれほどシビアなものになるか、繰り返し誤算してきた。実際、彼らは景気回復のタイミングをまたもや先に延ばした。平均すると、彼らは今年の10月には景気は底を打つと見ている。だが彼らは景気の底は8月にも訪れると先月言ったばかりなのだ。』




ま、自分のことは棚にあげ、相手を批判する分には、こんな楽なものないですからネ~。(笑)

   ★   ★   ★

それにしても、ガイトナー君、これ以上、徹夜なんてできるのか。

余計なお世話だが、ガイトナー財務長官、着任してから寝てないんじゃないかと筆者は心配している。

というのも、ガイトナーには着任以来、部下らしい部下がほとんど決まっていないのである。

財務省には、ガイトナー長官をトップにして、その下に「直属」として15のポストがあるそうなのだが、そのうち正式にポストが埋まったのは、今日現在で、まだひとつ。

ガイトナー氏、適任者と思う相手に、

「どうかね、財務省で重要なポストが空いてるんだけど、キミ、働く気ないかね?責任もやりがいもある仕事だよ。将来のために履歴書を磨くにも最高のポストだよ!」

と方々に誘いをかけたんだが、金融界緊急事態発生の連続と実態経済のあまりの無残さを前にして誰もが尻込みしちゃうのか、声をかけられた相手は「いまは家族と一緒にいたいから・・・」とかいうヘンテコな理由を挙げて、辞退しちゃったんである。

G-20の会議が開かれる直前になっても、ガイトナーの周囲にはほとんど側近がいない状態で、「ギリシャ神話で地球を背負わされることになったアトラス神」さながら。一人ぽっちで、崩れ続けるグローバルエコノミーを背中にしょって支えているような雰囲気である。

仕方ないんで、G-20用に、ガイトナーは6週間だけ「派遣要員」を調達したそうだ。

ワシントンDCのエコノミスト・サークルでは知らぬものなし、テッド・トルーマン氏(Ted Truman)、67歳。彼は連銀のボードメンバーを26年間も勤め、グリーンスパン前議長をして「自分はトルーマンの部下」と言わしめたほどの、経済学者界の重鎮である。米国以外のG-20の国々も米国並みに財政出動すべき、というのも氏の持論である。

しかし、トルーマン氏は6週間だけの派遣要員。フルタイムばかりでポストを埋めるのはいつになることか。

孤独なアトラス、すでに疲労困憊の色濃くなってきていて、見ていて、ちょっと気の毒である。

軽い腰痛で済めばいいが、アトラスの腰骨が複雑骨折起こす前に、はやく充分なスタッフが見つかるよう、お祈りしております。

写真:NYの五番街ロックフェラーセンターの前で地球を背負うアトラス像



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Wednesday, March 11, 2009

「売り疲れ」のNY市場、はしゃいだ後ですぐに息切れ



昨日10日のダウは一気に379ポイント上昇。前日までの鬱々とした雰囲気から一転、金融株を中心に買いが戻った。ショートカバー(空売りをカバーするための買戻し)のみならず、実際の買いもかなり入った様子である。

10日の急上昇の背景として、シティのCEOヴィクラム・パンディット(Vikram Pandit)が9日付けの社員向けメモで「2009年の2ヶ月は収益があがっている」と延べ、銀行セクターの業績悪化が底を打ったというスペキュレーションが蔓延したのが理由のひとつ。もうひとつは、取引開始前の米東部時間朝8時半から、ワシントンDCの某研究機関でバーナンキ連銀議長の講演があり、その講演内容がポジティブだったことも支えになった。

ここのところ、市場は【売り疲れ】状態でしたからね。

NY株市場、毎日暗いニュースばっかで、うんざり。これ以上売るものないってぐらい売りまくり、みんな脱力して、ぼんやり。

うんざり+ぼんやりしてたところ、『国有化になりそうな銀行リスト』のトップにいる銀行が「収益出せそう」と言ったひとことで、ギャンギャン盛り上がってはしゃいでしまう気持ちもわからなくもない。

しかし、今日11日には早くも息切れ、ラリーは長続きはしなかった。

   ★   ★   ★

シティのCEOパンディットのメモは、もう少し注意深く読む必要があるな。(メモの全文はこちら。)

メモで強調されていたのは次の2点。(1)シティの自己資本基盤は強い、(2)シティは収益上げられる会社だ、だから、現在の株価はシティの底力を正当に評価したものではない、と。

(1)と(2) について筆者の感想を述べてみたい。

まず(1)の自己資本について。

ここのブログの2月21日付けのエントリー『NYダウ2002年来の安値:国有化パニック』で、

【ストレステスト】というのは、幾通りかのプライス変動のシナリオをたて、そのシナリオに従って、金融機関が保有する資産に様々なストレスをかけてやり、予想される損失額が自己資本をどの程度毀損するか、「債務超過」になる可能性がどれくらいあるかを計測するテストのこと

と説明しましたが、覚えておられるでしょうか。

あの記事を書いた数日後に、当局が実際に損失シミュレーションをする際に用いる「前提条件」が公表になったが、次のような条件を「最悪シナリオ」としてストレスかけてみるそうだ。

1) GDPは、2009年にマイナス3.3%、2010年はプラス0.5%
2) 失業率は、2009年に8.9%、2010年に10.3%
3) 住宅価格は、2009年に22%さらに下落、2010年に7%さらに下落

現時点ですでにカリフォルニア州ほか数州では州内失業率が上記失業率を上回っているのと、住宅在庫も全米おしなべて過去最高水準にあり住宅価格の下げは当分止まらないと見られているため、これらの条件が果たして「最悪のシナリオ」に相当するかは米市場でも意見が分かれている。

シティのCEOバンディットによると、この政府が考えた最悪シナリオよりさらにひどい状況になったと仮定してさらに強いストレスをかけてテストをやってみたが、シティの自己資本の厚みは充分あり、債務超過に陥る可能性は低いそうである。

しかしね、筆者も現役でアナリストやってるころは、この「ストレステスト」ってのをずいぶんとやったものだが、ストレステストの結果というのは、前提条件の置き方次第で、実はどうにでもなるんである。

金融機関というのは、「リスク取ってリスクで稼ぐ」という商売であるからして、リスク管理の一環としてストレステストというのは、実際毎日やってるんですよね。

今回あらためてストレステストやってみたら、「あら不思議!気づかないうちに債務超過になってたわーっ!」とびっくらこくような金融機関なんていません、ってば。

だから、当局のストレステストの結果がどうなるかという点については、いまから答えはわかってる。

ストレステスト対象になってる銀行のうち、最大手の数行については、程度の差こそあれ、自己資本は充分という結果となり、テストにパスするでしょう。

ここの2月6日付けのエントリー『米国最大の銀行が国有化?(でも自己資本比率10%超もあるんですけど)』で述べたとおり、自己資本が充分ある銀行が国有化されることは定義上ありえないんである。(「充分あります」=「国有化しません」、ってことの【つじつま】つけるためにストレステストやるんだからね。)

ただし、ストレステストに代表される計量モデルってのは、所詮、静的(static)な「モデル」であって、サイコロジーを伴って刻々と生き物のように動く市場のダイナミズムまでは把握できない。毎日テストやってても、「前提条件」からぶっとんだ事態が実際に発生したら、モデル上で推計されていた額をはるかに上回る損失が発生しちゃう、というのは言わずもがな。

だからストレステストの結果は、注目してもしなくても、どっちでもいいような気もする。発表直後はポジティブニュースとして一時的に株価を支えるかもしれないけど、本質的な問題には、関係ない。

   ★   ★   ★

次に(2)の『収益性』について。

CEOのメモの中に、こんな一文があった。

"In fact, we are profitable through the first two months of 2009 and are having our best quarter-to-date performance since the third quarter of 2007. "

『実際、2009年の最初の2ヶ月は、シティは収益を出しており、四半期でみれば2007年第3四半期(3Q)以来の好成績です。』

.
メディアを筆頭に多くのひとが、ここだけ読んではしゃいじゃったみたいなんだよな。落ちついて次の文章も読みましょうね。


"In January and February alone, our revenues excluding externally disclosed marks were $19 billion."

『今年1月と2月だけで、外部公表されている評価損失を控除したシティの営業収入は190億ドルになりました。』


.
"REVENUE"というのはコストを考慮する“前”の、トップラインの収入のことである。でも株主にとって身になる利益ってのは特別損失その他あらゆるコストを差っぴいた“後”の収益のことですかんね。トップラインの稼ぎだけでキャイキャイ盛り上がって、どうすんの。

たしかに、「コスト前の稼ぎ」だけに着目すれば、シティはかなりがんばったみたいだ。

メモをさらに読み進むと、「かなりがんばった分野」というのはグローバルM&A業務の分野で、そこから挙げた手数料収入が収益を押し上げたらしい、というのが読み取れる。

3月6日付けのウォールストリートジャーナルの記事によると、2009年の世界M&Aランキングでシティは堂々1位、欧州の大型ディールを中心に、総額1383億ドル(約13兆円)に相当する37本のディールにアドバイザリーとして関わったらしい。イギリス政府が発行するロイヤル・バンク・オブ・スコットランド(RBS)のディールも含まれていて、こうした大型のM&Aディールから、かなりの手数料を稼いできた、ということだろう。

でも、このWSJの記事には、もうひとつ重要なことが書かれていた。今年シティが手がけた大型ディールにおいては、シティは「ローンの貸し手」としてはプロファイルをできるだけ低めに保っているらしい。また債券ディールでは全然出る幕ないらしい。シティのような大銀行というのは通常、「コーポレーション向け貸し出し」ができる能力があるので、大型ディールではたいてい「ローンの貸し手」としても名を連ねるものなんだが、おとなしくしてるんですね。

銀行として多額の貸出金を提供するとバランスシートがその分膨らんじゃって、自己資本比率が下がるという、いまのシティにはありがたくない結果になっちゃうからね。

つまり、シティの1月2月の収益押し上げ要因は、大型ディールに助けられた【一発屋的特徴】があるってことだ。今後も継続的にこうした大型ディールに関わり続けることができればいいですけど、そうじゃなかったら手数料は入ってこないもんな・・・。

ということで、筆者は、シティの「収益あげてるぞ発言」に対しては、かなり冷めた目を向けてたわけである。

   ★   ★   ★

それよりも、筆者が朝から思わず身を乗り出してしまったのは、バーナンキ連銀議長の講演中の発言であった。

バーナンキの講演は、昨日の朝8時半からCNBC局でずっとライブで流されていたんだが、内容自体は、(1)銀行システムが安定し始めれば2009年内にリセッションからは脱出し2010年は回復基調の年になる、(2)FRB連銀は金融システム安定のため全力をつくす、といった骨子で、骨子だけなら、先月2月24日に米議会の公聴会で同氏が述べた内容と大差はなかった。

筆者がおっ!と思った発言とは、議長が自分の口から、

大手銀行群は大きすぎて潰せない(=Too Big To Fail)とハッキリ認めた

ということであった。

3月10日のバーナンキの講演全文はこちら



前回の2月24日の公聴会では、「大手銀行は<Too Big To Fail>なのか」という某議員の質問に対し、「そのフレーズは敢えて使う気はない」と言って議長はクネクネごまかした。

ところが3週間後、今度はハッキリと、【大銀行は潰せない、潰さない】という見解を議長自ら明示的に発言した。これは、筆者からみると、非常に重要だと思う。

クレジット市場がコンフィデンスを失って凍結したままになっている理由は「政府がさっさと国有化しようとしないから」ではなくて、「政府が何をしようとしてるか見えなくて不安だから」である。

こちらの週末のメディアでは、株価が下落し続ける状況にイライラを隠せない共和党議員たちが、オバマ民主政権への攻撃の一端に、「すぐにでも銀行を閉鎖するなり国有化するなり態度をハッキリさせろ、政府は手を尽くしているという強いシグナルをマーケットに示せ!」とわめき出していた。

TV番組に登場してワーワーわめいてた議員のひとりは、去年の大統領選でオバマと戦ったジョン・マケイン上院議員。マケインのほか、議会バンキング・コミッティのメンバー、リチャード・シェルビーも、国有化するのが市場を落ち着かせるのにいちばん手っ取り早いと騒いでいた。

だが、マケインは自他共に認める『救いようのない経済音痴』。

さらにシェルビーも、基本的にはクルッグマンなどの重量級マクロエコノミスト(←しかし、こと銀行問題については素人同然)の意見を読んだりして影響受けて、カッコいいから便乗してるってだけのヤツである。

バーナンキの昨日の朝の明示的な発言は、こうした「カッコいいから発言してみる」たぐいの政治家連中を黙らせるのが目的のひとつであったろうし、それと同時に、「米政府には大手銀行破綻を容認するチョイスはないのだ(だから何があっても大手銀行を破綻させない)」という強いメッセージを発信することにあったと思う。そして、そのメッセージを受け止めた市場関係者は少なくなかったとも筆者は思う。

   ★   ★   ★

株式市場もクレジット市場も、最後にモノを言うのは財務のファンダメンタルズであるという点では同じであるが、株式投資とクレジット投資では、投資家が着眼しているものや相場を動かす要因が必ずしも同じではない。

従って、クレジット市場が凍結しているのが問題の核心部分である現在は、当局が取るべき手段はクレジット市場の不安要因を取り除いてやること、である。それは必ずしも、株式市場が当局に期待しているものとは限らないし、マケインら経済音痴の政治筋が発する【ノイズ】のせいでポリシーサイドに不必要な遅延が起こったりしたら、市場にはそれこそ逆効果だよ。

昨日のブルームバーグニュースの記事で読んだのだが、企業債市場では、欧州の一般企業が発行するシニア債券のほうが大手金融機関25社が発行するシニア債券よりも安い値で取引されているというのだ。9日のウォールストリートジャーナルでも、金融機関発行の債券相場がふたたび不安定になっているという記事を見た。

先月24日の公聴会でバーナンキは「シニアクラスの債券の流動性と返済能力の確保が極めて重要(と認識している)」と発言したのを、筆者は実際この耳で聞いたのだが、これらの記事を読む限り、クレジット市場のトレーディングフロントでは、連銀議長のそうした態度も、安心して取引を開始するにはまだ足りないと判断されているらしい。

銀行が発行するシニア債券のスプレッドがこんな有様だというのは、銀行セクターに対するクレジット市場のセンチメントはまだまだ悲観論が圧倒しているということの証拠だ。クレジット市場が落ち着かなければ、株式市場が待ち望んでいる「収益回復」がもたらされることは、ありえない。

2009年中に米景気がリセッションから脱出できるか否かも、すべては金融セクターの安定次第、とバーナンキは言っている。そしてここで言う「安定」とは「株価の安定」ではなく「クレジットの流れの安定」を指す。

債券市場の動きを吟味せずして、株価のボラティリティだけを眺め、いよいよ金融株も底を打ったと判断するのは片手落ちというものだ。

   ★   ★   ★

今朝の取引開始直後は、前日からのギャンギャンな勢いがまだ余韻として残ってる気配だったので、筆者も、午前中はデイトレ参加。GSなど金融株を小一時間で小額売買し、ちょっとしたお小遣いを稼いだ。

こういう相場では、モメンタムに乗っかってデイトレで小遣い稼ぎするのが精一杯だ。長期買いに入るなんて、怖くて、できん。

デイトレは「投資」ではない。

真の意味での長期投資資金が戻ってこなければダウが恒常的に上昇局面に入ると断言するのは難しいよ。上がってもすぐに息切れしてしまう。今日のダウが息切れしたように。




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Saturday, March 7, 2009

ダウ低下は金融社会主義への抵抗か

昨夜は、パスタかっこみながら「あぁ・・・パスタ会社の株買っておけばよかった・・・」と涙ぐんでいた筆者であるが、あまりに非生産的なので、今日は、もうすこし真面目な記事を書くことにする。

昨日の金曜日は、マーケットがオープンする前に雇用統計が出された。2月の米失業者、さらに増えて失業率は8.1%に。この25年で最悪の数字。この調子でいくと、年内に10%行くんじゃないかとの見方も。

米失業率の推移


しかし、失業率8%超という数字自体は予想の範囲内、株価にはすでに「織り込み済み」で、取引開始直後は株価は上昇した。

上がり基調にあった株価が突然方向を変えてズルズル下げだしたのは、オバマ大統領のスピーチがライブでテレビに流れ出してからである。オバマ登場とともに、待ってましたとばかりに株価は下落。

オバマ大統領、金曜日の朝はオハイオ州のポリスアカデミーの卒業式で演説し、アカデミー卒業したての警察官達の前で、自分の景気刺激策は「すでに失業を抑える効果を発揮している」と力説した。


オハイオ州コロンバス市のポリスアカデミーでスピーチしたオバマ(写真:ロイター)


演説するオバマの背後に並んでたピカピカ新米警察官25名の給料は、政府の7870億ドルの景気刺激策パッケージに含まれている警官向け補助金プログラム20億ドルから直接彼らに支払われるんである。

しかしね、2月の新規失業者65万1千人。大衆の支持なしには成り立たない政治の世界ではスズメの涙にも値しないエピソードを膨らませるのは常套手段ではあるとはいえ、オハイオの警察官新規採用数十人を雇用の下支え効果に結びつけるには「シラけるな」と言う方が無理というもの。

ウォール街関係者のあいだでは、新政権の景気対策や金融市場安定策に対し概して懐疑的・批判的・否定的な見方が多く、一部の経済関連メディアでは、日を追うごとに「敵意」すら垣間見えるほどになってきている。

アメリカの金融街は、「自由主義経済は進化論と同じ、環境に適応できる強者のみが生き残る」というルールに忠実で、業界外からは法外とも見えるボーナスを「成功報酬」と呼び、文句をつけるものには「羨ましければお前もここで働け」と突き放し、富を目指してひたすら突っ走ってきた、そういうところだ。

だから多くのウォール街関係者にとっては、オバマ流の「強者も弱者もみんなで富も痛みも分け合おう」といったやり方は、

【金融社会主義(Financial Socialism)】

を連想させる以外のなにものでもない。

新政権の景気対策では、住宅ローン延滞者への優遇措置のための財源として、25万ドル以上の年収に対し増税する。失業保険受取額も大幅増加されるが、ファストフード店でミニマムウェイジで働くよりも、一切働かずに失業保険もらったほうが、収入は高くなる。

オバマ政策では、富めるものからそうでないものへの富の移転が急激かつあからさまで、「最初から返せもしない住宅ローンを組んで自滅した阿呆どもには救いの手を差し伸べ、家族と過ごす時間を削り夜も寝ずに働いて得た報酬にはケチをつけて取り上げる」・・・そんな不満が、金融業界関係者のみならず、いまや、保守層を中心に、一般の間にも広まり始めている。

ウォールストリートジャーナル紙で「最も読まれた記事」のトップを今朝まで走っていたのが、スタンフォード大学の経済学教授マイケル・ボスキン氏による、

オバマの急進主義がダウを殺しかけている/金融危機の最中にアメリカン・キャピタリズムの礎(いしずえ)を変えようとするのは時期として最悪」

と題された投稿論文だった。

Obama's Radicalism Is Killing the Dow
A financial crisis is the worst time to change the foundations of American capitalism.
http://online.wsj.com/article/SB123629969453946717.html


筆者も、新大統領の就任後の市場への対応や言動をみるにつけ、いくばくかの不安を感じ始め、ここのブログの2月15日付けのエントリーでも「オバマ政権の発足が米国の金融社会主義への第一歩にならないことを切に願う」と書いたが、やはり案の定、である。

だから、上で紹介したスタンフォード大教授の投稿には、うなづけるものがあった。

ダウ低下は金融社会主義への抵抗か。

   ★   ★   ★

脱線するが、オバマ政権がやろうとしていることを正当に理解してもらうために邪魔になっているのが、ホワイトハウスの主席報道官、ロバート・ギブス(Robert Gibbs)である。

ハッキリいって、このひとは、報道官としてまったくの役立たず。

彼ったら、口を開けば、現政権の経済政策を批判するメディアの論調をいちいち【名指し】で批判し返したりしているが、テレビやラジオの保守寄りコメンテーターが口走ったコメントをいちいち真面目に取り上げて、だからどうだというのか。

ギブスが、政府記者会見の場で、政治家でもないコメンテーター達(←要するに一般人)の反論や発言に、辛らつな皮肉を飛ばしてせせら笑うたびに、それを見ている者を不愉快にさせ、メディア側からは警戒され、さらには、オバマ政権自体のクレディビリティに傷がつくということが、主席報道官のくせにわからんのかな、こいつは。

数週間前のことになるが、24時間経済ニュースを流しているアメリカのケーブル局CNBCの某記者がオバマの経済策について番組中に批判したところ、ギブスはわざわざ記者会見の場でその記者のコメントを取り上げ、「彼は記者になる前はデリバティブスのトレーダーやってたようなやつ。トレーダーあがりにこの政策が理解できなくても当然」と、証券会社のトレーダーを見下したと受け取れる発言をして、それを聞いてた多くがギョッとした。

以前も述べたが、オバマ政権がどんなにうわべでウォール街をバッシングしようとも、問題の中心が証券化マーケットにある限りは、ウォール街の証券化分野のエキスパート達の協力無しには、金融市場の安定なんて絶対に絶対に不可能なんだからな。セカンダリーのマーケットでデリバティブスのトレーダーがいなかったら、どうやってプライシングできるのさ。

ギブスによるこの手のパッシブ・アグレッシブ(Passive Aggressive)な発言は、これで終わりになったわけではなく、CNBC局を筆頭に「オバマはアメリカン・キャピタリズムを壊そうとしている」という趣旨の発言をするプレス相手に、いちいちイチャモンつけ続けているんである。

挙句の果てには、ラジオトークショーのホスト、ラッシュ・リンボー(Rush Limbaugh)まで記者会見中に引き合いに出して、リンボーを「共和党の全国スポークスマン」と皮肉飛ばして攻撃することでオバマの立場を擁護しようとしたが、むしろ裏目に出てる、って感じ。

ラッシュ・リンボーと言えば、アメリカでは知らぬ者なし、保守の中でも極めつけのウルトラ保守寄り発言であちこちでヒンシュク買ってるラジオ・パーソナリティ。人気ラジオ番組だけにマス(大衆)に影響力はあるものの、彼のような保守極論を売り物にしてるような人物の発言を政府高官が真面目に取り上げるなんて、どうかしている。「ホワイトハウスで何を話し合ってんだ・・・?」と、こちらはむしろ不安になってくるではないか。

それって、日本で言えば、自民党の幹事長が定例記者会見でタレントみのもんたの発言を持ち出してくるようなもんなんだからさ。

オバマよ、支持率をこれ以上落としたくなかったら、はやく、ギブスをクビにしろ。

  ★   ★   ★

さて、3月4日にここにポストされたエントリーで、GEの金融子会社GEキャピタル(GECC)の発行する債券がものすごいディスカウントかかって取引されている、というのを書いた。

「ものすごいディスカウント」がかかる理由は、ひとつにはGECCの倒産リスクが実際あがっているから、そして、もうひとつの理由としては、GECCの債券を買いましょうという買い手が市場にほとんどいないから、である。

買い手が資金市場に不在の状態では、リーズナブルな価格形成ができず、取引そのものが成立しないんだ。

こういう状態を「市場の流動性が低下している」と言う。

金融市場正常化を促すと言う意味は、この「市場流動性」の正常化、すなわち、資金の流れを円滑にしてやる、という意味である。

前からここのブログに書き続けているが、オバマの景気対策が効果を発揮するためには、まずは資金市場が正常化に向って動き出さなければ何も始まらない。心筋梗塞で血流が悪くなってるのに、マラソン走れといっても無理なのと同じ。

オバマ就任後、約2ヶ月が経ち、なかなか結果が見えてこないために、市場も一般市民も苛立ちを隠しきれずにいる。けれど、クレジット市場がフン詰まり起こしたままで資金が流れてこないのだから、結果を出そうにもなすすべはない。

国が給料出して警察官や消防士を雇ってあげたって、一部のホームオーナーが家を追い出されないように政府が一時的に助けてあげたって、そんなものは、焼け石に水。末端に注目しててもダメだと思う。

何度も言うが、問題は資金市場。

先週、ガイトナーとバーナンキによる金融市場安定策の目玉のひとつ、T.A.L.F.(Term Asset-Backed Securities Loan Facility)が動き出した。

T.A.R.P.が金融機関の自己資本充実が目的なら、T.A.L.F.は金融市場、とりわけ証券化市場の流動性促進が目的だ。

筆者は、実は、このプログラムに非常に期待を寄せている。

T.A.L.F.については次回にでも。


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Thursday, March 5, 2009

パスタで腹一杯、バッドニュースも腹一杯


NYダウ6600ドル下回る。

今日もいちにち、気分が真っ暗になる相場展開であった。

ムーディーズがJPM、ウェルズ、バンカメら大手米銀の格下げに動きだしたのと、GMの監査人が「破綻の可能性もあり」と書いたことで、しょっぱなからズズーンン・・・。

金融株はどれもこれも一割下げ。「ルーザー株」の筆頭シティグループなんて、今日の取引でついに1ドル以下。

$1ですよ、$1。かつて世界最大の銀行だった会社が、ですよ。

アメリカでは宝くじが一枚5ドル。株式営業部の新米営業マン小浜君でも、「宝くじ1枚分でシティ5株買ってお釣りきますよ!」とは、さすがに言えない雰囲気に包まれている。

新聞を読んでいても、明るいニュースを探すのが大変。っていうか、明るいニュースがみあたらない。

小売のウォルマートが予想以上に業績がよかったということで朝は上がっていたが、後場にはまたズルズル落ちた。

どこかに明るい話は転がってないのかーっ!

意地になって探したら、こんな会社がありました!

   ★   ★   ★

下のチャートは、過去3ヶ月間の某社の『相対株価』である。(3ヶ月前の株価を基準としたとき、3ヵ月後の今どうなってるか、というグラフ。)



この3ヶ月で、S&P500は20%近くも下落した。それに対し、この会社の株式は、3ヶ月前から120%近くも上昇しているというんである。

この会社の名は「アメリカン・イタリアン・パスタ・カンパニー(American Italian Pasta Company)」、全米最大のドライパスタのメーカーである。

今年1月2日末がQ1だったこの会社の四半期決算を見てみたら、トップラインの売り上げが前年同期比で4割増、コストも上昇したものの増加率を比較的低く抑えて、営業利益7%増。

バランスシートの方もみてみたら、営業利益の増加が当期利益の増加となって株主資本に厚みができ、長期借入金の返済に充てて、バランスシートの構造も、より健康的になっている。

ここ一年ほど、業績発表の時期がめぐってくるたびに、営業利益がマイナスになっちまった損益計算書だの、資産に時価調整加えたら実は株主資本がマイナスになっちゃうバランスシートだの、そういうグシャグシャに壊れた財務諸表ばっか見せられてた当方としては、このAIPCというカンサスの小さな会社の

【バラの香りを運ぶそよかぜのような財務諸表】

を前にして、一瞬まぶしさで目がくらみそうになった。

カンサスの田舎の、従業員600人の小さな会社だが、純粋に売り上げ増とコスト調整で業績あがってる・・・いまどき、こんな会社があったとは・・・。(感涙)

業績絶好調の理由は簡単、アメリカの一般家庭が外食を控えるようになり、食卓に安くて腹いっぱいになるパスタ料理が乗っかる頻度が高くなったから、である。

2006年のデータなので少々古いが、世界の国民一人当たりの年間パスタ消費量のデータがあった。

1位は当然、ダントツでイタリア(28kg)。その後、ベネズエラ(13kg)、チュニジア(11kg)、ギリシャ(10kg)、スイス(9.4kg)と続き、米国は一人当たりの消費量年間9kgで世界6位。(データ元:UN.A.F.P.A.←欧州パスタ製造業者協会、とでも訳すのか。)

(ちなみに日本人は1.7kgで、ランキングではずっと下で、「そんなにパスタを食べない国民」であるらしい。)

しかし、イタリア人、一年間にひとり28キロもパスタ食べるのか?!?

さすが本場ですわねぇ。感心しててどうする。

アメリカのパスタ消費量、2006年で9kgだったわけだが、2008年はどれくらい食べてるんだろう。

AIPCの四半期業績詳細を見ると、売り上げ増に寄与した要因としては、プライス効果が4割超、ボリューム効果が2割弱だった。スーパーで売ってるパスタの値段があがったという要因が大きいが、食べてる量そのものも、やっぱり増えている。

ということはですよ、毎年1割から2割ぐらいアメリカ人のパスタ消費量が増えていると仮定して見積もってみると、2008年には、アメリカ人はひとり年間12kg近くのパスタを食べてる、という推計になるな・・・ へぇえ・・・

・・・と、自分で持ってもいない会社のデータ見て計算機叩いているおのれの姿が、なんとなく哀しい。

明るいニュースを探そうとやっきになるのは、完全に「現実逃避」モードだから。

毎日毎日悪いニュースばかり聞かされて、バッドニュースでも腹いっぱい。

そうだ、今日のわが家の晩御飯は、パスタにしよう。

Wednesday, March 4, 2009

オバマによると「株は買いどき」

イギリスのブラウン首相が訪米していた。

昨日の米国のケーブルテレビでは、オバマとブラウンの共同フォトセッションの模様を延々と(実に延々と)映していた。

その場に居合わせたメディア関係者からいくつか質問を受け付けたが、これ、正式記者会見じゃないんだよ。メディアのために用意された【写真撮影会】ですよ。

さらには、ブラウンは米議会にも招かれて、米英が力を合わせて何ができるかを大演説。

オバマほか政府関係者には玄関先で軽くあしらわれ、米メディアにはほぼ完全無視されたニッポンの麻生首相と比べると、なんたる扱いの違いでしょうか。

片やランチもご馳走してもらえず、片や写真撮影会に一時間以上・・・。

ま、麻生さんとオバマじゃ波長が全然合ってないってのは傍(はた)で見ててもわかるけどさー、ここまでハッキリ差をつけられるのは、ちょっと哀しいじゃぁありませんか。サンドイッチとお茶ぐらい出せよな、ホワイトハウス。

イギリス経済だってアメリカと同じぐらいドツボにはまってるわけだが、仲良く並んで目をキラキラさせて見詰め合ってるブラウンとオバマの二人を見ていると、【ブッシュとブレアのアツアツぶり】を彷彿とさせるものがあった。

世代交代しても、アメリカとイギリスは「運命共同体」か。

そのフォトセッションの席で、オバマったら、しゃべる、しゃべる。

勢い余って、

「長期的には株は今が買いどき」

とまで、口走った。

先日ここのブログで、「オバマよ、あなた、いつからキャタピラーの人事部長に?」とたずねたが、今日も言わせてもらおう。

「オバマよ、あなた、いつから株のセールスマンに?」

   ★   ★   ★

オバマが昨日の会見で何と口走ったかというと、正確には以下のように言ったんである。(情報:ABCニュース

"What you're now seeing is ... profit (←筆者注:おそらく“price”の間違い)and earning ratios are starting to get to the point where buying stocks is a potentially good deal if you've got a long-term perspective on it,"

『長期投資の視点に立てば、株式は買い時で潜在的にグッドディールと呼べる水準まで株価収益率(PER)が落ちてきている。』

"Businesses are starting to see opportunities for investment and potential hiring. We are going to start creating jobs again."

『ビジネスは投資機会と潜在雇用を探り初めている。まもなく雇用再開の時期が来る。』

”I am not focused on the day-to-day gyrations of the stock market, but the long-term ability for the United States and the entire world economy to regain its footing. You know, it bobs up and down day to day, and if you spend all your time worrying about that, then you're probably going to get the long-term strategy wrong."

『株式市場のその日その日の上げ下げには私はさほど注目していない。注目しているのは米国及び世界経済が再び安定し力を盛り返す長期的な能力の方だ。株価は毎日上がったり下がったりする。ひがな、それだけに心を奪われていると、長期的なストラテジーを見失う。”


   ★   ★   ★

・・・うむ・・・・大統領の発言というより、まるで、今年営業部門に配属になったばかりの新人セールス君のセールストークのようである。

わたしも金融業界に就職したばかりのころは、先輩から「バリューはホライゾンを長期に置け」と耳にタコできるぐらい言われたのを思い出したよ。

投資のスタイルにはいろいろありますが、もっともオーソドックスなのが、

「ファンダメンタルズ分析を緻密に行うことで価値(Value)が過小評価されている証券を見つけ出し、長期保有することで将来的にキャピタルゲインを得る」

というスタイル。この投資スタイルは「バリュー投資(Value Investing)」と呼ばれます。

1930年代にコロンビア大学の教授だったグラハム(Graham)とドッド(Dodd)という二人により出版された名著『Security Analysis』(『証券分析の原理』)で世に知れ渡った分析手法ですが、この本は、いまだに【株式投資分析のバイブル】となっている。

グラハムの講義を実際に受けていた学生のうち、たったひとりだけ「A+」という優秀な成績を収めた学生こそが、かのウォーレン・バフェット氏であるというのは有名な話だけど、証券アナリストなら必読の書とされているこの古典書、どうやら、オバマも読んだね。本をまんま暗誦してるもんね。(笑)

オバマ、ザ・バリュー・インベスター。Obama, the Value Investor.

(でも、P/Eレシオの「P」を、「Price」じゃなくて「Profit」と間違ったんで、成績は「B-」。)

新人セールス小浜君の言葉を信じて、ここで「買い」に入るもよし、まだ下げは続くと見て慎重姿勢を崩さないでいるのもよし。投資は自己責任でやりましょう。

今日のダウは中国発のポジティブニュースで押しあがっていたが、センチメントは全体にまだ暗い。セールスマン・オバマのアドバイスに従おうとする投資家は、まだまだ少数派のようですね・・・。

ま、株セールスとしては見るからに経験少なそうだから、真剣に聞いてもらえないのはしかたないけどね。(爆)


   ★   ★   ★

ところで、昨日のオバマとまったく同じ発言を、別の記事で読んだ。

ゼネラル・エレクトリック(GE)のCEO、ジェフリー・イメルト(Jefferey Immelt)の言である。

GE株、ここのところズタズタである。(下のチャートは、GEの過去5年の株価パフォーマンス)



GEという会社は、冷蔵庫などのホワイトグッズとか原子力などエネルギー関連とかの分野で有名だが、その実態は、収益の半分以上を金融子会社(GECC)が稼いでくるという収益構造を長らくしていた会社であった。

クレジット市場でのリスクテイキングにどっぷり漬かっていたGECCの業績悪化が激しく、トリプルAの信用格付けの維持が難しいんじゃないかとウワサされている。

そのGEのイメルト会長が、先月、株主宛に出したレターの全文が公開された。(*イメルトの株主宛の手紙全文はこちらへ。)

その手紙の締めくくりが、オバマ発言とほとんどシンクロしておる。

“GE will be a better company winning through this crisis. Your GE teams have dug in and are dedicated to the tasks ahead. My thanks go out to all investors who continue to support our efforts. If you are a prospective investor, let me say, now is the time to invest in GE!

『この危機を乗り越えたとき、GEはより良い会社になっているでしょう。GE経営陣はすでに策を講じており、それに全力投球する所存です。我々の努力を引き続きサポートしてくれているすべてのインベスターに深くお礼を申し上げたい。そして、これから投資をしようと考えておられる方には、いまこそGEに投資する時が来た、と申し上げておきましょう!』

で、「いまこそ!」の「いま」がいつなのかというと、このイメルトの手紙の日付は、今年2月6日。

2月6日のGEの株価、$11.10。

今日(3月4日)午後1時過ぎのGEの株価、$6.38。

GE銘柄、株式だけじゃなくて、債券市場でも嫌われているみたいだ。

昨日伝わってきた債券側のトレーダー情報によると、GECCのCDS、昨日の午後だけで200bpsも拡大し、アップフロントペイメント(Upfront Payment=将来のキャッシュフローの一部を前払いさせる取引形態)なしにはトレードできなくなってるらしい。市場で格下げ懸念が高まっているとはいえ、まだトリプルAの会社ですぜ。トリプルA債券がアップフロントペイメント求められるなんて、聞いたことないよ。

たしかに、グラハム流の正統派投資分析では、株も債券も、オバマやイメルトの言うように「売られすぎ(Oversold)」なのかもしれない。

でも、この異常事態のもとでは、どこが底なのかが見えてこない。

ファンダメンタルズ分析だけに頼るのは怖いと誰もが思っちゃうんだよね・・・。


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