Wednesday, October 7, 2009

政治的に正しい行為は市場規律と相容れない

日本では亀井金融担当大臣が、モラトリアム法案を通すとか息巻いているそうで。

で、モラトリアムのせいで中小金融機関のほうに悪影響が及んだら、それも国がなんとかしてあげる、とか言ってるそうで。

さらには、日本で家族間の殺人が増えてるのは大企業のせいだとか、アメリカ型経営が悪いとか、吼えてるそうで。

いやはや・・・(呆れて言葉続かず)。

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この日本発のニュースを読みながら、筆者は頭の中で、「国は違えど、似たようなアホンダラ政治家はいるものよのぉ・・・」と思っていた。

というのも、アメリカにも、バーニー・フランク(Barney Frank、マサチューセッツ選出、民主)という名の下院議員がいて、彼の提案している『クラムダウン法案(Cramdown Proposal)』が波紋を呼んでいるんである。

クラムダウンとは、要は、リスケすること。現在アメリカの裁判所には、個人破産を申請したひとの財産の一部にあたる持ち家にローンが残っている場合、そのローンをリスケジュール(=Rescheduling、融資条件を変更・緩和すること、以下リスケ)する権限はない。

現行の法律では自己破産すると持ち家は没収されてフォークロージャとして整理清算の対象となるわけだが、実際に本人が住んでいる持ち家(Primary Residence)の場合は、フォークロージャに追い込むのじゃなくて、その家に残っているローンをリスケしてやって返済負担を軽減してやれるような法改正をしようという声が、サブプライム危機が社会問題化してきた一昨年あたりから一部の政治筋を中心に盛りあがってきていた。

このアイディアの旗振り役になってきたのが下院のフランク議員。彼は、裁判所に権限を与えて(つまり、金融機関側から融資条件決定や変更の権利を剥奪して)、貸出金利低減や期間延長などの条件変更および元本ヘアカットなどを決めさせよう、と言ってるんである。

『クラムダウン法案』は、これまで2回、議会の審議に持ち込まれているが、2度とも上院で否決されている。

だが、つい数週間前の9月半ば、フランク議員は「住宅ローンの条件緩和プログラムを政府が作ったのに、金融機関はあまり利用していない。公的資金で資本援助もしてやったのに、積極的に貸出しを増やそうという姿勢も見せない。フォークロージャの増加に歯止めがかからないのは、金融機関がやる気ないからだ。金融機関が重い腰を上げるのを待ってるよりも、裁判所に権限与えて緩和条件を決めさせて、金融機関は裁判所の決定に従ってもらう、そういうやり方のほうが効果がある!」と述べて、昨年春にくじかれた『クラムダウン法案』の復活をにおわせた。

こうした動きに対して、モルゲージバンカーズ協会や金融機関らは「冗談じゃない!」と血相変えてワンワン反対している。

そりゃー、反対しますよね。裁判所でどんな条件になって出てくるかわからないんだから。それでなくてもリスク高いと考えられている住宅ローンのポートフォリオ全体の不確実性がさらに高まって、ポートに内在するリスク量の計測がいま以上に困難になるんだもん。

フォークロージャでポートフォリオから腐った部分を外してしまうことは、最終的な損失額は大きいかもしれないが、ダラダラと腐り続けるのを先延ばししてポートに持ち続けているより、経済的にはいいことがある。

それに、とどのつまりは、雇用市場が悪化してて、モルゲージローンの【支払い原資】、すなわち【給料】が不安定だってときに、月々の支払いを多少軽くしてやったって、そういう借り手は、再びすぐに延滞するに決まってんだから。そうなると、またまた「不良」に逆戻り。

銀行からしてみたら、裁判所の命令で不良債権をバランスシート上に持ち続けていなくちゃいけないという意味になりますからね。反対するのは、あたりまえ。

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このフランク議員、一介の弱小議員なら無視してればいいんだろうけど、彼は80年代初頭からずっと現職を勤めてるベテランで、(ちょっとハチャメチャな強烈キャラが受けて)一般有権者からは結構人気があり、下院の金融機関に関する問題を話し合う諮問機関 Financial Service Committee の委員長でもある、という米政界の重鎮である。彼が委員長を務める委員会では、現在、金融規制をテーマに議論を進めてる。

亀井さんもそうだけど、なまじ影響力のあるベテラン政治家だってところが、始末悪い。

そして、往々にして、この手の政治筋による金融市場介入は、【ロジック】よりも【政治的思惑】や【ポピュリズム】が優先されるから、「有権者保護」という御旗のもとに、さんざん市場規律に横やり入れて、挙句の果てが、財政負担という重しになって(保護されるはずだった)納税者にコストが戻ってくる、そういう例が多いよな。

前回のMHJ記事で紹介したFederal Housing Administration(FHA)も、そのいい例である。

前回の内容だけだと、FHAってずいぶんズサンなことやってたのねー、と思われるかもしれないが、FHAの財務内容というのは、実は2005~2006年ごろまでは、持ち家の一軒家のみ対象で投資用物件は対象外という絞込みと政府機関ゆえのスクリーニングや手続きの煩雑さも手伝って、けして良くはなかったが、そんなにひどくもなかった。最初から低所得者などのリスク高めの借り手を相手にする公的機関なので、民間銀行のプライム融資全体の延滞率よりも悪かったが、民間が出してるサブプライム融資全体の延滞率よりはマシ、という“まあまあ”な状態であった。

実際2007年7月のFHAのフォークロージャ率は、民間金融機関が出すサブプライム融資のフォークロージャの半分にとどまっていた。FHAのトップは、政府機関といえども市場規律を経営に持ち込んで徴収するプレミアムに借り手のリスクに見合わせて差をつけることを検討したい、とまで言っていた。

それが、急に財務内容が目立って悪化を始め、もう手遅れと思わせるまでドツボにはまりだしたのは、2007年の後半からサブプライム問題が社会問題として表面化し、政治筋が何とか手を打とうと動き出し、延滞している債務者の救済のために「政府機関であるFHAを利用しよう」という動きが活発化して以降、である。

2007年8月、当時のブッシュ共和政権は、急速に広まりつつあるサブプライム延滞と予想されるフォークロージャの増加に対処するため(だが、本音のところでは、翌年の大統領選を意識して、共和政権を継続できるかどうかという政治的にもっとも重要なタイミングでホームレス増やすわけにいかん、という政治的思惑が働いて)、「FHA改革」と称して、FHAの保険対象拡大策を打ち出した。

このとき、フランク議員を筆頭に民主側は、ブッシュのやり方は手ぬるい、ファニー、フレディやFHAなど準政府機関が設定している「貸出上限」を引き上げろ、と要求した。いちおう表向きは「市場寄り」を自負してたブッシュ政権は、さすがに、それやると民間による貸出のクラウディングアウトに繋がるからと反対。さらにフランクは、FHAの手続きをもっと簡素化して申請しやすくしろとプレッシャーかけたが、FHAのデフォルトリスク上昇を懸念する共和党サイドが難色を示し、このときは彼の主張は通らなかった。

しかし、2008年に入ってからも住宅価格の下落が続いて問題は大きくなるばかり。ブッシュ政権は、サブプライムの借り手救済策をさらに拡大すべく、一年後の2008年の夏には、フレディら政府系の貸し出し上限を大幅に引き上げ、さらに、金融機関が担保価値を現在の市場価格まで償却し元本を低減させてリファイナンスするならばフォークロージャになりかけてる借り手でもFHAが保証を出してあげるという条項が含まれた The American Housing Rescue and Foreclosure Prevention Act という法案が議会を通過。

このときも、政界の一部では、FHAが高レベルのリスクテーキングをすることに懸念を示し、こんなことを続けていたらFHAを閉鎖する結果につながりかねないと心配する声もあったが、フランク議員は、そうした懸念に対して、こんな言葉を吐いて一笑に付した。

”The only way the program could jeopardize the agency is if none of the 500,000 borrowers expected to be helped by the program repaid their loans.”

「このプログラムがFHAの経営地盤を揺るがすような事態が起こるとしたら、それは唯一、このプログラムから援助を受けるであろう50万人の借り手が誰ひとりとしてローンを払わなくなるときだ。」


50万人の借り手が“全員”ローン返済しない状況?全員デフォルト?延滞率100%?ありえねーだろ、そういう数字。フランクのおっさん、実にメチャクチャなこと言って、強気振り回していたんである。

そして、オバマ政権に移行してからも、住宅市場の状況はご承知のとおり。

オバマ就任直後の2月、現政権は Making Home Affordable (MHA)というプログラムに着手して、実質的にはブッシュ時代に始まっていた援助内容をレベルアップし、政府のリスクテーキング姿勢をさらに一歩進めた。

現在、フレディ、ファニー、FHAら政府系の支援付の住宅ローンの借り入れ可能額は、最高72万9750ドルである。

でもね、73万ドルっていったら8千万円相当ですよ。仮にこれがLTV=80%だとすると、一億円の家買うのに政府の援助付けてもらえる、という意味ではないか。

73万ドルの借り入れ元本を、期間30年で、年利5%で計算すると、月々のローン返済額約4000ドル。これに車のローンだの、クレジットカードの返済だの、学生ローンだの、借金ぜんぶあわせた額が税前収入の55%を超えてると政府プログラムは使わせてもらえないそうである。

だけどさ、仮に毎月1万ドルの税前収入がある家族(年間12万ドル)がいたと想定して、そこから所得税を払い、月々5500ドルの借金(うち4000ドル住宅ローン)もキチンと返すとなると、住宅ローンの金利から生まれる税効果を考慮したとしたって、生活費(光熱費込み)として手元に残るのは、一週間650ドルあるかどうかってぐらいだよ。失業保険が週400ドルかそこらなんだから、年収1千万円以上あっても、実際の生活は失業保険の手当てより少々マシってぐらいでしょ?でも、妻と子供が二人いたら、そんなもんじゃこの国で生活できんだろが??ということは、そういうひとたちは、ふたたび借金地獄に戻ってゆくのである・・・。

(怖いのは、Economy.comによると、全米のホームオーナー5100万世帯のうち、約3分の1にあたる1600万世帯が、月々の借金返済が税前キャッシュフローの55%のライン超えちゃってる、という話。情報はここ。)

もっと現実的なケースを想定して、仮に住宅ローン分が税引き後の収入の3分の1にあたるとして逆算すると、これだけの住宅ローンを払い続けることができるひとは、年間25万ドルの「安定収入」を期待できるようなひとじゃないでしょうか。でも、年収25万ドルのひとは政府支援を受ける対象にならんでしょ。

政府支援の対象者で、かつ、月々4000ドルもの住宅ローンを今後もずっと払い続けることができるひとって、どこの誰? そういうのを、Irrational Behavior(非合理的行為)というんじゃないでしょうか。Irratiobal Behaviorを支えてあげるために、我々の税金使う。

だから、政府のやることは、ズレてる、ってんである。

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政府プログラムが刺激となって住宅市場の下支えになるハズだったが、雇用がこのザマでは、どうしようもない。

刺激どころか、前回のMHJ記事で書いたように、9割の住宅資金が政府支援がなければ回らないのが現状である。

結局、そうやって政府の支援枠を拡大し続け、デフォルトリスクを取り込むにいいだけ取り込んで、挙句の果てには、政府系金融機関の救済措置になるんだから。それに使われるカネも、わたしの税金だ。しかも今後さらに、Option ARMのリセットがドバーと乗っかってくるんだから、フォークロージャは止まらない。で、もっと支援枠を拡大するはめになり、リカバリーできない最終損失がいくらになるのか、想像するのも怖い。

フランク議員みたいのに言わせると、住宅市場がなかなか活性化しないのは、金融機関が貸し渋りしてるからだそうでして。だから『クラムダウン』が必要だ、と。

金融機関が言うこときかないなら、腕をひねり上げて、無理やりリスクとらせてやるぞ、ということか。

フランク議員の発想は、亀井大臣の発想と、まったく同じね。

こういうひとたちって、金融機関がなぜ、いま、融資を積極拡大して信用リスクを自己のバランスシート上に取りたがらないのか、取りたくても取れないのか、そこのポイントは、まったく考えたことがないんだろうな。(答えは、リスクキャピタルが足りないから。)

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結局、こうした政治サイドの市場介入が何やってるかというと、金融市場の社会主義化を進めているんである。

だが、完全なソーシャリズムは実行できないから、表向きは市場主義を尊重するフリして、実際は市場規律を歪める手伝いに精を出し、大衆を黙らせるためには金融機関を悪代官にみたてた水戸黄門劇で本質論をごまかして、将来の財政悪化(=我々の税負担増加)の種まきを、いまからせっせとやっているんである。

Eric Englund というエコノミストが、GSE救済の8ヶ月前にあたる2008年1月に、『カントリーワイドとモルゲージ社会主義の失敗』と題する長文のコメンタリーを書いている。

Countrywide Financial Corporation and the Failure of Mortgage Socialism
(LewRockwell.com,1/28/08)

このコメンタリーで、エングルンドは、当時のブッシュ政権が推進していた住宅政策はアメリカンドリームという言葉を借りた「モルゲージ・ソーシャリズム」であり、全米最大手の住宅ローン会社カントリーワイドのCEOアンジェロ・マジロは、政治的に正しい(Politically Correct)行いをすることで、市場規律に背を向けて巨額の富を得たのだと書いている。

このコメンタリーには、2007年10月にブッシュ大統領が言った言葉が引用されている。

"Two thirds of all Americans own their homes, yet we have a problem here in America because fewer than half of the Hispanics and half of the African Americans own their home. That's a homeownership gap. It's a gap that we've got to work together to close for the good of our Country, for the sake of a more hopeful future. We've got to work to knock down the barriers..."

「アメリカ家庭の3分の2が自分の家を持っている。だが、米国にはまだ問題が残っている。なぜなら、持ち家比率は、ヒスパニック層では半分以下、黒人層では半分しか到達できていない。これは、ホームオーナーシップの格差だ。より希望に満ちた未来のためにも、我々はともに力を合わせて、この格差を縮めてゆくよう努力しなければならない。この格差を生むバリアは壊してゆかねばならない。」(引用終)


低所得者層にサブプライムローンを提供することは、「ホームオーナーシップをすべてのアメリカ人に!」という政治的意図に沿った行為(Political Correctness)であったが、一方ではリスク管理の基本ともいえる信用力判断と市場規律にのっとったプライシングを反故(ほご)にして、政治的正義を優先させた、その結果こそが、カントリーワイドの興亡と住宅ローン市場の混乱であった、とエングルンドはいうのだ。

カントリーワイドは、従来の銀行の信用審査ではとうてい通らないような高リスクの顧客にも積極的に融資し、それらを次から次へとフレディやファニーに売却し、サービシングフィー(注※)を受け取っていた。

(注※)融資をオリジネートした金融機関が証券化のために外部のビークルに融資を売却してオフバラ化しても、実際の融資の回収などの実務は引き続き手がけることが多い。サービシング・フィーとは、その回収実務などに支払ってもらう手数料のことで、2007年ごろの手数料のレートは、固定金利の場合25bps、ARMの場合は37.5bps、FHA保証付融資の場合は44bps、サブプライムの場合はそれによって異なる、とある。(詳しくはこちら。)つまり、融資額が大きくなればなるほどサービシングの手数料収入も増えるわけで、カントリーワイドの場合、ピーク時には1.5兆ドルの融資サービシングを手がけ、ここから発生する手数料が最大安定収益源であった。

「持ち家=アメリカンドリーム」という政治的等式が成り立っているからこそ、フレディやファニーも、政府がスポンサーになってるわけである。

で、そのフレディにとっても、カントリーワイドのような大手の住宅ローン会社は、どんどん融資を持ってきてくれるパートナー的存在になっていた。

2008年の3月、ちょうどベアスターンズがJPモルガンに救済合併されたとき、ニューヨークでは、リーマンブラザーズが主催する機関投資家向けの金融コンファレンスが開かれていて、全米の主要金融機関および海外の大手金融機関のトップなども集まって、注目されていた。 (いま振り返ってみると、リーマン主催の金融コンファレンスって・・・すごいコンファレンスであったな・・・。)

筆者もそのコンファレスには出席してて、ちょうどフレディのプレゼンがあったので聞きに行ったのだが、プレゼン後のQ&Aの席で、当時のフレディのCFOが、「カントリーワイドはフレディにとって最大かつ最重要顧客。政府もそれは承知していて、モルゲージ市場が安定度を早急に取り戻せるよう、常に互いに連絡を密に取り合い、きっちり協調体制を敷いて一緒にがんばっている。」みたいな言葉を述べたのを、筆者はいまでも覚えている。

カントリーワイドとフレディと米政府は、一蓮托生の間柄を長年続けていたんであるよ。

だからこそ、リーマンショック後、フランク議員ほか政界関係者が「寝耳に水」みたいな顔してウォール街に責任なすりつけてバッシングするのを見ると、「あんたらこそ、ずっと何やってたのさ。」とつい言い返したくなるんである。

ソーシャリズムと市場規律は相容れない。

ブッシュの時代は、【Politically Correct】のために規制緩和をやったが、ソーシャリズムとキャピタリズムを混合し規制監視をおろそかにして市場の暴走を許した。

オバマに替わると、やっぱり、【Politically Correct】のために規制強化を推進しようとし、市場が持つ健全な機能まで狭めようとしている。

いずれにせよ、政治筋が介入して市場に圧力かけたり市場規律を歪めたりすると、たいがい、ろくな結果にはならん。

バーニー・フランク、少し黙っててほしい。(でも、黙らんのよ、このひと・・・)




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Wednesday, September 30, 2009

自作自演の市場回復の果てはブラックホールの恐怖

☆ モルゲージローンの月々の支払い額を下げたり、現金の引き出しが可能です!
☆ 借り換えの際はLTVは95%までオッケー!
☆ 頭金はローンの3.5%あればオッケー!
☆ クレジット審査はフレキシブル!クレジットスコアが低くても安心!

上は、某住宅ローン会社の貸し出し条件の『広告文』である。

いえ、2007年ごろのカントリーワイドの広告じゃありません。

2009年9月現在、FHAが、金融機関を通じて提示している貸し出し条件である。FHAとは、米国政府の直轄住宅ローン公社【Federal Housing Administration】のこと。(画像はSeeking Alpha内のブログから。)





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FHAは30年代の恐慌最悪期に安定的な住宅購入資金を提供する目的で作られ、現在はHUD(Department of Housing and Urban Development = 米住宅都市開発省)の一部になっている。

同じく“政府系”には、前回のMHJで登場したフレディマック(FRE)やファニーメイ(FNM)がいるけど、フレディやファニーってのは、米国政府が“スポンサー”になっているため、GSE=Government Sponsored Enterpriseと呼ばれてるが、政府が救済措置で80%オーナーになる前は、れっきとした民間の株式会社であった。FREやFNMがやってた業務は、一般銀行や民間金融会社がオリジネートした住宅ローンを買い上げてプールを作り、それを証券化してMBS(Mortgage Backed Securities)にして市場の投資家に売る、そういう「証券化業務」をやる会社。

それに対し、FHAというのは、正真正銘、政府の一部であるから、米国政府という信用力をバックに一般商業銀行らがオリジネートする住宅ローンに【保証】を出すことで、オリジネーターが取った信用リスクを政府に移管する(リスクトランスファーする)、そういう「保証(保険)業務」を仕事にしている公的機関である。(フレディやファニーメイらGSEと、FHAの業務内容を混乱なさらないように。)

2006年ごろのデータでは、米国の住宅融資市場は10兆ドル市場と呼ばれてて、米国の債券市場全体の4分の1に相当する巨大な資金市場。うち5兆ドル超が、フレディやファニーメイやFHAのの息がかかっている、Agency Residential Mortgage Loans であった。ものすごく巨大な市場のため、この市場が崩壊するとグローバルで回ってる債券市場全体に影響がおよぶからね。それで政府も救済にやっきだったわけよ。

★   ★   ★

前置きが長くなったが、そのFHAなんですが、この公社の財務が相当ヤバイことになってきてて、フレディやファニーのように近々救済措置を取らないと破裂しそうなんである。

「FHAがヤバい」という話は、実は一年以上も前からForbesとかが結構しつこく記事にして追いかけてて(この記事とかこの記事)、住宅関連資金市場に関わってる者にはよく知られた話だったが、昨年のフレディマックとファニーメイの救済措置劇(救済総額1000億ドル)があまりに強烈だったため、それより規模の小さいFHAは、すっかり陰に隠れてしまった感がある。

だが、目立たないのをいいことに、今回の記事の初頭に紹介したようなゆるい融資条件でリーマンショックの後もドンドコ気前良く保証を出し続けてきたのがFHA。

HUDが今年の5月に議会に提出した2010年予算案の詳細を読むと、2008年度中(07年10月-08年9月)にFHAが提供した保証総額は2050億ドルだったが、2009年度には、年の前半(08年10月-09年3月)だけで保証額は1580億ドルだったという。

件数でみると、ここ数年の伸び方はさらに顕著。シングル・ファミリー(一軒家)向け融資の保証件数は、2007年度63万9千件だったのが、2008年度には120万件とほとんど倍増、現在のペースを続けると、2009年度には200万件に達する見込み、と書いてある。

サブプライム融資がピークだった2005年ごろまでは住宅融資市場でのシェアは2%に満たないぐらいの弱小プレーヤーだったのだが、近年のこうした活発な保証活動を反映し、いまや、なんと、年間に米国でオリジネートされる住宅ローンの20%がFHAの保証を受けてる、というのだ。

気前いい条件で貸しまくり、わずか数年で市場シェア20%に急成長。(でも、それって、サブプライム融資の焦げ付きで破綻してバンカメに吸収合併されたカントリーワイドが取ってたビジネスモデル、そのものじゃんか。)

市場シェア急拡大の傍らで、当然のことながら、FHAに流入するサブプライム融資のリスクは膨れ上がり、したがって、リスクポートフォリオの劣化も激しさを増し、モルゲージバンカーズ協会(MBA)によれば、「FHAが保証を出している住宅ローンの実に17%が一度は月々の支払いを延滞したか、あるいは、すでにフォークロージャに入っている」という。

一般論で申し上げると、銀行業界ではですね、一般に「住宅ローン」ってのはですね、有担保で小口融資という性格上、無担保大口企業向け融資とは異なり、(1)リスク集中が起こりにくく、(2)ポート全体の内在リスク量は少なくて、(3)最終損失額は小さい、というのが【長年の通説】だったんであります。過去の貸倒れ実績の統計みても、実際、その通りだったんだよね。

その【通説】がサブプライム問題勃発でひっくりかえってしまい、MBAの推計ではモルゲージ業界全体のフォークロージャ含む不良債権比率は13%という最悪の数値になっている。今年にはいってからは、サブプライムに加わってプライムローンの不良化も進行し、数値は悪化し続けている。ポートフォリオのクオリティを同じ尺度で計ると、FHAの場合はさらにひどくて、すでに不良化率は17%ですと。(うち、90日以上延滞が5%弱。)

17%・・・銀行の財務リスクに明るい者なら17%と聞いたら誰だって、サーと顔から血の気が引く数字である。

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そうこうしてたら、今月17日、HUD住宅都市開発省は、FHAのキャッシュリザーブ(貸倒引当金に相当)が議会で要求されている2%の最低ラインをこの10月には下回る可能性があると述べたことが報道された。

Housing Agency's Cash Reserves Will Drop Below Requirement (Washington Post, 9/17/09) 

このニュースを受けて、FHAも救済措置が必要なのではというスペキュレーションが高まったが、関係者は「大丈夫、そんな必要ない」の一点張り。

だけど、リーマンショック後、現在でも、サブプライム並みの条件で保証出し続けてるわけなんだから、この公社の最終的な不良債権比率は更にひどくなること、間違いなし。失業率が改善してないことを考えると、筆者の感では、FHAの同比率が20%~25%に上昇する日もさほど遠くない、と感じられるな。

銀行アナリストにとっては、マクロ経済の改善が近日中には期待できない段階で、銀行の融資の劣化比率が20%超えちゃったら、「財務回復はもはや不可能」=「三途の川渡る」ってのと同じ意味ですからね。

FHA側は、対策として、今後は審査をより厳格化するだの、不正融資のあっ旋をもっと厳しく取り締まるだの言ってるが、こんな比率になっちまったら、そんな対処法、もはや、焼け石に水さ。

どうするつもりなんだとワーワー言ってたら、案の定、数日前(28日)のウォールストリートジャーナルは、米政府が350億ドルをかけて、近日中に、なんらかの公的支援をFHA向けに行う用意があるらしい、と伝えた。

$35 Billion Slated for Local Housing (WSJ, 9/28/09)

フレディとファニーメイに突っ込んだ公的資金はそれぞれ500億ドル。次はFHAに350億ドル・・・?

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8月3日のワシントンポスト紙に、フレディマック会長ジョン・コスキネン(John Koskinen)のインタビューが載った。

Another Leg of Freddie Mac's Long Relay (Washington Post, 8/3/09)

同会長は、「明らかに住宅市場の最悪期は脱した。(“The worst is clearly behind us。”)」と述べて、楽観的なトーンを崩さなかったが(←役職柄、当然のことだが・・・)、中でこんなことを述べている。

“I continue to be very optimistic that what we've demonstrated for several months now is the critical role that both we and Fannie Mae play in support of the national housing market. Without the two of us and [the Federal Housing Administration], there would be no mortgage market. Over 90 percent of mortgages now are being bought by Freddie, Fannie or FHA.  It's clear we have a critical function that we perform.”

「全米の住宅市場を支えるという極めて重要な役を我々フレディとファニーメイが担っていることがこの半年あまりの間に明らかになったわけだし、わたしは引き続き(フレディの今後の事業展開については)非常に明るい見通しを抱いている。
我々とFHAがいなければ、モルゲージ市場は存在していない。今日(こんにち)出されてくる住宅融資の90%以上がフレディかファニーかFHAが買っている。我々が重要な機能を果たしているのは疑う余地はない。」


住宅融資の90%以上が、政府の手を借りなければ、回らない。それが現実。

一般の民間金融機関には、住宅ローンのリスクをとることもできなければ、その気もない。

こういう状態の、いったいどこが、「クレジット市場が安定してきている」と言えるのだろうか。


★   ★   ★

FHAの保証付き融資はジニーメイに流れていき、そこで証券化されて、エージェンシー債市場を形成する一部になる。

しかし、エージェンシーMBS(Mortgage Backed Securities)の市場は、その後も、ぜんぜん改善・回復してなくて、フレディらがエージェンシー債を発行するたび、ニューヨーク連銀がそれらMBSを買い取って、エージェンシーのキャッシュフローをまわしてやってる、というのが実態である。

その証拠に、先週9月23日には、連銀はMBSの買取期間を今年一杯から来年3月まで【延長】することを発表。買取上限1兆2500億ドル。NY連銀のサイトにこのMBS買取プログラムのQ&Aがあるが、それによると、9月24日の週から買い取り額は徐々に減らしてゆくそうである。

バーナンキ議長はことあるごとに、「クレジット市場は安定してきた」と述べるけれど、連銀のトレジャリーやクレジットの買取プログラムがあるから回ってる、ってだけの話だと、わたしなんぞは思うね。

ここから先、買取額を徐々に減らして出口に向かうには、その分を民間金融機関が受け継いでリスクテーキングしなくちゃいけないわけだが、少なくとも、住宅資金市場については、民間側のリスクアペタイト(Risk Appetite)は十分とはいえない。

NY連銀のQ&Aには、こんなくだりもある。

Q) Does the agency MBS program expose the Federal Reserve to increased risk of losses?
A) Assets purchased under this program are fully guaranteed as to principal and interest by Fannie Mae, Freddie Mac, and Ginnie Mae, so the Federal Reserve's exposure to the credit risk of the underlying mortgages is minimal. The market valuation of agency MBS can fluctuate over time based on the interest rate environment; however, the Federal Reserve's exposure to interest rate risk is mitigated by the conservative, buy and hold investment strategy of the agency MBS purchase program.

Q) エージェンシーMBS買取プログラムは、連銀にとって、損失が拡大するリスクをとることにならないのですか?
A) このプログラムで買い取られる資産(MBS)はファニーメイ、フレディマック、ジニーメイによる完全保証を受けており、参照資産(←この場合オリジネートされた住宅ローン)のクレジットリスクに連銀がエクスポーズされる可能性は最小限に抑えられています。エージェンシー債の時価はその時々の金利環境で上下しますが、しかし、保守的なバイ&ホールドの投資戦略を採用することで、連銀の金利リスクへのエクスポージャは減少されます。


MBSの発行体が完全保証する債券ならば確かに、クレジットリスクはそのまま政府(厳密には、フレディらの80%オーナーである納税者)が取ってることになるんで、連銀は取らなくてもいいよね。

でも、いま連銀が買っている分を、市場で民間資金に買い取らせるとなったら、フレディらから「100%保証」という形では出せんだろ?それやったら、モラルハザードそのものじゃんか。

要するにですね、マーケットの掟(おきて)としては、そこにリスクがあるかぎり、誰かが【最終的なリスクテーカー】にならないといけないわけですね。

FHAの状況(=オリジネーションの段階)をみても、エージェンシー債の市場(=証券化の段階)の状況をみても、どちらも、住宅資金のクレジットリスクの最終的なリスクテーカーが現在誰かというと、政府が最終的なリスクテーカーになっているんだよな。 つまり、最終損失は政府(=納税者)が取る。

それのおかげで、なんとか住宅融資市場が回っていて、統計上は住宅需要が出てきているように“見える”ということである。でも、政府がリスクとってくれてなかったら、実態はもっともっとひどいはず。

民間の金融機関が住宅ローンのオリジネーションにも、MBS投資にも、積極的に関与したがらないのは、リスクが高すぎて腰引けちゃってる(=言い方変えると、リスクに見合うリターンが期待できない)からに他ならない。

「クレジット市場が正常化する」というのは、政府じゃなくて、民間資金が、最終的なリスクテーカーとなったときにようやく言える言葉だよ。【自作自演の資金循環】を指して「正常化に向かっている」とか言われてもな。

9月15日のMHJ記事で、筆者がバーナンキのことを「ファンタジー・ベン」と呼んだ所以は、ここにある。

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政府がモルゲージのクレジットリスクのブラックホールになる話が、これで終わりかと思ったら大間違い。

住宅融資を扱う金融機関や業者らは、ここのところ議会にギャンギャン圧力かけて、エージェンシー(GSE)による買取対象になっていない民間のモルゲージローン(Non-Agency Mortgageと呼ぶ)も、ジニーメイのプールに買い取らせて証券化して政府保証つけろ、と騒いでるらしい。

Mortgage Bankers Push for Federal Loan Guarantee (Bloomberg, 9/2/09)

現在、ジニーメイは、FHAとかVA(退役軍人の世話する省)とか農務省とか先住民の世話する公的機関とか、そういう政府関係の公益機関から保険や保証がつけられている住宅ローンに限って担保として受け入れMBSを組成・発行しているわけだが、住宅融資を活性化させるために、政府関係の公益機関に限定しないで、ノン・エージェンシーの融資(純粋な民間資金)にも政府保証の枠を広げろというんである。

現在、ノン・エージェンシーの住宅ローンは、1.8兆ドルほど残高があるらしいんだが、これが20%ぶっ飛んでごらんなさい。

そして、こちらは住宅じゃないけれど、FDICの預金保険ファンドが枯渇、というニュース。銀行破たんが続いてて、破綻銀行の預金者に払い戻すカネが9月30日(今日です)を持ってマイナスになる、とFDIC米預金保険機構のトップが認めた。

FDIC Discloses Deposit Insurance Fund Is Now Negative (Zerohedge, 9/29/09)

【預金の保護】はどうなる?!?!?

・・・(しばし沈黙)・・・。

・・・恐ろしいことである・・・。

ブラックホールのスケールで言ったら、2000年頃の日本どころの騒ぎじゃないな。

政府自作自演の住宅市場回復のもと、次々と出されてくる、救済資金要求-。

名づけて【救済資金ブラックホールの恐怖】



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Friday, September 25, 2009

政府系で働けば給料5百万ドル保証

ぺンシルバニア州ピッツバーグで開かれてたG20サミットで、最重要議題のひとつに、

「金融機関のエグゼクティブのボーナスにリミットつけるべきかどうか」

というのがあった。

はっきり言って、まーだボーナスのことウダウダ言ってるのか!と呆れた。

20カ国からわざわざトップが集まって、そんなことしか話題がないのかといいたくなるではないか。

ボーナスにリミットつけようが何しようが、「んじゃ、ボーナスやめて基本給あげまひょか」って話になるだけ。実際、ウェルズファーゴなんて、CEOの給与体系を最近変えて従来の「基本給90万ドル+ボーナス」を「基本給560万ドル(5.6ミリオン!)」に変更したし、モルガンスタンレーだってCEO以下トップ数名の基本給を250%上げたよ。これならボーナスゼロでも高額の年俸もらえるよ。

基本給(A)とボーナス(B)がパッケージになって長年払われてきた業界で、ボーナスだけに注目してあれこれ規制かけようが、抜け道なんていくらだってある、っつの。

アメリカとイギリスは、ウォール街とシティ(City=ロンドンの金融街)からの強烈なロビイがあったらしく、ボーナスに明示的な上限をつけるよりも、長期的な業績にあわせて損失の年はボーナスプールから差っ引かれるようなクローバック付き(※注)にしようと提案し、その案で概ね進みそうだった。

(※注)でも、クローバックを強制したところで、すでに大手証券では一部採用済みで、なにをいまさら、である。(今年1月4日付けMHJ記事『ウォール街の今年のボーナスは「CLAWBACK(別名:人質)」と「ドッグフード」)』参照。)

英米側の言い分がおおよそ通り、これでボーナス云々のくだらない議題も終わりかと思っていたら、ドイツのメルケル首相が「せっかくG20で集まったんだから、ここでボーナスの議題をウヤムヤにすべきじゃないわ!」と蒸し返して、フランスのサルコジ大統領もメルケルを支持している、とかいう記事を今日英ガーディアンで読んだ。

G20 leaders split over bank bonus curbs (Guardian、9/25/09)

記事を読むと、メルケルの思惑としては、ボーナスなんてのは表向きのはなしで、つまるところは「英米がG20およびグローバルの金融市場のあり方や方向を決める場でデカイ態度に出て牛耳るのが面白くない」ってことらしく、本音のところでは、【いつものポリティカル・パワー・ゲーム】やってるだけなんである。

ここで、日本の代表あたりが、経験に裏付けられたオピニオンをどーんと吐いたらいかがでしょう。

「各国トップのみなさん!時間の無駄だから、そろそろボーナスの話、やめませんか。日本の金融機関のボーナスなんてねー、あなた、頭取クラスでも欧米の投資銀行のジュニアバンカーより低いぐらいでしたけどねー、それでも、80年代は無茶苦茶なリスクテーキングしてバブリましたよ~。だから、ここでボーナスというインセンティブだけを連中から取り上げようが、リスク取るとなったら連中はメチャクチャやりますからね~。関係ないんですよ、それだけじゃないんです。どうせ規制強化の話するなら、市場のメカニズムとか、自己資本のクオリティとか、そういう重要なポイントを話し合ったほうがいいと思いますがね~。」とでも、ガツンと言ってやればいいのに。

(・・・と筆者なりの提案をここまで書いて、日本のいまの金融担当相の顔をフト思い出し、それがいかに無謀な提案かに気づく筆者であった。)



   ★   ★   ★

さて、フレディ・マック(FRE)が新しいCFOを迎えるというニュースを読んだ。

新CFOになるのは、ロス・カリ(Ross Kari)氏、50歳。

前職は米国中西部最大の地方銀行フィフス・サード銀行(Fifth Third)のCFOだった人物で、その前は、フレディのサンフランシスコ支部でエグゼクティブやってたひとらしい。

彼の前にフレディでCFOを務めたDavid Kellerman氏は、今年の4月に自宅で自殺(当時41歳)したのは記憶に新しいところ。

Freddy Mac chie'f 'suicide' amid enquiry (Times Online, 4/22/09)

ちょうど1年前、フレディとファニーメイが大量の公的資金注入で救済措置を受けたわけだが、そのとき公的資金注入の見返りに当時のCEOとCFOはクビ。新CEOには、USバンコープのCFOだったDavid Moffettを外部から基本給90万ドルを提示して招きいれ、新CFOには、フレディに16年間勤務していたベテランコントローラーのケラーマンが内部昇進の形で就任した。

しかし、政府のコントロール下に入ってから、92人のエグゼクティブに「いま会社を辞められたら困る」という理由で多額のリテーナーボーナス(留保奨励賞与)を『公的資金から』支払ったことが発覚。

昇進という形でCFOになったケラーマンも、その92人のひとりとして85万ドルを受け取っていたことが公になり、年が明けてから、当局や議会から執拗な追求を受けていた。

今年の3月というのは、株価急落でパニックモードが最高潮に達してたときで、そのパニックが向いた矛先のひとつが、ウォール街エグゼクティブの高額な給与/賞与だったのは周知のとおり。

外部の執拗な介入と連日の感情的な非難に嫌気がさしたCEOモフェットは、「こんな状態で仕事できるか!」と政府に三行半叩きつけて3月初めに突然辞任(後日アドバイザーとして復帰)。そして続く4月には、CFOのケラーマンが自殺。救済後わずか半年で、フレディは、ふたたびCEOとCFOを失った。

そういう激動の経緯が今年の前半にフレディにはあったわけですね。

そのフレディに、「正式に」新しいCFOが決まったというのだ。

カリ氏がいたオハイオ州に本拠地を置くフィフス・サード銀行も、クレジットバブル崩壊前夜の2007年に住宅バブルでイケイケだったフロリダ州にM&Aで派手に業務拡大し、案の定バブル崩壊とともにずっこけて、30億ドル規模の公的資金支援を仰いだ銀行である。

ずっこけた後に同銀行のCFOになり、経営立ち直しに関与してたのが、今回フレディのCFOとして迎え入れられるカリ氏である。


   ★   ★   ★

だが、話題になってるのは、彼がCFOとしてどうよ、って話じゃなくて、またまた、この新しいCFOに支払われる給料とボーナスがどうよ、って話。

フレディがカリ氏に支払う給料とボーナスの詳細を示した9月24日付けの雇用契約書が公開されている。

その雇用契約書によりますと、彼がもらえるお金やベネフィットはこんな内容だそうで。

(1) 年俸$3.5ミリオン = 内訳は基本給67万5千ドル、追加年俸(?)160万ドル、目標ボーナス110万ドル。

(2) 契約時のボーナス$1.95ミリオン(契約した年俸とは別に、社員になりますと契約書にサインした段階で払われるボーナスのこと)

(3) カリ氏の自宅の(フレディによる)速やかな買い上げ

(4) カリ氏がオハイオ州、ワシントン州、オレゴン州に保有する住居からワシントンDCへの引越しにかかる費用の全額払い戻し


350万ドルの保証付き年俸、プラス、195万ドルの「いらっしゃいませボーナス」ですかい!

この条件を読んで、ちょっと気前良すぎじゃない?と感じないひとがいるのだろうか。

どこでどうやったら、【政府がマジョリティオーナーの実質公的機関】が、こんな給料パッケージを提示できるんだ?

しかも、わずか半年前には、85万ドルのリテイナー・ボーナス受け取ったかどで責められまくって自殺した前のCFO(←勤続16年)がいたってのに、だよ。

カリ氏がどんな凄腕の経営者なのかは知りませんけど、彼がフィフス・サードからもらってた給料は、58万ドルの基本給+10万ドルの契約時ボーナスだったそうですから、70万ドルから一気に5ミリオン超って、これって【夢の転職】どころじゃないよね。

しかも払うと言ってるのが、ほかのだれでもない、「フレディ」だよ、「フレディ」なんだよ。公的資金という生命維持装置で延命してもらってる、あのフレディマックですよ!

でも株主総会もない会社のCFOって、何するの?

基本給やボーナスの額にも驚くが、「今住んでる自宅の始末にお困りでしょうから会社が買い上げてあげましょう」って、それもすっごく気前よくね?さすが、住宅融資専門のフレディマックですこと、新CFO個人の住居の売買まで会社経費におまかせですのね。

財務長官のガイトナーですら、住宅市場軟化のあおりを受けて、財務長官となってワシントンDCに引っ越す際、NY連銀時代に住んでいたニューヨーク郊外の自宅に買い手がつかなくて(笑)、とはいえモルゲージローンの支払いもあるんで空き家にしとくわけにもいかず、仕方ないから賃貸物件にして貸してる、という哀しい話がロイターにすっぱ抜かれてたのに。ガイトナーも財務長官より準政府機関のCFOの仕事をやったほうが、よっぽど待遇よかったわね。

しかし、政府系金融機関の、こういう「破格の雇用条件」って、いったい、誰が決めてるのだろう。政府系のくせに、政府にはチェック機能は、ない?

民間の金融機関には50万ドルでも給料高すぎる、公的資金を受け取った銀行には従業員にボーナス払う資格無し、とさんざん難癖つけてたオバマ政権が、500億ドル超の公的資金を受け取って政府の直接傘下に入った準公的機関のエグゼクティブには、5ミリオン・ダラーズのお約束(しかもクローバック条項無し)ですか、へぇぇぇ・・・。

もしかして、今回のG20で英米サイドがボーナス規制でやたらトーンダウンしたのは、これ以上ボーナスの話を突っ込むと、政府系より低いぞと逆に突っ込まれて墓穴掘りそうになってきたからかな。(笑) 
 
          


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Tuesday, September 15, 2009

シンガポールの幽霊船、年末商戦を占う

1940年に制作されたディズニーのアニメ映画『ファンタジア(Fantasia)』をご存知ですか?

ミッキーマウスが魔法の杖を振るたびに、次から次へとファンタジーが飛び出して、あなたを夢の世界へといざなう、ディズニー映画の傑作中の傑作。



・・・アッ、し、失礼、ま、間違えました、ホンモノはこっちです。



「現時点でリセッションは終了した可能性が非常に高い」(the recession is very likely over at this point.)という今朝のバーナンキ議長の発言が視界に入ってきた瞬間、筆者の脳裏に、ヘリコプター・ベンが魔法の杖を振ってるイメージが湧いたもんで、つい・・・。

今年に入ってから新たにアンダーライトされた住宅ローンの8割がなんらかの政府支援付き。8月の個人消費データも政府支援(Cash for Clunkersプログラムは8月21日のMHJ記事参照)による新車販売のおかげでよく見えたが、小売全体は厳しい状況で、大手家電のBest Buyも売り上げ減で苦戦。

【政府支援】という魔法の杖で、住宅・消費データはなんとか底上げ。それが実態じゃないのか?

魔法使いのファンタジー・ベンが、本日、ワシントンDCのブルッキングス・インスティチューションで行った講演の全文はこちら

   ★   ★   ★

しかしね。「テクニカル的にみるとリセッションは終了」したということらしいが、現実問題として、どうよ。

前回もその前も書いた「夏なのに空港がガラガラだった」という筆者の体験談だが、あの印象どおり、グローバルの航空業界の2009年の赤字幅は110億ドル(1兆円)規模に膨らみそう、という記事が今日のウォールストリートジャーナルに載っていた。

Airlines Face $11 Billion in Losses (WSJ, 9/16/09)

IATA(国際空輸協会)がまとめたもので、乗客数減少と原油価格上昇のインパクトで来年も逆風は続き38億ドルの損失を見込むという。同協会によると、2009年の乗客数は2割減とのことで、前回のMHJで紹介したウォルマートのCEOが言っていた「アメリカ人が今年バケーションに使ったお金は25%減」という数字と近い。

協会の予想では、業界内の倒産は続き、統合がさらに進むとみられる。(JALも数千人単位で解雇するようですね。)

   ★   ★   ★

「全米の学校は9月から新学年が始まるが、普段なら今頃から、新学期用(Back-to-School)需要がチラホラ出始めてもいい時期なのだが、今年は、その新学期シーズンに向けた配達が動き出している様子がみられない。」

7月21日のMHJ記事で書いたUPS社のCFOによる、このセリフを覚えておられるだろうか。

9月初旬に8月の小売統計が出されてきたが、実際、このBack-to-School関連のセールスは、散々という結果だった。

Not Looking Good So Far for Back-to-School Sales (NYT、9/4/09)

UPSの予言、ドンピシャ

Back-to-Schoolセールスは小売業にとってはクリスマス商戦の次に重要な売り出しなのだが、今年はダメだった模様。

クリスマス商戦で盛り返すことができるのか、それを占うにはどこを見ればよいのだろうと思ってたら、「海上運輸」の業界から、なにやら不気味な話題が・・・。

   ★   ★   ★

シンガポール沖に【幽霊船】が多数停泊している、という話題である。

9月13日にイギリスのニュースサイト『Daily Mail』に掲載された記事だが、一昨日から昨日にかけて、アメリカの金融経済ブロガー達の目にとまり、方々で取り上げられていた。

Revealed: The ghost fleet of the recession (MailOnline, 9/13/09)

人のあまり寄り付かないシンガポール沖に、隠れるようにして、積荷も乗組員もいない海上輸送用船舶が停泊しているというのである。タンカーや物資輸送船など、その数5百艘。この記事の書き手は、イギリスとアメリカの海軍を合わせたぐらいの数の船で、積荷総量でいえばそれよりもっと多いぐらいじゃないか、という。記事中に掲載されてる写真をみると、まるで、無敵艦隊風。




地元漁民の言葉:

'We don't understand why they are here. There are so many ships but no one seems to be on board. When we sail past them in our fishing boats we never see anyone. They are like real ghost ships and some people are scared of them. They believe they may bring a curse with them and that there may be bad spirits on the ships.'

「これらの船舶がどうしてここにいるのかわからない。ずいぶん数が多いが、誰も乗っていないようだ。漁船にのって脇を通っても、ひとっこ一人見かけない。本当に幽霊船のようで、怖がってる仲間もいる。呪いが降りかかるとか、悪霊が住み着いてる船だと信じてる者もいるんだ。」


記事は続く。

As Briton Tim Huxley, one of Asia's leading ship brokers, says, if the world is really pulling itself out of recession, then all these idle ships should be back on the move.

アジアの船舶ブローカーの先駆ブライトン・ティム・ハクスレイはこう述べる。もし世界が本当にリセッションから抜け出しているのなら、これらの船舶はみな動き出しているはずだ。

'This is the time of year when everyone is doing all the Christmas stuff,' he points out.

この時期は誰もがクリスマスに向けて活動している時期のはずだ、と彼は指摘する。

'A couple of years ago those ships would have been steaming back and forth, going at full speed. But now you've got something like 12 per cent of the world's container ships doing nothing.'

2~3年前だったら、これら輸送船はフルスピードで航路を往復していたものだ。だが、現在、世界のコンテナ船の12%が何もせずに海に停泊している。

(中略)・・・The cost of sending a 40ft steel container of merchandise from China to the UK has fallen from £850 plus fuel charges last year to £180 this year. The cost of chartering an entire bulk freighter suitable for carrying raw materials has plunged even further, from close to £185,000 ($300,000) last summer to an incredible £6,100 ($10,000) earlier this year.

40フィートのスティール製コンテナを中国から英国に送るコストは去年のレートは£850プラス燃料費だったのが、今年は£180に下がっている。原料を運ぶのに適したバルク輸送船を一艘丸々チャーターするのにかかるコストになるとさらに下がり方が激しく、去年の夏は £185,000 (30万ドル)だったのが、今年の初めは £6,100(1万ドル)という信じがたいレベルまで落ちている。

Business for bulk carriers has picked up slightly in recent months, largely because of China's rediscovered appetite for raw materials such as iron ore, says Huxley. But this is a small part of international trade, and the prospects for the container ships remain bleak.

中国が鉄鉱石などの原料に再び食指を動かしているおかげで、バルク輸送船はここ数ヶ月ですこし持ち直してきている、とハクスレイは言う。だが、これは国際トレード全体でみるとわずかの部分にしか過ぎず、コンテナ輸送の見通しは非常に厳しいものがある。


(記事引用終わり)

ロンドンで最大の船舶ブローカーは、「積荷を輸送するのに£7000かかるとわかっていて、もらえるのが£6000にしかならないのなら、何もしないほうがマシ」と言う。

イギリスで売買される商品の92%が海上輸送によるものだそうで、英国の小売店はクリスマスのためにもう何ヶ月も前から商品の仕入れを考えてオーダーを入れているはずだが、今年は、お店の棚に豊富に商品を並べることができない店も出てくるかもしれない。コンテナ輸送の需要が落ち込んでいる理由のひとつは、もちろん、消費見通しが明るくないというのがあるが、もうひとつの理由は、商人が商品を仕入れようにもクレジットが絞られているケースもあるから、と記事は指摘する。

   ★   ★   ★

海上輸送のことなんて、筆者にはこれまで無縁の世界の話、何も知らない。

でも、素人頭で考えてみても、そうですよね。グローバルの物資の流れを支えている立役者は海上輸送だよね。筆者もかつて仕事でシンガポールを頻繁に訪れたが、アジア最大の商業港シンガポールに積み上げられてたコンテナの数量には、いつ行っても圧倒されたものだったよ。

又聞きの受け売りで恐縮だが、ロンドンには海運専門のBaltic Exchangeというのがあって、ドライバルクの海上輸送にかかる国際取引価格をBaltic Dry Index (BDI)というインデックスにして公表しているんだそうである。



BDIというインデックスのチャートって、筆者は初めて見ましたけど、いや~すごい乱高下ですね。2006年後半あたりから急激に高まったコモディティブーム(とりわけ、中国からの需要が火付けになった鉄・非鉄ブーム)とピッタリあってるな。

こちら(↓)は、S&P500とBDIを合わせてプロットしたもの。2009年7月から株価はBDIから大きく乖離する。ここ2ヶ月の株価の動きは、BDIが示唆する将来の消費動向を無視しているように見えるな。



興味ついでに、世界最大の造船会社である韓国の現代グループのHHI(Hyundai Heavy Industry)のサイトに行って最近の業績(8月26日発表分)を見てみたんだが、おぉ・・・ひどい・・・。今年7月の造船オーダーは前年同期比で98%減。

   ★   ★   ★

巷のエコノミストやストラテジストの間には、米国の在庫が低水準になってきていることで、年後半は在庫調整の進捗とリストッキング(Re-stocking=在庫の再積み上げ)が牽引となって、経済が拡大する可能性を指摘するものが少なくない。

だが、物流の最前線から聞こえてくる話は、FedExやUPSの見通しにしろ、このシンガポールの幽霊船の話にしろ、必ずしも、力強い在庫回復というインプリケーションは、まだよく見えてこないよ。

むしろ、積極的なリストッキングは雇用市場の回復が現実のものとして見えてくるまでは本格始動せず、ギリギリ低いまま在庫水準を抑える形で当面推移してゆくんじゃないのか、という気になってくる。


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Saturday, September 12, 2009

Fedexが気になる

前回の Murray Hill Journal で、「オバマが米国を社会主義国に変えようとしている」という保守対抗勢力のプロパガンダにまんま乗っかって、何でも反対すりゃいいと思ってる連中が増えてきている、ということを書いた。

あの後、オバマは自己が押し進めるヘルスケア法案に議会の賛同を得るため先週水曜日に大演説をぶった。常に沈着冷静が売り物のオバマにしては熱のこもった演説で、メディアの一部は、このスピーチは大成功、保守側を黙らせて医療保険制度の改革に向けてオバマ政権は一歩踏み出した、と伝えたところもあった。

だが、この国に広く深く散らばるハードコアの保守層および極右団体が、そう簡単に引き下がるわけがないんである。

今日(12日)、社会主義反対を叫ぶ皆様が全国から何千人もワシントンDCに集結し、今以上の政府支出に反対の声を上げ、反政府デモを繰り広げたというではないか。デモの中には「ブッシュを呼び戻せ」と書いたプラカードまであった、ってんだから。

Protesters March on Washington (WSJ, 09/12/09)

保守層の抵抗がこうも強いと、オバマのヘルスケア改革、前途多難であるな・・・。

そこにさらに追い討ちをかけるように、12日のウォールストリートジャーナルによると、米国債発行の法的上限は現在12兆1千億ドル($12.1 trillion)になっているのだが、早ければ来月半ばにも、発行総額がこの上限に届いてしまいそうで、この上限を早急に引き上げなければ、米財務省キャッシュフローの危機、というんである。

Treasury Girds for Debt-Ceiling Fight (WSJ, 09/12/09)

現在、米国は週300億ドルのペースで米国債を新規発行していて、国家の借金総額はどんどん膨れていってる。

それでも、目先のインフレ懸念が表面化していないこと、および、低金利を続けていて市中の流動性がガバガバ過剰になっていることで、株高・コモディティ高にあわせて米国債市場も一緒になってバブリぎみ。

先週行われた10年米国債売り出しも大盛況で、Bid-to-coverレシオが2.7倍超えたってんだから。(過去7回の売り出しの平均は2.5倍。)(筆者つぶやき:中国も日本もようやる・・・。)

新規発行は順調にさばけているようであるが、この局面で、「米議会がヘッポコでトリプルAの米国債をデフォルトさせる」なんつーわけには絶対にいきませんから、一時的にでも法的上限の引き上げはなされるであろうけれど、最近やたら勢い付いている抵抗保守サイドは、この上限引き上げに関わる審議を、この機会を待ってましたとばかり最大限利用して、財政赤字+過剰債務の問題をクローズアップし、オバマ叩きに走ることであろう。

そして、CNNを筆頭にメジャーなメディアは、連日連夜、総力挙げて『財政赤字特集』を組むことでありましょう。

この秋の流行言葉は【DEFICIT】-いまから見えてるな。

政権交代以来トントン拍子で(というか有無を言わせず)カネを使い続けたオバマ政権だが、この先は、そう簡単にはいかなくなりそうである。

   ★   ★   ★

さて、昨日(11日)は、911テロの8周年だった。

2001年9月11日から8年後の昨日まで、株価は結局【同じ場所】に戻って来たそうである。(グラフはBespoke Investmentより。)



その11日、いくつか目に付くニュースがあったので、記録しておきたい。

(1)ウォルマートのCEO、米国人のバケーション向け消費は25%減だったと述べる。

前回のMHJで、筆者は、ニューヨークの空港の国内線も国際線も連休なのにガラーンとしてたというアネクドータルなエピソードを書いたのだが、ウォルマートのCEOマイク・デューク(Mike Duke)が同じポイントに言及していた。

9月10日にゴールドマンサックスがニューヨークで主催した小売業コンファレンスの席で、マイク・デュークが述べた台詞。

”And if I were working for bellwethers of the future, the unemployment data would be one that and I think would be an important overall bellwether about what the future holds for us. It is interesting talking to customers this summer in the stores that I visited how many customers cut back on vacations this year and many decided not to take a vacation but I think our data, our research says that as much as a 25% reduction in the average spend per vacation that customers took this summer.”

「将来を占おうとするならば、それをいちばんよくあらわす重要な指標は失業データだと思う。この夏、ウォルマートの店舗に実際に足を運び、買い物客と実際話をしてみて興味深かったのは、ずいぶん多くの顧客が今年はバケーションに使うお金を削っていたことだ。バケーションを取らないことにしたと言っていたひとは少なくなかったし、我々が集めている調査データを見ても、今年の夏のバケーションに使ったお金は平均して例年の25%減だったという結果が出ている。」


デューク氏は、米国人家庭はなるべく外食を控えて家族で自宅で夕食を取り、TVを見たり、(ウォルマートで買った)DVDを見たりして、この夏をすごしていたようだ、と続けた。

みんな自宅でソファに座ってTVを見てた・・・ということはですよ、DVD配信のNetflix(ティッカー:NFLX) なんて、まだまだイケるだろうか・・・などとフト考えてしまう筆者であった。(爆)

10月9日のGSによるGlobal Retailing ConferenceでのウォルマートCEOの発言トランスクリプト全文はこちらでアクセスできます。


(2)FedEx、Q1,Q2の業績見通しを上方修正。

7月23日付けのMHJ記事『ギャンギャンな盛り上がりの陰で、UPSの顔は真っ暗』で、FedEx株を売ろうかどうか思案していた筆者であるが、結局あのままジーと持っている。

で、11日はFedexから業績上方修正のニュースが出され、同社株価は一気に77ドルに+6.4%増!! あー、売らなくてよかったー。(爆)

UPSもつられて4.4%上昇。

7月にUPSが暗~い業績発表やってたときは市場はみな聞こえない振りしてたくせに、FEDEXが明るい材料持ってきたら「FedexやUPSは、将来を占う(=Bellweather)銘柄だ!」だと言ってはしゃいでるんですから、ゲンキンなもんよ。

で、将来を占ってくれるFedexのプレスリリースを読んでみた。(プレスリリースはこちら。)

メディアからは「上方修正」という部分しか聞こえてこないんだが、リリースをよく読むと、予想以上によかった理由は「インターナショナル部門が好調だった」すなわち、お膝元の米国のオペレーションがよかったわけじゃないんである。

同社のリリースには、こうも書かれている。

"Despite some encouraging signs in the global economy, it is difficult to predict the timing and pace of any economic
recovery
. Revenue per shipment declined year over year in each of our
transportation segments, as fuel surcharges declined significantly and we
continue to face a very competitive pricing environment combined with
significant overcapacity in the LTL freight market."

「グローバル経済には幾分ポジティブな兆候は出てきてはいるものの、経済回復のタイミングとペースを予知することは困難である。燃料サーチャージが顕著に低下したことと、LTL運送市場はきわめてオーバーキャパシティの状態にあることに加え非常に価格競争圧力の高い環境に直面していることもあり、配達あたりの収益はすべてのセグメントで年々低下している。」

市場ははしゃいでるが、UBSとおなじく、FedExも、先行きに対する慎重姿勢を崩してはいないようですな。

やはり、ここらへんで、FedEx株、売ったほうがいいだろうか・・・(いいかげん決めろーーーッ!笑)。

また、FedExの場合、燃料コストが業績を左右するので、9月17日にQ1の詳細が正式に出されてくるとき、燃料価格の見通しを同社がどう立てているのか、興味の沸くところである。


(3)8月の輸入品価格、原油価格のあおりで2%に跳ね上がる。

US Import Prices Rebound 2% In August On Energy Prices (Dow Jones, 09/11/09)

7月の0.7%の低下から8月の2%上昇へ。原油製品を控除すると、0.4%の上昇だったという。(グラフはEconomPicより。)



とはいえ、インフレ圧力はまだ目に見えていないというエコノミスト多し。(そうじゃなきゃ米国債あんなに買えんだろ。)この8月の動き、(2)のFedExの見通しとあわせて、注意したい。


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