Thursday, June 12, 2014

ホワイトカラー・エグゼンプションについて

6月11日付けの日経新聞に、日本政府が日本にも導入しようとしている「ホワイトカラー・エグゼンプション」についての記事が載っていた。

年収少なくとも1000万円以上 労働時間の規制緩和  (日経新聞)

(以下記事から引用)

政府は11日、働いた時間ではなく成果に応じて給与を払う「ホワイトカラー・エグゼンプション」について、対象者の年収基準を「少なくとも1000万円以上」とすることを決めた。月末にまとめる成長戦略に明記する。職種は金融のディーラーなど「職務の範囲が明確で、高い能力を持つ労働者」と記す。改革が進まなかった労働規制に風穴が開く。

菅義偉官房長官と甘利明経済財政・再生相、田村憲久厚生労働相、稲田朋美行政改革相の4閣僚が協議して合意した。労働政策審議会(厚生労働相の諮問機関)で、具体的な金額など仕組みを詰める。2015年の通常国会に労働基準法の改正案を出し、16年春の施行を目指す。

政府が新たに導入するのは、1日8時間、週40時間という労働時間の規制を外す仕組み。長く働いても残業代や深夜・休日手当が出ないため、仕事を効率的にすませる効果が期待できる。日本では課長以上の管理職はもともと労働時間規制を外しているが、それ以外の社員を対象から外すのは初めてとなる。
(引用終わり)


この「ホワイトカラー・エグゼンプション」だが、日本の記事やブログを読むと、どうも議論が迷走しているような気がしてならない。

「最初は年収1000万円以上なんて言ってるが、その対象年収をそれよりもずっと低いレベルまでなし崩し的に下げてゆくつもりなのではないのか」という懸念、もっと直接的に言うと、「どんなに長時間働いても残業代を出さないつもりだなバッキャロー」という類の反応が目に付き、日本ではこれの導入に関して、かなり感情的に反応してるひとが多いな、という印象である。

しかし、そもそものところで、この「ホワイトカラー・エグゼンプション」というカタカナ語を、どれほど多くの日本人が理解しているのだろうか。

上述の日経新聞の記事中の用語解説では、次のように説明されている。

「ホワイトカラー労働者(主に事務などに従事する労働者)に対して、労働時間規制の適用を免除する措置。現行法では労働時間の長さで給与や報酬を決めること が原則になっている。一方で、管理職や専門職、企画立案などでは働く時間の長さと成果が比例しない職種も多い。自己管理型労働制によって、こうした労働者 が仕事の進ちょくや生活に応じた柔軟な働き方を行うことを可能にする方式として提唱された。経済界を中心に導入を求める声が高まったが、多くの労働組合か ら残業代ゼロをめざすものと反発を受けた。」

言うまでもなく、「ホワイトカラー・エグゼンプション」とは英語の『White Color Exemption』で、これは米国の労働法に関わる制度の一部だ。だが、日本の労働者の多くが、実は、この『White Color Exemption』という英語フレーズの意味をよく咀嚼しないまま、 「残業代を出さずに搾取する制度を作りやがる気だなバッキャロー」というイメージばかりを膨らませているのではなかろうか。

先日、この記事を読んだときに、筆者はツイッターでこんなことをつぶやいた。





これに対し、@aoyaman1 さんから以下のような反応を頂いた。





「欧米と日本の労働形態の違いは、労働法制ではなく、慣行にすぎない」――前々から感じていた、ホワイトカラー・エグゼンプションに関わる議論が日本で迷走する背景は、まさにこれだろうと思った。


前置きが長くなったが、今回のMHJでは、米国で言うところの、White Color Exemption とは何かを紹介しようと思う。

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White Color Exemption―。

まずは、Exemption という英単語の意味からみてみたい。

exemption 【名】免除、免税、免除(品)、(課税)控除、適用除外

「He is exempt from △△△・・・」 と言うと、「彼は△△△の適用を免れる」という意味である。

White Color Exemption のExemption とは、【何か】の適用から除外されているために、exemptionというのである。それは具体的に何なのか。

これについて語るには、まずは、FLSA という法律について語らねばならない。

FLSAとは『Fair Labor Standard Act』の頭文字を取ったもので、要するに、米国版労働基準法である。

この法律の概要は以下の通り。

① 最低賃金について: 現在、1時間あたり$7.25 (ただし、米国の場合は最終的には州が自州内における最低賃金の決定権を持ち、連邦レベルで決められた最低基準を満たす限りこれを超えることが認められている。州ごとの最低賃金一覧はこちら。)

②  残業について: フルタイム従業員の場合は週40時間を基準とし、40時間を越える労働時間に対しては基本時給の1.5倍あるいはそれ以上のレートで残業代を支払わねばならない。

③  就業時間について: 通常業務とみなされる時間の定義としては、「Workplace(職場)」における就業時間を指す。

④ 記録管理について: 雇用主は従業員が仕事に従事した時間および給与を記録・管理しなければならない。

⑤ 児童の就業について: 児童が就業する場合(例えば、こどもの演奏家や芸能人など) に関する規定


米国企業で働く従業員はすべからく、この法律の下に守られており、例えばある企業が労働条件を自社ルールと称して勝手に決めて、「他所さんは知らんけど、うちは週50時間でみんなにやってもらってるんで、給料もうちのやり方で払うから、そこんとこ、文句言わんといてな!」なーんてことは勝手に言ってはいけないんである。

この米国の公正労働基準法で決められた条件のうち、とくに重要になってくるのが①と②で、Exemption と言っているのは、これらの法規定の適用から除外されている(exempt from the FLSA rules)という意味なんである。

要するにですね、FLSAというのは時間給で給料もらっている従業員に関わること細かい規定なわけだが、これらのルールが適用されない従業員、すなわち、「時給ベースではなくて、サラリーがあらかじめ決まった年俸契約で雇用され、何時間働いても残業代はつかないから就業した時間をタイムカード押して記録・管理する必要のない従業員」 のことを、アメリカでは、Exempt Employees と呼ぶのである。

一方、上記のFLSAの規定がいちいちがっつり適用される従業員、すなわち、しっかり毎日タイムカード押して就業時間が記録・管理され、就業時間が週40時間を越えるとベース時給の1.5倍のレートで残業代をもらえる人達は、「FLSA適用免除にならない」ということで、Non-Exempt Employees と呼ばれる。

(次回に続く)

Sunday, March 16, 2014

トランスアトランティック市場は依然として最重要

明日、3月17日は、セント・パトリックス・デー。

司馬遼太郎氏が(たしか、氏の著書「愛蘭土紀行」の中だったとぼんやり記憶するが)、芋飢饉で本国を後にしてアメリカ合衆国を目指したアイルランド移民たちを、「テーブルから転げ落ちる豆のように大西洋に浮かんだ」と表現していたが、その末裔達はアイリッシュ・アメリカンとなり、現在では約3千450万人、合衆国全体の人口の10%以上に増えた。本国の人口460万人の7倍という繁栄ぶりである。

米国では、そうやって移民してきたアイルランド人を差別し(下の古い新聞求人広告を参照)、安価な労働力として劣悪な住環境・労働環境でこき使った暗黒歴史もあるとはいえ、風とともに去りぬのスカーレット・オハラのような南部の大地主たちがいたり、またビジネスで財を成したケネディ一家からはケネディ大統領が生まれ、その後も、レーガン大統領、クリントン大統領・・・と続き、アイリッシュの血はアメリカのメインストリームの隅々で活躍し、現在に至っている。



No Irish Need Apply (アイルランド人お断り)と書かれた昔の新聞求人広告。こういう差別が実際に行われた。



シカゴと並び、アイルランド系移民とその子孫が多いニューヨークシティでは、大規模なパレードが毎年開かれ、マンハッタン5番街を行進する。年中パレードやってるニューヨークでも、セント・パトリック・デーのパレードは別格、群を抜いて見物の人出も多く、パレードの規模としてNYは世界最大だ。ニューヨークは市警官・消防士などの「制服組」にアイリッシュが多いこともあって、バグパイプのおじさんたちや可愛い子どものアイリッシュダンサー達とともに、制服組の行進も延々と続く。






世界中で開かれるセント・パトリックス・デー・パレード。お近くのパレード情報なら、こちらへ。
2014 Parade Worldwide


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さて、ここからが本題。

合衆国と欧州の間に横たわる市場を、「Trans-Atlantic Market」と呼ぶ。

かつてアイルランド人が「テーブルからこぼれ落ちる豆のように浮かんだ」大西洋(Atlantic Ocean)を挟んだ貿易圏・経済圏のことである。

ジョンズ・ホプキンズ大学による欧米間経済の研究チームが発表したレポートによると、トランスアトランティック市場はいまだ世界最大市場、ここ数年の欧州経済の不安定さやアジアとの関係(ちなみに、こちらは日本でもTPP(=Trans-Pacific Partnership)でおなじみ、「Trans-Pacific Market」と呼びますね)の成長にも関わらず、米国にとっては最重要のリレーションシップ。



(以下、同大学のリリースから抜粋および拙訳)

U.S. companies are the largest source of onshored jobs in Europe and European companies are the largest source of onshored jobs in America,(中略)・・・Up to 15 million workers are employed in the $5 trillion transatlantic economy, which despite recent turbulence remains the largest and wealthiest market in the world.

米国企業は欧州にとって、また、欧州企業は米国にとって、互いに最大のオンショア雇用ソース。近年の不安定な状況にも関わらず、5兆ドル規模の市場で1500万人の労働者が雇用され、依然として世界最大かつ潤沢な市場である。


The US and Europe are each other's primary source and destination for foreign direct investment. Since 2000 Europe has attracted 56% of US global foreign direct investment and China only 1.2%.

米国と欧州は、相互に、海外直接投資でソースあるいは投資先として最大。2000年以降、欧州は米国のグローバル海外直接投資の56%を引き付けたが、中国は1.2%のみ。


Ireland is the number one export platform in the world for Corporate America. US companies based in Ireland export 3.5 times more to the world than from Mexico and 5 times more than from China. US investment in Ireland is more than 6 times larger than US investment in China.

コーポレート・アメリカにとってアイルランドが世界最大の輸出プラットフォーム。在アイルランドの米国企業の世界への輸出額は、メキシコからのそれより3.5倍、中国からの5倍。米国からアイルランドへの投資は、米国から中国への投資の6倍以上。


US investment in the Netherlands alone is about 4 times greater, and US investment in the UK 3 times greater, than US investment in all the BRIC countries -- Brazil, Russia, India and China.

米国からBRIC4カ国への投資総額と比べても、米国からオランダへの投資のみで4倍、英国へも対BRICの3倍。 (*BRIC=ブラジル、ロシア、インド、中国の4カ国)



Since 2000, Europe has accounted for over 57% of the earnings generated abroad by U.S. companies. US companies earned 7 times more in the Netherlands alone than they did in China.

2000年以降、米国企業が海外で創出した利益の57%が欧州地域で占められている。オランダのみでも、米企業の利益は、中国で得た利益の7倍。


Europe’s sovereign debt crisis has forced European firms scale back their U.S. presence. Even so, Europe’s investment flows to the US were 4 times larger than to China. There is more European investment in a single US state like Georgia, Indiana or Minnesota than all U.S. investment in China, Japan and India.

欧州ソブリン危機の影響で、欧州企業は米国内でのプレゼンスを縮小せざるを得なかったが、それでも、欧州からの米国への投資フローは、中国向けフローの4倍。 ジョージア州、インディアナ州、ミネソタ州への欧州からの投資額は、それぞれの一州向けでも、中国、日本、インドへの米国の投資額を上回る。


45 of 50 US states export more to Europe than to China, and by a wide margin in many cases.

米国50州のうち45州が、対中国よりも対欧州の輸出額が多く、その他の地域向けでははるかに多額になっている。

(抜粋+拙訳、おわり)


さらに詳しく知りたいひとは、こちらがその研究レポートへのリンクです。
Transatlantic Economy 2014


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米国や欧州各国のそれぞれの国の個性の強さを無視し、「欧米は」 とひとつの言葉でくくってしまうと違和感が出る場面は実際多々あるけれど、こうして、「ひとつの経済圏」としてくくって数字をみると、そのリレーションシップの強さはハンパ無いというのも、よくわかる。

よく「欧州のひとはアメリカの田舎者が大嫌いで云々・・・」という話を耳にするが、米国と欧州は古典的LOVE&HATEの間柄、数字はウソつかない。



昨年の記事だが、米国と欧州連合の間のフリートレードを目指す T.T.I.P. (Trans-Atlantic Trade and Investment Partnership)の話し合いのためオバマが欧州に向けて出発するのに先駆けて、イタリアの外務省高官からNYタイムズに投稿されたラブレターである。

Pivot to a Trans-Atlantic Market


この記事の筆者は、両者は「腰で繋がっている間柄」と表現し、欧米間の経済的共同発展構想であるTTIPの重要性を語り、その実現を主張している。

(引用) It may well prove to be a Pacific century, buoyed by Asia’s economic dynamism. But at least for now, the United States and Europe remain bound at the hip — an enduring, perhaps reassuring, reality amid a world in flux.



では、みなさま、

Happy St. Patrick's Day!

Sunday, March 9, 2014

ウクライナの銀行のモスクワ子会社が突然中央銀行の管理下に

ウクライナの件で、多くの情報が飛び交っているが、先日、MHJ筆者の目を引いた記事があった。

ウクライナ最大で、銀行としての信用力も同国で最高の格付けを得ている Privatbank というのがある。それのモスクワ子会社 Moskomprivatbank が、突然、先週の木曜日、ロシアの中央銀行(Bank of Russia)の管理下に入った。正確には、同国の預金保険機構の管理下に入れられて、銀行業務のアドミニストレーションは同機構が行うことになった、ということらしい。

こちらが、Bank of Russiaが出したステートメント


管理に入らなければならない理由は、「倒産回避するため」。ステートメントには以下のようにある。(赤い太字は筆者)



In compliance with Federal Law No. 175-FZ, dated 27 October 2008, ‘On Additional Measures to Strengthen the Stability of the Banking System in the Period until 31 December 2014’, the Bank of Russia decided to implement measures aimed at preventing the bankruptcy of the Moscow-based Commercial Bank Moskomprivatbank, a closed joint-stock company, involving the Deposit Insurance Agency, a state-owned corporation (hereinafter, the Agency), and to assign the Agency with the provisional administration function with regard to Moskomprivatbank. Seeking to prevent the bankruptcy of Moskomprivatbank the Bank of Russia approved the Plan according to which the Agency will assess the financial standing of Moskomprivatbank.
 


このモスクワの銀行子会社だが、モスクワでの総資産は$1.4Billion、業務はリテール中心ということだ。

しかし、「リテール銀行の倒産」という、銀行業界隈では最悪とされている事態を視野に入れてる割りには、

① モスクワで取り付け騒ぎが起こっているという話がない
② 債務超過で資本注入が必要な状態にいるわけでもない
③ (倒産するかもしれないけど自己資本比率はバッチリだから)銀行ライセンスはそのまま
④ 業務は通常どおり(ただし、アドミは私企業からいきなりロシア政府)
⑤ ウクライナにいる親会社が「なんだとー!」と怒っている

という、極めて面妖な状況である。(冷汗ダラダラダラーー)



ふつうはですね、金融子会社がなんらかの財務的問題に直面し、それがその国(あるいは地域)の金融システムの安定性を脅かす恐れがある場合はですね、まず第一に、その子会社の親会社が資本注入するなり、保証出すなりして、その金融子会社の資本と流動性が枯渇しないよう手配するのが先決である。

その親会社もドツボにはまり子会社に対するサポート能力がなくなっていて、「ダメだこりゃ・・・・」という状況になってると判断されたら、そこでようやく、(国民のお金を預かっている)政府当局がバババーンと登場し、その金融機関にシステミック・サポートとしての策を施す(ただしシステミックリスクがある場合のみ)ってのが、【銀行セクター界隈での常識】というものでして。

それがいきなり、親会社なんてふっとばし、自分の目の前にいるってだけで海外銀行の子会社コマーシャルバンクを「政府管理下に入れちゃう」わけだから、ロシア政府、すごいっちゃーすごい。

しかも、総資産たかだか500億ルーブル(=$1.4ビリオン=1,400億円程度)のリテール銀行に対して、鼻息荒く「バンキングシステム安定化」という究極のお題目を(ドヤ顔で)持ち出してくるのも、これまた、すごい。

この面妖な出来事を、ロイターが伝えている。

Russia puts subsidiary of Ukraine's Privatbank in temporary administration 


この親会社のPrivatbankであるが、ウクライナの本社のほうは、総資産230億ドル、純利益8700万ドルで、同国最大のコマーシャル銀行。 ウィキペディアによると、米国の業界専門誌「グローバル・ファイナンス」で「ウクライナのベストバンク」に選ばれ、イギリスの専門誌「ザ・バンカー」でも同年ウクライナの「バンク・オブ・ザ・イヤー」に選ばれ、格付け機関ムーディーズは銀行財務力でウクライナでベストの判断、別の格付け機関フィッチもこれまたウクライナでベストのレーティング、だそうである。

それの子会社(繰り返しますが、子会社総資産$1.4ビリオンです) が、ある日とつぜん、モスクワで「倒産の懸念でシステミックリスク」。(1,400億円程度なら、日本のメガ銀行さんだったら、一社に貸しつけてる融資額になりそうな数字よ。笑)

上のロイターの記事にもあるが、問題は、この銀行がウクライナにあるというだけじゃなく、この銀行のオーナーが、現職大統領の息がかり、というのが、どうもプーチンには気に食わないらしいんである。この銀行の創始者で現在共同オーナーのひとり イゴール・コロモイスキー(同銀行を34%保有)は数日前、ウクライナの現職大統領であるオレクサンドル・チュルチノフによって、コロモイスキーの出身地である地域の知事に任命されたばかりという。彼はウクライナで3番目の金持ちで、推定純資産$2.4ビリオン、51歳。

いわゆる、『Oligarch』 と呼ばれるひとたちのひとりですな。プーチンは、コロモイスキーのことを、「詐欺師」と呼んで、ロシアのビジネスに悪影響を及ぼす危険人物として毛嫌いしているらしい。

ロシアをめぐる国内情勢・政治情勢は、そもそも私はこの地域にビジネスで深く関わったことが一度もないうえ、登場するひとたちの名前がぜんぜん覚えられないというのもあって、実際、よくわかっていない。

わかっていないんだが、わかっていないながらも、それでも、「ロシア、やっぱ、すげーな・・・」と言わざるを得ない。(←注:いい意味で感心してるわけではない。)

だって、こんな風にサクッと銀行を管理下に入れちゃうなんて、日本も含め西側諸国のフツーの銀行業界隈では、ちょっと考えられないやり方だもの。

以前もどこかで述べたと思うが、筆者は仕事柄、先進国・新興国とりまぜずいぶんいろんな国のバンカーらに実際にあって話を聞いてきましたが、お会いした中でロシアのコマーシャルバンカー達ぐらいツーカーで話ができないひとたちは、他にいなかった。なんていうか、異次元バンキング、とでもいいましょうか・・・。ロシアと比べたら、中国だってエジプトだって南アフリカだって、新興国のバンカーたち、みなフツーすぎてツーカーすぎて怖いぐらい。 ブラジルの銀行群になると、あれは、ポルトガル語を話す米銀、といっても過言ではない。

このロシアの預金保険機構の処置は10日続くらしい。当事者であるPrivatbankのモスクワ子会社はステートメント出して、「今回の措置は、経済的な話(←たとえば財務の問題とか)に立脚しているわけではない。向こう10日間、ロシアの中央銀行は、きちんと業務継続できるよう取り計らってくれるはず」と言っているらしい。

「経済的・財務的な問題はない」。つまり、「100%政治的な動き」だということである。 中央銀行もプーチンの指の動きひとつで、なんでもやるって意味ですね。






Sunday, March 2, 2014

最近、中国関連の記事多い

ここのところ、金融関係の記事を漁っていると、中国関連の記事が多いなと感じる。

下のチャートは、「China」Near 「Hard Landing」 がキーワードになってる記事がブルームバーグで一日にどれだけ配信されたか、というチャートだそうだ。


チャートの紹介元はここ


 2012年とくらべると減っているけど、またちょっと増え出してるのかな、という印象あり。

そして、ついさっき、この記事を読んだ。

コラム:中国で金融危機が起きない理由=カレツキー氏



このコラムの著者は、中国の金融ポリシーの側面からシステムを眺めていて、比較として米国発のリーマンショックを持ち出している。だが中国のバンキングシステムは、米国のそれとは根本的に性格が違う。

そして、金融危機というのは、かならず(【かならず】!)、金融システムのど真ん中に座ってるミクロの金融機関らのバランスシートでジクジクと膿んで久しいAsset Qualityの問題が背後にあって、そこがシステム全体の債務超過の格納庫となって危機発生・爆発するのが世の常なんだが、この記事はそこらへんはあまり触れていない。

中国の銀行をミクロで眺めると、基本的には昔の日本の長期信用銀行群と似たようなモデルやってて、バランスシートの両側にある与信と預金の「量」や「金利」といった面への規制は極めて明快なんだが、不良資産の認識含めアセット・クオリティへの対処に関しては、昔から、中国は「臭い物には蓋方式」という傾向があったから、誰も中国発で発表される公式の不良資産比率が実態を示してるなんて信じてなかったし、現在もたぶんそうじゃないかなと、わたしは、どこか疑っている。

強く規制がかかりコントロールされている既存の銀行システムですらそうなんだから、通常の商業銀行システムの外側のシャドーバンキングが膨れ上がっているいまは、果たしてどんなことになっているのか、想像するのも恐ろしい。もしかすると、通常では考えられないレベルで危うい状態にいたりしたら、どうしよう。わたしがひとりで「どうしよう・・・」と不安になってたから、だからどうなるもんでもないのだが、ついつい、長年バンクアナリストやってた癖(苦笑)が出て、不安になる。

さらに、短期市場の雰囲気。

先月もいろんな記事をナナメ読みしてたら、中国でレポレートが一日で150bps以上も上がり中央銀行が手当てして90bps下がったとかいう記事がたまたま目に入り、嫌~な気分になった。短期で一日で100ベーシスもの幅で上がったり下がったりするなんて。経験則からいって、短期市場が不安定になってるのが目立ち出すと、たいがいロクなことがない。

日本は三洋証券らが短期市場でぶっ飛んで、バブル崩壊後に数年溜め込んでいた実質債務超過の問題が、一気に表面化して、その後5年以上も続く泥沼の開幕となった。

アメリカではABCP市場がリーマンショックの前年夏には事実上の死に体となり、インターバンクで短期市場も乱れだし、ショック前年の秋には短期資金の流れがすっかりフン詰まり起こして、連銀が連日連夜資金をパンピング(pumping)し続けていたのを思い出す。前年からポンプでこれでもかこれでもかと流動性を流し込み続けてましたが、その間にも、ミクロレベルでのアセットクオリティの劣化はとまらず、システム全体の実質債務超過状態は深刻化する一方で、ついに爆発してました。

ギリシャ問題に端を発した欧州だって、欧州のトレーダーらが問題が加速度的に深刻になる前から、「短期資金、完全に止まっちゃってるで~」と喚いてましたね。

まぁ、わたしは、中国の金融システム動向を日々詳しく追いかけ調査したうえでこのエントリーを書いてるわけでもなんでもないんで、思いつきです、いろいろ勉強不足です、はい。(そのうち、中国の銀行アナリストのミクロ分析でも読んで、もう少し勉強することにします。)

ただ、上のコラムを読んで脊髄反射的にアタマの中をよぎったことを、自分の覚え書きとして、メモしておこうと思った。

Friday, February 28, 2014

Victimとしての自画像

東京都内の多くの図書館で『アンネの日記』やその他ホロコースト関連の本が破かれているのが発見され、物議をかもし出している。

有力ユダヤ系団体サイモン・ウィーゼンタール・センター(SWC)は、この件を受けて「ショックを受け、深い懸念を抱いている」という声明文を出した。

Wiesenthal Center Expresses Shock and Deep Concern Over Mass Desecrations of The Diary of Anne Frank in Japanese Libraries

 

SWCの声明を受け、海外メディアもこぞってこの話題を取り上げ、昨年の後半あたりから海外メディアで頻繁にささやかれるようになった「日本の右傾化」というパーセプションに、さらに証拠が加わったかのような扱いになっている。

この事件を伝える英字記事についたコメントの中に、「BIZARRE(奇妙だ)」という反応をしているひとを幾人もみかけた。日本の国内事情にとりわけ明るいわけでもない海外の多くの人たちからしたら、即座にこれはネオナチの仕業ではないかと思うわけだが、「ネオナチ?でも、なぜ、アジア、しかも東京で???Bizarre!」という反応になるのは当然だろう。

この奇妙で不快な事件の真犯人は誰なのか――。その後も、本の毀損や破壊は続いているという。筆者も一刻も早く真相が究明されて欲しいと願っている。

ところで、イスラエルにHarretzという大手日刊紙がある。イスラエルの日刊新聞社としては最古参で、ヘブライ語と英語で出版されてるが、その英語版はNYタイムズの国際版と一緒に束ねられて売られる、そういう新聞らしい。

「アンネの日記破損事件」が内外で大きく取り上げられることになるおよそ一ヶ月前、そのHarretz紙に1月22日付けで、「日本人は何故アンネ・フランクに魅了されるのか」という長文記事がJTAという別のイスラエルニュースサイトからの転載として掲載された。

ナチスの迫害に遭った当事者とその末裔であるイスラエル人の目には、日本人は、どう映っているのだろう。

普段、定期的に読むことのないイスラエルのメディアながら、なかなか興味深い記事であり、筆者自身も深く同意する指摘部分があったので、下に全文・全訳を紹介する。 (※手早く訳したので、誤訳があれば指摘してください。)


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Why are the Japanese so fascinated with Anne Frank?


For many Europeans, Anne Frank is a potent symbol of the Holocaust and the dangers of racism. But the Japanese people tend to connect to her story for fundamentally different reasons.

多くの欧州人には、アンネ・フランクはホロコーストと人種差別という危険の強力なシンボルとみなされている。だが、日本人は、欧州人とは根本的に異なる理由でアンネの逸話に共感している。


記事サイトから



She speaks only Japanese and is not entirely sure what country she’s in, but 18-year-old Haruna Matsui is happy to stand in the rain for an hour with two friends to see the home of a person she has never met yet nonetheless considers her soul mate.


彼女は日本語しか話さず、自分がいまどこの国にいるのかもよくはわかっていない。だが18歳になるマツイ・ハルナは、実際には会ったことはなくても大親友だと感じているひとりの人物の家を見るため、2人の友人とともに雨の中1時間も立ち続けるのを厭わない。

“We visited Paris and Brussels, so I just had to come here to see Anne’s home,” an excited Matsui told JTA last week outside Amsterdam’s Anne Frank House.


「わたし達、パリとブリュッセルに来たので、アンネの家も見ようと思い、ここに来ました。」高揚したマツイは先週アムステルダムのアンネ・フランクの家の前でJTA紙に語った。

Matsui has read Japanese manga comic book adaptations of Frank’s diary several times and watched every anime cartoon film she could find about the teenage diarist who spent two years hiding in an Amsterdam attic before her arrest in 1944.


マツイはアンネの日記が原作になっている日本語の漫画コミックを何度も読み返し、1944年に見つかるまでアムステルダムの屋根裏に2年間も隠れていた10代の日記ライターに関わるアニメ映画もすべて観たという。


Frank’s story is so well known that dozens of nations are represented in the entry line of the museum established at her former hideout on Prinsengracht 263. Every year, more than a million people visit the museum, making it one of the Dutch capital’s most visited tourist destinations.


フランクの逸話は世界中で知られていて、現在は博物館となっているPrinsengracht通り263番地にある隠れ家の入り口では、世界数十カ国から訪れた人たちが列に並んでいる。この博物館には毎年100万人以上の人々が訪れ、オランダ有数の観光名所になっている。


But interest in Anne Frank is particularly intense in Japan, where her story continues to reach new audiences through comic books, cartoons, museum exhibitions and educational initiatives. For some Japanese, this is a source of pride.


だが、中でも日本人はアンネ・フランクにことさら強い興味を抱いている。日本では、漫画本やアニメ、博物館での展示、教育向け企画などで取り上げられ、いまだにアンネに興味を抱くひとびとが途絶えることがなく、中にはそれを誇りに感じる日本人もいるほどだ。

 
アムステルダムのアンネの隠れ家を訪れる日本人学生たち(同記事から)



But researchers who have studied this fascination say it has a dark side, reflecting a tendency to focus on Japan’s victimhood during World War II while ignoring responsibility for atrocities committed by its troops who fought as allies of Nazi Germany.


だが、こうしてアンネ・フランクに魅了される日本人を研究してる 者達は、そこには別の暗い顔があると指摘する。 それは、第二次世界大戦中にナチスドイツの同盟国として戦った日本軍による残虐行為の責任には目をくれず、戦時中の被害者としての自分に執着する傾向だ。


Matsui thinks Japan was neutral during World War II. “The Germans fought the French and English and the Jews in Europe, and then America and Japan had a war later,” she said hesitantly through a translator.


マツイは第二次世界大戦中に日本が中立だったと思っている。彼女は通訳を介して自信なさげに「ドイツはフランスとイギリスと欧州にいたユダヤ人と戦って、その後にアメリカと日本が戦争をしたんですよね」 と言った。


For many Europeans, Anne Frank is a potent symbol of the Holocaust and the dangers of racism. But the Japanese people tend to connect to her story for fundamentally different reasons, according to Alain Lewkowicz, a French Jewish journalist who wrote an elaborate iPad application,”Anne Frank in the Land of Manga,” about his investigation of the Anne Frank phenomenon in Japan. In January, a version of the work was published by the Franco-German television channel Arte.


多くの欧州人にとっては、アンネ・フランクはホロコーストと人種差別という危険のシンボルという意味合いが強い。だが、日本人は、欧州人とは根本的に異なる理由でアンネの逸話に惹かれている。そう述べるのは、ユダヤ系フランス人のジャーナリスト、アラン・ルーコヴィッツだ。ルーコヴィッツは、日本におけるアンネ・フランク現象を調査して『漫画の国のアンネ・フランク』と題するアイパッド用アプリとしてまとめた。一月には、独仏共同のテレビ局Arteが本の形で出版している。


“She symbolizes the ultimate World War II victim,” said Lewkowicz. “And that’s how most Japanese consider their own country because of the atomic bombs — a victim, never a perpetrator.”


「アンネは第二次世界大戦の究極の犠牲者という位置づけなのです。」ルーコヴィッツは続ける。「そして、ほとんどの日本人にとっては、その究極の犠牲者というのは原爆を落とされた自国の姿そのものなのです。彼らにとっての自国とは被害者であり、決して加害者ではない。」


Currently, approximately 30,000 Japanese tourists visit the Anne Frank House every year, 5,000 more than the annual number of Israeli visitors. That figure places Japan 13th in a list whose top 10 slots are all occupied by European and North American nations.


昨今ではアンネ・フランクの家を訪れる日本人観光客の数は毎年3万人ほどにのぼり、イスラエルからの年間訪問者を5000人以上上回る。訪問者数上位リストは、10位まではすべて欧州と北米からの観光客が占めるが、日本はそのリストで13位になっている。


Japan has seen the publication of at least four popular manga comic books about Anne Frank and three animated films. The first Japanese translation of Anne Frank’s diary appeared in 1952, one year before it was first published in Hebrew.


アンネ・フランクを題材にしたものとして、日本では少なくとも4つの人気漫画本があり3本のアニメ映画がある。アンネの日記の和訳本が最初に登場したのは1952年で、ヘブライ語に訳されて出版されるより一年早かった。


“Basically, every Japanese person has read something about Anne Frank, which is even more amazing considering the shocking ignorance on history of many young Japanese today,” Lewkowicz said. “The older generation has read the book, and they buy the manga adaptation for their children.”


「基本的に日本人なら誰もがアンネ・フランクについてなんらかの話を読んだことがあるが、こんにちの日本の若い世代の多くが歴史について驚くほど無知なことを考えれば、これは驚くべきことだ。」とルーコヴィッツは言う。「もっと年が上の世代はアンネの日記を書籍で読んでおり、子どもたちにはその漫画版を買い与える。」


One place where Japanese children encounter Anne Frank’s story is the Holocaust Education Center at Fukuyama City, the only such institution in the region. Run by a Japanese reverend, Makoto Otsuka, the center has welcomed 150,000 schoolchildren since its establishment in 1995.


日本の子どもたちがアンネ・フランクのものがたりに触れる場所のひとつに、福山市のホロコースト教育センターがある。この地域では唯一ホロコーストを扱うこの施設は、日本人牧師の大塚まこと氏が運営している。同センターには1995年の開設以来、15万人の学童が訪れたという。


Located just 50 miles from where the American atomic bomb landed on Hiroshima in 1945, the center is home to a statue of Anne Frank, one of only two such statues found in Japan and the only ones in her memory in the Far East. The children also tour the center’s scale model of the Anne Frank House in Holland.


1945年、アメリカが広島に原子爆弾を落としたその地点からわずか50マイル離れているだけの同センターには、アンネ・フランクの銅像が置かれている。日本に2体あるアンネの像のひとつだが、極東全体でもアンネを偲んで建てられた像というのは、そのふたつしかない。センターを訪れる子ども達は、オランダにあるアンネ・フランクの家の実物に近い模型の中を歩いてまわる。


In 2011, the center received one of two cuttings sent to Japan from the chestnut tree Frank described in her diary. Japan is the only Asian country besides Israel with saplings from the tree. The one in Fukuyama is already nine feet tall, according to Otsuka, who spoke to JTA in Hebrew. He studied the language to improve his ability to study the Holocaust, he said.


2011年に同センターは、アンネが日記の中に書き記した栗の木から分けた2本の苗のうち一本を受け取った。イスラエルのほかに、その栗の木の苗を受け取ったのはアジアで日本だけだ。福山市に植えられたその木は、既に9フィート(2.7m)に育っていると、大塚氏は本紙にヘブライ語で教えてくれた。彼はホロコーストについてもっとよく学びたくてヘブライ語を勉強したのだそうだ。


“Anne Frank is a powerful symbol for peace in Japan,” Otsuka said. “That’s why her story resonates with so many Japanese, who have suffered the horrors of war.”


 「日本では、アンネ・フランクはパワフルな平和のシンボルです。だからこそ、戦争の恐ろしさを体験した我々日本人が、これほど多くアンネの物語に共鳴するのです。」と大塚氏は言った。

1965年、日本人女学生に囲まれるアンネの父オットー・フランク(同記事より)

Otsuka began planning a Holocaust education center in 1971 after meeting Anne Frank’s father, Otto Frank, the only member of the family to survive the war.


大塚氏は、フランク一家唯一の生存者であるアンネの父親オットー・フランクに会ったことがあり、その後1971年にホロコースト教育センターの設立計画に取り掛かった。


“What I instantly saw in the man was how much love he had, despite everything he’d been through,” Otsuka said.


「オットーさんにお会いしたときに、あれだけの苦しみを体験してなお、あの方がどれほど愛に溢れた方か、ということがすぐにわかりました。」 と大塚氏は言う。


Introducing Japanese people to Anne Frank’s story was important to Otto Frank. His efforts in this regard may be part of the reason for the Japanese interest in his daughter, according to Ronald Leopold, director of Amsterdam’s Anne Frank House.


日本人にアンネ・フランクの物語を伝えることは、オットー・フランクにとっては大事なことだった。父オットーのこうした努力のおかげで、日本人が娘のアンネに今なお興味を覚えているのでは、とアムステルダムのアンネ・フランク・ハウス所長ロナルド・レオポルドは考えている。


In his book, Lewkowicz juxtaposes Japan’s Anne Frank fascination with what he and many others consider Japan’s failure to fully acknowledge the actions of Japanese troops in areas they occupied in China and Korea.


研究者らは日本軍が占領した中国や韓国で行っていたことを日本が認めようとしない点を指摘するが、ルーコヴィッツも彼の自著の中で、日本のそうした姿とアンネ熱を並べて比較している。


“The Anne Frank-Japan connection is based on a kinship of victims,” Lewkowicz said. “The Japanese perceive themselves as such because of the atomic bombs dropped on Hiroshima and Nagasaki. They don’t think of the countless Anne Franks their troops created in Korea and China during the same years,”
In Korea, Japanese troops organized the rape of thousands of enslaved Korean women who were known as “comfort women.” They also perpetrated mass killings of Chinese civilians.


「日本人は、アンネ・フランクは自分らと同じ戦争犠牲者と感じ、そこに繋がりを見出しているのだ。」ルーコヴィッツは語る。「日本人には、広島と長崎に原爆を落とされたことで自分らは犠牲者・被害者だという自意識がある。だがそれと同じ時代に、韓国や中国では自国軍が数え切れないほどのアンネ・フランクを生み出していたということは彼らは考えようとしない。」 韓国では、日本軍人は何千人もの慰安婦と呼ばれる韓国人女性らを奴隷のように扱い組織的に強姦した。彼らはまた中国の民間人を大量虐殺するという残虐行為にも出た。


Japan apologized in 1993 to Korea and again in 1995 for having “caused tremendous damage and suffering to the people of many countries, particularly to those of Asian nations.” But many consider the apology insufficient and insincere, citing the absence of reference to war crimes and repeated visits by Japanese leaders to shrines honoring some of the worst perpetrators. Japanese Prime Minister Shinzo Abe’s visit last month to one such shrine sparked strongly worded condemnations from the Chinese government.


日本は1993年に韓国に対して謝罪をし、1995年にも「多くの国々、とりわけアジア諸国のひとびとに多大なるダメージと苦痛を与えた」として謝罪した。しかし、そうした謝罪も、戦時中の犯罪に触れていない、あるいは、最悪の加害者達を祭った神社へ日本のリーダーらが参拝を重ねているために、いまだ充分かつ真摯なものとは見なされていない。安倍晋三首相による先月のそうした参拝は、中国政府から強い語調を伴う批難を呼び起こした。


Otsuka says his museum is limited to the Holocaust and that other war crimes are not part of its scope. But he notes that the institution’s mission statement extended to “deepening the understandings of the period and helping to enhance awareness for world peace among young people.”



大塚氏は、彼が作った博物館はホロコーストだけがテーマであって、それ以外の戦争犯罪については彼の手がける範疇ではないと言う。だが「当時の出来事の理解を深め、若いひとたちが世界平和に気づく手助けとなる」ことも博物館の設立目的に入っていると大塚氏は述べた。

Despite this, Lewkowicz says that Otsuka is quietly working to raise awareness of the divisive issue of Japan’s wartime record.


大塚氏のそうした態度にも関わらず、ルーコヴィッツは、日本の戦時記録について二分された見解が存在するのを世に知らしめるのに、大塚氏の存在は静かに役立っていると考える。

“Don’t expect Otsuka to advocate adding the issue of Japanese war crimes to the national curriculum,” Lewkowicz said. “Japan is not ready. It may seem from the outside like an ultra-liberal society, but this is a false impression.”


「日本の戦争犯罪の問題を国の教育要録に加えるよう主張してまわる、などということを大塚に期待してはいけない。」とルーコヴィッツは言う。「日本にはその準備ができていない。外からみると、日本は極度にリベラルな社会であるように見えるかもしれない。だが、それは誤った印象だろう。」


Still, he said, “Slowly, bit by bit, Otsuka and other like-minded people are raising questions and telling people, also through the Anne Frank story, that some of what Japan did in those years is pretty much comparable.”


「だが、」彼は続ける。「ゆっくりと、少しづつ、大塚や彼のような心を持った人たちが疑問を投げかけ、そしてまたアンネ・フランクの逸話を通じ、日本が戦時中にやったことは、アンネが受けたそれに匹敵するものだったのだと語り始めているのだ。」


(記事終わり)

  ☆   ☆   ☆   ☆   ☆


この記事のここが史実と違うだのなんだのと、お得意の重箱の隅をつつくような詳細を持ち出して反論したがる人が出てきそうだが、そんな詳細をいくら重ねたって、それは本質論ではないし、わたしは興味がないので、その手の話を持ち出したいなら、どうか私にコンタクトしてこないでください。

わたしがこの長文記事の中で同意せざるを得なかった指摘とは、

「アンネは究極の戦争犠牲者。そして、ほとんどの日本人にとっては、究極の犠牲者というのは原爆を落とされた自国の姿そのもの。彼らにとって自国は被害者であり、決して加害者ではない。」

という審判だ。というのも、わたし自身、多くのツイッターのフォロワーさんらに「また始まった・・・」とウンザリされながらも(苦笑)、こんなことを繰り返しつぶやいているからだ。









 しかし、こう感じているのは、何も、上のイスラエルの新聞や、一介のブロガーのわたしだけではない。昨今の日本に対し批判的論調を掲載する海外ジャーナリズムの多くが、「日本はDENIALをやっている」と捉えていて、また記事や番組でもハッキリそう述べている。

さらに、昨日26日付けの記事で、BBCが、神風特攻隊の遺書を世界遺産に申請した日本人についてとりあげ、上のイスラエルの記事とまったく同じことを書いている。

Remembering Japan's kamikaze pilots


 この記事から、その部分を拾ってみよう。

Japan has immense problems with its memory of the war. Prominent politicians and media figures still frequently espouse absurd revisionist versions of history - that Japan never started the war, that the Nanjing Massacre never happened, that tens of thousands of comfort women "volunteered" to become sex slaves for the Japanese military.

The massive bombing of Japanese cities at the end of the war, and in particular the atomic attacks on Hiroshima and Nagasaki, has allowed the construction of a narrative of victimhood. Japan is the only country to have suffered an atomic attack. The firebombing of Tokyo, in one night, killed at least 100,000 civilians. But when talking about these horrors, what is often forgotten or omitted is how it all began.

日本は戦時中の記憶にあたって重大な問題を抱えている。著名な政治家やメディア関係者がいまだに、日本は決して戦争を始めたわけではない、南京虐殺など起こらなかった、何千人という慰安婦はみな日本軍のために自ら性奴隷になりたがった、といったような、歴史修正主義めいた馬鹿げた歴史解釈を披露するのは珍しくもない。

終戦間際に日本の都市がいくつも大規模な爆撃にあい、特に広島と長崎には原子爆弾が落とされ、そうした体験が犠牲者としての語り口を許してきた。日本は悲惨な原爆体験を持つ唯一の国だ。 東京大空襲では、一夜で10万人という民間人が殺された。だが、それらの恐怖を語るとき、往々にして忘れられたり省かれたりするのが、それらがどうやって始まったかという部分だ。

(引用終わり) 

日本人として、欧米ジャーナリズムがこういう記事を書くことに愉快な気持ちになるひとは多くはいまい。

しかし、昨今、日本から聞こえてくる自己を正当化しようとする発言の数々には、自信のなさ故のディフェンシブさに加え、「どこかすさんだもの」を筆者は感じている。

昨年来ずっと自分が抱いていたその感覚を、タイムラインに流れてきたある方の下のツイートが見事に捉えて表現しておられたので、紹介してこの章を終える。






Tuesday, February 18, 2014

投資対象としてのビットコイン (その2)

ビットコインについて書いた前回のエントリーで、自分がつぶやいたツイートのTogetterまとめを紹介したが、その中で、1月21日に自分はこんなことを言っている。


大恐慌時代の「靴磨きの少年の伝説」を持ち出してくるまでもなく、NHKの一般視聴者向け番組「クローズアップ現代」が話題として取り上げた、というあたりで、そろそろ、そのジンクスの片鱗が見えてきていたわけであるが、では、最近のビットコインの実際のプライス(=US$換算価値)を見てみることにいたしましょうか・・・。


(チャート1) MtGox で提示されてるプライス推移 2月10日(15分足)

MtGox on 9-Feb-2014 (15min)


ギャアアアアアアーーーーッ!


上のチャートは2月10日ごろのMtGoxで取引されていたビットコインのプライス(15分足)である。(via BitCoin Wisdom) 一時は100ドルギリギリまで下がり、まさに投売り状態。どんなプライスでもいいから手持ちのMtGoxのウォレットをUS$に換金したいひとたちによる一斉パニック売りの図。

同取引所(MtGox)で提示されるプライスの直近までの動き(日足)を追ったものが下のチャートだ。10日の急落後も下がり続けている。昨年暮れに1200ドル以上をマークしていたのと同じ投資資産の取引価格が、2月16日には250ドル前後。

(チャート2) MtGox で提示されてるプライス推移(日足) 2013年12月頃~現在

MtGox on 18-Feb-2014 (1day)


言いましたよね、わたし、こう言いましたよね!



ただし、断っておくと、上のMtGoxで提示されてるプライスは260ドル前後まで下がっているが、その他の取引所(例えば最大のBitStamp )では同日620ドル前後で取引き成立しているそうです。(とはいえ、これらのチャートみて安心できる投資家はいないよね。笑)


(チャート3) Bitstamp で提示されてるプライス推移(日足)  2013年12月頃~現在

Bitstamp on 18-Feb-2014 (1 day)


(チャート4) Bitstamp で提示されてるプライス推移(3日足) 2013年6月頃~現在

Bitstamp on 18-Feb-2014 (3 days)



ご承知の方は多いだろうが、そうでない方のために少々説明すると、Bitcoinは、一般株式のようにどこか決められた一箇所で取引されているわけではなく、複数の取引所(Exchanges)があって、その取引所に参加して売買する者たちのBid とAskで、その取引所でのプライスが決まる。MtGoxは一時はフロートしているビットコインの7割~8割が取引されてたこともある、世界最大級のエクスチェンジ(取引所)で、拠点は東京渋谷である。Bitstampというのも同様の取引所だが、こちらは拠点はロンドン。取引ボリュームでは現在はBitstampが世界最大で、MtGoxは第2位。

2月10日(チャート1)にMtGoxに何が起こったか、というと、成立したトレードが記録されなかったり消失したりするシステム上のバグがみつかり、問題のありかが明確になるまでMtGoxはビットコインの引き出しを凍結する(2月7日プレスリリース)ということになったんである。ここでいう「引き出し(Withdrawal)ができない」というのは、ビットコインに投資したお金を米ドルに変換できない、という意味である。

つまり、MtGoxは開店休業、実質シャットダウン状態。米ドルに換金できないものを持っていたってお買い物もできません、んなもん、さっさと手放したいと思うのは当然だが、チャート1と2はMtGoxのトレーディング・プラットフォームにビットコインのバイヤー(買い手)が不在であることを意味している

そして月曜日の2月10日には、MtGoxはアップデートとして長いリリースを発表し、MtGoxに起こった問題は MtGoxだけの問題ではなく、ビットコインのソフトウェアのコードそのものの問題であると発表した。ビットコインそのものの問題となると、他のエクスチェンジで取引されるビットコインも同様なのかっ!と再び不安が走り、ビットコインの価格はさらに下落した。だが、ビットコイン側はそれに反論、「こっちじゃなくて、そっちの問題だろ!」と泥試合にもつれ込んでいるらしい。



ここらへんのテクニカルな話は、超ローテクの私が語れるわけないので(笑)、前回も紹介した大石哲之さんによるブログ記事を読んでください。

麻薬取引サイトすら引っかかったビットコイン版振り込め詐欺 


技術的なことは皆目わからないローテクでも、上の4つのチャートから、ビットコインの金融資産としての価値は短期間に大きく損なわれたのはよくわかる。その背景は、ひとつには流通貨幣としての信用が市場でほとんど確立されていないこと。そして、もうひとつは、買い手の不在により売買が成立しない、すなわち、「金融資産としての流動性が低すぎる」という問題だ。



ビットコインの尋常ならぬプライス・ボラティリティも、以下のように、流動性の低さで説明できる。












前述したMtGoxは、2月10日に出したリリースの中で、こんなことを述べている。

To put things in perspective, it's important to remember that Bitcoin is a very new technology and still very much in its early stages. What MtGox and the Bitcoin community have experienced in the past year has been an incredible and exciting challenge, and there is still much to do to further improve.
 

結論として整理しよう。ビットコインは非常に新しいテクノロジーであり、いまだ黎明期にあるということを忘れてはいけない。この一年、MtGox とビットコイン・コミュニティは素晴らしくエキサイティングなチャレンジに立ち向かってきたが、これからもまだまだ改善せねばならない部分は残っている。


バーチャル貨幣のビットコインが「安心して使える(=安定的な)流通貨幣」として広く世の中で認められるためには、システム面の強化やテクノロジー上の改良改善が待たれることは言うまでもないが、より根本的に致命傷となっている「流動性の低さ、信用力のなさ」という問題がクリアされなければならない。このポイントについて、JPモルガンの為替ストラテジストのJohn Normand がレポートを出している。

彼は、「ドルや円、ユーロといった伝統的な不換通貨と比較してビットコインは激しく劣っている(vastly inferior)」と評価している。

ちょっと眠くなってきたので(笑)、このJPMのレポートについては次回にまわすことにしたいが、上でチラッと述べた「流動性の低いエキゾチックな仕組み債」をゴッチャリ抱えていたウォール街の某社が、サブプライムの嵐が去ったときにどんな状態になっていたかだけ、この章の最後に、ビジュアルに記録しておくことにする。


<ビフォー> 牛が
 


<アフター> 豚に

(続く) 

Monday, February 3, 2014

パーマブルの逆襲


パーマブル(Perma Bull)という言葉をご存知だろうか。なにがあろうが、「永遠にブル」な人達のことである。

米株が軟調ぎみだと暗くウジウジしながらも目元に笑みが隠せないパーマベア(Perma Bear)の心配をよそに、パーマブルは今日もこんなチャートを配って元気ハツラツ。

S&P500の純利益マージンは、業務ベース、経常ベースともに、9%付近でイケイケらしいよ。





 
このチャートが紹介されていた記事によると、米株界パーマブル代表、ドイチェ証券の株ストラテジスト、デビッド・ビアンコ(David Bianco)は、米国企業の収益性は2014年に更に高くなる、と考えてるそうだ。

ビアンコの米株式強気の背景には、数年前まで激しくアンダーファンデッド(Underfunded)だった米国の企業年金ファンドがほとんど水面下から回復したことがある。回復の背景としては、①金利上昇でホールドしてた債券に損失が発生したが、その損失をカバーして余りあるほど株式市場が好調だったこと、そして、②金利上昇の恩恵(割引率が高くなることで年金の将来オブリゲーションのキャッシュフローの現在価値が下がる) の両面がある。

彼は、2014年も企業にとっての年金関連コストが減少する(あるいは会計上利益になるケースも)ためボトムの業績にプラスに働く、と見ているわけ。


さらに、企業側はここ何年かでガガーンと資金不足状態に陥り相当痛い目にあったこともあって、事業決算数値を悪化させる年金関連のボラティリティを外そうというインセンティブが強く働いている、というのも、彼のブルの理由のひとつである。

つまり、

1) 自社の年金形態を、昔からひきずる「確定給付型(Defined Benefit)」から、401Kのような「確定拠出型(Defined Contribution)」へと移行させる企業が増えていて、このトレンドはリバースすることはない、
2) 確定給付型年金の絶対額は、この先退職者が増えるにつれ減ってゆく、
3) それに従い、マーケット・リスクは企業のB/S上から従業員(投資家本人)へとシフトされ続け、企業側のリスク・エクスポージャは減少してゆくから、将来の株価の下落が企業業績に与える影響度も限定的になってゆく

と、まぁ、こういう(ブルな)ストーリーラインのようだ。

2012年には、SP500のうち、確定給付型年金が全額資金充足していた(Fully Funded)のは20社も無かったそうだが、そうした重度の資金不足(Underfunded)の状態から、2013年末までにはほとんどが脱したというのは事実らしいから、年金関連の損失軽減という分析には、それなりの妥当性はあるといえばありますね。 



しかしですね・・・。

この、ビアンコさんといえばですね・・・SP500のターゲットを2008年10月まで1650にしていたという、『伝説のひと』である。

もういちど言うよ。2008年10月まで

(※ 忘れちゃったひとのためにいちおう書いておくと、リーマンショックは2008年9月15日に起こりました。)

このひとは、そんじょそこらのパーマブルじゃないんである。鋼鉄の筋金入りである。

証拠記事(as of 10/8/2008)ご用意しました、はい、どうぞ。(当時はUBSの方でした。)

UBS's David Bianco cuts S&P 500 12-month target

 

危機の真っ最中2008年~2009年に、S&P500で800ポイント上を睨んでいた伝説の男、ビアンコ。

上のイケイケなチャートは、パーマブルの逆襲 と読むべきなのか。

そんなことを考えながら、ふと本日の米株インデックスを見たら、絶好調で下げてましたわ・・・。

 

S&P500/2014年2月3日午後2時23分現在

 

(追加) イエレンFRB議長初日に、ダウ終値326ポイントも下がったんで、これも記念に貼っておく。

 

ニューヨーク・ダウ/2014年2月3日終値

 

  

Saturday, January 25, 2014

投資対象としてのビットコイン

先日、NHKの『クローズアップ現代』がビットコインを取り上げたそうで、わたしのツイッターのTLにやたらとビットコインの言葉が並んだ。(番組のトランスクリプトはこちらを。)

仮想通貨 VS 国家:ビットコインの衝撃


この番組に対応して、日本デジタルマネー協会フェローの大石哲之さんが、ツイッターで、ビットコインについて抑えるべきポイントをわかりやすく解説してました。大石さんのツイートをまとめたTogetterエントリーも読ませていただきました。

【Togetter】 ビットコインについて判りやすい解説


この10年ほどでのアマゾンなど仮想空間でのネットショッピングの成長ぶりをみれば、仮想空間で通用する仮想通貨の構想が生まれ成長してくることに対し、わたしは極端な違和感もなければ、また上の大石さんの解説にもあるように、多大なる成長性を秘めていることを否定するものでもありません。

ただし、このビットコイン、可能性を秘めてるというのはよくわかるけれども、「投資対象」としてみた場合どうよ、という話になると、いろいろ思うところある次第です。

それにつきまして、ウダウダと思いつくままつぶやいた私のツイートはこちらにまとめてあります。

【Togetter】金融資産としてのビットコインについて


上のまとめで、要するにわたしが何がいいたいかというと、

1) 仮想”通貨”と言ったところで、現段階においては、「グローバル通貨」と呼べるようなシロモノからは程遠く、ビットコインそのものは、株や債券といった通常の金融資産と変わらない。

2) 投資対象となる金融資産は、ビットコインだろうが株だろうが債券だろうがコモディティであろうが、その価値は基軸となる通貨(この場合ドル)を用いて価値を測り表示している。

3) ビットコインという名の金融資産の価値は大きく上下している、つまり、ビットコインのボラティリティは非常に高い。

4) 通常の通貨のように国家(あるいは共同体)の信用がくっついていないので、ファンダメンタルズの裏づけがなく、価値は純粋にその場その場のフローとテクニカルでのみで決定する。

5) 発行枚数に限りがあり、流動性は極めて低い。

6) 3+4+5から言えることは、投資対象となる金融資産としては、ビットコインの投機性は極めて高く、まぁハッキリいって、現状のステータスはチューリップの球根と大して変わらんな、ということである。


これら私のつぶやきの中からいくつか拾って、内容を補充しておきたいと思います。






通貨にして通貨にあらず。特定の取引所でドル表示されている金融資産である。(なお、3つ目のツイートの250は25の間違いです。)

「合法マリワナ取り扱い業者が通常の銀行で銀行口座をあけさせてもらえない」という話は、今年1月11日付けのNYタイムズのこの記事のことである。


Banks Say No to Marijuana Money, Legal or Not

 

米国では医療用マリワナの解禁を認める州が相次ぎ、またコロラド州のように嗜好用マリワナの販売も始まった地域もあるが、商業銀行はマネーロンダリングに巻き込まれることを恐れて、合法だろうがなかろうが、マリワナビジネス相手に口座は作ってくれない。ビジネス口座はもちろんのこと、個人口座を用いようとしても、その口座を出入りするマネーがマリワナ販売と関係していることが判明すれば、銀行側はその口座を閉鎖する。そのため、合法ではあるものの、大麻関連ビジネスオーナーらは基本的にキャッシュによるトランザクションに依存せざるを得ない状況におかれている、という内容である。

記事にあるが、合法販売で集めた税金なのに、銀行経由での決済手段を持てないから、何万ドルという$ゲンナマ$を車に積んでビクビクしながら運転して払いに行く、とか、トンデモなことをやってるらしいんである。45年前の三億円事件の時代じゃあるまいし。

しかし、銀行の立場からしてみたら、この新興業界(?)の拡大可能性はあると判断できたとしても、現状の市場サイズから見込めるリターンと、そこと関わることで潜在的にエクスポーズされるリーガル・リスク(マネロンが発覚したときの当局からの銀行への制裁含む)の大きさを天秤にかけたら、口座を作ってあげようというインセンティブなんてあるわけないんだから、当たり前の話である。

合法でも、このザマ。

となると、違法のドラックディーラーにしてみたら、ビットコインなる無法地帯の新通貨は渡りに舟、そりゃー飛びつくでしょう。

で、いまどうなってるかというと、そういう違法取引の現場から差し押さえたビットコインをたんまり保有しているFBIが、「単独ホルダー」としては、現在最大という笑えない話になっている。まとめの最後のほうの会話に出てくるが、ビットコインの最大のホルダー(所有者)は、噂のサトシ・ナカモトさんはじめ一握りのアーリーアダプターであることはそのとおりなのだが、彼らはいくつものウォレットに分散して所有していて、それらを名寄せしてあるひとりのホルダーとして特定することができない。そのため、差し押さえのビットコインをウォレットに溜め込んでいるFBI(=米国政府)が、目下特定できる世界最大のホルダーなのである。


Who Owns the World’s Biggest Bitcoin Wallet? The FBI


また、最初にあげたNHK番組のトランスクリプトでも紹介されていたが、昨年の10月にネット上で違法ドラッグ売買サイト「シルク・ロード」が摘発されたときにFBIが差し押さえた25ミリオンダラーズ分のビットコインは、裁判所からリクイデートしてもいいよという許可おりて、FBIは近くこれらをオークションにかけるとか。下が今年1月16日付けのForbesの記事だ。(この記事以降にくだんの$25ミリオンがどうなってるかは、フォローしてないから、知らない。)

The Feds Are Ready To Sell $25 Million of Bitcoin Seized From The Silk Road



このForbesの記事の最後のほうに、SecondMarketの話が出てくる。

SecondMarketというのはご承知の方も多いだろうが、未上場株式などを扱うトレーディング・サイトで、フェースブック(Facebook)がIPOする前の未上場株も、ここで活発に売買され話題になりましたね。

このSecondMarketは昨年、ビットコインを集めて作ったインベストメント・トラストのシェアを売買できるというビークルを市場に持ち込み、そのままだとちょっと闇市の香り漂うビットコインの取引を、機関投資家でも参加できる取引の形にして、それでも話題になった。

(引用) 
I recently spoke with Barry Silbert of SecondMarket, which famously introduced a Bitcoin Trust last year allowing institutional investors to get their hands on Bitcoin through Wall Street channels rather than through street or online buys. When the fund launched in September, it had nearly 18,000 Bitcoin. Now it has 70,000. I asked him how the firm went about acquiring its bitcoin.

“We purchase it from around the world,” said Silbert. “Directly from merchants, miners and early adopters. We needed to be able to buy Bitcoin without moving the market and we have to make sure we’re not buying from any illicit sellers.”




トラストに蓄積されたビットコインは昨年9月のローンチ時は1万8千枚だったが、わずか3ヶ月かそこらで4倍近くの7万枚に増えている。前述したとおり、流動性が低くボラが高くフローでのみ価値が上下するビットコインを市場にインパクト与えずに買い集めるためには、アーリーアダプターやそれを決済手段として受け入れるマーチャント(ネットショップなど)から直接買い付け、増やしていった、という。

「夢の仮想通貨」も、ウォール街の相場関係者にしてみたら、ボラが高くて触りがいのある話題の金融資産、ということですかね。

(次回につづく)

Thursday, January 9, 2014

シリコン・シティ

わあああ、あっという間に2014年になってしまいました!!

なんと、2013年はついに、ひとつも記事をポストしなかった、という怠けぶり。


2014年は、少しこころを入れ替えてブログ書く時間もみつけようと、いま、決心しました。それで、ブログデザインのテンプレートも変えてみました。 

さて、2012年の夏に長年住んだマンハッタンのアパートを売却し、同年秋に、NY市のすぐ北に位置するウェストチェスター郡に一軒家を購入し引越してきたわけですが、勝手の違う郊外での生活に慣れるまで、実際、まる1年かかりました。

いまでも自分はニューヨーカーと思っていますが、遊びや仕事でシティに出かけると、街いっぱいに溢れる過剰なエネルギーと騒々しさに疲れてきて、静かな郊外の自宅にはやく戻りたいと感じるようになってきています。

以前はビルを出ると目の前にスーパーもレストランもドラッグストアもなんでもある生活をしていたのに、いまはどこに行くにも車です。でもそれにも完全に慣れ、いまや「車のない生活」など想像することすらできません。

犬達はもちろん広々とした庭付き郊外の生活はストレスもなく超ハッピー。シティを出てから、ただの一度も下痢したり吐いたりしません。(マンハッタン時代は、毎月のように、どこか具合悪くなって医者に連れていったりしてたのでした。)

ということで、新生活に慣れるのにかまけているうち、ブログを全く更新しなかったわけですが、いまこうしてこころを入れ替えましたので(笑)、引き続きよろしくお願いいたします。


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先週は、郊外のご近所さん主催の新年パーティにお呼ばれして出かけ、そこでマンハッタンにオフィス構える大手金融機関で現在セルサイドで証券アナリストとして勤めてる方と知り合い、かつて自分も同業だったことから、初対面なのに話が弾んだ。

彼曰く、ニューヨークシティはたしかに景気盛り上がって調子よくなってきてるけど、ウォール街の大手ハウスにはかつての活気は戻っていないし、トレーディングフロアでも、株価こそ好調なれど基本的に取引ボリュームそのものが足りてないんで、They are not so happy campers. とも言ってました。

米国で業務展開する欧州系の金融機関も、金融危機の負の遺産処理継続と新自己資本規制の重みから、どこも台所事情はかなり苦しいらしい。米国の金融機関は、「まあ、最悪期去って、金利もじゅんぐり上がるだろうし、ボチボチなんとかなるでしょう」というざっくりしたイメージでわたしらは同意しあったけど、ヒャッホーーー!と盛り上がる局面じゃないよねぇ・・・と。

われらアナリスト業界も、危機時にコスト削減し過ぎて中堅・シニアのクビを切りまくったのが祟り、経験も知識も浅い(つまり雇う側からすると安いw)アナリストが割合として増え、また、アナリストひとりあたりの受け持ちがやたら多くて馬車馬のように働かされてる割りには分析は表層的になっているし、仕事は増えても給料増えず、といった暗い話も聞きましたよ。orz



   ☆     ☆     ☆     ☆     ☆     ☆     ☆    ☆ 


ということで、米金融業界の内情を聞いてみると、各社CEO達が決算発表のたびにバラ色ストーリーを振りまいてるほどにはバラ色でもない様子なのだが、ニューヨークシティ全体でみると、シティの経済状況は西のサンフランシスコなどとならび極めて良好で、米国の他の地域から頭ひとつ抜きん出て回復が顕著になっている。

NY市の不動産価格もけっこう好調である。マンハッタンのみならず、川を越えたブルックリンやクイーンズでも、エリアによってレンタル・セールスともに絶好調。New York Daily Newsに、今日付けで、こんな記事。
 

Brooklyn real estate keeps soaring as both sales and rental markets end 2013 on a high note 


1990年代から2000年代中盤までは、ニューヨークシティの経済のけん引役といえば金融セクターだったわけだが、 それがここ数年で相当様変わりしている。その様変わりについて、1月6日のNew York Timesに関連記事があったので、以下に紹介する。

2013年、ニューヨーク経済のけん引役はテクノロジー業界が完全に取って替わったのである。

New York, the Silicon City


以下、拙訳。

『先週、ビル・デブラジオが新市長となりニューヨークシティの地域経済の舵取りを任されることとなったが、金融危機崩壊後、ニューヨーク経済は米国の他地域を大きく引き離し景気拡大が進んでいる。それもマンハッタンの一角でと言う話ではなく、シティ全体で回復が見てとれる。テクノロジー・情報セクターの拡大により、今日のニューヨークは、2007年~2008年にかけての金融セクター主導のブーム時よりもさらに多くのプライベートセクター雇用数を誇っている。

 ここ10年余りをかけて、ニューヨークは、サンフランシスコ、ボストン、シアトルに対抗するテクノロジー・シティに成長した。そして、それは金融・法曹セクターとそれらに便乗するホテル業のようなサービス・接客業への依存からの脱却によって成し遂げられた。デブラジオ新市長に与えられた課題は、このトレンドを引き継ぎすべてのニューヨーカーがそこから利益を得られるようにすることだ。

デブラジオ氏の前任者であるマイケル・ブルームバーグには、ニューヨークが「デジタル・シティ」として勃興するのを可能にした人物として自らを誇るに足る理由がある。彼の指揮下で、テクノロジー・情報セクターは、金融セクターに次ぐ市の第二の最強経済エンジンとしての地位を固めた。「インターネット・パブリッシングおよびウェブサーチ・ポータル」産業に従事する人口は、2007年には6%をやや越える程度だったが、現在では市の10%を占めている。

驚くべきことに、このテク・ブームの恩恵に授かっているグループの中心はマイノリティだ。2010年以来、同市でコンピューターおよび数学関連の職種(国勢調査ではテクノロジー関連業務と呼ばれる仕事)に着く黒人の数は、ここ数年で19.7%増加している。(最新国勢調査データからの予備分析ベース。)

同様に、ヒスパニックの数も25.4%の伸びである。 これと対照的に、同種の職業におけるヒスパニックではない白人人口では2010年以来わずか6.4%の増加にとどまっている。

ニューヨークのテクノロジー関連産業で働くマイノリティの数が急激に増加している背景には、テクノロジー分野で学位を取得するマイノリティ学生が近年大幅に増えていることが理由のひとつにあげられるであろう。例えば、全米教育統計センターによれば、コンピューター・情報科学で学士号を取得したヒスパニックの学生は過去3年で40%増加している。これらの人材サプライがニューヨークの雇用市場に吸い上げられた背景には、同市のテクノロジー・情報産業の雇用市場が逼迫しており、企業側が従来のソースを越えて人材確保に走った事情があげられる。

テク・ブームの恩恵は同市の5つの地区*すべてに行き渡っている。2008年中盤から2013年中盤までの期間中、プライベート・セクターの雇用数の伸びは、マンハッタン区でわずか3%だったのに対し、他の4区では9%だった。これは、金融ブーム下でマンハッタン区の雇用数が他の地区をはるかに凌ぐペースで伸びたのとは逆である。(注*:NY市はマンハッタン、ブルックリン、クイーンズ、ブロンクス、スタテンアイランドの5つのborough=地区から構成されている。

さらに、グーグル社やマイクロソフト社のような企業がNY市からはまだ産まれていないという懸念をよそに、デジタル・シティとしてのニューヨークは成長を続けている。 コンファレンス・ボードのデータを用いたプログレッシブ・ポリシー・インスティチュートの分析では、2013年の最初の11ヶ月間で、コンピューター・数学関連業務の求人広告数は全米で前年比4.0%増だったのに対し、ニューヨーク市では6.8%増を示した。

その代わり、40万人を雇用する娯楽・サービス産業がNY市の弱みだ。総雇用者数は伸びてはいるが、実質給与が下がっている。これはおそらくホテルやレストランの需要を生み出す金融・法曹セクターが引き続き弱いことに起因しているのだろう。この実質賃金の減少は、他の分野で伸びているNY市の地域経済の足を引っ張っている。

これから新市長は何を学ぶことができるだろうか。ニューヨークの経済拡大は、テクノロジー・情報セクター の成長を目指してブルームバーグ政権が積極的に施した刺激策が功を奏した点には疑問の余地はない。これらの施策には、テク・インキュベーターのための資金提供、小規模テク企業支援を目的とした「Made in NY」のマーケティング・キャンペーン、市全体を網羅するブロードバンド・アクセスの急激な拡大、広範囲に渡り市が着手したオープン・データ戦略(公共およびソフトウェア・デベロッパーに対し市のデータを使用可能にする)、コーネル大とイスラエル工科大学テクニオンを選抜しルーズベルト島に広大な新キャンパスを建設、などが含まれる。

デブラジオ氏は新市長就任式のスピーチで立派な公約、特に収入ギャップの縮小をめざすと述べたが、その目標達成のためにも、新市長は上記政策を継続すべきである。テクノロジー・情報産業ブームをこの先も促進し続けねばならない。なぜなら同産業はNY市の隅々まで新規雇用を創出し、金融と不動産に過剰に依存していたかつての状態を是正するのに役立っているからだ。そしてこの状態が続くことで、将来NY市の経済、ひいては税収が、より安定的なものになると考えられるからだ。

就任スピーチでデブラジオ氏はニューヨークのすべての子ども達がよりよい教育を受ける必要があると力説したが、それは正しい。そしてそれについても、テクノロジーを中心に据えた市のアジェンダ継続の一部として実行すべきだろう。学校を改良しテクノロジー分野で優位に立ち続けるために、新市長は市の学校教育でテクノロジーおよび関連分野の強化を図らねばならない。

不均衡の是正と市の繁栄拡大を実現させる主策とは、ニューヨーカーが未来の職に向けて準備を進めるためのより良い教育とトレーニングに他ならない。その実行に成功すれば、デブラジオ氏は偉大な市長としてのレガシーを遺すことができるだろう。』

(投稿者のマイケル・マンデル氏はProgressive Policy Instituteの経済ストラテジストで、South Mountain Economicsという経済分析会社社長。)

(おわり)


Monday, December 31, 2012

2012年も年末になってしまいました!

気がつくと、2012年12月31日です。

前回のエントリーはなんと2月。10ヶ月もエントリーをサボってしまいました。

今年は、昨年の延長のようなニュースが続いたせいもあって、積極的に経済関係のニュースを追いかけてブログにしたためようという気持ちがなぜか失せてしまいました。そうこうしてるうちに年末を迎えてしまった、というわけです。

アメリカでは11月に大統領選挙があり、オバマ大統領が再選を果たしました。オバマ一期目は、彼が政権を引き継いだばかりの4年前と比べると、あの最悪期は脱したものの、4年間途切れることなく民主と共和の二党間が対立する状況が続いて、これといってパッとしないうちに選挙本番を迎えたという感じ。

オバマ政権下での経済復興にちから強さが見られなかったことで、オバマに対する失望の声は少なからずあったものの、それでも、米国は極端な保守へのシフトを歓迎はせず、ミット・ロムニーを推す共和側は十分な票を取れず、オバマ民主政権の続投を許した。

今年の大統領選のテーマは後にも先にも、Jobs! Jobs! Jobs! ということだったわけだが、2007年のリセッション以降、米国の雇用状況がどう回復してきているかは、このおなじみのチャートをどうぞ。(Calculated Riskから)


縦軸は就業数がピークの時を0.0%としており、リセッション後のジョブマーケットの回復振りを見ることができる。ピーク時から数えてすでに58ヶ月が経っているが、落ち込み方が激しかった分、いまだに米国の雇用は水面下にいる。戦後の景気後退に起こった雇用悪化の中では最悪、回復に要する時間も最長で、回復がこのペースで続くとすると、ゆうにあと数年は現在のダラダラ状態が続きそうだと示唆する図である。

ただしポジティブな点も強調しておくと、ダラダラと長期間かかってはいるが、着実に戻してきている、ということでしょうかね・・・。

筆者としては、2013年の米国経済も、2012年のようにこれといって印象的なイベントが起こらないまま、ダラダラ&ノッタリと回復を続けてゆくのではないかと思っているのだが、米国内外どこからともなくショックが襲ってきて、このチンタラ回復曲線が途中で腰折れて下降線に変わらないよう祈るばかりである。

     ★     ★     ★     ★     ★

さて、筆者の私生活のほうである。

米国経済は2012年はいまいちパッとしない状態だったが、筆者個人にとっての2012年は、大きな変化が訪れた年だった。

その大きな変化というのは、1993年から20年近くも住み続けたマンハッタンのMurray Hill地区のアパートを売却してしまった、ということだ。

2012年は、その前年や前々年と比べるとNYCの住宅不動産市場に結構底堅い雰囲気が出てきたという手ごたえを強く感じた年だった。

このアパートは、2011年にも売り物件として出したのだったが、2011年の間は、まだBottom Feeders(底値を漁り買い叩くバイヤーのこと)が多いという印象で、こちらの言い値に近いビッドで食いついてくるバイヤーがなかなか現れてこなかった。そこで、いったんリストから外した。

ところが2012年に入り、不動産市場が活発になりだす春先に再び売り物件としてリストしてみると、こちらの希望売却価格から極端に乖離していないレベルをスタートにビッドを入れてくる買い手が実際に何組も現れた。


最終的には、リスティングプライスから3%のディスカウントがかかった売却価格で交渉がまとまった。ディスカウントがかかったとはいえ、破格の安値だったわけでもない。マンハッタン内の同様のエリアの同様のユニットの価格と対比させても、だいたい期待値に収まったのではと思う。

いわば、「そこそこのお値段」で、それなりのキャピタルゲインも伴って売れたわけだ。2008年からインベントリーが着実に減少しており、マンハッタンにはもう、超お買い得物件は残っていない。

私たち夫婦が93年から賃貸(サブレット)していたこのユニットを元のオーナーから買ったのは、前回マンハッタンの不動産がボトムをつけた1995年。さらに1997年には隣接していたもうひとつのユニットを当時の破格値で買い増して、1999年に二つのユニットを繋げ、かなり広めのアパートに改装・改築して住んでいた。

住み始めた1993年から売却した2012年までの19年間に、バスルームやキッチン、ユニット接続など、4度にわたる大規模な改装工事を行ったのだが、2軒のユニットのオリジナルコストに改装コストを加えたコストベースよりも高い値段で売れた。

この不動産市況下でもそれなりのプロフィットを出せたのは、ひとつには当該物件を17年間という長期に渡って所有したこともあるが、もうひとつは、ニューヨークシティという地の利、である。「不動産はLocation, Location, Location」という言葉があるが、マンハッタンという場所に不動産を抱えたのは正解だったとつくづく思った次第である。

NYのコンド・Co-op市場のブローカーとしてで大きなシェアを持つ「Corcoran Group」が、つい先日発表したばかりの『マンハッタン住宅不動産:3Q2012の四半期レポート』に、私が住んでいたMurray Hill地区を含むMidtown EastのエリアのCo-op 売買状況について、こう書いている。

The Midtown East co-op market experienced significant median price gains this quarter. Median price increased 10% from last year and 14% from last quarter. Average price per square foot reached $732 this quarter, representing a 4% increase from last year and 3% increase from last quarter.

「ミッドタウン東側(マンハッタン島の北限57丁目、南限34丁目、西限5番街、東限イーストリバーに囲まれたエリアを指す)のCo-Op市場で売却された物件のメディアン価格は2012年第3四半期にめざましい上昇がみられた。メディアン価格は前年同期比で10%、前四半期対比で14%の上昇率だった。スクエアフットあたりの平均価格は$732に上昇、これは前年同期比で4%、前四半期対比で3%の伸びだった。」(注:スクエアフット=Square Foot=0.092平方メートル)

「前年同期比で10%以上の上昇」というのは、上述したとおり、2011年と2012年のマーケットにおいて私自身がセラーとして売買に参加してみて、実際に手ごたえとして得た感触そのもの、である。

あの物件をあと数年持ち続けていれば、おそらくもう少し高い価格で売却できたのかもしれない。しかし、投資というのは、欲の皮をつっぱらかしてばかりいても始まらない。

売るタイミングが来たと思ったら売る、そして、次のフェーズに移るのだ。

マンハッタンの住処を7月に売却した後は、数ヶ月間メイン州の田舎小屋に引きこもって夏を過ごした。そして、今年10月にマンハッタンの北側に位置する郊外ウェストチェスター郡に一軒家を購入し、ふたたびニューヨーク近辺に戻ってきた。

NYから北に電車で一時間の場所に新拠点を構え、わたしの人生そのものも新たなフェーズに入ったのだ。

     ★     ★     ★     ★     ★

ということで、このブログ名の元になったマンハッタンの『Murray Hill』というエリアの住民ではなくなってしまいました。

でも、ブログ名称をいまさら変更するのも面倒だし、20年以上も住んだからいまだに愛着もあるので、このまま書き続けることにします。

今年も、いろいろな方との出会いがあり、TwitterやFacebookなどSNSでのおしゃべりも楽しませていただきました。

あと5時間もすれば、ニューヨークも2013年を迎えます。

みなさま、今年もお世話になりました。2013年も引き続きよろしくお願いいたします。

Tuesday, February 28, 2012

向こう数年はダメダメが住宅不動産のコンセンサス

前回は、地域によっては(←ここ重要)、賃貸料が上昇してきてますね、という話をした。

しかし、住宅価格となると、どうも失速気味。今朝発表されたケース・シラー・インデックスは20都市平均で0.5%下がり、2003年1月以来の低水準に戻った。(グラフはCalculated Riskから)

グラフ1:ケース・シラー(87年以降、季節調整前ノミナル)


グラフ2:ケース・シラー(88年以降、季節調整後、YoY増加率)


ノミナルのチャートでみるとそこそこ下げ止まり感は見えるものの、持ち上がるのに苦労してる。(形状としては、富士山の格好をした日本の不動産価格のグラフにソックリですな。)

増加率でみても、オバマの政府補助プログラムでいったん水面上に出たものの、またマイナス圏に戻って、はい上がれない状態にいる。

前回のエントリーでは、アネクドータルにはやや底打ち感が出てるエリアがNYにはある、と書きましたけれど、ちょっと持ち上がってきたな~という雰囲気が出てくると、鳴りを潜めていたシャドーインベントリーが、待ち構えていたようにゴチャーッと市場に出てきたりする。

そのため、なかなか需給に硬さが出ない。全米でシャドーインベントリーは膨大な数に登ると言われているため、需給がソフトなままではなかなか価格上昇にモメンタムがつかない。住宅価格は、さらなる大幅下落は避けられたとしても、需給がヤワヤワのために、価格急上昇というシナリオは目下のところ存在していないも同じ。

今日のBBCでは、ニューヨーク・シティから東に向かって2時間ちょっとのところにあるロングアイランドの超高級リゾート住宅地のハンプトンズ(Hamptons)の不動産の状況がレポートされていた。




ハンプトンズといえば、フィッツジェラルドの名作『華麗なるギャツビー』のスノブな舞台。

昔から、富裕層の別荘地として知られたエリアで、ここはミリオン・ダラー・ホームが数多く建ち並ぶ。そんなハンプトンズで、30年来と言われる不動産不況が深刻化、富裕層でも持ち家を維持できなくなっている。価格が$1ミリオン以上のディストレス物件が、ハンプトンズだけで1000以上も売りに出ているというのだ。

米史上初めて富裕層が、他のどの層よりも速いレートで持ち家を失っている。

BBCニュースのビデオで紹介されているのは、当初$6ミリオンで売りに出された物件だが、もう5年も売れずにこうして空き家になっている。持ち主は銀行への借金返済のために何が何でも売らなくちゃならなくて、現在は当初の言い値の半分の$3.2ミリオン。銀行側もこの価格を承知してるそう。

NYエリアの不動産鑑定の専門家Miller SamuelのJonathan Millerは、このBBCのインタビューで「不動産に関して明るい数字がチラホラ踊って見えるものの、向こう数年はまだまだダメ、というのが市場コンセンサス」と語っている。


Saturday, February 25, 2012

住宅価格は上がらなくても家賃は上がる

住宅価格は下がっているが、賃貸のほうは上昇し続けているというNYタイムズの記事。

(NY Times, 2/24/2012)

ただし、どの街でもそうだというわけではなく、地域差はかなり明確。

下の図(NYタイムズから)によると、ワシントンDCはリセッションが始まって以来、リーマンショックもなんのその、一度もマイナスに陷ることなく上昇し続け。テキサス州経済が好調なオースティンも好調。ボストン、シアトルなども好調。サンフランシスコ、ニューヨークは一度激しく落ち込んだが急上昇で復活モード。

一方いまだに住宅市場の深傷が癒えていないLA、フェニックス(アリゾナ州)、ラスベガスはいまだディープにマイナス圏。フロリダ州オーランドも賃貸料の上昇鈍い。(図をクリックすると拡大します。薄い線が全米平均。)




ワシントンDCの場合は、民間がグシャッと潰れて虫の息だった間でも、やれ救済だ、新たな規制の作成だ、政府主導の景気刺激プログラムだ失業対策だ、なんだかんだ、と政府関係の仕事だけはワンサカあって、不況であればあるほど盛り上がるという、気味悪い地域キャラ(笑)が功を奏していると思われる。

サンフランシスコは、シリコンバレーのハイテク関係の職で盛り上がっているところは盛り上がっているそうで、レント急上昇なのもうなづけますね。

ニューヨークに関していうと、金融街はいまだ昔の元気は取り戻していないものの、「不動産はLocation! Location! Location!」の言われの通り近郊からマンハッタン内への移動も起こっていたりして、マンハッタン内の賃貸(レント)は実際目立って上昇していて、それに呼応するように、売買物件のほうも、賃貸が多いゾーン(60~70平米程度の居住面積の1ベッドルームから1.5ベッドルーム(Junior 4と呼ばれる)物件)の回転率が高まってきているのが、なんとなく感じられる。

筆者は去年から、Zillow.comTrulia.comStreeteasy.com などの不動産検索サイトを駆使して、かなり熱心にニューヨークとその近郊の物件価格を睨み続けてきているのだが、マンハッタンの中およびブルックリンの一部では、エリアによっては物件の価格下げ止まり感が顕著になってきているのがわかる。

賃料は上がり続けるうえに、モーゲージ金利も史上最低値のあたり(現在30年固定で4%以下)にあるということで、一部ではお買い得感が出たり潜在バイヤーの触手が動いていることは間違いない。

住宅を買った場合と賃貸をした場合とでどちらが有利かを考慮する際、住宅を買った場合のキャッシュ・アウトフロー(全額個人所得税の控除対象になっている住宅ローンの金利分を調整後の実質賃料換算値)と賃貸のキャッシュ・アウトフロー(毎月払う家賃)を対比させる【Rent Equivalence】で比較してみるのがアメリカでは一般的に行われているが、上記NYタイムズの記事で、どちらが有利かをビジュアル化してみせてくれる計算機のインターアクティブサイトがあったので、紹介しておく。

Is It Better to Buy or Rent?

このサイトで「例」になってるケースは、現在月額家賃1,100ドル払っているひとが、17万2千ドルの家を年率5.5%のローンを組み頭金20%でプロパティ税1.35%の地域に購入した場合、5年で賃貸するより購入したほうがよくなる、という計算結果である。

住宅資産や賃料の年率上昇率、モーゲージ・ローンの借入期間や売却時のキャピタルゲインの税控除対象額など、いろいろ試算の前提を変えて計算することができるすぐれもの。

遊び始めると面白くて止まらなくなるかも・・・。


Monday, February 13, 2012

オバマの2012年度予算概要

【メモ】今日出された、2012年10月1日から始まる米国の年度予算。

わかりやすい図表。(単位:$ビリオン) WSJから

歳入:$2,902 
歳出:$3,803
赤字:$901

(クリックすると拡大します。)


財政赤字は2012年度にいったん膨らみ、2013年度から縮小してゆくという見込み。


赤字縮小のためには、歳入を増やして、歳出を縮める(という【予定】)。



内訳では、軍事費を削減しても、医療費は年々上昇し続ける。



さらに、別のWSJの記事から、以下のグラフ。歳入と歳出の過去トレンド。こちらもわかりやすい。



そして、Outlays(歳出)がReceipts(歳入)を上回った状態が続くと、国家の借金はどうなるかというグラフ。わかりやすい。




Saturday, February 11, 2012

預貸率の国際比較 from 日銀資料

さっき、日銀の白川総裁による講演の邦訳を読んでいた。

アジアにおける金融:バンキング・ビジネスと資本市場
(国際コンファレンス・前夜ディナーレセプション(日本証券業協会主催)における基調講演の邦訳, 2/9/2012)

(以下引用)

もともとアジアの金融機関は、「国内預金をベースに貸出を行う」という伝統的な――あるいはベーシックな――ビジネス・モデルに立脚してきました。実際、アジア各国の貸出/預金比率をみると、100%を下回る国が大半を占めています(図表1)。国内預金を主たる資金調達源とするビジネス・モデルは、ホールセール市場への調達依存度が高い場合に比べて、資金流動性リスクが低いと考えられますが、今回の金融危機においては、この点もアジアの金融機関にとってプラスに働いた可能性があります。


確かに、日銀総裁が言うとおり、アジアの銀行の預貸率は100%以下(=預金が貸出金を超えている)に固まっていて、この比率であれば、イザ!という時、バランスシートに急激に強い流動性ストレスがかかることは避けられるでしょうね。

しかし、このグラフで筆者がむしろ目を惹かれたのは、逆に、PIGS諸国がどこも預貸率で130%を超えている方で、市場資金への依存度が高い分、流動性リスクにモロにさらされているという点だな。

ソブリン危機が銀行B/Sの流動性に思いっきり悪影響を及ぼしているというのは、誰もが多かれ少なかれ“感触”としては抱いていただろうけれど、こうしてグラフにしてもらうと、その感触にハッキリと輪郭がついてくるような感じ。こんな格好のバランスシートしてて、ある日突然価値が半分になるかもしれないような某国の国債なんて、誰がホイホイ喜んで買えますか?

昨年11月末から世界中の中央銀行からリクイディティのプレゼントがドカンドカン落とされて、12月のサンタクロース・ラリーをもたらし、市場流動性への懸念は以来かなり落ち着いてきているようであるし、昨年夏・秋に「死に体」状態にあった欧州銀行シニア債の発行が可能になってきているということも、拙ブログの1月12日のエントリーで紹介した。

だが同時に、預貸率がこういう状態の銀行システムなのに、そこでシニア債が正常に発行できない状態が夏からしばらく続いたというのは、欧州銀行の当事者らにとってはどんだけシンドかったか、(いまさらながら)想像できるな。また、本当の意味で銀行債市場が正常化してくれないと、このストレスは容易にはなくならない、ということも。そして、ここから示唆されることとして、貸出側の強い締め付けは続きそうですよね、ということも。現状はECBのファシリティにおんぶに抱っこでいれるから、まだ首の皮は繋がってますけど。

先週は、ギリシャ救済資金の大前提となってる歳出カットでギリシャ政府はその案を最終承認したというニュース。

Papademos Gets Cabinet Approval for Second Greek Bailout
(Bloomberg, 2/11/2012)

しかし、市場では、もう2年も市場で取りざたされてきたソブリン危機がこれで収束に向かうと楽観的に考えている人は少数派のようにも見える。

Greek Bailout Gains Could Fade Fast
(Wall Street Journal, 2/10/2012)

Why the Greek Bailout Doesn’t Change Much of Anything
(Time, 2/10/2012)

まぁ、いろいろあるけど、その国の銀行システムが流動性不安抱えたままで、実態経済のほうはギクシャクしないで安定してゆく、というのはちょっとあり得ない組み合わせなように、わたしは個人的に思っているんで。

Tuesday, January 31, 2012

欧州の若年層の失業率

66年ぶりの豪雪に見舞われたというスイスのダボス。「魔の山」は天にも見放されたのか・・・。

今年のダボス会議に出席されてる(らしい)竹中平蔵氏のツイートがTLを流れてきた。


「ユーロ圏各国の自助こそが必要だ。」はい。

しかしですよ、氏のこのツイート上に、こころに留めておくべき重要なインフォメーションが何かひとつでもあるであろうか。

ダボス会議の経済フォーラムとしての地盤沈下も、そろそろ目に余るようになってきたな。

昨年のちょうど今頃、このブログに『ダボス会議に出席なさりたい方のために』という記事を書いていたのだが、今年はなにかトピック拾って記事を書こうという気すら起こらない。今年も、去年の記事に書いたとおりです。

ただし記録しておこうと思ったのは、Zerohedgeの記事で紹介されていた欧州のワカモノの失業率のチャート。16歳~24歳の労働者の場合、欧州圏全体では20%程度だが、ギリシャ・ポルトガル・スペインの懸念されてる3カ国ではそれより目立って高く、しかもトレンディングアップしている。


スペインの若者は、ふたりにひとりが失業中とな・・・。

今回のダボス会議で欧州リーダー達が「失業対策の必要性」をことさら強調するはずですね。しかし債務削減のために財政緊縮を進めるのはいいが、やりすぎると、この失業率の数値はさらに悪化しかねない。

今日付けのGlobe&Mailに若年層失業について記事が載っていた。具体的な数値が出ていたので、書き留めておく。

The rising toll in Europe: Young, jobless and hopeless
(The Globe and Mail, 1/31/2012)

  • ユーロ圏17カ国の失業率は平均で10.4%。EU圏全体になると9.9%。
  • だが国別に見ると差が大きい。
  • 同率が低いのは、オーストリア(4.1%)、オランダ(4.9%)、ルクセンブルグ(5.2%)。
  • 高いのはスペイン(22.9%)、ギリシャ(19.2%)、リトアニア(15.3%)。
  • 若者層になると状況は深刻。EU全体で22%、国別ではスペイン(48.7%)、ギリシャ(47.2%)、スロバキア(35.6%)。
  • ドイツの失業率は史上最低6.7%まで低下。

ドイツの場合はユーロ圏内で最も共通貨幣の恩恵を受けてきて、また昨今のユーロ安の影響も享受して一人勝ち状態ではあるが、スペインやギリシャなど、この失業率の状態で更なる財政緊縮を進めてゆくとなると、経済を支える屋台骨そのものに悪影響はでないのだろうかと、こちらが心配になる。若年労働者層の出力が低いままだと、将来の各国の債務返済プラン(←非常に長期に渡る話)にも響いてくる話。

同記事の最後のパラグラフ。

・・・the future will continue to look uncertain with the result we could have a lost and disaffected generation which in turn will mean that any measures to bring down debt levels will also fail."
(経済の低成長と競争力の低い労働市場という問題に取り組む戦略をリーダー達が見せないと)この行き場を失い不安に満ちたジェネレーションを抱えたままでは、この先どんなに債務レベルを下げようと頑張っても失敗しかねない。
「Come up with a strategy - 戦略を考えよ。」はい。

だけど、【a】strategy を考えろと誰もが言うが、【the】strategy を出してくる人は見かけない。抽象的な「~べき」は誰もが語るが「具体的にどうよ」となると答えはない。

しかし、待てよ、そういう状態こそがまさに、ダボス会議そのもの、ではないか・・・。