答えは「アメリカ合衆国」だそうである。
Source: How America Will Beat Back China With Its Killer Labor Force (Business Insider, 3/31/10)
以下、記事より。
Thanks to a relatively high fertility rate, plus a rich culture of immigration, America is set to grow its population by another 100 million people through 2050. This is based on U.S. census projections and is supported by other projections as well via New Geography.
(1)高い出生率、(2)移民文化 に支えられ、米国の15歳から64歳の労働人口は2050年までに一億人増加の見込み。(国勢調査に基づくオフィシャルな推計)
China will have to increase worker productivity faster than the fall in its labor force each year just to tread water when it comes to GDP. Meanwhile the U.S. could have zero productivity gains over 40 years and yet achieve a 42% larger economy by 2050. Thanks to healthy demographics.
中国の場合、労働人口の伸びは2020年頃には頭打ちとなり、その後は労働力の縮小分よりも早く労働者の生産性を上げなければGDPは縮小する。一方、米国では、生産性が向こう40年間今と変化がなかったとしても、経済規模は2050年には42%拡大している。これは、健全なデモグラフィクスの賜物だ。(引用終わり)
★ ★ ★
たしかに、この図だけみると「賜物(たまもの)」ではありますが、データのサブセットにも踏み込んで分析する必要がありますね。
どこかに詳しい分析やってるひとが絶対にいるはずだし、面倒なんで自分ではやらないが、表面的な数字だけ、ざっと拾ってみた。
ウィキの『Demographics of the United States』の項をみると、
- 米国の出生率は女性一人当たり2.05人の子供。先進国の中では最高値。
- 米国全体の平均年齢は36.7歳。(←働き盛り)
- 人口の伸び率は全体では年間0.977%だが、人口増加は主としてマイノリティ層で伸びている。
- 2005年の国勢調査に基づく推計では、5歳以下の米国籍の子供の45%がマイノリティ。
- 2005年から2006年にかけての人口増加290万人のうち、約半分がラティーノ(ヒスパニック)系マイノリティ。
- 向こう数十年に渡り、移民とその子孫が米国の人口増加の80%以上を占めると予想。
- 白人(ヒスパニック系除く):68%(2008)→46%(2050)
- ヒスパニック :15%→30%
- 黒人(ヒスパニック系除く):12%→15%
- アジア系:5%→9%
3月21日付けのMurray Hill Journal記事『子供の教育はPRICELESS』で、米国の場合は子供が減ってるという問題はないものの、子供が高校をドロップアウトするケースが多く、最終学歴によって生涯収入に大きな差がつくという話を書いた。
米国の16歳から24歳の男子の高校中退の比率は18.9%、これを人種別に分けると、
- ヒスパニック27.5%
- ブラック21%
- 白人12.2%
また、米国の家庭の平均家計収入(2006年メディアン)は$46,326、これを人種別に分けると、
- アジア系$51,578
- 白人$48,977
- ヒスパニック$34,241
- 黒人$30,134
ということは、ですよ。
国全体の労働人口は、向こう40年間着実に年間1%ほど増加を続けるものの、現在の高校中退問題が手付かずのままいくと、増加した労働人口の最終学歴は低下し続け、スキルの低い労働力の割合が高くなり、米国の生産性は落ちる可能性がある、ってことだよな。
オバマは先日、学生ローン改革法に署名をし、その中で、学生ローン制度の見直しや奨学金拡大のほかに、コミュニティ・カレッジに20億ドルの予算を配分することも盛り込んで、マイノリティの学生の大学進学を援助する方針を示した。
関連記事:Obama Signs Overhaul of Student Loan Program (NYT, 3/30/10)
しかし、問題は、マイノリティの多くが、大学進学前に躓いてしまってる現実である。
やはりMHJ筆者は、コミュニティ・カレッジへの支援もいいが、できるだけ多くの生徒が、ともかく高校卒業はすべきと考えるし、地方自治体の財政難の皺寄せが子供の教育にいかないように、それへの対応を連邦政府はもっと優先的にすべきじゃないか、という思いが強いな。
さらに、こちらでよく言われていることとして、マイノリティの経済的地位が向上しない理由のひとつに、政府による「社会福祉や施し」に慣れ切ってしまって、生活保護を受けてるほうが定期収入もあるし居心地が良いため敢えて働こうとしない、という悪循環になっているというものである。
現在の民主党政権の方針の多くは、こうした社会的弱者への対応に余念がない様子だが、ヘルプと言えば聞こえがいいが、施しを期待する人が増えることは、この国の財政には決してプラスには働かない。
労働人口の数そのものが増えても、政府への依存度が高く生産性の低い層が拡大するとなれば、トップに掲げたグラフが単純に示唆するほど、楽観してはいられないだろう。
上のデータで、アジア系の平均所得が白人層をも上回っている事実に目を向けよ。米国に移民したアジア系の家庭の、子供の教育に対する熱意といったら、もうそれはハンパじゃないんである。
ああいう熱意をヒスパニック層や黒人層の家庭につけることができれば、事情は違ってくるかもしれないが・・・。
★ ★ ★
・・・とかなんとか、ウダウダ考えていたんだが、昨夜(30日)の米公共放送PBS局で、ニューヨーク市のブロンクスの高校でマイノリティの生徒達を大学に進学させようと頑張っている中国系の熱血校長先生の姿を追ったドキュメンタリーフィルムが放送されていた。
フィルム紹介サイト:Whatever It Takes(PBS)
『Whatever It Takes』というこのインディーフィルム、エドワード・トム校長の熱意に心打たれたと同時に、頑張ればできるんだという自信を彼らにつけてやることがいかに容易なことではないか、というのも強く伝わってきた。
こういう先生が、これからも、どんどん増えてくれることを切に祈ります。
4 comments:
同感です。
アメリカはもっと教育に投資するべきなんです。このままでは、政府支援に頼る貧乏人とバカばかりの国になります。
お金を使わなくても、意識改革でできることがたくさんできることがあると思うんですけれどね。。。どうしてこうなったんだか。。。医療の問題とも通じるものを感じます。
経済成長期のアジアの国から来る移民のガリ勉っぷりも、ちょっと前の日本を思い起こさせてやや怖いですけれど、周りに刺激を与えるという意味ではいいことですよね。
しかし、ボストンの辺を見ている限りでは、このアジア系がものすごく「学区」にこだわるらしいんです。
それで結局は、地域ごとの人種の偏りが顕著になるばかり。
どうにもならないのでしょうかねえ。
興味深い記事をありがとう。ふ~ん、あの恐るべし中国もそろそろ頭打ち。日本はさて、どうなるのでしょうね.....。
おひさしぶりですw。
2005年で検索して最後の2件、2050年に置換が正しいように思います。
ところで、以前の中国ネタでコメントしようと思いつつしなかったのが、ここで指摘されている、中国(中華人民共和国)の労働人口2020年頃に頭打ち、です。その他、台湾、韓国等日本を含む東アジアは少子高齢化が未曾有の速度で進んでいます。中国関連でさらに細かく言うと香港、シンガポールも同様です。従って、これらの国や地域の労働人口の将来はけっして明るくありません。
また、労働人口の減少に注目すると、ロシアもまた深刻です。ソビエト崩壊後のロシアは世界中の人口学者が注目するほど人口減少の速度が極端でした。ところで、ロシア国内では極東地域に属するカムチャッカ州等の人口減少が特に深刻だそうです。どうしてでしょうね。
初めてコメントします。アメリカ在住している事もあり、いつも興味深く読んでおります。(Cheeさん、こんにちは)
アメリカの人口構成が健全なのは、喜ばしい限りなのですが、マイノリティが増えているのが心配です。
やはり、教育問題のこともあり、人口拡大が経済拡大とリニアーになるのかは、注意するべきと思います。
人種の構成が変わると、ある時点で社会のあり方も急に変化するのではないかと思ってます。(心配している)
医療改革法案に続き、教育、移民と改革法案が次々と出てくるのですが、保守的(アメリカ的という意味で)な考えの私は、良きアメリカが無くなるという漠然とした不安があります。
日本の様に、人口減少で、社会保障等が一遍に崩れる(だろうとの予想)より、マシなのでしょうが、社会福祉 (entitlement programs)の根本的見直しを行い、人口の増加をあてにしない政策への転換が必要だと思います。(現在は、国家規模のポンズィースキーム)
世界規模のハイパーインフレになる前に、せめてアメリカは方向転換をして欲しいものです。
Post a Comment