あの後、オバマは自己が押し進めるヘルスケア法案に議会の賛同を得るため先週水曜日に大演説をぶった。常に沈着冷静が売り物のオバマにしては熱のこもった演説で、メディアの一部は、このスピーチは大成功、保守側を黙らせて医療保険制度の改革に向けてオバマ政権は一歩踏み出した、と伝えたところもあった。
だが、この国に広く深く散らばるハードコアの保守層および極右団体が、そう簡単に引き下がるわけがないんである。
今日(12日)、社会主義反対を叫ぶ皆様が全国から何千人もワシントンDCに集結し、今以上の政府支出に反対の声を上げ、反政府デモを繰り広げたというではないか。デモの中には「ブッシュを呼び戻せ」と書いたプラカードまであった、ってんだから。
Protesters March on Washington (WSJ, 09/12/09)
保守層の抵抗がこうも強いと、オバマのヘルスケア改革、前途多難であるな・・・。
そこにさらに追い討ちをかけるように、12日のウォールストリートジャーナルによると、米国債発行の法的上限は現在12兆1千億ドル($12.1 trillion)になっているのだが、早ければ来月半ばにも、発行総額がこの上限に届いてしまいそうで、この上限を早急に引き上げなければ、米財務省キャッシュフローの危機、というんである。
Treasury Girds for Debt-Ceiling Fight (WSJ, 09/12/09)
現在、米国は週300億ドルのペースで米国債を新規発行していて、国家の借金総額はどんどん膨れていってる。
それでも、目先のインフレ懸念が表面化していないこと、および、低金利を続けていて市中の流動性がガバガバ過剰になっていることで、株高・コモディティ高にあわせて米国債市場も一緒になってバブリぎみ。
先週行われた10年米国債売り出しも大盛況で、Bid-to-coverレシオが2.7倍超えたってんだから。(過去7回の売り出しの平均は2.5倍。)(筆者つぶやき:中国も日本もようやる・・・。)
新規発行は順調にさばけているようであるが、この局面で、「米議会がヘッポコでトリプルAの米国債をデフォルトさせる」なんつーわけには絶対にいきませんから、一時的にでも法的上限の引き上げはなされるであろうけれど、最近やたら勢い付いている抵抗保守サイドは、この上限引き上げに関わる審議を、この機会を待ってましたとばかり最大限利用して、財政赤字+過剰債務の問題をクローズアップし、オバマ叩きに走ることであろう。
そして、CNNを筆頭にメジャーなメディアは、連日連夜、総力挙げて『財政赤字特集』を組むことでありましょう。
この秋の流行言葉は【DEFICIT】-いまから見えてるな。
政権交代以来トントン拍子で(というか有無を言わせず)カネを使い続けたオバマ政権だが、この先は、そう簡単にはいかなくなりそうである。
★ ★ ★
さて、昨日(11日)は、911テロの8周年だった。
2001年9月11日から8年後の昨日まで、株価は結局【同じ場所】に戻って来たそうである。(グラフはBespoke Investmentより。)
その11日、いくつか目に付くニュースがあったので、記録しておきたい。
(1)ウォルマートのCEO、米国人のバケーション向け消費は25%減だったと述べる。
前回のMHJで、筆者は、ニューヨークの空港の国内線も国際線も連休なのにガラーンとしてたというアネクドータルなエピソードを書いたのだが、ウォルマートのCEOマイク・デューク(Mike Duke)が同じポイントに言及していた。
9月10日にゴールドマンサックスがニューヨークで主催した小売業コンファレンスの席で、マイク・デュークが述べた台詞。
”And if I were working for bellwethers of the future, the unemployment data would be one that and I think would be an important overall bellwether about what the future holds for us. It is interesting talking to customers this summer in the stores that I visited how many customers cut back on vacations this year and many decided not to take a vacation but I think our data, our research says that as much as a 25% reduction in the average spend per vacation that customers took this summer.”
「将来を占おうとするならば、それをいちばんよくあらわす重要な指標は失業データだと思う。この夏、ウォルマートの店舗に実際に足を運び、買い物客と実際話をしてみて興味深かったのは、ずいぶん多くの顧客が今年はバケーションに使うお金を削っていたことだ。バケーションを取らないことにしたと言っていたひとは少なくなかったし、我々が集めている調査データを見ても、今年の夏のバケーションに使ったお金は平均して例年の25%減だったという結果が出ている。」
デューク氏は、米国人家庭はなるべく外食を控えて家族で自宅で夕食を取り、TVを見たり、(ウォルマートで買った)DVDを見たりして、この夏をすごしていたようだ、と続けた。
みんな自宅でソファに座ってTVを見てた・・・ということはですよ、DVD配信のNetflix(ティッカー:NFLX) なんて、まだまだイケるだろうか・・・などとフト考えてしまう筆者であった。(爆)
10月9日のGSによるGlobal Retailing ConferenceでのウォルマートCEOの発言トランスクリプト全文はこちらでアクセスできます。
(2)FedEx、Q1,Q2の業績見通しを上方修正。
7月23日付けのMHJ記事『ギャンギャンな盛り上がりの陰で、UPSの顔は真っ暗』で、FedEx株を売ろうかどうか思案していた筆者であるが、結局あのままジーと持っている。
で、11日はFedexから業績上方修正のニュースが出され、同社株価は一気に77ドルに+6.4%増!! あー、売らなくてよかったー。(爆)
UPSもつられて4.4%上昇。
7月にUPSが暗~い業績発表やってたときは市場はみな聞こえない振りしてたくせに、FEDEXが明るい材料持ってきたら「FedexやUPSは、将来を占う(=Bellweather)銘柄だ!」だと言ってはしゃいでるんですから、ゲンキンなもんよ。
で、将来を占ってくれるFedexのプレスリリースを読んでみた。(プレスリリースはこちら。)
メディアからは「上方修正」という部分しか聞こえてこないんだが、リリースをよく読むと、予想以上によかった理由は「インターナショナル部門が好調だった」すなわち、お膝元の米国のオペレーションがよかったわけじゃないんである。
同社のリリースには、こうも書かれている。
"Despite some encouraging signs in the global economy, it is difficult to predict the timing and pace of any economic
recovery. Revenue per shipment declined year over year in each of our
transportation segments, as fuel surcharges declined significantly and we
continue to face a very competitive pricing environment combined with
significant overcapacity in the LTL freight market."
「グローバル経済には幾分ポジティブな兆候は出てきてはいるものの、経済回復のタイミングとペースを予知することは困難である。燃料サーチャージが顕著に低下したことと、LTL運送市場はきわめてオーバーキャパシティの状態にあることに加え非常に価格競争圧力の高い環境に直面していることもあり、配達あたりの収益はすべてのセグメントで年々低下している。」
市場ははしゃいでるが、UBSとおなじく、FedExも、先行きに対する慎重姿勢を崩してはいないようですな。
やはり、ここらへんで、FedEx株、売ったほうがいいだろうか・・・(いいかげん決めろーーーッ!笑)。
また、FedExの場合、燃料コストが業績を左右するので、9月17日にQ1の詳細が正式に出されてくるとき、燃料価格の見通しを同社がどう立てているのか、興味の沸くところである。
(3)8月の輸入品価格、原油価格のあおりで2%に跳ね上がる。
US Import Prices Rebound 2% In August On Energy Prices (Dow Jones, 09/11/09)
7月の0.7%の低下から8月の2%上昇へ。原油製品を控除すると、0.4%の上昇だったという。(グラフはEconomPicより。)
とはいえ、インフレ圧力はまだ目に見えていないというエコノミスト多し。(そうじゃなきゃ米国債あんなに買えんだろ。)この8月の動き、(2)のFedExの見通しとあわせて、注意したい。
★ ランキングに参加してます。よろしければ投票クリックお願いします。★
↓↓↓↓↓
にほんブログ村 アメリカ経済
人気ブログランキングへ
2 comments:
Trinity様
こんにちは。
航空会社やホテルの連想でちょっと思いましたが、新型インフルエンザが大流行した場合、配達屋さんはどうなんでしょうね。
ご無沙汰してます。 引用させて頂きました。
日本は亀井さんが郵政・金融担当大臣になるなど米国の不満など小さい事のようにさえ感じられる今日この頃です。
Post a Comment