ここで株市場が一時的なショートカバーだけではなくて、本格的な買いが戻り持続性のある上昇トレンドに入るとすれば、米国債市場は不安定になるのではないか。逆に米国債への需要が強いままで、株も一緒に上昇するとすれば、好決算への過剰反応。マクロのファンダ的にはとりわけ好材料はない。6:48 AM Jul 10th via HootSuite
で、市場でBellweather(先行きを示す銘柄)と呼ばれている大御所会社の数値が出てきて、株市場の反応はどうだったかというと・・・
13日(火曜日)
- 13日は取引開始前に出されたアルコアからの好決算が好感され、同日の市場はポジティブムードで開始。
- その日は一日、相場は上げ調子を崩すことなく安定推移。一部銘柄だけではなく、上場株のマジョリティが前場の段階で前日取引レンジのミッドポイントを上回って取引されていた様子。
- 13日の取引が引けた直後にインテル決算発表。売り上げ、純利益、ともに市場予想を上回る好成績でインテル株はアフターアワーズで大幅上昇。インテルが株相場を持ち上げる起爆剤になるかと期待される。
14日(水曜日)
- だが、翌朝、インテル決算は翌朝のテク株やナスダックを持ち上げる効果はあったものの、インデックスは前日終値を挟んで終日ダルダル。
- 小売と不動産から弱い数値が出され、さらにはFOMCの頼りない議事録内容も出てきて、後場は全体に下落傾向、最後の小一時間で何とか「腕力で」前日終値に戻したような感じ。
- そのインテルも後場はずるずる下げ調子になり、インテル効果は丸一日持たず。
15日(木曜日)
- 早朝に金融株の行方を占うJPモルガン(JPM)が決算発表。最終利益は前年同期比7割増であったものの、償却前利益は銀行部門・証券部門ともに落ち込み。トップラインの落ち込みを償却コストの減少分で補って最終利益を膨らませるという格好。
- JPMの決算から、ボトムの好調さよりも、『収益の質(Earnings Quality)』に疑問を投げかけるムードが市場を支配。センチメントは一気にネガティブに。
- 午後に入り、GSがSECと$550milの罰金で和解というニュースや、BPが事故後初めて原油流出止めたというニュースが続けて入り、沈んでいたムードは再び興奮モードで舞い上がって引け。
16日(金曜日)
- 早朝にバンク・オブ・アメリカ(BAC)とシティ(C)の決算発表。「トップライン減少」+「償却コスト減少」=「ボトム上昇」というフォーミュラは、前日のJPMと同じ。前日のJPMに続き、大手金融機関の『収益の質』の貧弱さがクローズアップ。
- さらに、BACが出してきた金融改革法の銀行セクターへの悪影響の見込み値が、市場予想よりもはるかにネガティブだったことを受け、新法に対する懸念再燃で金融セクターに売りが集中。クレジットカードのMAやVも売り込まれた。
- CPIが下降、消費者信頼感指数も大きく落ち込み、市場のコンフィデンスはそのままずるずる。ダウは前日比261ポイントの大幅下げ(マイナス2.52%)。
以上、今週は、舞い上がったり、沈み込んだり、米株市場のセンチメントは【重度の躁うつ病状態】であった。
金曜日は、iPhone4のアンテナ問題に関する記者会見を開いたアップル(AAPL)に市場は注目したが、これも賛否分かれて力及ばず。
市場のウェイトが高い金融株が錘(おもり)となって、ズブズブと沈んだ感じ。
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以下は、決算結果が一時のオーバーリアクションをもたらしたものの、いずれも、株価上昇の起爆剤となるのに失敗した、の図。
アルコア(AA)の株価推移 7/12 - 7/16
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さて、一方の米国債市場のほうを見てみよう。
アルコア決算に元気付けられて終日株価が堅調に推移した火曜日は全体にイールドが持ち上がったものの、週のあいだに出されてきたマクロ関連指標はおしなべて米国の景気回復が進んでいないことを裏付ける格好となり、米国債市場はプライマリーディーラーらの予想通り、新発の米国債への需要は減退することはなかった。
先週、3%を越えたといって潮流が変わったかのような扱いを受けていた10年債も、金曜日には再び3%を割り込むことに。
株下がり、債券上がり、ドル暴落。
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筆者自身も、火曜日は、アルコアやインテルにやや勇気をもらい、続く木曜のJPMの決算も、たしかにワクワクする決算内容とは言い難かったが、信用ポートフォリオの改善はいちおう進んでおり、一年前と比べると財務体質は改善されていることが見て取れた。
しかし、米市場を覆っているネガティブ・センチメントは相当根強く、ミクロの企業財務が改善するために必須のマクロ改善の進捗が遅すぎて、Bellweatherの企業決算が多少期待値を上回っても、それが株市場全体のセンチメントを上向かせるには、威力がない。
そして、なんといっても、「金融株が冴えない」というのが重い。
金融改革法案は上院・下院とも通過、来週の水曜日にオバマ大統領が署名して正式に新法として成立する。
米市場では、同法が金融セクターに与える影響は限定的だという見方が多勢を占めていたが、バンカメが決算発表とともに述べた「見通し」が同法の影響で想定されていたよりも厳しかったことが、ある意味、極端な楽観視は禁物という【Wake Up Call】(目を覚まさせる事象)となった。
ゴールドマンが抱えていた不透明さが払拭され、それも織り込まれてしまったことだし、ここでさらに金融株を押し上げるファクターが残っているだろうかと見回すと、あまり見当たらない。
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現在の米市場は、マクロ経済のファンダメンタルズという背骨を失っており、センチメントが一時的なストーリーに流されやすく、ヨーヨーのように、あっちに行ったりこっちに行ったりして方向感が定まらない。
債券市場はまだ弱気になっておらず、株市場に資金が継続的に流入する段階に至っていない。
過去3週間のS&P500のローソクチャートを見てみよう。(画像はZeroHedgeより)
前回の上昇フェーズ(6月中旬:左側の赤で囲った部分)でつけた最高値より、今回の上昇フェーズの最高値のほうが、低い。
また、前回の下降フェーズ(6月上旬)の最低値より、連休前の下降フェーズ(6月下旬)の最低値のほうが、低い。
Low Highs Low Lows は、典型的なベアマーケットの図。
このチャートからは、ヨーヨー市場はふたたび下降フェーズに入ったようにみえる。
来週は、月曜から連日住宅関連の数値発表が続く。
住宅関連がいま明るい数字になるはずがないので、それを押し戻す材料が、来週は果たして出てくるだろうか。
1 comment:
こんばんは。
CとBACの決算とカンファレンスコールのトランスクリプトを読みました。
市場の反応は仕方ないですが、自己資本は不安がなくなって、あとは稼ぐだけになったように感じました。事実CEOもそれを認識していました(他業種でもお決まりの「新興国で稼ぐ」ってやつでしたが)。
BACは資産売却益が交じっているのでバイアスありますが、「予想を上回る」ということは、事前は大した予想をしていなかったのではないかと。にもかかわらず、実際の決算を聞いて何を期待していたんだろう?
ローン債権が伸びていないって、そんなの毎月発表されるクレジットカード信用残高みてりゃわかるのに。
もちろん向こう数四半期も「期待しないでね」なんて言われると、失望しちゃいますが…。
個人的には、「これ以上悪くならない」という点がかなり明確になった点と、Tangible common equity per share が限りなく1倍前後にある今の価格は3年~5年単位では決して失望はしませんでした。
特に海外依存度の高いCは規制への影響も他行比較で有利にあるように思いました。
短期トレンドは「あ~あ」って感じですが。
ただ、BACが「Core revenue growth is difficult」とか、「constomers continue to de-levever」というとアメリカ経済全体を暗示しているので、当面は調整機関だと割り切るようにしました。
数年年調整してその後復活できれば長期的にはそのほうが米経済にも投資家にも長期的にはいいので。
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