Wednesday, August 3, 2011

デフォルト回避と歳出削減の次のお題は「増税」か

昨日8月2日のデッドラインぎりぎりに、上限引き上げ問題はいちおう(暫定的に)一段落。

(AP, 8/2/11)

しかし、法案が可決されて大統領が正式にサインをしたとたんに、NY株市場は激しいセル・オフ。最終決議が出る前に、ワシントンDCのアホ騒ぎは「終わった話」になっていた。そして、格下げされるぞと脅され続けていた米国債には大きく買いが入り上昇。ドルは沈下、ゴールドは上昇。今日も引き続きゴールドは値を上げて、米株は大きく上下に振れ、10年米国債はさらに上昇。大荒れである。

ダウのトランスポーテーション株は昨日4%ダウン。どこかに明るい話は転がってないかと探してみると、The Big PictureのBarry Ritholtzによると、トランスポーテーションが下がると通常は原油価格低下の伏線になるとのこと。もし毎日往復で70マイル走るひとがいるとすると、ガソリンが$1低下すれば$1500の年間セービングになり、これは消費者にとっては税金の削減効果に等しい、と。

ヤタ!(←空しいけれど、いちおう、言ってみる。)

(The Big Picture, 8/3/11)

しかし、である。

今回法案が通り、米国債デフォルトの危機は回避されたものの、連邦政府はお茶会に突き上げられて歳出削減の証文にハンコ押さされたわけだから、【財政緊縮】の効果はいやおうなく迫ってくる。財務省は来週にも$72Bnの長期債を発行予定で、国家のキャッシュフローはなんとかなるとはいえ、経済がドツボに未だはまっている真っ最中に歳出を切り詰めてゆくとなると、誰もが頭に思い浮かべるのは、1937という呪いの数字。(呪いの数字については、拙ブログ『この道は(ルーズベルトが)いつか来た道?』参照。)

市場のセンチメントが悪化するのも、あたりまえ。

連邦政府の歳出削減のあおりは、当然、州自治体政府への補助金カットという形で跳ね返ってくる。失業率9%から下がらないでいるというのに、補助金も削られて、いったいどうなっちゃうんだろう・・・。我が家も今以上に生活切り詰めて、それこそ引き出しの中に10円玉転がってないか探すようになってしまうのだろうか・・・。

なんとなく気持ちがどよんと暗くなってたところに、ダメ押しの記事を見つけたので、紹介しておく。

(Calculated Risk, 8/3/11)

National Employment Law Project (NELP)が発行した分析レポートによると、失業保険のベネフィットを減少させている州が増えていて、州の失業保険支払い用基金が枯渇してしまった州は連邦政府から借金して失業保険払ってる、というのである。

米国の場合、失業保険の支払いや基金の管理は州にまかされているが、支払い期間は26週(半年)という一種の不文律があって、どの州も過去50年間にわたり、それでやってきた。ところが、州によってはいよいよ無い袖は触れなくなって、州独自の判断により2011年から支払い期間がそれより短くなってしまった州が複数ある、という。

Michigan, Missouri, and South Carolina cut their available weeks down to 20; Arkansas and Illinois cut down to 25; and Florida cut to between 12 and 23 weeks, depending on the state’s unemployment rate. Double-digit unemployment in Michigan, South Carolina, and Florida did not discourage lawmakers there from making the cuts.

... Indiana changed the formula it uses to calculate weekly benefit amounts so that the average unemployment check will drop from $283 to $220 a week.

ミシガン、ミズーリ、サウスカロライナは20週に。アーカンソー、イリノイは25週に。フロリダは州失業率に応じて12週から23週の間に。インディアナは計算フォーミュラを変更して週の失業保険の額を$283から$220に下げた。ミシガン、サウスカロライナ、フロリダは失業率が2桁になっており、やらざるを得なかった。

さらに、連邦政府から借金している分については、

Throughout the recession, states with inadequate unemployment insurance trust fund reserves have relied on loans from the federal government to pay state unemployment insurance benefits. This September, states will begin paying interest on these loans, and starting in 2012, the federal government will raise taxes on employers in borrowing states until loans are paid in full, as required by the law.

リセッションの期間、失業保険用に積み立ててあった基金の残高が不十分な州は、保険金支払いを連邦政府からの借り入れに頼ってきた。この9月から、この借り入れに対し利子が発生する。さらに、2012年からは、連邦政府は借り入れ残高がある州の雇用主に対し、満額返済されるまで、課税額を引き上げるということが法律により決まっている。

失業率は、下がるどころか上がっているわけでして。

えーーー・・・と思っていたら、さらに、こんな記事が。

(WSJ, 8/3/11)

(Market Watch, 8/2/11 - hat tip @masayang)

ホワイトハウスは、共和お茶会がゴリ押しし続けた「増税なき歳出削減」だけでは予算をバランスさせることはできない(財政赤字を減らすことはできない)と考えているわけだ。

上のWSJの記事によると、今回両党が合意したプランのベースになっているのは、3.5兆ドルに登る税収増を見込んでいるらしい。

(WSJより引用)There's a lot of chatter among conservative Republicans that they may have just signed on to a stealth $3.5 trillion tax hike. That's because the "baseline" that congressional scorers use assumes that after 2012, all of the Bush tax cuts will expire and the Alternative Minimum Tax will start to hit up to 25 million tax filers. It also assumes the full implementation of several hundred billion dollars of Obamacare taxes that kick in after 2013.

「増税の《ぞ》の字がひとつでも入っていたら、絶対に絶対に合意なんてしませんからーっ!」と叫んで3度に渡り両党会議をすっぽかした共和だったのに、最終合意案のベースになっていた3.5兆ドルの歳入増分については気がつかなかった、とでもいうのだろうか。

WSJの記事には、「合意」はしたものの、その合意案に書かれている税金の部分については、双方がそれぞれ違う「解釈」をしているようだ、とある。

Which is to say that the two parties are offering very different interpretations of what the debt deal says about taxes. Let's hope it doesn't take three months to get this straightened out.

WSJの結びの文章そのままに、この解釈の違いをハッキリさせるために、また何ヶ月もの時間を費やすなんてことにならないでもらいたい。再びあの猿芝居が始まるのかと想像しただけで、すでに食傷気味の筆者なのである。

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