Thursday, July 1, 2010

【備忘録7】 7月のスペイン国債発行スケジュール

今週に入り、NYダウは4日連続の下げ。S&P500もサポートラインとされた1040をあっさり割り込み、悲観ムード一杯のNY市場である。

米雇用統計も、住宅統計も、ともかく連日出されてくる統計が、どれもこれも(わかっちゃいるけど)暗闇で、アメリカ経済息切れ状態がモロ露呈。

さらに、ここ何年も、世界中で【呪文】のように唱え続けてきた「頼みの中国」もなんだかスローダウンしてるみたいで、これも暗さを助長してる。

そうやって、みんなで暗~い気持ちになってるときに俄然張り切り出すのは、昔からIMFと格付け機関と決まってるわけであるが、NY市場がどよーんとしてるまっ最中の30日の午後、ムーディーズはスペイン・ソブリンの格付け(現在Aaa)を格下げの方向で見直すと発表した。

マスコミ上では、昨日(30日)のニューヨーク市場が3時以降に崩れたのは、このムーディーズのアクションを嫌気したという解説が多かったようだが、正直なところ、取引時間中ずっとリアルタイムでモニターを睨んでいた自分には、この格下げニュースが引き金になったという感触は、ぜんぜんなかったんですよね。(スペインの大手銀行株のADRなどは、このニュースを受けても、前日比プラスで引けたぐらいだしね。)むしろ四半期末の最後の一時間に、「ダメだこりゃ」状態確認のうえ、ポジション整理で一斉に動いたような感じ。

ネガティブニュースであるには違いないけれど、連日暗い話にまみれてしまってる市場関係者には、スペインの格下げ予告は「またひとつ暗い話が加わった・・・」程度の話。

それに、ムーディーズ社も、「下げるとしても1段階か2段階」とあらかじめ述べていて、格下げになったところで、ダブルA格の真ん中あたりになりそうだというのだから、あらためてショック受けるようなレベルじゃない。今年5月28日にフィッチはAAAからAA+に格下げしてるし、S&Pも去年1月にAAAをAA+に下げ、今年に入りさらにAAフラットにすでに下げている。

取引の現場では、ムーディーズがやると言ってる程度の格下げなら、とっくにセカンダリー市場で対独スプレッドに織り込まれているわけ。

(日本国債の格付けなんて、自慢じゃないが、ダブルA格よりまだ低いんだからな。笑)


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さて、ムーディーズ社が格下げするかもしれないと発表した翌日の7月1日、かのスペインでは、スペイン国債(5年物)のオークションが予定されていた。

で、本日のオークションがどうだったかというと、無事成功した模様。

報道によると、スペイン政府は、今回の5年債発行で25億から35億ユーロの発行をもくろんでいたが、その上辺にあたる35億ユーロを発行、Bid-to-Coverレシオ (発行額に対する需要総額)は1.7倍で、需要もそこそこあった様子である。(利率は3.65%、5月発行の5年債は3.53%だった。)

ただ、6月10日のMHJエントリー『欧州バンクの流動性は「痙攣の発作」を起こしている』でも書いたように、スペインは基本的にインターバンク市場からシャットアウトされており、スペイン国債を担保として提供しても民間でのレポ取引では使えない状況になっている。

筆者は実際にスペイン国債の取引の現場を見知っているわけではないので、憶測に過ぎないけれど、市場での取引が自在にいかない国債を嬉々として買う他国の投資家がゴマンといるとも思えず、となると、多分、スペインの銀行達にバカスカ「買わせてる」のじゃないかと思ってしまうわけである。

前回のMHJエントリー『ギリシャの悲劇6:悪化する銀行群のバランスシート』では、市場から締め出されたギリシャの銀行達が、融資資産を裏付けに中央銀行から資金調達し、それでギリシャ国債をバカスカ買っているらしい、という話も紹介した。

スペインの対独スプレッドレベル(200bps台)は、ギリシャのそれ(1000bps超)と比べるとまだマトモだとはいえ、市中からの調達が困難になっている点は両国とも変わりなく、国内融資(スペインの場合特に不動産融資)が拡大基調にいるとは考えにくい点からして、おそらくスペインの銀行群も、ギリシャ同様に、バランスシート上の国債保有残高を増やしているのではないか、と推察する。(後日、要データ確認。)

ということで、7月最初のスペイン国債オークションがうまくいったと言っても、ここでぬか喜びは禁物であるな。


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さらに、この7月という月は、スペイン国は国債償還時期が集中し、かなり旺盛な国債発行を目論んでいるとのこと。

今月から来月にかけて行われる可能性のあるオークションのスケジュールは、以下のとおり。



参照記事:
Spain's Debt Maturity Wave Hits Next Month And It's Already Obvious They Don't Have Enough Cash
(Money Game, 6/26/10)

GSの推計では、7月中に手当てが必要な額は217億ユーロとのことだが、以下にその根拠を簡単にまとめておく。

  • キャッシュ赤字額=135億ユーロ (A)←GS推計
  • 今月中に償還を迎える国債総額ネット=82億ユーロ (B)
  • 7月キャッシュ必要額(A+B)=217億ユーロ
  • 同国のキャッシュリザーブ残高=91億ユーロ (C)
  • 最低借り換え必要額(A+B-C)=126億ユーロ

キャッシュ不足に対処するため、スペイン政府が積極的に出費を抑えるなどしていれば(A)が減り、最低借り換え必要額もその分減る可能性はある。他にも代替手段はあるであろうし、すぐすぐデフォルトがどうしたという話に発展する可能性も低い。

だが、欧州市場で資金の流動性が全般的にタイトになっている最中での起債ラッシュなだけに、入札のたびに注目されることになろう。

ということで、備忘録として、このスケジュール表を記録しておきたい。

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