Monday, June 22, 2009

求む!(ジェームス)ボンド・アナリスト

ウォール街のクビ切りは相変わらず続いている模様である。

筆者の知り合いの中にも職を失ったひとがここ数ヶ月でさらに数人増えた。業界失業者は、まだまだ増えそうである。

金融関係の職を探している、そこのあなた!耳寄り情報です!

ある組織で「エコノミスト」や「フィナンシャルアナリスト」を探していますよ!!

この求人広告によると、応募者はあらかじめ以下の条件を満たしていること、とあります。

「経済学、金融学、経営学、国際経営学、経済犯罪マネージメントなどの分野で学士号あるいは修士号を持ち、特に国際フィナンスやバンキングを専攻した者。マクロ経済に強く、金融分析や分析スキルに秀でており、海外経験および外国語のスキルがあれば、それも考慮の対象になる。大学・院での学業成績はGPA3.0以上必須。」

この広告出した会社は、どこのウォール街の会社かって?

いえいえ、ウォール街じゃないんです。

この広告の主は、CIAなんです!

そう、あの、泣く子も黙る、秘密諜報機関 Central Intelligence Anency である!

CIAの広告の現物は、こちらをどうぞ。

証券会社のアナリストと違って、ストックやボンドなどの証券の売買に役立つ情報を発信するのが仕事じゃないですからねー。ボンドはボンドでも、あちらさんは、ジェームス・ボンドだもん。

CIAのフィナンシャルアナリストって、どんな仕事かというと、この広告によりますと「米国の国土安全を脅かすような海外の経済ポリシーや海外金融市場の問題を調査する」んだそうです。

へー、カッコいいなー。応募しようかしら。(笑)

広告の職務内容のところには、こうも書いてあるよ。

There is a particular need for country/regional economists with strong backgrounds in China, the Middle East and South Asia, and for specialists in international banking systems, financial markets, financial transactions, financial instruments, and energy. Economic analysts will also assess illicit financial activities, including networks used by terrorist and criminal groups, financing and procurement of weapons of mass destruction, money laundering and corruption among foreign governments and companies.

いまとりわけ必要とされているのは、中国・中東および南アジアの地域に強い専門性をもつエコノミスト、および、国際バンキングシステム/金融市場/金融取引/金融インストルメンツ/エネルギーの分野のスペシャリストである。経済アナリストの職務には、テロリストや犯罪グループのネットワーク、大量破壊兵器のフィナンシングと調達、マネーローンダリング、海外政府と企業の間の汚職犯罪などを含む一連の不法な金融行為のアセスメントも含まれる。



うーん、実にカッコいい・・・カッコよすぎる・・・。

(ここで、MHJ筆者の脳裏には、ふと、映画「ボーン・アルティメイタム」などジェイソン・ボーン・シリーズの主役マット・デイモンの顔が浮かんだ。)

そういえば、額面13兆円もの米国債をイタリアからスイスに持ち込もうとしてた、自称「日本人」の二人の行方は、その後どうなったんでしょう?ああいう事件も扱うんでしょうか。

映画「ボーン・アルティメイタム」見ると、CIA諜報員になると、複数の国の偽造パスポート作ってもらえるみたいですよね。

もしかして、自称「日本人」の二人は、実はCIAのアナリストだった!とか・・・(←完全にハリウッド映画に感化されてる。)

あっ・・脱線してしまった。求人広告に戻ろう。

このポジションに提示されてる給料は、$48,682 から $95,026*(経験によってはもっと高くなる可能性有)である。

この「最後の一ドルまでキッチリ数字がでてる」ってのが、さすが政府機関ってのか、民間の金融機関じゃ有り得ない給料の提示の仕方ですね。

経済学や金融学専門の高学歴で、MBAとか持ってて、分析スキルも持ってて、海外経験があって、外国語を操ることができて、中国や中東のスペシャリストで、それで10万ドル以下の給料ってさ・・・ウォール街の民間会社じゃ、まず、考えられない給料水準である。

さらに、政府機関の場合は、民間とちがって「ボーナス」ってもんがありませんから、年俸として最初に決められた給料が支払われるのみ。プロ職だから、オーバータイムも一切つかんしな。

でも、政府機関のいいところは、給料は民間より低いかもしれないけど、職の安定度はずっと高いし、福利厚生はシッカリしてるし、いまどきの民間企業じゃ考えられないぐらい好条件の年金も就職初日からつけてくれるし、健康保険も国がバッチリつけてくれるし(5年以上働いたら死ぬまで健康保険は困らないとか聞いた)、従業員へのその手の面倒見はいいんである。

この不安な時代、もらえるかどうかもわからない「ボーナス」なんてものでリスク取るより、「仕事環境は安定第一」を選択する金融プロフェッショナルは、少なくないかもしれませんね。

広告は続く。

Important Notice: Friends, family, individuals, or organizations may be interested to learn that you are an applicant for or an employee of the CIA. Their interest, however, may not be benign or in your best interest. You cannot control whom they would tell. We therefore ask you to exercise discretion and good judgment in disclosing your interest in a position with the Agency. You will receive further guidance on this topic as you proceed through your CIA employment processing.

<重要な注意事項> あなたの友人、家族、職場などは、あなたがCIAのポジションに応募していることに興味を抱くかもしれない。しかし、彼らの興味は必ずしも悪意から出たものではないと言い切れないし、あなたにとって最良の結果をもたらすとも限らない。彼らがその情報を誰に告げるか、あなたはコントロールできない。従って、CIAのポジションにあなたが興味を持っていることを周囲に知らせる際は、十分考慮し最良の判断をされるようお願いしたい。この件については、CIAの雇用プロセスが進行するに従い、より詳しい指示があるでしょう。


うーむ・・・さすがだ・・・。

「CIAのポジションに応募してるんだよ~~~!」なんてことを、調子に乗って、あちこちで吹聴して回るなと、求人広告上でまで釘を刺す念の入れようである。

いや、そういう軽いお調子者には用はない、ということか。

採用に際して指紋取られたりドラッグテストを受けさせられたりして犯罪歴がないか過去を洗われるのは、ウォール街の民間会社でもどこも同じことやるんだけど、CIAの場合は、その「指紋採取」+「ドラッグテスト」に加えて、「ウソ発見器」にもかけられる、って書いてあるよ。

ってことは、わたしみたいなドキドキしやすいオシャベリは、応募しても、きっとダメだな。(笑)

口が堅くてすぐには動揺しないと自分に自信のある方、どうですか、応募してみませんか?

ところで、この仕事の応募締め切り日は、本日6月22日である。

応募したいひとは急ぎましょう。履歴書選別に通ったら、次はこの夏マンハッタンでの面接に呼ばれるそうです。Good Luck!

    ★   ★   ★

前回のMHJ記事でも書いたように、FRB連銀の監督業務の権限が広がりそうで、もしそうなったら、連銀も、金融市場のスペシャリストをもっともっと雇わなくちゃいけなくなる。

米政府もT.A.R.P.などの救済プログラムをいろいろ立ち上げたんで、証券化市場の経験者など新規雇用を数ヶ月前からやっている。(知り合いが応募したいと言っていた。)

SECも、ダークプールの監視を強めるというのを数日前に発表したばかりだし、こちらも、スペシャリストやアナリストがもっと必要になりますね。(「ダークプール」については、6月10日付MHJ記事『薄商いの株価上昇と「ダークプール」』参照。)

現在の金融街は仕事を探してるひとであふれているから、政府系も、いまなら、人材はいくらでも見つかるしな。(問題は給料だな・・・。)

それにしても、米国全体をながめると、失業の状況は悪化の一途を辿っている。

先日、The Big Picture というブログを眺めていたら、興味深い記事が目に入った。

米国の就業人口全体は減少し続けているのに、55歳以上のグループだけは就業人口が増加している、というのである。



アメリカ人の多くは、55歳までには子育てを完了し、引退後は30代あたりで買った家を売ってキャピタルゲインを手にしてフロリダあたりの小さいコンドにでも引っ越して、引退後はのんびり太陽にあたってゴルフでもしながら余生を過ごしたい、と考えているわけ。

しかし、年金として溜めていた401(K)は暴落で半減、子供が巣立って夫婦ふたりには大きすぎる家は売りたくても売れず、仕方ないから、いったん退職しても再び仕事に戻るしかないひとが増えている。それで55歳以上グループだけ就業人口が増えている、というんである。

記事によると、「複数の仕事」を持っている人口も、55歳以上のグループだけが増えているという。

定年退職後も働き続けたくて働いてるひとは、いいんですよ。でも、この統計から浮かんで見えてくるのは、本当はもう働きたくないんだけど、引退後の生活設計がすっかり狂っちゃって働きつづけるしかないという老年組が増えている、という暗い図である・・・。

失業者の増加率が減ってきているという(能天気な)解釈もあったけど、あれだって、「実際にはまだ失業してるんだけど、失業保険をもらえる期間が過ぎてしまって、失業統計には含まれない」ひとが増えているというだけで、失業ペースが減っているわけではない、という分析がある。

求人増やしてるのは、CIAとかFRBとかの政府系だけか?

政府系機関の雇用人口の推移もみてみたいもんである。そういう統計、どこにあるんだろう。ご存知の方、教えてください。



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6 comments:

  1. そんなポジションがあるなんて~!
    もしかしたら、人生のうちでそんな人に出会ったりとかしているのかしら。。。

    やっぱイケメンとか美女で、ちょっと武闘スキルもあった方がいいのでしょうか? それとも、意外とうす~い印象で、そうとは見えない感じの人がいいのでしょうか?
    想像は膨らむばかり~!爆

    55歳以上の就業が増えているって、ちょっとかわいそうですね。。。リタイア目前にして。。。ある意味私くらいの年齢(30代半ば)だと、まだ先が長いから、今不況でもまだ希望が持てますけど。むしろ、今のうちにやっちまってくれてよかったわ~、くらいで。

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  2. >Cheeさん

    「やっぱイケメンとか美女で、ちょっと武闘スキルもあった方がいいのでしょうか?」

    Cheeさんも、わたし同様、ハリウッド映画に相当感化されてますね。(爆)

    CIAのフィナンシャルアナリストは、イケメンで、銃なんかも使いこなせちゃって、計算機叩いてるフリして本当は暗号送ってる、とか・・・って、そんな馬鹿な!実は、わたくし、知り合いでFBIのフィナンシャルアナリストに転身したアメリカ人男性を知っているのですが、そのひとは・・・どっちかというと、マット・デイモンタイプとは逆の感じ。やっぱ、仕事柄、あまり目立っちゃいけないのかもしれない・・・。(笑)

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  3. CIA いいですよねー 実は私はCIA に応募しようかと思って何度もサイトをのぞいたことがあるんですけど、市民じゃなければいけないんですよね。 それで挫折。

    昔は日本で外交官をめざした過去があるだけに、スパイには向いていると自負している私です。  

    Alias っていうTVドラマがあったのご存知ですか? なんかますます夢は膨らむなぁ。でもお給料は安いですよね。

    お邪魔しましたー

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  4. This comment has been removed by a blog administrator.

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  5. Washington DCの雇用は絶好調みたいですね(笑。

    http://bit.ly/VhniB

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  6. 日本のテレビでは、ADPの雇用統計とホンモノの雇用統計の差が公的雇用だと言ってるアナリストがいましたよ。ADPは民間雇用だけだとか。

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