Monday, February 23, 2009

新聞買おうか、株を買おうか:NYタイムズ株4ドル割れ

週明けのNY株市場は、今朝も寄り付きから「銀行国有化」のスペキュレーション花盛り。

先週グリーンスパン前連銀議長も某インタビューで「国有化も悪くない」と発言して大手銀行国有化「容認」の発言をしたもんだから、市場は、猫も杓子も国有化ムードである。

グリーンスパンが国有化するのがいいという理由は、一時的に国有化すれば、
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”allow the government to transfer toxic assets to a bad bank without the problem of how to price them.”

(プライシングの問題なしに不良資産をバッドバンクに移行させることができるから)

(参照記事:http://www.ft.com/cms/s/0/e310cbf6-fd4e-11dd-a103-000077b07658.html
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このグリーンスパンの発言を読んだとき、筆者は思わず「グリーンスパンのじっちゃま、ついにモウロクきたか」と思ってしまった。

国民のツケを和らげるために、移行時のプライシングを「こじつけてごまかす」程度のことはできるかもしれないよ。でも、市場価格を完全に無視して不良資産に好き勝手なプライスつけるなんて、いくら国家といえど、それはできないっす。

「一時的に国有化する」って意味は、いったん国のものにしても、近い将来に市場売却する、って意味でしょ?切り離しの際の不良資産の洗い直しで市場価格から大幅に高い値でバッドバンクに移行させてやる、っての?含み損抱えて大幅債務超過のバッドバンクを、二次損失(=国民負担)出させずに「近い将来」どうやって政府は市場売却するのさ?バッドバンクを政府が永遠に持ち続けることなんてできるわけもないんだからね。

それに、国有化してもらえなかった金融機関が握ってるクレジットデリバティブス、そっちはどうやってプライシングすればいいのさ?カウンターパーテイは世界中に散ってるんだから、そんなことしたら「国有化になりたい!国有化になりたい!」と、アメリカ中の、いや世界中からも、銀行がワシントンDCに押し寄せてきて、連銀の前に列作るよ。あたしも銀行のフリして並びたいぐらいだ。

ったく、「プライシングの問題がないからいい」なんて、自由市場主義の信奉者として規制緩和の推進に夢中だったグリーンスパンの発言とは思えんな。

グリーンスパン、齢(よわい)83歳。

もうそろそろ、隠居してもいいんじゃない?

   ★   ★   ★

さて、話変わって、ブルームバーグにこんな記事。
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米バブル崩壊でデフレは日本より悪質、金は3500ドルにも-CLSA
2月23日(ブルームバーグ):

CLSAのストラテジスト、クリストファー・ウッド氏は、米国はバブル崩壊により1990年代の日本よりも激烈な影響に直面しているとの見解を示し、デフレ圧力のなかで投資家が資産を守る手段は金のみだと指摘した。』


(記事全文:http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=90003003&sid=a_.7kVuHBCIA&refer=jp_stocks )


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ふーむ・・・「資産を守る手段は金のみ」ですか。

で、その金ですが、やはりブルームバーグに面白い記事(英文)があった。

Shiseido, Kao Beat Recession With Creams Priced as Much as Gold
http://www.bloomberg.com/apps/news?pid=20601109&sid=a_kCGlkmTw80&refer=home

資生堂が売ってるモイスチャー効果の高い美容クリームが、40グラム(1.4オンス)で12万6千円もして、金の価格と同じぐらい高価だってんである。

しかも、日本では、資産は減ってもいいけどシワだらけの顔になるのだけはイヤッ!という女性がたくさんいるらしくて、このクリーム、しっかり売れてるそう。

おそるべし、美白クリーム。おそるべし、おんなの執念・・・。

さて、あなたなら、この化粧品を顔に塗りたくりますか?それとも、金箔を塗りたくりますか?

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株価が下がり続けて、これと似たような話が、ニューヨークの街角でも、ちらほら会話に出てくるようになってきた。

今朝も、早朝犬を散歩させていたら、やはり犬を連れたご近所さん(←デリバティブスのトレーダー)とすれ違い、道端で互いのわんこを遊ばせながら、シティグループの株が先週1ドル75セントを割り込んで銀行からキャッシュを引き出すときのATM手数料(1回2ドル、とか)より安い、と話題になった。

もうひとつ話題に出たのが、ニューヨークタイムズの株価。先週の金曜日、4ドルをさらに割り込んだ。

過去1年のNYタイムズ社の株価(52週最高21.14@4/25/08、最低3.44@2・20・08)


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NYタイムズの日曜版は世界中に配達されるほど人気が高いが、あの分厚い日曜版を、ここ地元NYで買うと、一部4ドル50セント、なんだよね。(日曜以外は一部1ドル50セント。)

新聞を買おうか、株を買おうか。

硬質で高質の記事が多く、クレディビリティ・発言力・影響力どれをとっても抜群で、新聞メディアとしては全米で常にトップクラスの地位を保ち続けているニューヨークタイムズ紙だが、一企業としては、ご他聞にもれず財務で溺れかけている。

報道によると、NYタイムズ社はおよそ11億ドル(1000億円弱)の負債借り換え時期が目前に迫っているんだが、広告料の低迷と定期購読者の減少で収益が激減で、早急に借り換え用の資金を調達しないと、借金がデフォルト起こしちゃうかもしれないと懸念が高まってる。

配当金減らしたり、野球チームのレッドソックスを売りに出したり、メキシコのテレコム王カルロス・スリム氏から一時しのぎの借金したり、本社ビルをリースしようとしてみたり、ともかく、手当たり次第に返済原資を作ろうと金集めに躍起になっているみたいだが、クレジット市場が凍結しちゃってるから、資金調達したくても動けない。

そこに泣きっ面にハチよろしく、先月23日に、ムーディーズからは「投資適格」だった格付けをいきなり3段階下げられてジャンク(「投資不適格」)に落とされ、市場での資金調達はお先真っ暗。

トリプルAやダブルA格の企業だってクレジット凍結で借り換えは楽じゃない、というこのご時勢にですよ、ジャンクに落とされたら、どうすればいいの・・・。

「広告収入と購読料収入の激しい落ち込みと同時に多額の借金返済時期が迫る」というニューヨークタイムズの悩みは、この会社に限ったことじゃなく、全米の新聞メディアはどこも全く同じ悩みをしばらく共有していたが、以前ここのブログでも紹介したことがあるシカゴ・トリビューンが昨年Chapter11で会社更生申告、ミネアポリスがこれに続き、さらに先週末はコネチカット州の新聞大手ジャーナル・レジスター社もChapter11。

さらに、数時間前に入ってきたニュースでは、フィラデルフィア地域の新聞社大手もChapter11申請ですと!

全米新聞業界、次から次へと、破産の嵐。

市場がコンフィデンスを失っているときほど、ヘッドラインリスクが上昇する、とは前回書いた。

いまの時期こそ信頼度の高い情報を流すメディアが必要なのに、米国の主要なメディアの会社群が、こうして財務の重圧に耐えられず、次々とリストラへの道を歩まされる。
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上の写真は、911のテロ翌日のニューヨークタイムズ一面。見出しに「DAY OF TERROR」とある。

2001年9月12日、この国のいったい誰が、全米の新聞各社を、マーケットという名のTERRORが襲うと考えていただろうか。




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