Thursday, June 2, 2011

ギリシャ、Caa1に格下げで「HALL OF SHAME」入りを果たす

昨日、Moody's社がギリシャの格付けをCaa1に格下げ。

(Bloomberg, 6/2/11)


それにしても、Hall of Fameならぬ、Hall of Shame(恥の殿堂)とは、すごい記事タイトルであるな(苦笑)。

ギリシャ・ソブリンのCDSプレミアムは1500bpsあたり、いまやベネズエラを300bpも抜いて、絶対数値なら堂々の1位である!格付け的にも、M社の場合は、Caa1より低い格付けを誇る国家はエクアドルのCaa2のみ。(ちなみにエクアドルは1999年にデフォり、2008年にまたデフォったという成績。)

欧州関係者は、ギリシャ債のデフォルトをなんとか回避しようと、「期限延長だけするので、リスケ(Reschedule)じゃないもん。リプロファイル(Reprofiling)と呼んでネ!」とかいうガキ騙しのような案で走ろうとしていたが、やはり格付け会社から「リプロファイルかなんか知らんが、どういう名称つけようが、デフォはデフォ!」と冷たく突き放され、ガックリ膝をついた。

(Market Watch, 5/20/11)


さらに、「トロイカ体制」敷いてるはずの欧州関係者の内部でも、どうやってできるだけ市場にショックを与えないような形でこの国の債務再編を果たそうかについて意見は分裂してたりして、ECBは「リプロファイルかなんか知らんが、それやったら、中央銀行としては、担保としてのギリシャ債はもう受け入れることできませんから!」と冷たく突き放すようなことを言い、それにもガックリと膝をついた。

(Daily Markets, 5/19/11)


このままでは、近々償還迫ってる分のロールオーバーできねーよ(その結果、古典的なデフォへと突入)という危機感ばかりが湧いてくるわけで、先日のBloombergは、なんとか資金を引き寄せようと、新たに発行する分には【飴】を用意している、と伝えていた。その【飴】だが、記事によると、現在発行されてるギリシャ国債よりも優先順位が高く、クーポンも高いというような話らしい。

(Bloomberg, 6/1/11)


ということは、なんですか、既存のギリシャ国債は新発国債よりも「劣後」するわけですか?ギリシャ債のCDSのクオートは今後はシニアと劣後でダブルクオート?Subordinated Government Bond とでも呼ぶのですかね?(笑) それに優先するといったって、エーゲ海の島でもなんでも売れる資産は売っていこうか、とか言ってる国で、数年後の資産の清算価値はどうなっておるんでしょうか・・・。

とか、疑問は次々湧いてくるわけですが、まぁいずれにせよ、あと一歩後ずさりしたら崖から堕ちる、ぐらいの瀬戸際に立ってるわけでありまして、ここでB1からCaa1に落とされたといったって、げげーー!と驚くほどでもないよな。

昨日出されたムーディーズ社のプレスリリースには、こんなことが書いてある。(抄訳はMHJ筆者)

Greece’s Caa1 rating incorporates Moody’s assumption that current negotiations between the Greek government and the Troika will result in further official support for the Greek government and (以下略)

ギリシャのCaa1格付けには、ギリシャ政府とトロイカ(注:IMF+ECB+EU)との交渉で、ギリシャ政府への更なる正式支援が施されるだろうという前提が織り込まれている。

「支援 by トロイカ」を続けてもらっても、それでも果てしなくデフォに近い状態になりそうなんで、Caa1とな。通常、「B」の文字を離れて「C」の文字が格付けについてくると、その債券はデフォルのは時間の問題。ここまできたら、デフォるかデフォらないかよりも、実際にデフォったら、その後に元本をどれぐらい取り返せるか(リカバリー)というのを債券投資家は考え出す。

M社によると、彼らの格付けシンボルと、期待されるリカバリーの度合いは以下のような関係だそうである。


つまり、Caa1の今はデフォっても90~95%ぐらいは取り戻せるかもよ、といった見解のままM社は様子見してますよ、ということである。見通しはネガティブなので、もしかすると、Caa1からもっと下がる可能性もありますよ、と言っている。

トロイカは見捨てない?でもデフォに果てしなく近い??サポートの内容がはっきりしたら、もっと格下げくらうかもしれない??

禅問答を聞いているような感覚に陥るが、そこで重要になってくるのが、FTAlphavilleで紹介されてた、M社のリリースから引用された次の一文だ。(抄訳、太字はMHJ筆者)

Our recent study of sovereign defaults shows that post-default recoveries for investors have averaged just over 50%, based on the 30-day post-default price or pre-distressed exchange trading price. There is a wide range around this average, with recoveries ranging from 18% to 95%, and no rated precedent for a developed-world sovereign default in modern times. However, a sizeable discount would be needed to have a meaningful effect on Greece’s debt trajectory, and our expectation is that any restructuring would involve a loss of at least the historical average for private sector lenders.

ムーディーズ社による最近の調査では、デフォルト後30日のプライスかディストレス交換前のトレーディングのプライスをベースにすると、デフォルト後のリカバリーの平均は50%をやや上回る程度。この平均値の周囲には18%から95%までという広範囲で数値が散らばっており、さらに近年には、格付けされた先進国のソブリンデフォルトの前例が存在しない。しかしながら、ギリシャの債務のトラジェクトリーに意味ある影響を与えるには、かなりのディスカウントが必要であり、この先いかなる再編を行うにしろ民間セクターの貸し手にとっては少なくとも過去平均程度の損失が発生するであろうと考えている。

つまり、どうがんばっても、最終的にはギリシャの債権者には、現在のCaa1という記号が示唆する程度(=90~95%は回復する)よりははるかにシビアな損失出そうだから覚悟したほうがいいよ、損失の程度によってはもっと格下げ来るよ、とM社は考えてるらしいんである。

今週中にもトロイカ軍団の最終支援案は固まると見られているが、仮に目先のデフォルトが回避できたにしても、ギリシャ国のマクロ経済や財政状況から判断するに、長期的には投資適格と呼べる信用力には戻りそうもないよね、ということだ。

そりゃーそうであろうな。現在のドロドロな状況が一朝一夕で生まれたわけでもなし、元に戻るのだって、一朝一夕じゃ戻りませんて。

それに、んなこと、いまさら格付け機関からわざわざ言われなくても、みんな、そうじゃないかなーと考えてるから、CDSのスプレッドが1500とかになっちゃうわけでありまして。

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