Tuesday, May 25, 2010

ギリシャの悲劇5-欧州一般企業の流動性への波及

5月7日のブログ記事で、バンクの流動性が逼迫している様子であることを書いた。

その後、EUは、7500億ユーロの緊急救済パッケージという【怒涛のバックストップ】を用意することを10日に発表し、EUの関係者は、「これで、どうか、市場が落ち着いてくれますように、流動性が回復してくれますように・・・」と、皆でひざまずいて神に祈ったのであった。

だが、結局どうなったかというと、誰もが承知しているように、あの怒涛のパッケージは、市場を落ち着かせるのに失敗したんである。

ドイツの(ひとりよがりな)空売り規制の動きも手伝って、市場は落ち着くどころか、不安感はますます充満。

『流動性』の問題は、日を追うごとに主要メディアの見出しとなって出てくる頻度が増え、今週に入ってからは、クレジット市場のスプレッドの動きがグローバルでワイドニング、資金の流動性がさらに悪化していることを伝えるニュースがひっきりなしに目に飛び込んでくるようになってきた。

  • スペインの調達コスト上昇、短期証券入札で-銀行不安響く http://bit.ly/ak9bVT
  • 米企業の社債保証コスト、2日連続上昇-10カ月ぶり高水準に接近 http://bit.ly/bQTOWf
  • ドル建て3カ月物LIBOR、11日連続上昇し昨年7月7日来の高水準 http://bit.ly/cTtkQb
  • 欧州企業の信用リスク、10カ月ぶり高水準 http://bit.ly/9ydoe7
  • iTraxx日本180bpまで上昇、シリーズ最高値更新-CDS取引 http://bit.ly/bjlp3X
  • 米社債のCDSのビッド・アスク・スプレッド、9カ月ぶり高水準 http://bit.ly/9vxbVS
  • 欧州銀行のドル資金調達コストにプレミアム-WSJ http://bit.ly/cWO8hR

本日、過去数時間分のブルームバーグ記事の見出しを拾っただけで、こうであるよ。金融機関同士のみならず、銀行以外の一般企業の資金繰りにも影響が出始めており、極度のリスク回避が信用収縮のペースを速めているのが、見出しを眺めただけで、感じられる。

銀行というのは、『仲介業』ですから、銀行同士の資金のやりとりがフン詰まり起こすと、その資金フローの末端にいる一般企業らに必ずしわ寄せがいく、そういう業種であります。

   ★   ★   ★

先週の金曜日に、筆者の注意を引いた、こんな記事があった。

HEARD ON THE STREET: Europe's Corporate Funding Shut-down 
『金融街で耳にしたこと:欧州の企業ファンディングが閉鎖状態』
(Market Watch, 5/21/10)

以下は21日に、記事紹介を兼ねてTwitterにて連続ついーとした内容だが、筆者はこの記事は重要だと感じるので、ここにそのまま張っておく。

①欧州の企業資金市場、わたしが考えてた以上に、もっと深刻にやばそうだ。銀行債も企業債も、どちらも新規発行が困難になってるという話だ。日中のボラ高すぎて、ブック積み上げることできないらしい。そりゃ、そうだよな。


②この記事(英文)、重要→http://bit.ly/ap4cy1 記事によると、一般企業債のインベストメントグレードは2009年にかなり調達をスムーズにやっといたのでまだいいが、ハイイールドになると新発プレミアムがBBレベルで100+bp加算、Bレベルで200+bp加算もあり。

ハイイールドのさらにヤバイ点は、2004-07のレバレッジド・ローンブームのときに調子こいて借りた銀行ローンの借り換え需要があるらしいんだが、流動性が細っていていく先不安な雰囲気。これが何意味するかというと、欧州の銀行に損失出る確率高まって信用収縮に繋がる、って話だ。

銀行が発行体になるシニア債になると、最後にシニア債が発行されたのは一月以上前の話だってんだから。ECBのディスカウント・ウィンドウに、もしかして、すでに旺盛なタップ始まってるのかな・・・?

⑤ あと6週間で、欧州の皆様、バケーションシーズンを迎えて、それも市場をスローダウンさせるから、それまでに資金めぐりが回復してくれないと、資金需要が2010年の後半に集中することになる。やっぱりね、感じてたとおり資金のフローがいびつなんだよ。これは注意要する話。
(以上、ツイート終わり)

  
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上記記事の中で、筆者がどこにギョッとしたかというと、次のパラグラフだ。

Finally, and most worryingly, the bank funding market has shut down. The last senior bank debt issue came over a month ago; even the covered bond market, despite buying support from the European Central Bank, is at a near standstill. Of the 16 banks in the benchmark Markit iTraxx Europe index, only one, BNP Paribas, is trading tighter than the overall index, showing that systemic fears remain.

  • 銀行自身が資金調達する銀行債マーケットが閉鎖している。
  • 銀行シニア債が最後に発行されたのは1ヶ月以上前。
  • カバード・ボンドですら、ECBが買い入れでサポートしてるにもかかわらず、ほとんど停止状態。
  • ベンチマークになっているMarkitのiTraxx欧州インデックスに含まれる16銀行のうち、インデックスそのものよりもタイトな水準でトレードされているのはBNPパリバのみ。
  • これは、システム全体に恐怖感がはびこっていることを示している。

『銀行シニア債」というのは、銀行の負債項目の中で、流動性管理上「預金」の次に重要なアイテムである。それがほとんど新規発行されてないということは、銀行自身のバランスシートの流動性が低下しているという意味以外のなにものでもない。このままシニア債発行が困難な状況が継続するようであれば、銀行のデフォルトリスクは一気に高まる。

欧州のバンク流動性の状況は、筆者が前回ブログ記事を書いたときより悪化しているように、筆者には感じられる。

銀行シニア債発行の動向は、今後も注視を続けたほうがよさそうだ。

※ なお、25日の欧州市場では、欧州銀行シニア債CDSのインデックス(iTraxx Senior Financial) はワイドニングという、Markitからのついーと

Banks taking a battering across Europe - Markit iTraxx Senior Financials 181bp (+17)

“欧州全体で銀行信用力評価が悪化 - Markit iTraxx シニアフィナンシャルズは17bp拡大の181bp”

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