Friday, February 13, 2009

M・ムーアの次の映画の「標的」は金融街

映画監督マイケル・ムーアが数日前に配信したEメールが話題になっている。


















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『WILL YOU HELP ME WITH MY NEXT FILM? ...A REQUEST FROM MICHAEL MOORE』
「私の次の映画に手を貸してもらえますか?・・・マイケル・ムーアからのリクエスト」

と題したEメールが、彼のブログにメール登録している人たちに配信され、またムーア自身のブログサイト(MichaelMoore.com)にも掲載された。

実際のブログ記事原文は、こちらをどうぞ

2月11日付けで掲載された内容をざっと意訳すると、こんな感じ。(以下の訳と赤い太字は筆者によるもの)


皆さん、わたしは現在新作映画の撮影中ですが、ウォール街か金融業界で実際に働いていて、業界内でどんなひどいことが行われていたか「ホントのところ」を教えてくれる「勇敢なヒーロー」を探しています。

米国史に前例をみない「最大の犯罪ストーリー」を私に話してくれたひとは、わたしとのコンタクトの内容はコンフィデンシャルとして扱いますし、あなたの素性も守られます。

重要なのは、これが、あなたが一人の米国民として一歩踏み出し実態を他の米国民の仲間に知らせる機会である、ということです。すでに幾人かの「善良なる人々」は私のところに進んで出てきてくれた。

もしあなたが役立つ情報を持っているなら、bailout@michaelmoore.com までメールをください。

もし金融業界で働いていないのにこのメールを受け取った方は、「ムーアのやつ、次作はロマンティック・コメディだって言ってたくせに、これは一体何だ?」とお思いでしょう。残念ながら今は詳しくは語れないのだけれど、完成したら、きっと気に入ってもらえる作品になること、請け合いです。

ということで、もし銀行・証券会社・保険会社などに勤めていて、「アメリカ国民にはこれを知る権利がある」と思える話を見たり聞いたりしたひとは、ぜひ、私のメールまでご一報ください。

敬具
マイケル・ムーア


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なるほど、ムーア監督の次の作品は「悪行の限りを尽くしたウォール街を斬る!」といった内容になるのね。

しかしなぁ・・・筆者は、このマイケル・ムーアという監督が、正直言って、嫌いなんである。

過激な内容が大衆受けしてるだけで、彼の作品は、映画としては「OVER‐RATED」(過大評価)されてると思うんです。

だって、彼の映画って、どれもこれも「見え透いた勧善懲悪もの」ばっかで、内容は浅いし、視点は一方的で、実際つまんねー映画ばっかなんだもん。

米国の健康保険の実態を扱った前作『Sicko』にしろ、世界同時多発テロを扱った『華氏911』にしろ、米国内の銃器取り扱いを扱った『ボウリング・フォー・コロンバイン』にしろ、トピックが違うだけで、アプローチの仕方もプロットの流れも進め方も、みな同じ。

必ず「社会の悪」が出てきて、「善良な市民」がその犠牲となり、そこに、「正義の味方」ムーアが殴りこみかけて内情をあばいてゆく、ってパターンだけど、そういうプロットなら、子供のころにドラマ『水戸黄門』で、わたくし、毎週見てました。

ま、わかりやすいからいいんですけど、今回もあれと同じパターンか。

きっと同じ、だろうなー。上の手紙の文面読んだだけで、ムーアがやろうとしてることが、透けて見えるもん。

このムーアの呼びかけに正義を貫くために自ら進んで悪の実態を世に暴く金融機関勤務の方々、すなわち、ムーアの定義によると【勇敢なヒーロー】って、どんなひとたちなんだろう。

筆者には、映画より、そっちのほうが、ずっと興味がありますわ。

だって、この手の大衆受け・メディア受けする話に喜んで取材されたがる人達の多くが、実際にはそれが行われている「現場に直接関わってないひと」が多いんだもん。

先日のニューヨークタイムズなんかも、「かつてはJPモルガンで働いてるというと友達から羨ましがられたけど、今はそこで働いていたと胸を張っていえない」と告白するJPモルガンの元従業員を取材して、「ウォール街で働くことの意味が変わってきた」という結論で記事まとめてたけどさ。

その「元従業員」ってのが、JPMを奈落の底に突き落としかけた証券化商品のチーフトレーダーのアシスタントだった、とかってんならともかく、NYタイムズが取材した相手はJPMでシステム関係やってたとかなんとか、ともかく「バックオフィス業務」に携わってたひとなんだ。

そういう「フロント(現場)にいないひと」の取材ばっかで、わかったような結論つけられても、一方的でリアリティないだろっての。(それに、ウォール街ってところは、バックオフィス業務の方々に対する日頃の仕打ちは目に余るものがあって、彼らは日頃からウップン溜まりに溜まってるから、悲惨な体験談なら、そりゃーいくらでも出てくるでしょ。)

でも、そういうネタが、マイケル・ムーアが言うような「米国民として知る権利がある」、つまり「事の本質に迫るような重要ネタ」なのかは、定かではない。

前作『Sicko』でも取材不足が丸見えで、自分の意見に同意してくれるひとの声“だけ”拾って「これが実態だ!」とクオリティの低いドキュメンタリー(っつーか、純粋エンターテインメント)見せてたムーアが、次作ではどこまで「核心に迫る真実」を暴露してくれるかな。期待しないで待ってよう。

問題は、

「事の本質と核心に迫る真実」



「大衆を煽るだけの水戸黄門的周辺ネタ」

との違いが、ムーアに果たしてわかるのか、ということだ。

その問いに対するわたしの予想としては、映画『A Few Good Men』で、ジャック・ニコルソンとトム・クルーズが対決する超有名なシーンのセリフを使わせてもらいたい。
(その有名シーンは、こちらをどうぞ。)

緊迫する法廷で、「真実を知りたい、自分には真実を知る権利がある」と迫る検事役トム・クルーズに、悪の被告役ジャック・ニコルソンは、こう叫び返した。

YOU CAN'T HANDLE THE TRUTH!



問題デカ過ぎて、誰にもハンドルできん・・・。

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